「私はずっと独学(ひとり)でしたから……」
孤独な修行の日々。
アインハルトの雌伏の時代!
Memory;02 新暦76年
覇王流の修練を続けて1年。
初等科の3年生になった私は、クラウスの記憶に従い自分の強さを試してみることにした。
相手は――人間ではない。
古代ベルカにも生息し、かつてクラウスも戦ったことがあるという、森に住むハチミツ熊だ。
彼らは極めて知能が高く、並の騎士より素早く動き、連携攻撃を行い、個体によっては古流武術を使いこなすという。
「一槍、お願いいたします!」
正面から迫るハチくま。緊張する。2頭が連携して鋭い爪の一撃を繰り出す。落ち着け。覇王(わたし)は負けない。
「ハアァァ――」
右のハチくまの打撃を受け流すと、左のハチくまの懐に潜りこむ。低い身長を活かす。下方からハチくまの顎を掌打で打ち抜いた。
「たぁぁ!」
続けて肘。蹴り。その反動で別のハチくまのもとへ。腹部と胸部に2発。拳を叩きつける。
ハチくまの巨体が崩れ落ちた。
「やれる……私は……覇王は、強……ぷろぉぉ――――ッ!?」
これまでより一回りも二回りも大きな、母親ハチくまが現れて、私はあっさりKOされた。
手強い。
今の私ではとても敵わない。
まずは、この母親ハチくまを目標に、トレーニングを続けようと決意した。
Memory;03 新暦77年
4年生になった私は、大人の姿になる武装形態を身に着けた。
この武装形態というのは、身体強化魔法であり、変身魔法の一種である。
これまでは騎士甲冑――バリアジャケットのみだったのだけど、4年生になったというのに、わたしの身長は期待したほど伸びず、小柄な体格なままだったからだ。
もちろん、変身するための魔力を、もっと一撃の破壊力に回す――という考え方もある。
しかし、近接格闘という覇王流のスタイルは、拳が届かなければ、相手にダメージを与えられない。
巨大な――手足も長い――母親ハチくまと正面から戦うためには、もっと長いリーチが必要だと判断したのだ。
それともう1つ、
「クラウスの記憶にある肉体と、私の身体のズレが大きすぎる……」
クラウスの記憶なら届く距離も、私ではまったく届かないのだ。
この差を埋めるためにも、武装形態は重要なのである。
ただ……、
「やっと変身が安定した……」
デバイスを持たない私は、魔力コントロールが上手くいかず、また、大人になった自分のイメージが湧かず、修得に時間がかかってしまった。
特にイメージの方が酷かったのだけど、クラウスの記憶を頼りに、どうにか大人のボディを手に入れることができた。
これで、より覇王の身体資質を活かすことができる。
「再戦、よろしくお願いいたします!」
こうして、1年前は手も足も出なかった母親のハチミツ熊に、私は勝利する。
「やった! 強くはなっている……強くはなっているけど……」
私の強さは、人間相手ではどの程度なのだろう?
今の私に、それを確かめる術はない。
『マリアージュ事件』を機に、アインハルトの運命が大きく動き出す!
次回『新暦78年のアインハルトさん!』
で、リリカルマジカルがんばります!