アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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『全5話 - 第4話』

『碧銀(アインハルト)の物語』と『鮮烈(ヴィヴィオ)の物語』を繋ぐ、決戦前夜!


新暦79年~現在のアインハルトさん!

Memory;05 新暦79年

 

 

 

       1

 

 

 3月の中頃。

 

 小学校の卒業式を終えた私は、すぐにミッドチルダへ向かった。

 昔から、覇王の記憶継承者は、年若くして家を出る人が多かったという。

 

「今なら気持ちがわかる……」

 

 強くならなくちゃ――という焦りが、日に日に増していくのだ。

 

「とにかく修行をしないと……」

 

 一人暮らしのマンションの中には、すでに真新しい大型のトレーニング器具が運びこまれている。

 全て実家が手配してくれたものだ。

 ありがたい。

 自分の荷物は着替えと筆記用具くらい。

 

「午前中は引っ越しの片づけをして、午後から早速街頭試合を申しこみに行こう!」

 

 1日とて無駄にはしたくない。

 

 

『カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト――覇王を名乗らせて頂いています』

 

 

 こうして、わたしは次々に試合を重ねていった。

 

 日に2戦、3戦とこなす日もあった。

 

 覇王の体で相手を一方的に叩きのめす。

 

「これで、本当に、守るべきものを守れる強さが手に入るのかな……?」

 

 気持ちだけが焦り、空回りしていく……。

 

 そしてまた、次の対戦相手を選ぶ。

 

 まるで辻斬りのよう。

 

 そんな毎日を続けていた、ある日。

 

 

「これは……」

 

 

 本当に偶然だった。

 

「ストライクアーツ、有段者……ノーヴェ・ナカジマ……?」

 

 赤いショートヘアの女性。救助隊としても活躍しているらしい。公式試合への参加は少ないけれど、

 

「この人は間違いなく強い」

 

 映像を見ればわかる。

 私の拳を試すのに相応しい相手。

 それに、

 

「この防護服……どこかで見たような……。そうだ! 確か『マリアージュ事件』のとき……」

 

 ひょっとしたら、冥王イクスヴェリアの行方を知っているかもしれない。

 

「ううん、ちょっと待って。この姿……もっと昔に見たことがあるような……」

 

 クラウスの記憶ではない。

 私の――アインハルトの記憶。

 

 

「あ……あ……そうだ、この人だ……」

 

 

 4年前。『JS事件』。

 私が覇王の記憶を継承するきっかけになったニュース映像。あのとき映ったテロリストの中にいた。

 赤いショートヘアに青いバリアジャケット。アームドデバイスにローラーブーツ。

 彼女だ。

 間違いない。

 

「ノーヴェ・ナカジマ……この人なら……」

 

 オリヴィエのクローンの行方についても、知っているかもしれない。

 

 全身が震える。

 

 

「待っていてください……ノーヴェ・ナカジマ。私が、必ずあなたを見つけてみせますから……」

 

 

 空間ディスプレーに映る赤髪の女性の顔に、拳を打ちつけた。

 

 

       2

 

 

 4月。

 St.ヒルデ魔法学院の入学式を迎えた。

 

 昨日が始業式で、クラス分けの発表があったらしい。しかし、中等科1年の私にとっては、入学式の今日が初登校となる。

 

 だから、大きな荷物は必要ないのだけど……、

 

「着替えを持っていかないと……」

 

 学校が始まったので、トレーニングに割く時間が減ってしまう。

 

「1日も無駄にしたくないから……」

 

 入学式の終わった午後から、ノーヴェ・ナカジマが現れそうな場所を回ることにする。

 

「そうだ。靴も持っていかないと……」

 

 指定靴を汚したくない。

 

 実を言うと、私は自分で洋服や下着類を買ったことがない。

 個人的には、トレーニングしやすい服装であればなんでもいいのだけど、実家から送られてくるのは可愛らしい格好が多い。

 

「……このワンピースとサンダルにしよう」

 

 入学式へ向かう。

 

