エイプリルフールから始まる新シリーズ、ついに開幕!!
第1話 はじまりはサラちゃんになの
〝第1話〟ってところがすでに怪しいなあ……と思いつつ、本日は昨年――2018年12月15日に発売された『HGBD モビルドールサラ』――アニメ『ガンダムビルドダイバーズ』のヒロイン・サラちゃんのガンプラを作るため、マイスターのプレシアお婆ちゃんちへ。
「毎回言っていると思うのだけど、ゴーレムマイスターではあってもガンプラマイスターではないのよ?」
「それってアレでしょ。エロマンガ先生が『そんな名前の人知らないっ!』って言うのと同じフリ」
「違うわよ!? だいたい、どうしてうちで作るのよ。あなたのお友達のコロナって子のうちで作ればいいじゃない」
「だって、コロナとガンプラバトルで対戦するのに、そのコロナと一緒に作ったら手の内を明かすようでマズいでしょ? ストライクアーツだって同門対決のときは別々に練習するし――」
『アインハルトさんVSコロナ』戦みたいなものだ。
「……それは、まあ、そうね。でも対戦するのにモビルドールサラって、そのチョイスはいかがなものかしら?」
……。
そう言われると、かわいいは正義だけで選んじゃったけど、戦闘には向かない気がする……というかしてきた。
せめて、最近発売したばかりの対魔忍……じゃなかったアヤメさんなら、少しは戦えたかもしれないけど。
「サラと同時期に発売された商品で言えば、ビルドダイバーズのチャンピオン(クジョウ・キョウヤ)が使っていた最終戦仕様の白い『ガンダムAGEIIマグナムSVver.』があったじゃない。価格帯も同じくらいだったでしょ?」
確かに、正直、アレはちょっとカッコイイなと思っていた。
アニメでも超強かったし……。
「それはー、そうなんだけどぉ……」
わたしの目が泳ぐ。
すると、わたしの隣で興味深そうにガンプラの取扱説明書を眺めていたアリシアさんが「でもママー」と声を発した。
「このサラって女の子のボディ、説明書の解説によると、
腕部……見た目は華奢だがコーイチ渾身の設計によって、ユニコーンガンダムのビームマグナムを軽々と連射できる程。
スカート……噂では、∀ガンダムが使用したあの月光蝶が使えるらしい。
みたいなことになってるけど?」
「何よそれ、最終兵器?」
お盆に、お茶の入った湯のみ2つと、オレンジジュースの入ったグラスを2つ載せて運んできたリニスさんが、飲み物を配りながら言う。
「その白いスカート部分、キュベレイっぽいですし、ファンネルもしこめそうですしね。見た目こそ愛らしいですが、
『ぼくのかんがえたさいきょうのモビルスーツ』
みたいなノリだったのかもしれませんね」
やるな、あの眼鏡!(コーイチ氏)
このモビルドールサラという機体は、アニメ作中において、コーイチという眼鏡がフルスクラッチしたガンプラなのだ。
つまり、彼の趣味が120パーセント反映されたガンプラだとも言えよう。
おっと、ちなみに言い忘れていましたが、現在室内中央にはこたつ。ええ、かつてフェイトママ(無印のころ)が、プレシアお婆ちゃんのために購入したという日本製のこたつが置かれており、その四方から、
①白衣――に見せかけた白いどてらを着こんだプレシアお婆ちゃん。
②猫はこたつで――らしく、やっぱりふわもこなどてらを着こんだリニスさん(どことなくウマ娘のスペシャルウィークっぽく見えるのは気のせいか)。
③子供――ではないけど、風の子なのか、復活後は薄着でも元気なアリシアさん(まあ、魔力量が少ないだけで、身体はフェイトママと同スペック……どころかオリジナル。そりゃ元気だよね)。
④最後に、コートを脱いで普通に部屋着のわたし。
が、それぞれこたつに足を突っこんでいる状況。
こたつの中にはリニス2世がいるはずなのだけど、姿は見えない。というか出てくる気配が微塵も感じられない。
そのこたつの上には恒例のみかん――と思いきや、どこから仕入れてきたのか大玉なのに手でむける〝はるみみかん〟――略してはみちゃん(異議あり!)と、サラちゃんの箱が置かれている。
「パッケージのイラストはかわいいけど、中身はちゃんとプラモデルしてるんだね」
アリシアさんの言う通り、パーツ数は意外に多い。
もっと簡単にパチ組みして「はい完成!」みたいな商品かと思っていた。
ニッパー片手に組み立て開始。
「……って、いきなり最初のボディ部分。アインハルトさんみたいに薄い胸の辺りが、上手くはまらないっ!?」
早速、金属ヤスリのお世話になる。
そのまま下半身へ。
紫の単色。
「むぅ~、お尻の形にはこだわってるのに、パンツにこだわらないなんて、コーイチ氏にはガッカリだよっ!?」
「それをコーイチ氏に求めるのはー」
「わたしやアインハルトさん他――ViVid勢は、いつ見られてもいいように、常にこだわりを持ってのぞんでいるというのにっ!」
「それ、あなたたち……というより、藤真先生のこだわりなんじゃ……。
というか、そもそもサラって子、常に紫色のタイツを履いてるから、下半身もシンプルな作りになってるんじゃない?」
「……あー」
そういえばそうだった!
