はい、こんな時期に何やってんでしょうね僕は。
まあ書いたことに後悔はしてませんが……。
果てしなく受験がきつい……!+勉強も………。
まあ、頑張るしかないんですけどね………はぁ……。
さて、愚痴るのはこれほどにして、本編をお楽しみください!
「………なあ、御言。聞いていいか?」
「なんですか、神野先輩」
「……初っ端から詰んでね?」
意気揚々と事務所から出てきて数十分後、琴音と司はとあるビルの前で突っ立っていた。
「詰んでる?なんの話ですか?」
「俺たちはさ、お前が言ってたように八凪さんの勤務してた会社に来たわけだけどさ」
「はい、そうですね。それが何か?」
「……………会社員全員が八凪さん知らんってどういうことよ?」
「ふっ………、私にわかるわけないじゃないですか!(ドヤァ」
「そこドヤ顔するとこじゃないのわかっててやってるよね。さっきの仕返しかなんかなの?」
二人は、目的地に難なくたどり着き、四乃の姉でたる八凪が勤務していたとされる会社の同僚たちであろう人たちも取り調べ、もとい情報収集に付き合ってくれたのだが、全員が口裏を合わせたかのようにこう言ったのだ。
『そんな人は聞いたことも見たこともありません。この会社の人ですか?』と。
「後で全員にまとめて聞いてみたけど、口裏を合わせたってわけでもなさそうだし……。一体全体どういうことだよ……」
「勤務している、というデータは残っているのに……なぜ誰も知らないんでしょうね?」
琴音は唸りながらため息を吐く。琴音が言うように会社内のパソコンのデータには『黒乃八凪』の個人情報だったり経歴だったりは残っていた。だが、誰一人として会社内の人間の記憶の中に黒乃八凪という人物は
いつまでもそこで立っているわけにもいかず、ビルの前を後にし、休憩がてら適当な喫茶店に入る。
司はコーヒーを、琴音はミルクティーを注文して互いにため息を吐く。
「ちょっとばっかし手がかりがあると思ったんだが……、まさか全くなしとは……。こりゃ骨が折れるぞ……」
「でも、全くないというわけじゃないじゃないですか」
「人間の記憶になく、なのにパソコンの中のデータではあるってことか?役に立ちそうにない情報だと俺は思うが……」
「探偵ものの小説とかでもあるじゃないですか。どんな些細なことでも、それが手がかりになりうるって!」
「こりゃれっきとした失踪事件だし、それはあくまでフィクションでありゆることだ。現実ではそんなのないに等しいぞ」
「うぐっ………痛いところを突いてきますね」
「痛いとかそういう問題じゃない気がするが……。まあいいや」
司は話を切ると同時に運ばれてきた飲み物を一口飲んで息を吐く。琴音もそれに習い、運ばれてきたミルクティーを飲む。
琴音は、ふと頭の中に浮かんできた疑問を司にぶつけた。
「話は全く変わるんですけど、どうして相談を解決するだけの相談所がこんな警察沙汰になるかもしれない事案を取り扱ってるんですか?」
その疑問に司は、「ああそのことか」と言ったように苦笑する。
琴音の疑問には大方の人が同意するだろう。
人の悩みを聞き、それを解決するのは相談所の仕事だ。だが、現在行われているのは失踪者を探すといった警察のような仕事である。それをなぜ一介の相談所が取り扱っているのかと疑問に思うのは当然である。
「まあ、そう疑問に思うのは仕方ないんだがなぁ……。こればっかりはどうしようもねえんだよなぁ」
「………答えになってませんよ?」
「んじゃあ、お前がもし悩み事を抱えているとするぞ」
なぜそこで例えを挙げることになるんですか、というツッコミを喉から出そうになるのを押しとどめる。
司は苦笑を消し、真剣な面持ちで語り始める。
「もしも、お前が悩みを抱えていたらどうする?」
「うーん………、他人に相談しますね、きっと」
「その他人というのが警察だったとする。じゃあ、警察が『私たちが力になれそうにありません』と突き放してきたら?」
「それは……………、多分その他の人を頼るかと」
「その他の人に突っ撥ねられたら?」
「それはまた他の人に………ってなんの話ですかこれ?」
「………じゃあ、頼るものが『あなたの悩み事を絶対解決します』っていう謳い文句の相談所しかなくなったら?」
「それはそこをーーーーーあ」
頼るものが徐々になくなっていき、最終的に残ってしまった選択肢が一つしかなくなってしまったなら、人はどうするか。その悩みを自分の中に押しとどめるか、もしくはその選択肢を取るかの二択である。
