17号は戦艦霧島に憑依するようですよ? 作:榛猫(筆休め中)
side17号
【ブワァァァッ!!】
突風と共に吹き飛ばされた俺は海のど真ん中に放り出された。
魂だけの存在の所為か衝撃は全くと言っていいほどなかった...。
「はぁ、ったく、いきなりやってくれるじゃないか。あのガキ...今度会ったら一泡吹かせてやるかな...」
そう愚痴りながら俺は辺りを見回す。
辺りは一面真っ青な海...。他に見えるものはない。
「こんな海のど真ん中に投げ出されるとはふつう思わないよな...。ん?」
更にグルリと辺りを見回す。すると、海の中に沈んでいく『何か』が目に入った。
俺は気になりその『何か』の所に向かった。
「おいおい...なんだこれ...」
沈みかけていたソレは人の腕だったのだ。
なんでこんな海のど真ん中で人が沈んでいるのか知らないがこの身体じゃどうしようもないしな...。
「仕方ない、助けてはやれないがコイツの面でも拝んでやるか」
そういうと俺は海の中へと潜っていく...。
中からその人物を見てみたところ、沈んでいたのは巫女服のような装束を身に纏った数人の少女たちだった。
「なんで女どもがこんなに沈んでるんだ?」
考えていても埒が明かないので、とりあえずこいつらの身体を乗っ取ってみようと試みる。
・・・・・・・・・・・
「ダメか...やっぱ生きてる奴じゃないと駄目そうだな」
うすうす勘づいてはいたが、やはりダメだった。まあ、死人を動かすなんてことやりたくはないので出来たらできたで気持ちがいいものじゃないからな...。
「出来ないものはしょうがない、諦めて次の奴を探すか」
そう言って俺が海面に浮上した時だった。
浮上した場所から少しだけ離れた場所で大きな水柱が上がったのだ。
「今度はなんだ?」
俺は水柱が上がっている場所に飛んで行った。
その場所についてみると一人の巫女服の様な物を着込んだ少女が、
白黒の化け物の砲撃を避けながら海を走っていた。
服装から考えると先程の少女の連れであることは間違いないだろう。
すると、化け物の砲弾が少女に命中する。少女は苦悶の声を上げながらも懸命に走ろうとする...。
が、先程の砲弾で体力が尽きたのか、少女の身体が海面に沈み始めた。
俺はその様子を黙ってみていた。すると頭の中に声が聞こえてきた。
【私にもっと力があれば...お姉様方...ごめんなさい...】
その声は恐らく少女のものだろう。
俺は少女に近づき一つ、問いかけた。
「力が欲しいか?」
sideout
side霧島
『霧島!私達のことは良いから早く行くネ!』
『今動けるあなただけでも!生きて!!』
『ここは榛名たちが全力で食い止めます!だから行って!!』
金剛お姉様...比叡お姉様...榛名...
『......っ!!必ず助けに戻ってきますから!ご武運を!!』
そう言って私があの三人に背を向け走り出してからどれだけ立つのでしょう...。
もう分かっていました...。もうあの三人は助けられないと...
それでも私は諦めきれなかったのです...。
ですが、その希望はあっさりと打ち砕かれました。
藁をもつかむ思いで鎮守府に救援要請を出したところ帰ってきた返答は残酷な者でした。
『救援ハセズ』
という簡素で情の欠片もない物でした。
私は唇を強く嚙みました。自分の無力さが悔しい...!
あんな鎮守府に着任してしまった自分が恨めしい...!
悔しさを押し殺して走っていると、目の前に敵艦が浮上してきたのです。
(戦艦ル級!?こんなときに!)
ル級は私を発見すると即座に砲撃してきました。
私はそれを躱して逃げることしかできません...。
しかし艤装は大破し、航行速度も大して出ないこの状態では避けるのも難しくなっていました。
次第に砲撃を喰らうようになり、最後には直撃を喰らい私は膝をつきます。
すると、艤装ももう限界だったのでしょう。私の身体が沈み始めたのです。
(こんなところで終わるのね...私にもっと力があれば...お姉様方、ごめんなさい...霧島も今そちらに参ります...)
私の身体がほとんど沈みかけていたその時でした。
「力が欲しいか?」
不意にそんな声が聞こえ私は目を開けます。
(誰...?)
「今はそんなことはどうでもいいだろ?力が欲しいのか?欲しくないのか?」
(今更力を求めても遅いですから...もう私は終わりなんです...。)
「そうか、お前が望めばこの状況も打破できると思うが、本当にいいのか?」
(...それは本当ですか?)
「あぁ、簡単だな。だが、今のお前じゃ無理だ」
(分かりました。私は力を欲します。貴方の力を貸してください)
「契約成立だな」
その言葉と共に私の中に何かが入ってくる奇妙な感覚が私を襲いました。
(な!なに...?こ..れ..)
その感覚に私の意識は暗転していき暗い闇の中へと落ちていきました。
sideout
side17号?
よし、なんとかコイツの身体を奪い取れたぞ。
だがコイツの身体もうほとんど動かないな...。
これじゃあまたすぐあの世に逆戻りだ。
そんな面倒なことはごめんだ、
俺はあのガキ時からもらった光る果実を手に取り一気に頬張った。
「っっ!?」
一瞬の痛みの後、急に体に力が沸き上がってきた。
沸き上がる力は懐かしくそれでいてどこか心地のいいものだった。
俺はこの感覚を生前体験している...。しかも腐るほど。
「そうか!思い出したぞ、これは永久式エネルギー炉だ、あのガキ気の利いたことをしてくれるじゃないか」
これなら余程のことがない限り大丈夫だ。
とりあえず、この目の前の化け物をなんとかするか...。
「ナゼ...ナゼ蘇ッタ!お前ハ先程沈メタハズダ...」
「そうカッカするな、これはゲームなんだ、楽しめよ」
俺のその言葉に化け物、戦艦ル級はいきり立ったように砲撃を開始した。
「ゲームダトッ...!フザケルナ!!」
滅茶苦茶に放たれる砲撃を俺は躱しながら、一気にル級へと距離を詰める。
そして、ル級の首辺りまで跳び上がると勢いよくその首を蹴り飛ばした。
「ッッ!?!?!?」
ル級の首は驚愕の表情を顔に張り付かせたまま暗い海の底に沈んでいった。
「......」
首から上がなくなった胴体も同じように海の底へと沈んでいくのだった。
「なんだこれで終わりか、つまらない...」
あっさりと沈んでいったル級に落胆しながら俺はこの身体の記憶を思い出していた。
「よし、じゃあ次はこのチンジュフってとこに行ってみるか」
そういうと俺はふわりと体を浮き上がらせ鎮守府の方へと飛んで行くのだった。