『ごきげんよう』

 

『ごきげんよう』

 

 私が通っていた教会系の学校と、あいさつは変わらない。雰囲気も似たようなものだ。安心した。

 

「これなら、あまり目立つことなく通えそうだ……」

 

 校門を通りしばらくすると、初等科・中等科の校舎が見えてくる。

 ふと、聖王像のそばに視線を向けると、

 

『じゃ、午後からね。中央市街地の駅で――』

 

 3人組の初等科の生徒が、楽しそうにはしゃいでいる。

 入学式が午前中で終わるため、午後から待ち合わせて遊びに出かけるのだろう。

 

『いえ――い♪』

 

 騒がしいので、周囲からはクスクス笑われているけれど、そこには温かい空気が流れていた。

 

「ああ……」

 

 平和な日常だと思った。

 

 私にはない世界。

 

 私もあんな世界に行けたら……。

 

「ううん――」

 

 頭を振る。

 

「私はあんなふうに笑ってはいけないんだ……」

 

 楽しんではいけない。

 

 私には、やるべきことがある。

 

 

「これまでの記憶継承者たち数百年分の後悔を消すためにも、覇王クラウス・G・S・イングヴァルトの悲願を果たしてみせる!」

 

 

 入学式のあと、教室でオリエンテーションを終えると、私は一目散に学校を出た。

 

 部活動の勧誘には目もくれない。

 

 駅のトイレで私服に着替えると、制服や鞄をコインロッカーに預ける。

 

「彼女はどこにいるんだろう……?」

 

 スポーツコートなど、ストライクアーツの練習ができる施設を見て回る。しかし、ノーヴェ・ナカジマの姿は見つからなかった。

 

「このまま闇雲に捜していても……」

 

 ダメ元で、ストライクアーツの練習をしている人に尋ねてみると、次第に彼女の居場所がわかってきた。この界隈では有名人らしい。

 

「一般人に混じって、本格的な組み手をするなんて……」

 

 それは目立つだろう。

 修行相手がいるというのも、うらやましい。

 

「ここ、ですか……」

 

 本日、彼女がトレーニングしているという、中央第4区のストライクアーツ練習場に着いたとき、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

 

 夜空に浮かぶ丸い月が、白く輝いている。

 

「外で待っていよう……」

 

 どうせ、人目につく場所で、本気の戦いはできない。私の確かめたい強さは、表舞台にはないのだ。

 

 練習場の外で、じっとノーヴェ・ナカジマが出てくるのを待つ。

 

「あ……」

 

 来た――

 

 

『悪ィ、チビたち送ってってやってくれるか?』

 

『あ、了解っス。なんかご用事?』

 

『いや、救助隊。装備調整だって』

 

 

 一緒にいる人間なんて目に入らない。

 

 ノーヴェ・ナカジマは同行者たちと別れ、1人で夜道を歩き出す。

 

 ――チャンスだ!

 

 そっとあとをつける。

 

 こういうとき、小柄な自分の体は便利だ。

 

 気づかれずに行動できる。

 

 そして、救助隊へ向かうという彼女は、人気のない湾岸沿いの通りに入った。

 

 ――今しかない!

 

 

「ああ……」

 

 

 ついに、ついに、このときが来た!

 

 聖王オリヴィエのクローンと、冥府の炎王イクスヴェリア。2人に関係する人物であり、本物の実力者でもある。

 

 そんな彼女と拳を交える機会。

 

 

「武装形態――」

 

 

 守るべきものを守れる強さを得るため。

 

 古きベルカのどの王よりも、覇王のこの身が強くあることを証明するため。

 

 大人の姿に変身した私は、思わず街灯に飛び乗っていた。

 

 前を行く赤髪の女性に、背後から声をかける。

 

 さあ、勝負だ!

