生物兵器の夢   作:ムラムリ

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14. 殲滅ミッション 2

 顔を潰した男を、他の死体の所に投げ、その男が持っていた爆弾の二つを顔に出来た穴に埋め込んだ。

 残りは貰った。それと、ショットガンの弾薬も貰った。

 爆弾と一緒に投げれば、破壊力が増すかもしれない。

 ピンを外して逃げれば、顔面どころか上半身の胸の辺りまでは跡形もなくなっていた。

 それから、組織の人間を殺した自分に対して不可解な目で見て来る仲間達を無視して、近くにあった人間用のトイレに入った。

 鏡があり、そこで頭の防具の留め具を外した。

 脱いで、鏡越しに自分の首輪を見た。

 こうやってまじまじと首輪を見つめるのはいつ振りの事だろう。

 心臓は、静かに高鳴っていた。

 外せる、という期待とそれからその先の、期待以上の不安が自分を襲っていた。

 期待は大き過ぎて、それよりも不安が更に大き過ぎて、自分が今、何を思っているのかさえ良く分からない。

 いきなり教えられたその事実は、本当に正しいのだろう。

 だから、あの男は自分を殺そうとして来た。

 首輪には、白衣の男の言う通りにネジが二つ、前と後ろに付いていた。両方とも、良く見る十字のネジだ。

 自分の爪じゃ、外せない。でも、そのネジを外す為の物も、ミッション中とかに転がっているのを良く見た事がある。珍しいものじゃない。

 ……まさか、こんな簡単な方法だったなんて。

 だからこそ気付けなかった。いや、気付ける要素が無かった。

 無理に外そうとすると死ぬ。けど、ネジを外して外せば、死なない。

 分かるかそんな事!

 息を吸って、吐いた。

 でもまだ、問題はある。首輪が外せるとしても、それ以上の問題が待っている。

 いつ逃げるか。どう逃げるか。どこへ逃げるか。誰と逃げるか。どれだけ助けるか。どれだけ見捨てなければいけないか。

 正直、本当に助けたい、一緒に逃げたいと思う仲間は居ない。

 色欲狂いは、自由になるよりここで人間を好きに犯せている方を選ぶだろう。

 片目や古傷も似たようなものだろう。それに片目や古傷の爆弾は自分のように外せない。

 一緒に逃げたいと思う仲間は、その逃げたいと思っていないであろう仲間だった。ミッションの中で良く一緒に行動する仲間だった。古傷も、仲間を沢山殺したとは言え、今は親しい。

 ……他の仲間も逃げたいと思っているのか良く分からない。

 自分だってそう言う素振りは余り見せて来なかったつもりだったが、殺した男は分かっていたし、多分見せてしまっていたのだろう。

 そしてその自分が他の仲間に対して良く分かっていない。

 それがその素振りを見過ごしているのか、単純に他の皆も脱出に対してそう強い思いを持っていないのか。

 ……でも、自分が首輪を皆の前で外したら、外してくれと頼むと思えた。

 その後の事は全く分からないとしても。

 

 取り敢えず、落ち着かなければいけなかった。

 まだこのミッションは終わっていない。大量に逃げられたりする前に、出来るだけ殺さなければ。

 防具をまた被り、多少手こずるものの、留め具をしっかりと留める。

 出てくれば、中堅の仲間達はちゃんと待っていた。

 必要に駆られなければ、多分こいつらの首輪まで外そうとは思わないだろうな。

 

 

 

 中堅がトラップに引っ掛かった。複数が爆風に巻き込まれて、けれど巻き込まれた大半は気絶しただけだった。

 ただ、一体が首に破片が突き刺さっていて、楽にしてやらざるを得なかった。

 中堅にさえ、楽にさせる時は少し思うものがあった。あの人間を殺した時にはそんな事全く思わなかった。

 当たり前と言えば当たり前だが。

 護衛ミッションの時のような人間のように、それから自分にルービックキューブの遊び方とかを教えてくれた人間のように、特に何もしてくれた訳でも無いし、そもそもあの男は自分を殺そうとしていたのだし。

