アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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本局第四技術部主任マリエル・アテンザ――通称マリーさんには謎が多い。
なのはたちに何かあったときは、
「こんなこともあろうかと~」
と、真田さんばりに新装備などで支援。
さらには、戦闘機人の第一人者という……。

ちょっと、優秀すぎるような……??

というわけで、今回はマリーさんの謎に迫っていきたいと思います。



マリーさんの秘密

 覇王イングヴァルトの記憶継承者であるアインハルトさんは、

『クラウスの記憶は、何もかも消えてしまいました』

 と言っていたけれど、人によっては再び記憶が蘇ることもあるらしい。

 

 

 というわけで、本日はアインハルトさんの〝定期検診〟にご同行して、首都クラナガンにある『先端技術医療センター』にやってきました。

 

 検査してくれる方はご存知、本局第四技術部主任――マリエル・アテンザ技術官。

 アインハルトさんより濃いエバー・グリーンの髪に、童顔、眼鏡。ついでに白衣。

 通称〝マリーさん〟である。

 

 本来は医局の方がやるべき検査なのだけど、記憶継承――というのは特殊で、リインⅡさんの中に、初代リインフォースさんの記憶が残っていることを知るマリーさんが、オカルトと片づけず、しっかり検査をしてくれることになった。

 ほんと、六課関係者はみんな、幼いころからマリーさんに、お世話になりっぱなしである。

 

 そんなわけで、ガラスで仕切られたモニタールームから、わたしとマリーさんは、検査台に横になったアインハルトさんを眺めている。

 

「お~っ、アインハルトさんの真っ裸、真っ裸……」

 

「ヴィヴィオちゃん、そんなにガン見しちゃダメだよ~」

 

「あはは……」

 

 これから先、口にすることは、アインハルトさんの裸でも見てテンションを上げないと、素面ではとても話せない内容なのだ。

 わたしは、あくまでアインハルトさんの凹凸の少ないボディを眺める振りをしつつ、

 

「マリーさん『GOD』――『砕け得ぬ闇事件』については、どれくらい覚えてますか?」

 

「え? いきなりだねえ……」

 

 ギアーズに関しては、記憶封鎖がかけられているため、劇場版ではアミタさん&キリエさんが、

『機械 → 人』

 に変更されているのだけど……。

 

「あの事件については、なんとなく……かなあ?」

 

 ちなみに『GOD』のエンディングでは、こんなやり取りがあった――

 

 

キリエ「封鎖後は、わたしやお姉ちゃんは、どこか、ええと……管理外世界? から来た人って事になると思う」

アミタ「ヴィヴィオさん達も、過去の記憶は封鎖してしまう方が良いと思います……この先の未来に影響を及ぼしかねませんし」

ヴィヴィオ「あ、えーと……お願いします」

アインハルト「はい」

トーマ「俺も、2人に同意」

マリー「アミタ達の治療データも、破棄しないといけませんよねえ」

クロノ「まあ、仕方ない。持っていてもどうせロストロギア扱いさ。書類作業の手間が増えるだけだ」

マリー「ですよね……じゃあやっぱり、おとなしく破棄して、記憶封鎖を受けます」

 

 

 わたしはチラリと技官を見つめた。

 

「――マリーさん、あのあと、本当に治療データを破棄しましたか?」

 

「え?」

 

「ギアーズの治療データ。未来の技術。何かに流用したりしませんでしたか?」

 

「ええええ!? 破棄した、破棄したって! どうして急にそんなこと」

 

 焦りつつも、コンソールの操作は正確だ。

 

「『StrikerS』の話なんですが……マリーさん、ここでスバルさんやギンガさんの定期検診を行っていましたよね?」

 

「あー、あったね、そんなこと」

 

「さらに23話の回想シーンでは、クイントさん立ち会いのもと、今のアインハルトさんみたいに、全裸のスバルさん(4歳)とギンガさん(6歳)を、検査してましたよね?」

 

「うん。してたけど?」

 

「それ以降、マリーさんはずっとスバルさん、ギンガさんの定期検診を担当していました。

 つまり――」

 

 

●新暦64年(マリー 15歳)

・スバル(4)&ギンガ(6)の検査を通じて、クイント・ナカジマと懇意になる。

・クイントのデバイス――リボルバーナックルに使われていたカートリッジシステムを知る?