アニメ終了から結構経っているので、すっかり忘れていました。
とはいえ、
「お尻から太股のむっちりしたラインには、コーイチ氏渾身のこだわりが感じられるでござる」
「ヴィヴィオ……あなた、いつからござるキャラになったのよ。というか、そのこだわりはどうなのかしら?」
とかなんとか言っている間に、フィギュアの肝ともいうべき頭部――顔部分の制作へ。
とはいっても、細かく自分で色を塗るのでなければ、目の部分に付属のシールを貼るだけなので、これといって難しいことはない。
「このシール、目ばっかりだね~」
はい、とアリシアさんが手渡してくれたステッカーは……怖っ!
三種類。予備を含めた『6つ×両目=12個の瞳』が並んでいる。
「こんなガンプラ初めてかも……」
どことなく懐かしのメダロットを彷彿とさせる頭部の組み立てを終え、手足パーツに突入すると、
「なんだろう……ガンプラの手足を作ってる感じがしない……?」
正しい表現かはわからないけど、義手や義足を組み立てている感じ。
「ガッチリしたモビルスーツではなく、サラ――細い人形の手足だからでしょうね」
「あー、そっか~。なんというか、こんなサラちゃんをフルスクラッチしたコーイチ氏、天才すぎる!」
「でもさー、ヴィヴィオ。コーイチって人、これ、どうやって作ったのかな?」
「コツコツ、家で自作したか、アニメ中に登場したAGEシステムみたいなのを使ったんだと思うけど」
「そういうことじゃなくてさ……サイズ? 仮想電子空間内にのみ存在していたサラが、リアルでも違和感がないということは、現実の肉体――ガンプラで作られた身体の、背丈なんかのボディサイズがぴったりだったってことでしょ?」
「あー」
データとしての存在ではあったけれど、そのデータに身長・体重といった情報は含まれていないだろう。電子の妖精みたいな存在だったからだ。
であれば、サラの現実で宿る身体を作るため、いつか、どこかで――GBN内で――採寸したはず。
それも細かく。
「コーイチって人が、
『はあ……はあ……サラちゃん……モビルドールを作るためにも、身体のあんなところやこんなところまで、詳しくサイズを測らせてよぉぉ!』
みたいな?」
「やめてェェ!? コーイチ氏にHENTAI紳士の称号を与えないでェェ!?
確かに、モビルドールサラちゃんが完成した今、スリットの位置がアレだから、角度をズラすとすぐにスカートの内側が『みえ』になるなー、とか。コーイチ氏、やりおったなお主、とか思ったけど、やめたげてェェ!」
「薄い本が劇的に厚くなるわね」
「あのー、みなさん、普通にモモさんやアヤメさん、ナミさん(中の人はこそっとミウラさんと一緒)が測っただけなんじゃ……」
くっ……。
リニスさん。なんて正論を……。
流石はテスタロッサ家の良心だけある。
「そこはほらー、やっぱり一悶着あった方がOVAとかになりやすいといおうか……サービスシーン?」
「ふう……今度、フェイトと子供の教育についてお話ししないといけないようですね」
「やめてー」
「リニス、その辺でやめに――」
「あら、もとはといえばプレシアがフェイトを――」
お婆ちゃんがパンパン手を叩く。
話題を方向転換。
「ほらヴィヴィオ、さっさとサラを完成させるわよ!」
「イエス、マム!」
無敵のプレシアお婆ちゃんも、リニスさんだけには勝てないのだ。
とりあえず、『HGBD モビルドールサラ』を作ってみて思ったことは、
『一部のパーツは、ダイバーズナミと共通なんだなあ』
とか、
『首のパーツは衣装と同じホワイトでなく、顔と同じ肌の色が良かったなあ』
とか、
『台座が付属してるけど、使い勝手がイマイチなので、本気で飾るならアクションベースを購入した方がいいなあ……いや、いっそのこと価格が上がってもいいから、サラちゃん専用のかわいいオリジナル台座をつけてくれてもよかったのになあ』
とか、
『ガンプラというか、出来上がりがフィグマっぽいなあ』
とか、
『MS状態にしなければパーツ数も減るのですぐに完成するなあ……と思ったら、サラちゃんへの思い入れ次第では、丁寧に作ってしまい、組み立てるだけでも、意外と時間がかかるなあ』
などなど……。
「まあ、たまにはこういうガンプラもいいよね!」
そう、わたしが結論づけたところで、説明書を眺めていたアリシアさんが言う。
「見て見てヴィヴィオ。サラの現実世界での身長は151・4ミリだって。リインみたいだよね」
「あー、言われてみると」
ビルドダイバーズの最終回を思い出す。ちょっとサイズは小さいけれど、確かに妖精さんというか、リインさんみたいな感じだ。髪はスカイブルー。服装はバリアジャケットと同じホワイトと、色合いもよく似ているし。
リニスさんがお茶をすする。
「GBN――ゲーム内でのサラさんの身長は151・4センチなのかもしれませんね。わかりやすいように、ちょうどその100分の1サイズで、151・4ミリになったとか」
「なるほど~。サラちゃんの本当の身長は151・4センチかあ……151・4センチ……151・4センチぃぃ!?」
ああ……はやてさん……。
GBN内で、はやてさん(大人)とサラちゃんが並んだら、だいたい同じ身長なのかと想像すると、
「ヴィヴィオ、どうして泣いてるのよ?」
「いえ、ちょっと……あれ……うん、おかしいな……涙が、止まらないよ……」
はやてさんに幸あれ!
