いや割とマジで。結構疲れる、けど必要だからしないといけなんだよなぁ……。
というわけで二話です。今回は結構少なめですが、ご了承ください。
では、本編をどうぞお楽しみください。
「あんたはこの世に人ならざる力があると言ったらーーーー信じるか?」
「………へ?」
琴音は素っ頓狂な声を上げる。目の前の男性、神野司が何を言っているか全くわからないのだ。
まるで、その『人ならざる力』というものがこの世に存在するかのように。
「………………まぁ、その反応は予想してたし、今からちゃんと説明するから」
司が苦笑を浮かべて言う。
その時、琴音の後ろにある扉がバンッと勢いよく開かれる。そこには、先ほどの受付カウンターのようなところで座って本を読んでいたはずの前髪が異様に長い男性が立っていた。
「お、ナイスタイミング雫」
「
「おっとそりゃ悪かったな。でも、本当にいいところに来てくれた。これから説明しようとしてたんだ」
「…………僕だけに説明させたら腕引きちぎるからね」
「………頼むからそんな怖いこと言わないで」
二人の会話を聞きながら顔を青ざめさせていく琴音。
腕を引きちぎるあたりの声音が意外に本気のように聞こえたのは気のせいだろうと琴音は無理にでも思い込む。
詞鶴と呼ばれた男性は司の横に立って琴音の方を向く。
「さて、まずは何から話すか………」
「《異能》のことからでいいんじゃ?」
「うーん……、そうするか」
勝手に話が進んでいく様子を琴音は青ざめた顔のまま見る。
仕事の面接に来ただけなのに、何故こんな大変なことに足を突っ込んでしまっているのだろう。
次第に眩暈のような感覚に襲われるが、気合いでなんとか耐える。
「それじゃあ、といきたいところだが、まず御言さんがどんなイメージを持っているか聞いておきたい。君は《異能》と聞いたらどんなものを想像する?」
「…………どんなもの、ですか?」
「そうそう。なんでもいいからさ」
そう言われて言われるがままに想像する。この時点で状況に流されかけているが、琴音の頭の中にはそんなことは微塵もなく、された質問に答えるので精一杯であった。
「………炎を打ち出したりだとか、時を止めたりだとか?」
「お、そうそう!俺たちが言ってるのもそんなところだ」
一時期、少年漫画にはまっている時があり、その時の記憶を辿って答えたが、どうやらそんな感じで合っていたらしい。
「簡単に説明するとだな、《異能》は
「自在に操ることのできない、能力……ですか?」
「さっき言ってた炎を操ったり時を止めたりだよ」
確かにそうとは言ったが、それを大真面目な声音で返されるとは思っていなかった琴音はあんぐりと口を開けて固まっている。
それを見た詩鶴は「実際に発動してみてはどうか?」と司に提案した。それを司はあっさりと引き受けてしまった。
(あれ……、これどんどん逃げ道塞がれてない……?)
と思う琴音だったが、後の祭りだった。
司は手のひらを上に向けて机の上に置き、目を閉じる。
「"その概念の真髄を解き、己が手で行使する"」
そう言い終わると司の手のひらの上にテニスボールサイズの淡く光る球体が現れる。その光は外側から徐々に崩壊し、新たに形を形成し始める。
形を形成すること約30秒。光はおそらく誰しもが見たことがあるだろう形になり、その輝きを失う。するとそこには新品同然の鉛筆があった。
「……………なんですこれ?」
「俺の能力だ。現代に至るまでに存在する全てのものの理を解き明かし、理解したものを行使する力」
「簡単に言えば、構造と使用方法を理解したものを具現化して使うことのできる能力だよ」
司の説明で一瞬ポカンとした琴音だったが詩鶴の適度に分かりやすい説明により、なんとなくは理解できた。が、目の前で脳では理解できないようなことが起きたのは事実である。
人ならざる力、異能。表社会では知ることはなかったであろう事実。これを知っているのはおそらくそういないであろう。琴音はその現実に眩暈を覚えて気を失いそうになるが、なんとか踏みとどまる。
「という訳で異能の詳しいことについてはおいおい理解してもらうことにしよう」
「……その前に面接云々はどうなったの?」
「もちろん合格でこれからすぐにでもうちで働いてもらうつもりですが?」
「……その子の選択権は?」
「異能のこと話しちゃったし無理やりにでもうちに入ってもらうしかないけど、それがどうした?」
「………外堀埋めて逃げなくしたのか………飛んだゲスじゃないか」
「策士と言ってくれ」
「黙れ製造機」
「そのあだ名は酷くないっすかね!?」
先ほどから楽しそうに目の前の二人は話しているが、それを見ている琴音はそれどころではなかった。いや、実際にはそのやりとりが耳には入ってきてないわけだが。
司はさっき「異能のこと話しちゃったし」「無理やりにでも」と言っていた。これらから判断するには、異能のことは一般人には話してはいけないことであり、それを知ってしまった場合、異能が関わる世界に生きなければならないということだろう。
今すぐにでもこの場を逃げ出したい気分だったが、何をされるか分かったものではないので心の中で涙を流すしかない琴音はがっくりと項垂れた。
「んじゃ、よろしく頼むぞ御言さん」
「……無理やり関わらせたのに何を言うか。……まぁ、よろしく」
「………………はい、よろしくお願いします」
こうして琴音は(半ば強制的に)就職先が決定したのだった。
♢♦︎♢
亥景相談所の受付カウンターに司はもたれかかり、その後ろで詩鶴が本を読んでいた。すでに面接に来ただけのはずなのに大変なことを知ってしまった琴音は相談所を出ており、室内には二人しかいなかった。
一方は欠伸をして、もう一方は小説のページをめくる。
「………それで、御言さんはどうだった?」
「見込みはあり。が、振り回されること間違いなしだな。俺たちに」
「………そこじゃなくて
「否定はしないのな………」
「……分かりきってることだからね。で、結果は?」
詩鶴は栞を挟んで小説を閉じ、司に顔を向ける。目元は前髪に隠れているため見えないが、声音に真剣味が感じられた。
それを感じ取ったのか、司も咳払いして天井を見上げる。
「見込みはあるが
「……まだ……?」
「まあな。異能のこととかで混乱してたし、それに目覚めるにはきっかけが必要だからな」
「……それはそうだけど。…………はぁ、これからどうなることやら」
「神のみぞ知るところってな。ま、明日からのお楽しみだよ。ちょうどあいつら帰ってくるし、顔合わせにはちょうどいいだろ」
「……そうだね」
そう話を切り上げて詩鶴は閉じていた小説を開いて読書を再開する。
司は未だ天井を見上げたまま、息を吐いた。
(はてさて………本当にどうなることやら……)
そう思いながら笑みを浮かべるのだった。
次回、僕が出してる作品でも気に入っているオリキャラが数人出てきます。
楽しいこと大好きな快楽主義者だったり、極度の方向音痴の女の子だったり、ドジっ子天然バカと三拍子揃っている女の子だったりとまぁより取り見取りですね。……次回大変なことになる気が………主に琴音と司が。
では、次回もお楽しみに!