 

●新暦65年(マリー 16歳)

・『A's』にて、レイジングハートとバルディッシュに、近代ベルカ式魔法の研究用に開発されていたカートリッジシステムを組みこむ。

・安全性を高めるため、個人的に所有していたクイントの運用データが使われたのではないか?

 

●新暦66年(マリー 17歳)

・『GOD』にて、マリーさんが、機械の体をもつアミタさんをあっさり修復できた理由の1つ――戦闘機人の検査・治療データを持っていたから?

・ギアーズの治療データを破棄した?

 

・クイント殉職。

 

●新暦71年(マリー 21歳)

・空港火災。クイントから受け継がれたカートリッジシステムのおかげもあり、エースに成長した高町なのは、クイントの娘――スバル(11)を救出する。

 

●新暦75年(マリー 26歳)

・戦闘機人研究の第一人者と呼ばれるようになる。

・スカリエッティの残した技術を研究する役目を受ける。

 

 

「――こうして考えると、なのはママとスバルさんは、昔からご縁があったんだなって。

 クイントさんは、亡くなったあとも、自分の子供たちを守ったんじゃないかって……」

 

「私も、そういうオカルトなら、信じてもいいかなあ」

 

「ただ……マリーさん。色々と、万能すぎじゃないでしょうか?

 困ったときはマリーさん――みたいなところもあるんですが、宇宙戦艦ヤマトの真田さんもビックリですよ?」

 

 こんなこともあろうかと~。

 

「えーっと、それって褒められてるのかな? それとも貶されてる?」

 

「前々から思っていたんですが、マリーさん、六課襲撃時はどこにいたんですか? あとでピンピンして出てきましたよね??」

 

「いやいや、ヴィヴィオちゃんもあのとき一緒にいたでしょ。私、なのはちゃんやスバルたち先発隊と一緒にヘリに乗って――」

 

「みんなは〝公開意見陳述会〟の警備のためでしたけど、マリーさん、

『私は別件。中央方面に用事があってね』

 って……。

 あの大注目だった公開意見陳述会と同じ日に、同じ中央での別件……」

 

「いやいや。私、基本、本局だから。別に六課専属ってわけじゃないし……」

 

「そもそも、本局と地上って仲が悪いじゃないですか。なのに、スバルさんとギンガさんの検査を、本局のマリーさんが受け持つのは……おかしくないですか?」

 

「それは……ほら、戦闘機人とはいえ、スバルもギンガも幼い女の子だったでしょ? 当時、わたしもまだ管理局に入ったばかりの15歳だったから、なるべく年齢が近い女性の技術官――という配慮で選ばれたんじゃないかなって……」

 

「ひょっとしてマリーさん、タイプゼロの情報、スカリエッティに流してたとか……?」

 

「してないよ!?

 確かに、2人のデータは取ってたから、最高評議会やレジアス中将経由で、スカリエッティの手に渡っていた可能性はあるけど……」

 

「前に、『Force』のラスボス――ハーディス・ヴァンデインが、スカリエッティのクローンじゃないか?

 という考察をしたことがあったんですが……」

 

「ま、まさか、ヴィヴィオちゃん……私まで疑ってるのぉぉ!?」

 

「そのとき、ハーディスさんの年齢を、30~35歳くらいって推測したんですが、マリーさんも『Force』だと、ほぼ同い年――31歳ですよね?」

 

「いやいやいや……」

 

「ちなみに、スカリエッティの生命操作技術が、戦闘機人を通じて表舞台に現れたのが『StrikerS』の25年前。

『Force』なら――30年前。

 つまり、マリーさんやハーさんが生まれた前後から、スカリエッティの動きが活発化しているんですよ!」

 

「え~、そんなこと言われても~」

 

「別に、ハーさんやマリーさんが、スカリエッティのクローンだとは言いません。

 ただ、スカさんを生み出した最高評議会辺りが、万が一スカリエッティを失った、反乱を起こしたときのために、代わりを用意しておいた――と考えても何ら不思議ではありません。

