生物兵器の夢   作:ムラムリ

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短編だったけど続ける事にした。


1. 戦闘ミッション

 逃げ惑う人間へ走り、飛び掛かる。

 自らの背の後ろへ引き絞った左腕を、その人間の首に着地と同時に振り下ろした。

 鋭利な爪と強靭な腕、そして跳躍の勢いも相まって、その人間の首はぼろりと地面に落ちた。

 胴体が一瞬遅れて倒れ、血がだらだらと流れ落ちた。

 着地し、その両隣を仲間が走って行く。頑丈な鱗に覆われた緑色の身体は、低めに走る姿勢は人間よりやや小さいが、直立すれば、同等、大きい個体であればそれ以上だ。

 足の遅い人間からその爪の餌食となっていき、また、自分も走り始めた。

 

 生まれて、成長するまでは透明な壁の中で過ごしてきた。

 白い衣服を纏った人間に観察されながら。

 ただ与えられる肉を食らい、時にガスが充満して眠らされ、その後には弱かった、同じ壁の内側に居た仲間は消えていた。

 そんな時期が終わり、体が成長した頃には獣と戦わされた。

 湧き上がる闘争本能のままにそれを八つ裂きにして食らった後には、その人間の言葉も少しは分かるようになっていた。

 そして、命令を下された。

 戦え、殺せ。さもなければ殺す。

 それを裏付けるように、目の前で弱かった仲間が、人間の道具一つで、頭を破裂させられる光景を見せられた。

 従わなければ、殺す。

 自分達の首には、人間の手一つで命を奪える首輪が付いていた。

 引きはがそうとした仲間は、それが爆発して死んだ。

 

 戦わなければ生き残れなかった。それが本能だとしても、体の奥底から湧き上がる意欲だとしても、現実は限りなく冷めていた。

 初めて外の世界に出された後、まず、仲間の一体が銃撃によって遠くから脳天を貫かれた。

 銃という物自体に関しては学習していた。が、目の前でいとも容易くこの鱗が貫かれ、即死するのを見ると、驚かずにはいられなかった。

 物陰に身を伏せながら、覚束ない連携をして何とかその人間を屠った直後、その人間が爆発した。運良く生き延びられたが、体には仲間の肉片がこびりついていた。

 支配から逃げようと遠くへ走ったが、一番足の速かった仲間の首が弾けた。どう足掻こうとも逃げられない事さえも察した。

 首輪は外せない。逃げようとしても爆発する。

 人間を殺し、その飼い主の元へと戻るしか出来なかった。

 何度かそれが続き、生き延びる頃には、皆、冷めていた。

 生きる為には、死ぬまで生き延びなければいけない。自分達にはそれだけしかないのだ。

 

 血に染まった爪を舐め、ただただ逃げ惑う人間を殺して殺す。

 銃を持っていない人間は大概弱い。背後から爪で切り裂けばそれで終わる。

 銃を持っている人間でも、それが軟弱なものであれば、この鱗は通さない。精々頭を腕で守っていれば、大丈夫だ。

 ただ、小さい銃でも当たった仲間の腕が吹っ飛ぶような事もある。

 結局、遠目では種類はそう判別できないし、当たらないように立ち振る舞うしかない。

 大きい銃なら尚更だ。一発でも悪い場所に当たれば、治療されるのではなく、殺されてお終いだ。

 今まで長い事生き延びてきたが、生き延びて来られた理由は、経験とか知識とかそういうものより、単純に運の方が大きいと思う。

 不意に車が爆発した事もあった。気付かない内に狙撃されていた事もあった。必死の反撃で胸に刃物を突き立てられて死んだ仲間も居た。口に爆発物を突っ込まれて内側から爆死したのも居た。

 今まで沢山の死を回避して来れたのは、本当に、単純に運の方が大きかった。

 この次の瞬間にだって死んでいてもおかしくなかった。

 