 迂闊にもう曲がり角で、中堅も飛び出す事は無い。

 左への曲がり角。

 機関銃特有の音がして、ショットガンの弾薬を投げ入れてみる事にした。

 どうせ意味があるのかも分からないのだから、全部投げ入れた。

「……ショットシェル?」

 爆弾を投げ入れた。

 爆発の後には、大して悲鳴とかは聞こえず、反撃にと、機関銃が元気に壁を貫いただけだった。

 角から殆ど腕も出さずに投げるだけじゃ、機関銃までも届いていない。

 煙幕を張ると、更に元気に壁を貫いて来る。

 だが、狙いは全く無い。右に、左にと散らして撃っているだけだった。

 中堅に、その隙に爆弾を思い切り投げさせた。左利きの自分じゃ、体全部晒け出さないと投げられなかった。

 漸く、機関銃が壊れる良い音がした。

 直後に中堅が我先にと走る。だが、甘かった。煙幕の先にはもう一つ、機関銃があった。

 ……予備、かよ。

 前を走っていた中堅の一体が集中的に狙われて、プロテクターが一気に破壊され、血しぶきが舞った。

 二体、三体。一気にやられていく。

 頭は一気に、自分が生き残る方へ変わった。

 前に居た中堅の、プロテクターの無い脇を思い切り貫いた。訳の分からないまま後ろを見ようと震えるその中堅を無視して、爆弾を取り出し、自分に倒れる中堅を盾にしながら思い切り投げた。

 四体、五体。そして、目の前に居る中堅。

 プロテクターが破壊され尽くしてもその肉壁は役に立った。

 威力が減った弾丸は、自分のプロテクターまでを破壊する事は無く、先に爆弾で人が吹き飛んだ。

 後ろの中堅の一体が、自分を見ていた。

 悪いか?

 喉を鳴らすと、怯えるように人間に止めを刺しに行った。

 どっちにせよ、そうしないと更に死んでいた。

 運が悪かったと思ってくれ。

 全く役に立たなかったショットガンの弾薬が隣に転がっていた。

 止めを刺す、爪の音。

 ただ、それを聞いた後にその人間を見てみると、首に注射器が刺さっていた。

 中身は無かった。

 爆弾の欠片が突き刺さり、首を裂かれたその体が、ビク、と動いた。

 やばい。

 すぐさま皆を呼び、とにかくバラバラにした。頭も潰し、腕や足も、胴も徹底的に。

 そうすれば、流石に動く事は無かった。酷くほっとした。

 血は絶対舐めるなと指示した。

 G-ウイルスなんて今まで聞いた事が無かったし、それを舐めたからこの前のようにファルファレルロに変異して終わると楽観的にも思えなかった。

 

 そして、殲滅は大体が完了していた。被害はどこも前よりは断然少かった。

 プロテクターのおかげだった。

 ただ、人間と合流すると、結構多くが森の中に逃げたと知った。

 中の後始末には中堅達を残して、自分は外の援護に回れと言われた。

 ……中も、不安要素がたっぷりあるんだけどな。

 T-ウイルスよりも危険なG-ウイルス? それがどういうものかは知らないが、嫌な事になるのは間違い無いし、それにその注射器がこの組織で複数あるっぽい事もとても怖かった。

 人間達はそれを知っているのか。

 ……まだまだ、終わっていない。

 森の方へ行く直前、唐突に人間が聞いて来た。

「そう言えばさ、こっち側、俺達人間の特攻隊長様が見当たらないんだけどさ。

 でっかいショットガンとライフル持ってる人間。

 見なかった?」

 一瞬、体が震えた。

 ……気付かれなかっただろうか。

 ほんの少しの間。

 それから爆弾を取り出して、口に入れる振りをした。

「……マジでそんな死に方したの? あの人が?」

 頷いた。そういう死に方はしていないが、そういう痕にはなっている。

「詳しく聞きたいわー」

 爆弾をしまって、森へ行く事にした。

 内心、かなり緊張していた。

 ばれたら一巻の終わりだった。




銃弾を爆発に巻き込んだら、クラスター爆弾みたいになるんじゃないかと思って調べてみたらそうはならないようでした。銃弾自体に引火しても、大した威力でも無いとか。
映画とかで偶に銃弾が爆発して大変な事になるとかやってるけど、現実じゃそうはならないっぽい。
でも映画でやってるんだからいいじゃないかとも思ったけど、まあ、知っちゃうと余りしたくなくなった。
……1話?


後、活動報告を書きました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=130258&uid=159026

それと、まだ反映はされていないけれど、
原作バイオハザードで、総合評価及びに相対評価でも1位になりました。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

で、まあ、活動報告と加えて、そういう事で。

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