 実際『StrikerS』では、スカリエッティがゆりかごを起動したあとも、

『ジェイルは貴重な個体だ。消去するにはまだ惜しい』

 と、最高評議会が、いつでもスカリエッティを始末できることを示唆しています。

 だからこそ、スカリエッティは先手を打って生命ポッドを破壊したのでしょうが……。

 ただ、最高評議会も、スカリエッティの性格が偏っていた、扱いづらいことは知っていた。だからこそ、彼の予備を造ろうと考えたとき、そのままクローンを生み出すことはせず、あくまでスカリエッティの天才的な遺伝子データを使った、デザイナーベイビーを造ったとしたら、どうでしょう?」

 

「ないから! ないからぁぁ!?」

 

 

「スーパーコーディネーター、マリエル・アテンザ……」

 

 

「私パイロット適性ないよぉぉ!?」

 

「――と、まあ、冗談はさておき」

 

「あ、なんだ、冗談だったんだぁ……」

 

 その声音は動揺しているものの、アインハルトさんの検査を続ける手は、平然と動き続けている。

 

「ね、マリーさん、知ってますか?

 ネットで、スカリエッティについて書かれた説明文や、SSを読むと、ほとんどの作品で〝科学者〟として扱われていますが、公式の、

 

『魔法少女リリカルなのはStrikerS クロニクル』

 

 では、

 

『違法技術者』

 

 また、

 

『StrikerS サウンドステージX』

 

 では、

 

『天才技術者』

 

 と、記載されています。

 そもそも、16話でスカリエッティ本人が、

 

『研究者として、技術者として、心が沸き立つじゃないか。そうだろ、ウーノ?』

 

って言ってるんです。

 ――そう。スカリエッティは科学者ではなく、マリーさんと同じ〝技術者〟だったんですよぉぉ!」

 

「え、え~」

 

「だからこそ、『StrikerS』のあと、スカリエッティの残した技術を研究する役目を受けたんですよね?」

 

「あー、うん……」

 

「ほら、眼鏡を外して、目を細めてください……」

 

 わたしはマリーさんに近づくと、彼女の眼鏡をそっと外した。

 

「えっと……」

 

「――そう、その顔。まるで、スカリエッティの因子を色濃く受け継いだクアットロが、眼鏡を外して本性を表したときのよう……」

 

「あう……眼鏡、眼鏡……」

 

「いえ、そーいう古典的ギャグは別にいいんで」

 

「でもね、ヴィヴィオちゃん。見た目がクアットロに似てるっていうなら、私より、眼鏡を外して悪巧みしてるときのシャーリーの方が似てない?」

 

 あー。

 

「……確かに」

 

 言われてみると、シャーリーさんの方が、クアットロと身長も近いし、性格やら、才能面でも似てるような気がする。

 

「――って、いやいやいや、わたしは騙されませんよっ!?

『StrikerS 19話』で、スカリエッティとウーノがこんな会話を交わしています。

 

 

ウーノ(通信)「失敗が目立つ人造魔導師と比較して、私たち戦闘機人はトラブルが少ないですね」

スカリエッティ「もとは最高評議会の主導で、管理局が実用寸前まではこぎつけていた技術だからねェ……それを私がずいぶんと時間をかけて改良したんだ」

ウーノ(通信)「良質なはずです」

 

 

 ――そう。ナンバーズは、旧式のタイプゼロと違い、あのロストロギア級のオーバーテクノロジーをもつスカリエッティが、

『ずいぶんと時間をかけて改良した』

 と断言するほど、遥かに高い性能を誇っていたはずなんです。

 ところがどっこい、旧式のスバルさんは、そんな高性能なナンバーズを単騎で圧倒します。

 もちろん、厳しい訓練の成果や、デバイスの頑張り、対戦闘機人に有効なIS――振動破砕もありましたが、それにしたって、あのスカリエッティが改良した最新の戦闘機人が、旧式の戦闘機人に負けるはずがない。

 いくらタイプゼロが、成長する戦闘機人であったとしても、一般的な人間同様、旧式のままでは性能に限界がある。

 ガンダムで例えるなら、ゲルググとリゲルグくらい違いがある!」

 