今回の四乃はまさしくその二択のうちの一つをとったわけでーーー
「まあ、簡単に言えばうちの相談所は誰に相談しても解決されそうにない案件が舞い込んでくるわけ。もしくは、誰も協力してくれなさそうな案件だとかな」
「じゃあ、今回も………」
「詩鶴によりゃ、警察にも親にも相談したそうだぜ。が、それでも俺らの所に来た。その意味は、今なら分かるな?」
司の真剣な眼差しを見つめながら思い出す。
依頼を承諾した時の四乃の涙のわけを。
誰にも受け止めてもらえず、自分の中で燻らせるしかなかった悩みを受け取ってもらえた嬉しさで流したあの涙を。
あの時の四乃に託されたものを再度認識し、琴音は決意を改めた。
(必ず、四乃ちゃんのお姉さんを見つけ出す……絶対に)
その意図を汲み取ったのか、司はコーヒーの残りを煽り、席を立つ。
「ま、そういうことだ。休憩も終わったし、さっさと情報収集行くぞ〜」
「あ、ちょっと待ってください!まだ飲み終わってないのに!」
もう、と頬を膨らませながら憤るが、司は全く気にとめる様子も見せずにレジで会計を済ませて店を出る。琴音は置いていかれまいとカップの中の残りを一気に飲み込み、足早にその背中を追った。
♢ ♦︎ ♢
喫茶店を後にした二人は、そこから徒歩数分のところにあるある花屋に来ていた。
「黒乃……八凪さんですか?」
「ああ。俺たちはその人の情報が知りたい。その親族から教えてもらったんだが、あんたは昔から交流があったそうじゃないか」
「そりゃあ、幼馴染ですからね。知ってはいますし、少し前まで顔も合わせてましたよ」
その花屋の店員は爽やかな笑顔を振りまきつつ淡々と答える。
琴音は、四乃から『お姉ちゃんの会社の近くに幼馴染のお兄ちゃんがいる花屋がある』という話を聞いていたため、ここまで来たのだがーーーー
(この人は覚えてる、んだよねぇ……)
何故か、八凪の同僚は彼女に関する記憶は一切持っていなかった。が、幼馴染と名乗る花屋の男性は記憶があったのだ。それもつい最近まで顔を合わせていたようだった。
「じゃあ、一ヶ月より前、八凪さんに異常とかなかったか?」
「異常、ですか?そうですね………、何か無理をしているようにも思えましたね」
「無理?」
「ええ。ここのところよく眠れてないだとか、悪い夢を見て寝つきが悪いとか、そんな感じに見えました。あとは仕事の量が多すぎる、上司がウザいなどといったことをボヤいていた記憶もあります」
(いや、だからそれは悪口………)
どれだけ上司の印象が悪かったのか、琴音はその見知らぬ上司に同情を覚える。
司は顎に手を当てて考え事をしており、何か思いつけばその都度店員に聞いている。
そんな中、琴音の頭の中にふとした疑問が浮かび上がる。
(そういえば、件の上司さんって会社にいたっけ………?)
琴音は唸りながら会社にいた時の記憶を思い出す。
取り調べと言って話を聞いたのは全員が女性で、八凪と関係のありそうな人たちだけであり、男性社員には話を聞いていない。それに、その女性たちに四乃から聞いた上司のことを聞いてみたのだが、それもまた口を揃えて『知らない』の一点張りだった。
その後、会社のパソコンからデータを漁らせてもらったが、四乃が言うようなイケメンな男性社員はおらず、いい感じに年をとったおじさんしか男性はいなかった。
(でもなぁ……四乃ちゃんが嘘をついてるとは思えないし)
頭を押さえながら唸っていると、ポンと頭の上に何かが乗る。
いつの間にか店員と話を終え、琴音の方に向き直っている司の手だ。
「あんま考え込むなよ。見えるはずのものも見えなくなるからな」
そのままワシャワシャと撫で回す。
司が手を離すと、琴音は恨みがましい視線を司に向ける。
「女性に対してそのスキンシップはどうかと思いますよ」
「俺は我流だからいいんだよ」
「スキンシップの取り方に我流も何もないと思いますけど……」
「さーて、んじゃ次行くぞー!」
司は琴音の視線から逃げるかのように早足で歩いていく。何を言っても無駄だろうなぁ、と諦め、本日何度目になるかわからないため息をつきその背中を追う。
見失わないようにーーーー
『ーーーーー見ィツケタ』
「ーーーーーー!!?」
駆け出した瞬間、感じたこともない悪寒が琴音の背筋に走る。
とっさに後ろを振り向くが、底にあるのは雑踏に埋もれた街並みに数多の雑音が鳴り響いているだけ。
なのにーーーー
(何……さっきの…………)
聞き逃しそうなゆっくりとした声が確かに
(気のせい、だよね……?)