 

 

 

「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします。

 貴方にいくつか伺いたいことと、確かめさせて頂きたいことが――」

 

 

 

Memory;06 新暦80年 現在

 

 

 

「――と、いう設定を考えてみました」

 

 

「「「「設定だったのぉぉ――っ!?」」」」

 

 

 ざわざわ。

 

 クリスマスパーティーで高町家に集まったリオコロを始めとするみんなが、驚きの表情でアインハルトさんを見つめた。

 

「最近、やたらと熱心にノートを取っていると思ったら~」

 

 これだったか! と、クラス委員のユミナさんが頭を抱えている。

 まあ、アインハルトさん、テストの成績はいいから問題ないだろうけど。

 

「特に、最初の新暦75年の辺りであれば、劇場版第5弾――『魔法少女リリカルなのは The MOVIE StrikerS』にも使えるはず。

 そんなわけでヴィヴィオさんのお母様、こちらの原稿をお納めください」

 

 

「「「「ちゃっかり自分だけ次の映画に出ようとしているぅぅ――っ!?」」」」」

 

 

「それと、新暦76年以降ですが、本編上映後の週替わり映像にでも使っていただければと」

 

 

「「「「そこまで出る気かぁぁ――っ!?」」」」

 

 

 リオがクリスマスケーキにフォークを刺したまま悔しがる。

 

 

「くぅぅ~、あたしそのころまだルーフェンだ!

 でも、ゆりかごが起動したあと、他の管理世界にも報道が流れるシーンとかあれば、あたしも出れるよね!?」

 

 

 それは……確かにアリかもしんない。

 コロナがわずかに考える目をして、

 

 

「ヴィヴィオ。私、『StrikerS』の最終決戦でティアナさんを手伝ったとか、どーかな?

 ほら、1人でナンバーズ3人撃破とか、イザークもびっくりなくらい金星あげすぎだし……たまたま廃棄ビルでゴーレム創成の練習をしていた私が、結界に巻きこまれて、ゴーレムを囮にしてティアナさんに協力するとか……」

 

 

 イザークって……アレか、SEEDか!

 あのミウラさんまで、おずおずと手を挙げる。

 

 

「ぼ、ボクは六課に出前とかでよければ……。ちょっと遠いですが、いいですよね?

 はやてさんの口から『最近、南部の山ん中にあるおいしいレストランに行ってへんなー』とか言ってもらえればそれだけで……」

 

 

 さり気なく実家アピール!? 宣伝か!

 ミニスカサンタのユミナさんも、負けじと声を張り上げる。

 

 

「だったら私は、逃げ遅れた民間人役で。

 スバルさんとギンガさんの一騎打ちが激しさを増す中、廃棄都市区画から市街地に入ったところで巻きこまれるんだよ。

 そして、2人の戦うシーンを目撃して『わあ~』って感じで憧れの眼差しを向けるの。

 その後、彼女は格闘技ファンになりましたとさ」

 

 

 それはそれでアリそうで困る。

 

 

「いえ、みなさん。ここはやはり、聖王と最も因縁のある私が代表で――」

 

 

 アインハルトさんも譲らない。

 流石のなのはママも、どうしたものかと苦笑している。

 しょうがない。

 

「もう~、みんな、なのはママが困ってるでしょ。

 あんまりワガママ言わないのー。

 わたしたちは『ViVid』でいっぱい出番があるんだから『StrikerS』は我慢しようねー」

 

 

「「「「――って、ヴィヴィオは『StrikerS』だと準主役の、それもピーチ姫&クッパの、一人二役だよねぇぇ――――っ!?」」」」

 

 

「……ふっ」

 

 

「「「「なに、その勝ち誇ったよーな、ドヤ顔はぁぁ――っ!?」」」」

 

 

 みなさんは当時――新暦75年ごろ、何をしていましたか?

 

 

 




いよいよ最終日!

『新暦75年のアインハルトさん!』 ~ 『新暦79年~現在のアインハルトさん!』
までの、
『どうしてこうなった!?』
を、ヴィヴィオとアインハルトが考察を交えて楽しく解説!!


次回『新暦75年~現在のアインハルトさん解説!』

で、リリカルマジカルがんばります!
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