まあ、息抜き程度ですので、クオリティが低いかもしれませんが、ご了承ください。
では、お楽しみください。
依頼に来たと見える中学生と思わしき少女応接間?のような部屋へと連れて行きソファーに座らせている。その横に座っているのは、太ももの上に手を置き、緊張した面持ちの琴音だ。
(何で、私が………)
琴音は内心で涙を流しながら数分前のことを思い出す。
亥景相談所の社員の一人である
「さっき事務所の前にいたから話聞いたら依頼者だった、だと?」
「……うん、それで合ってる」
「あんな大人しそうな子が?」
「……ここにはいろんな依頼が舞い込むんだからありえなくないでしょ」
「まあ、そうだけど」
その詞鶴と司、そして英太が話し合っている声を聞きながら、琴音はどうすればいいかわからずに立ち尽くしていた。
それらに目もくれず詩音と三月は扉のところで動かずに立っている少女に近づいていく。
「ねえ君、依頼に来たの?」
「………………(コク」
詩音が少女に柔らかい声音で尋ねると、表情を変えないままコクリと小さく頷く。すると、三月はニコリと微笑んで手を差し出す。
「それじゃあ、お姉ちゃん達とあの馬鹿達が話し終えるまで待っていようか」
(いや馬鹿って…………)
三月の酷い物言いに心の中でツッコむ。日頃どんなことをしたらそう思われるのだろうか、と思案させ始めた時、詩音が振り返って小走りで琴音の元まで走ってくる。
「琴音ちゃん……であってるよね……?」
「え、あ、はい」
「それじゃあ最初の仕事ね」
以前笑顔の詩音からその言葉を聞いてぐっと拳を握って気合を込める。が、そんな気合に反して出てきた言葉というものはーーーー
「依頼者の応接、お願いね♪」
「………………………はい?」
そして今に至るわけだが、依然として先輩達の姿は応接間には見えず、依頼者であろう少女と琴音の間には気まずい空気が流れている。
しかも応接と言っても、詩音からは応接間に連れて行ってお茶とお茶菓子を出してくれればいいからと笑顔で言われていたが、その後のことは言われてない。その代わり、
『そのうち私たちが行くから』
と聞いていた。
(そのうちって………いつですかぁ〜………)
気まずい空気に当てられたのか、心の中で滂沱の涙を流しながら嘆くが、そうしたところで状況は変わるわけもなく、応接間はなんの音が響くこともなく静まり返っている。
そろそろ立ち上がって先輩達の様子見に行こうかと思い始めた瞬間、少女が口を開いた。
「……いつ話聞いてくれるの?」
「ふぇ……?」
いつの間にか少女が琴音を見上げている。不安げで涙で濡れている瞳でじっと琴音を見ていた。
「ここで待ってて………って言われてから結構経つんだけど……」
「あ、と……えーっと………」
そんなこと言われたってどうしようもないじゃないですか!と嘆きたかったが、依頼者になるかもしれない少女がいる目の前でそんなことも言えるわけがなく、狼狽える琴音。
だが、そんな状況をいつまでも続けられるわけがなく、意を決して琴音は話を聞くことにした。先輩達の話が終わってこっちに来ることは絶望的だと見切りをつけて。
「そ、それじゃあまずは氏名と年齢……かな?教えてくれる?」
「……
「へぇ……11…………ふぇ!!?」
名乗った少女、四乃の言葉を聞くや否や惚けた表情をしたかと思うと、その色を驚愕に染めた。
そこそこ大きな声を上げたため、隣にいた四乃は至近距離でその声を聞いたので痛そうに耳を押さえている。
「ちょ……あなたまだ小学生なの!?最低でも中学行ってると思ったんだけど!?」
「う、うん。ちょっとだけ……みんなより成長が早いって」
琴音が驚いた原因はその年齢だった。おおよそ140はあろうかと思われる身長で服の上からでもわかる胸部の小さな膨らみがあったので琴音はそう決めつけていたのだが、どうやら違ったようである。
(さ、最近の子って……こんなに成長早いの……!?)