そう自分に思い込ませて司の背を追おうとするが、
『ーーーーーーーーーーーッ!!』
「……っ!?」
今度はつん裂くような女性の甲高い悲鳴とも呼べないような絶叫が当たりにこだまする。
琴音は当たりを見回し、その音の発生源を探す。だが、音の発生源であろう女性も、それに加えて周囲の誰一人として絶叫が聞こえていないかのように
「おい、どうした御言。立ち止まってキョロキョロして。なんかあるのか?」
そして、背後にいる司でさえもそのように
琴音は血相を変えて司の肩を掴む。
「あの……っ、今悲鳴が聞こえて……!」
「……悲鳴?」
「その、こう、耳を突くような甲高い悲鳴が………!」
「…………なんのこと言ってんだお前。さっきから足音だったり車の排気音だったりの喧騒しか聞こえてないぞ。それが悲鳴が聞こえた、だと?んなもん、
聞こえていない。聞こえていないかのように
それでも琴音は司の肩を我も忘れたかのように必死に揺すりながら訴える。
「聞こえたんです!誰かの悲鳴が!あんな声量で聞こえてないのはおかしいですよ!だって……だって…………!」
「お、落ち着けって!分かったからまず落ち着け!」
半狂乱になった琴音の肩に手を置き、押さえると、琴音は顔を青くして俯く。
(こりゃ決定……か)
こうなった原因に司は心当たりがあった。のだが、司ではそれを確信まで至らせることができない。
とりあえず保留、と頭の隅に追いやり、琴音に聞く。
「で、もしお前が悲鳴を聞いていたとして、それはどこから聞こえたんだよ」
「え、と…………」
琴音は顔を青くさせたまま、あるところを向く。そこは、すぐ側にあった路地裏へと続く細い道だった。
♢ ♦︎ ♢
琴音が言った通りに路地裏の入り組んだ道を歩いていた。
数カ所十字路があったのだが、琴音のナビゲートによって迷うことなく琴音が効いたとされる『悲鳴』の発生源へと向かっていた。
「本当にあってんのか?」
司がそう聞くも琴音はこくんと頷くだけだった。
細道に入ってからというもの、琴音は一切喋らずに司にしがみついている。表情はこわばり、顔色は最悪の部類の入るだろう。
(んなに怯えるような悲鳴ってことは、他人はいいとして俺が聞き逃すわけないし……。うーむ、わからん)
歩いている途中に幾度か思考を巡らせるが、なぜ琴音に聞こえて自分に聞こえなかったのか、なぜそれほどの悲鳴が琴音以外の誰の耳にも入っていないのか、と解決しそうにない疑問が尽きなかったので考えることを早々に諦めた司は、琴音の言う通りに歩を進めることだけを考えている。
そうしていると、何回めになるか分からない十字路を琴音の示す通りに右に曲がると、そこは行き止まりだった。
「ここか?」
こくんと琴音は首を縦に振る。だが、司の目の前に広がる光景は何の変哲もないコンクリートの壁で囲まれた行き止まりだ。
そう、
『ーーーーーーーーミィツケタ』
「ーーーーーーーっ!?」
全身の神経を逆なでするような、ゾワッとした気持ち悪い悪寒が司を襲う。その不気味な高い声と共に。
「チッ、異能者かよ……ッ!!」
司はどこから何をされても被害を受けないように琴音を抱きしめ、掌を突き出す。
「"その概念を行使する"!」
突き出した掌に球体状の光が収束し、光を崩しながらあるものの形を模る。
光はやがて収まり、その姿を表す。
その黒く、光を反射し光る歪な形。
拳銃。映画などでよく見る系統のものだ。
司はそれを虚空に向けて構える。
(くそったれ……!何でこんなもんに気づかなかった!つーか、御言はこんな悪寒にされされ続けてたのか!?)
司を襲う悪寒は何秒何分進もうと消える気がしなかった。
司が虚空を睨み、拳銃のグリップに力を入れて戦闘態勢をとること十数分、二人を襲っていた悪寒は突如消え失せた。
「……………ッ!」
「は、ぁ……はぁ………」
司はグリップに入れる力を弱め、琴音は荒い息を吐きながら、地面に力なく崩れ落ちる。
緊張の糸が解れ、琴音は安堵の表情を浮かべるが、司は全く逆で、強張った険しい顔だ。
(あれだけのプレッシャー……、この事件の後ろに何が潜んでんだよ………)
司の一抹の不安は誰にも拭われることなく、司の心の中でくすぶるしかなかった。
♢ ♦︎ ♢
「楽しいな、楽しいな、楽しいなぁ〜♪」
ビルの屋上の一角、そこに愉快に笑う小柄の子供がいた。足をリズムよく交互に上げ下げして鼻歌を口ずさんでいた。
「まさか、こんなに僕と遊んでくれるなんて!僕は幸せ者だなぁ〜」
嬉しそうに、楽しそうに、それでいて愉悦に浸るように。
笑う。
「ねえ、君たちもそう思うでしょ?」
笑顔のまま、子供は振り返る。
そこにあるのは絶望に滲んだ表情の人々。まるで、時が止まったように固まる人々。
「うーん、声のない"人形"っていうのもつまらないなぁ。でも、ああしておかないと"壊れちゃう"もんね。仕方ないよねっ!」
子供は立ち上がり、笑ったままビルを飛び降りる。
「さぁて、次の"玩具"はだぁれかなぁ〜?」
その日、高層ビルの屋上から飛び降りた子供の遺体が発見された。その表情は、涙でグシャグシャになっていた。
その件のビルの屋上に入った警察官によると、その屋上には
いろんな意味で規格外になりそうな予感がしてきた(困惑
予定ではこんな風になることはなかったはずなんだけど………、多少の変化はあることだしいいか……。
それでは、次回もお楽しみに!