 人間が一か所で陣取って銃器を構えていた。

 正面から戦う事はせず、分かれ、建物を伝って様々な場所から様子を窺う。

 建物の上には狙撃する人間も居たが、仲間が数体、建物の中や死角から迂回して行った。それなら、ここで陽動をしているだけでよかった。

 暫くすれば、至近距離まで詰めた仲間が、その人間の首に爪を突き立てた。

 死に際に置かれた爆弾を爆発する前に、下で固まっている人間の方に投げて、道連れも回避していた。

 そして、爆発が起こり、人間が散り散りになる。

 銃器はこの巨大な爪が生えた指で扱えなくても、部品を引き抜くだけで使えるような爆弾なら、使える。

 仲間達は、その人間が持っていた様々な物と一緒に、爆弾を落とした。

 それだけで、固まっていた人間の大半が死んだ。投げ落とした物の中には銃弾でも混じっていたのだろう。

 降り立ち、生き残っていた人間を屠る。陣形は崩れていて、負傷した人間達はもう、自分達にとってはそう脅威ではなかった。狙いを定められ撃たれる前に距離を詰め、爪を突き立てる。それは容易かった。

 が、こちらの犠牲も無い訳では無かった。

 銃器を持つ人間を大体屠り終える頃には、新しく入って来た仲間の多くと、同じ頃からずっと戦って来た仲間の一体が犠牲になっていた。

 後の処理が始まる頃、胸に穴を開け、死にかけているそのずっと戦って来た仲間の前に立ち、楽にしてやった。

 

 焼け焦げた臭いと血の臭いが混じっている。

 大体終わったか、思っていると、僅かに死体が動いたのが見えた。

 蹲る母親の死体の陰に子供が隠れていた。殺そうと思うと、仲間の色欲狂いがそれを捕まえて物陰に連れて行った。

 終わった後、そいつは雄であろうが雌であろうが、生き残りを見つけては僅かな、呼び戻されるまでの自由な時間に犯していた。

 気に入った獲物に関してはこっそり生かして帰る程だった。

 またその内犯せるとでも思っているんだろうか。そんな自由、どこにも無いのに。

 良い感じに焼け焦げた死体を食っていると、首輪が振動し始めた。帰って来いという合図だった。

 時間内に帰って来なければ、待っているのは爆発だ。

 色欲狂いが、精液を垂らしている、まだそびえ立つソレを出しながら、残念そうに出て来た。

 

 銃器を持った人間達の元へ戻る。

 こいつらより忌々しい奴等は居ない。いつか、戦えなくなってしまった時はそれを隠して最後に一矢報いれればと思う。

 自ら狭い檻の中に入る。腰を硬い地面に降ろすと、疲れが襲って来た。

 傷は多少あるが、この程度なら、眠らされている内に治してくれる。そこだけは感謝している。

 血を舐め取っていると、檻が閉まって行く。

 暗闇になり、どこかへと連れていかれる。

 また、戦う日まで、退屈な日々を過ごす事になる。

 つまらない、ただ、戦いと退屈の繰り返し。

 暗闇の中、目を閉じ、もう数えきれないほどの諦めと共に眠った。




主人(?)公:
種族:ハンターα
性別:♂
犯罪組織でB.O.Wとして使用されているハンターの内の一匹。
左利き。
外そうとしたり、逃げようとしたりすると爆発する首輪を付けられている。

犯罪組織の中で誕生し、そのまま戦わされている。

戦闘能力は高く、簡単な道具なら使える。
その犯罪組織の中で使われているハンターの中でも古くから生き残っている内の一匹であり、賢さや戦闘能力から割と丁重に使われている。
人間に対して慈悲は全く無いが、残虐に殺す事も余り無い。
戦闘に対してはもう、半ば機械的に行っている為。

首輪を捨て、犯罪組織から解放される事を諦め切れていない。



何となく書いて続けようかとも思ったけど、二次でやるより一次創作でやりたいなー、と思ったりも。

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