生物兵器の夢   作:ムラムリ

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7. 警護ミッション 2

 森の中に入ると、すぐに自分達の首輪の振動は止まった。

 敵対組織があると思われる場所は、この森と荒地の境界辺りにあるのでは、と思われていた。

 とは言え、絞り込めてはいないし、少なくとも今回与えられたミッション区域の中には無い。

 

 森の密度はやや疎らな感じで、身を隠せるようなものはそう多くない。狙撃されたらきついな、と思うが、そういう状況になったら人間が何とかするだろう。

 一緒に来た人間達も、あの男に限らず全員強い。刃物しか持っていなかったとしても、何も無い場所で戦うとしたら一筋縄ではいかない程だ。新入りではまず勝てない。素手でも怪しいかもしれない。

 

 一通りの区域内の確認をし、全体的なここの地形が頭に入る程に歩き回った後、人間の提案もあって、警戒をやや薄くした。

「今回、丸一日以上ここで過ごすんだ。それに、本当に警戒しなきゃいけない時はそう長くない。休み休みやっとけ」

 自分達が二体一組で一定の時間で区域内を回り、時々人間が狙撃銃で遠くを警戒する。

 巨大な岩に隠れて、自分がその人間と共に休んでいると、退屈そうに時々話し掛けて来た。

 自分が喋れないからか、一方的に愚痴みたいな事から変な話まで色々な事を喋って来る。

 その自身の境遇がそう大して自分達ハンターと変わらない事。逃げようとしても、逃げられないのはお前等とそう大して変わらない、と言われた時は、少し驚いた。

 失敗を犯して色欲狂いの檻に突っ込まれた後、ゲイになるどころか、自ら行くようになってしまった仲間数人の事。そう言えば、男達が偶に楽しみそうな顔して色欲狂いの檻に行って、楽し気な声出してたの聞いたな……。

 上層部が頭抱えてたよ、と笑い半分、虚しさ半分で言った。

 そして、自分達の事。B.O.Wを作って売りさばいている組織でも、知能の実験とかをしているそうだが、そのいつも自分が遊んでいる玩具、ルービックキューブの使い方を覚えるハンターは居ても、好き好んでそれで遊ぶハンターまでは滅多に居なかったとか。

 冗談半分でか、脱走する目途は立ったのか? と聞いて来て、少し驚いた。

 男は脱走するつもりにせよ、そうでないにせよ止めとけ、と言った。

「万一その首輪を外せたとしても、だ。

 B.O.Wに如何に知性があったとしても、敵意を見せなかったとしても、人間の居る場所じゃすぐに殺す対象になる。

 こういう森の中でなら生きられるかもしれないが、ここ辺りの地理も分かっていないだろ。

 組織の場所からはそういう森は遠くにしか無いし、ミッションの最中に首輪を外せたとしても、全く知らない土地で人間が入らないような森にまで行けると思うか?」

 分かっている。そんな事は。

 ファルファレルロになってから、首輪を外せれば、出来るかもしれないと思う。

 身を隠しながら、人間の居ない場所にまで逃げられるかもしれない。

 それはこの頃出来た、新しい希望だった。

 ただ、首輪をどうしたら外せるのか、それは全く分かっていない。

 

 片目と古傷が帰って来て、片目と警戒に回る。

 狙撃銃で人間も警戒を終わらせると、自分と片目が遠くに行かない内から今度は古傷に話し掛けていた。

 単純に退屈なんだな、と思った。

 ファルファレルロとなった片目は、日が経つに連れて、体が少し大きくなっているように見えた。

 身長で言えば、自分の頭一つ分位は高いだろうか。そして、筋力も明らかに強くなっている。

 片目と古傷は、檻の中でも力比べを良くしていた。これまで、ミッション中でさえも、暇な時は良くやっているのを見ていたが、大体拮抗していた。

 ただ、この頃は片目が圧倒していた。

 T-アビスの影響なのは間違いなかった。

 そして、そうなってからは古傷よりも片目の方がつまらなそうにしていた。

 当然と言えば当然だった。

 片目が古傷を仲間に入れた理由は、自分に似た、自分と同じ位の強さの仲間として欲しがったからだった。

 自分が縛られている現状から逃れたいように、片目は強い故に自分に拮抗出来る仲間が欲しかった。

 その理由を思うと、近い内に片目は自分の血を古傷に飲ませるかもしれない、と考えずにはいられなかった。

 

 岩陰や木陰に隠れながら、区域を回る。気配とかは全くしないが、万一人間が狙撃しようとしていたら、そこで自分の命は終わる。

 頭の位置をずらして木陰から飛び出し、すぐに新しい隠れ場所に身を潜める。

 この爪では持とうにも使えないし、一方的に遥か遠くから攻撃出来るし、でこの上無い忌々しい武器だった。

 その分、狙撃銃を持った人間を自分の爪で殺した時には快感もあったが、やはりそれは、自分にとって命を危険に晒してまで得たいものじゃなかった。

 片目にとってはそうなんだろうけれど。

 警戒が半分位まで終わって、また月を眺める。朝日が近付いて来て、空が段々と明るくなって行く。

 そういう思いに浸っては駄目だと思いながらも、岩肌に寄り掛かって目を閉じれば、叫びたくなる。

 自分が逃げたいと思うのは、この現状を楽しめていないからだ。色欲狂いのように、片目のように、この現状で出来る楽しみが、自分の望む楽しみじゃないからだ。

 ……自分の望む楽しみは、いつか見た野生で暮らす肉食獣みたいに、人間が居ない場所で捕食者として悠々と生きる事だった。現状はそれとかけ離れている。

 だから、こんなにも空を眺めて苦しくなるのだろう。

 今でも脱走する事を諦め切れていないのだろう。

 片目がそんな自分を変に眺めて来る。

 首輪に触れて、また、警戒を始めた。

 この、もう付けている事に違和感さえ無くなってしまった首輪を外した時、自分はどう思うのだろう。

 全く想像出来ない事だった。




No.27:
主人公
望みは人間の居ない場所での悠々自適な暮らし。


ハンターが学習出来る(連携とか指示とか出来るなら学習出来るだろうという推測の元の)設定の元、の武装した人間への攻撃方法。

新入り:
正面から構えて馬鹿正直に飛び掛かる。大体反撃される。
飛び掛かっても殺せない事もあり、殺せても自爆されて死ぬ事も。

中堅:
正面に立たずに不意に飛び掛かる。偶に反撃される。
反撃されると脆い。

主人公達:
反撃されない状況を作り出して急所に一撃。
狙撃兵とかに対しても連携して犠牲はほぼ出ない。
場合によっては使える簡単な道具を使ったり物を投げたりする。

片目、古傷:
反撃させずに潜り込み急所に一撃。多人数相手にも、軽装なら立ち向かえる。

バイオのリベレーションズの動画見てて、やっぱりこれゲームだなーと思ったりした。
いや、連携とかしてきたらそもそも別ゲーだな。ガンシューティングじゃなくなるかもしれん。

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