成長が極めて遅かった琴音としては信じられない出来事だった。流石に四乃には勝っているが、お世辞にも大きいとは言えない胸囲に、そんなに背も高いとは言えない。むしろ平均的である。
本来の目的である『相談内容を聞く』ということが完全に抜け落ち、トリップしていた琴音だったが、服の裾を四乃に引っ張られて現実に引き戻される。
「ご、ごめんね。それで、相談事ってなんなのかな?」
「……お姉ちゃんを………黒乃八凪を探して欲しいんです」
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
お姉ちゃんはある会社に勤めてたんです。お母さんが言うにはものすごく有名な会社だったとか……。お姉ちゃんも満面の笑みで自慢してました。
でも、そんなお姉ちゃんがおかしくなったんです。丁度、数ヶ月……いえ、半年前ですね。その頃から家で笑顔の絶えなかったお姉ちゃんから笑顔が消えたんです。怒鳴り散らしたり、頭を掻き毟ったり……極め付けには金切り声……というんでしょうか。周囲の人たちからも苦情がくるほどで……。
一回、何があったのか聞いてみたんですけど、何も言うことはないと怒られました。あ………、いえ、一つだけ言われたことがありました。確か、「私のように……"こっち"側に来ちゃダメよ貴女は。絶対にね」って。その時は何を言ってるのかわからなかったんですけど…………、やっぱり今でも分かりません。
それから少し経って、丁度一ヶ月前の日ですかね。その日の夜遅く、私は寝付けなくて台所にお水を飲みに行っていたんですが、その時、玄関のほうで何か音がしたんです。
その時のことは寝ぼけでたんですけど、玄関を覗くとそこにお姉ちゃんがいたのは分かったんです。ぼんやりと覚えているのは、お姉ちゃんの目が怖かったこと……でしょうか。
+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×
「この夜からお姉ちゃんは帰ってきてないんです……」
四乃の表情が再度暗いものへと変わっていく。自分の姉が今どこでどうしているのか不安なのだろう。
話を聞いていた琴音はというと、顎に手を当てて考えていた。
(四乃ちゃんのお姉さん……八凪さんだっけ。その人が豹変したのが半年前……絶対に何かそこにある)
「ねぇ、四乃ちゃん。半年前より少し前に八凪さん……ええっと、お姉さんは何か言ってなかったかな?」
「………え?それより……前、ですか…………?」
「うん。どんな些細なことでもいいから」
「些細なこと………あ、そういえば、会社で融通の利かない上司がいると言ってました。『イケメンだからってなんでも許されるってわけじゃないのよあの腹黒』ってボヤいてました」
いや、それボヤいたんじゃなくて完全に悪口………、と言おうとした口を閉じる。小学生の前でそれを言うのはあまりよろしくないだろう。
だが、これでなんとなくは原因がわかってきたと確信する。
(おそらくその上司さん絡みで間違いないだろうけど……、でもだからっていなくならなくってもーーーーーってまさか)
思考を進めていくと、最悪の結末が脳裏に浮かび上がってくる。琴音は顔を青くし、苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
が、頭を振るってその考えを頭から消し去る。
「とりあえずなんとなくは分かったよ。あとは任せて」
「えっ、い、いいんですか!?」
「お姉さんに任せなさいっ!」
目を見開いて驚く四乃にさして大きくない胸を張って言う。
「ありがとう、ございます………っ」
感極まったのか、緊張が解けたのか、四乃は瞳を潤ませて泣き出す。それを琴音は優しい笑顔で背中をさするのだった。
♢ ♦︎ ♢
扉の前でぺこりと頭を下げて階段を下りていく四乃を見送った琴音は、ジトッとした目で事務所内で正座しているを睨む。
四乃が泣き止んで応接室を出てくるや否や、見えたのが犬歯をむき出しにして本格的な言い合いをしている大人気ない男性二名、それを無視してお喋りに興じる女性二名に定位置で我関せずの意思で本を読んでいる詩鶴だ。
琴音はポカンとして呆然としたのは当然のことだった。
「…………で、言い訳ぐらいは聞きましょう」
「「俺ら悪くない。こいつが………んだとゴラァ!?」」
「「悪気もないし後悔もしてない。あと反省もするわけない!」」
「………疲れたくなかった。あと、本が読みかけだったから」
「反省をしてないしする気がないのもわかりましたし自由奔放で新人の私程度では手をつけられないということはよーーーーーく分かりました!!!あなた方全員動物園にぶち込んでやろうかこの自由人ども!!」
ーーーー流石の琴音でも耐え切れなかった。堪忍袋の尾がチェーンソーで切られ、残骸すら残されていなかった。
「こっちが結構重い話してたってのに、いったいなんの話してたんですか?」
「「俺らは好物について」」
「「最近のファッション」」
「……恋愛もの読んでいた」
「ブチ切れていいですかいいですよね返答は聞いてないんですぐにそこに直りなさい鳩尾一発で終わらせてあげますから。後輩が仕事してるのに何も思わないんですか?」
「「「「何もしないで金が稼げるなら何もしない。その方が楽だから」」」」
「………僕は仕事してると思うんだけどな」
「ーーーー社長に電話を」
『それだけは勘弁してください』
奥の手を出した途端、態度を変えて土下座を繰り出す五人にため息を吐く。
ーーーーそれから数分後。
「はぁ、落ち着きました」
「うん……まあ、そりゃよかった」
琴音はすっきりしたような顔で息を吐き、司は疲れた顔で肩をなで下ろす。
怒り狂った琴音を止めるため、司が肩揉みなどのマッサージを提案したところ、その結果として場を収めることができた。
その際に四乃から話されていたことも話しておいた。
「で、結局その八凪さんって人はどうなったんだ?」
「……それには見当がついてるんですけど、さすがに一人では危険というか……」
英太が尋ねると、琴音の表情に影がさす。
「なら仕方ない。俺が同伴する。あと、詩鶴はバックアップ頼むわ」
「……了解」
司が頭を掻きながらそう提案してくる。言われた詩鶴は声音がいつもと少しだけ違ったものになっていた。
「これは『黒乃八凪失踪事件』とでも名付けますかね。あ、それと、残りの三人も待機してろ」
「了解だ」
「オッケーだよ」
「分かった。気をつけてね」
司はそれらの声に応えるように、ああ、と短く返して琴音を見た。
「んじゃ、行くぞ御言」
「はい、神野先輩」
次回から相談内容の捜査スタートです。
……これって探偵ものだったっけ?
では、次回もお楽しみに!