「それ、わかりにくいかと……」

 

「じゃ、ザクとザクⅢ」

 

「いや、それも……」

 

「しょうがないですね。いくら初代ガンダムが優秀なMSでも、ZやZZを圧倒できるかというと、流石にう~んとなるじゃないですか?」

 

「それは、まあ……」

 

「つまりです。

『GOD』で、マリーさんがアミタさんを修理できたということは、ギアーズの機械の体は、全てがロストロギア扱いというわけではなく、現行技術で十分に対応可能な箇所も多かったということです。

 つまり、全ての治療データを破棄する必要はなかった」

 

「えっと……」

 

「記憶封鎖を受けたところで、現行技術の延長線上ですから、自分で思いついた――と錯覚してもおかしくない。

 ギアーズは未来の技術ですから、実際、遅かれ早かれ、マリーさんが到達していた技術ではあったのでしょう。

 そして、スバルさんとギンガさんを、ギアーズの治療データをもとに改良した。

 もちろん、悪意などではなく、

『2人があまり定期検診を受けなくていいように』

 とか、

『2人がより普通の女の子として暮らせるように』

 など、クイントさんが望んでいたような善意の方向での改良でしょう。

 ところが、未来の技術をもとに改良した結果、旧式のタイプゼロは、最新のナンバーズに匹敵する性能を得ていた。

 そこに〝成長する〟というタイプゼロの特性が加わったとしたら……?」

 

「ナンバーズにも勝てる?」

 

「――はい。

 世間でどこまで評価されているのかはわかりませんが、スカリエッティが魔改造したギンガさんをあっさり直したことからも、マリーさん自身が、スカリエッティと同等、あるいはそれ以上の天才技術者に成長していたと考えるべきで――」

 

「いやあ~、天才だなんて~」

 

 顔を赤く染めたマリーさんが「えへへ~」と照れまくっている。

 

 

 ――めちゃくちゃうれしそうだ!

 

 

 あまりにご機嫌なので、わたしが「う~ん」と悩んでいると、

 

「どうなさいましたか、ヴィヴィオさん?」

 

 いつの間にか検査を終え、いつもの制服を着た――しまった、着替えシーンを見逃した! ――アインハルトさんが、ドアを開けてモニタールームに戻ってきた。

 

「あー、いえ……」

 

 わたしは、未だにヘラヘラしているマリーさんの顔を眺めつつ、

 

「コレはコレでアリかなって」

 

 仮に、マリーさんが本当にデザイナーベイビーのような存在だったとしても、

 

「出生なんて言い出したら、わたしもですしねー」

 

「はあ……?」

 

 アインハルトさんが可愛らしく小首を傾げた。

 

 

 




と、まあ、色々書いたのですが、あくまで『GOD』の世界線なので。
ただ、他の世界でも、劇場版のように何らかの形で関わっていたらしいですから、成長型というだけでなく、スカさんがスルーした技術でスバル&ギンガの基本スペックが上がっていた――と考えるとしっくりくるのですが、どうでしょう?

マリーさんサイドからのリリカルなのはというのは、調べてみると意外に面白かったです。
『A's』の時代、いまだ正式採用されていなかったカートリッジシステム(劇場版ではハイブリッドカートリッジシステム)。
あの当時、まだ生存していたクイントさん。親交のあったマリーさん。
ひょっとしたら、レイジングハートとバルディッシュを改造するときに相談していたかもしれません。ちょっとした助言をもらったりとか。
そして、6年後、あの空港火災のとき、なのはとフェイトが、ギンガ&スバルを救出したと聞いて、マリーさんは亡くなったクイントさんを思い出し、祈ったのかな、なんて考えると、ちょっとうるっときてしまいます。

それはそれとして、スカさん、どうしてギンガの腕、ドリルみたいに回転できるようにしたんだろう……(笑)。
設定資料集のイメージ画もドリルだし……。
スカさんもドリルにロマンでも感じたのか、ただの趣味だったのか……。一度くらいつけてみたかったのかなあ……。
というか、あのドリル、残しとけばよかったのに。
スバル「ギン姉を怒らせるとドリルが出る」
とか(笑)。
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