と、まあ、それは置いといて、
「忘れるところだった――」
わたしは鞄から、もう1つのガンプラを取り出す。
「なにそれ?」
「プトレマイオスアームズっていうんだけど……」
『HGBC 1/144 プトレマイオスアームズ』は、『機動戦士ガンダム00』に登場する母艦トレミーの形をしたカスタムパーツ。
いわゆるガンプラの追加武装だ。
「わたしがサラちゃんを作るって言ったら、コロナが、
『これ以上積みプラが増えるのもアレだから、ヴィヴィオ、よかったら使ってみて』
ってくれたの」
「へえ~、アルカンシェルとか撃てそうなほどでっかいキャノン砲になったり、両手に装着するガントレットみたいな爪になる……って、あー、なるほどねえ、これ、本体が水色っぽいカラーリングだから、サラの髪色に近いんだ」
「うん。最初は、ねこぶそう用に買ったみたいなんだけど、サラちゃんに使えそうだからって」
色を塗る必要がなく、無改造でも手に持たせることができる。
特にGNクローは、ビームマグナムを軽々と連射できるサラちゃんのパワーなら、強力な武器になること間違いなしだ。
「確かに、ヴィヴィオがストライクアーツのスタイルで接近戦を挑むなら、有効な追加武装かもしれないわね」
「そういえば、敵に塩を送る――という地球の故事がありましたね」
ちなみに、この場合『甲斐のウサギ、越後のゴライアス』みたいな感じになるの……かなあ~? ゴライアスの方が武田信玄っぽいんだけど。
プトレマイオスアームズの箱を手に取ったアリシアさんが、おねだりの口調になる。
「ヴィヴィオー、私もガンプラ作ってみたいー」
「え? あーもちろんオッケーですよ。パッケージも小さいから、初心者にも――まあ、わたしも初心者なんだけど――ちょうどいいと思うし」
ニッパーで枠から切る必要はあるけれど、あとはパーツをパチッとはめこむだけ。
接着剤を必要としない今のガンプラの組み立ては、どこか、ジクソーパズルを組み上げる感覚に似ている。
気軽に楽しめるものから、パーツ数の多いものまで、ピース数で難易度の上がる点もよく似ているのではないだろうか。
そういえば、ピカチュウの立体クリスタルパズルを組み立てたことがあったけど……うん、やっぱりガンプラとパズルは似てるかもだ。
アリシアさんがパカっと蓋を開けると、
「うわ、小さい箱の中にパーツがぎっしり詰まってるんだけどぉぉ!?」
「ホントだ……」
予想外。ギュウギュウだ。普通はもう少し箱に余裕があるものだけど。
「このプトレマイオスアームズって、希望小売価格は税込で972円ね。普通にHGダブルオーやバルバトスが買えそうな金額じゃない」
「どうりで……」
パーツが詰まっているはずだ。
「これ、一度開けたら、もう蓋がきっちり閉まらないんだけどぉぉ!?」
バンダイさん、箱のサイズ一回り大きくした方がよかったんじゃ~。
「リニス~、一緒に作って~」
「そうですね。私も武器制作には一家言もっていますから」
リニスさんの目が、獲物を狙うにゃんこのように煌めいた。
フェイトママのバルディッシュも、こだわって作ったんだろうなあ~。
わたしはそんな2人を横目に、完成したサラちゃんを眺める。
下からスカートの中をのぞきこみつつ、
「ねぇ、お婆ちゃん。これ――サラちゃんを動かせないかな。リインさんほどじゃなくても、なんか、こう、自律行動みたいな……」
「あら、できるわよ?」
「ホントに!?」
「ええ。あなたのクリスだって、外装はうさぎだけど、中身は普通のクリスタルタイプのデバイスでしょ」
「あー」
そうでした。
いつもうさぎの姿なので、最近ではもう、すっかり忘れかかっていた。正式名称の『セイクリッド・ハート』もご無沙汰だ。
「つまり、サラちゃんを外装に見立てて、中身にデバイスを組みこめばいいってこと?」
「ええ」
「じゃあ、試しにクリスを外してくっつけてみれば……」
AIがクリスなので、動きはクリスみたいになるかもだけど、フワフワ飛んだりできるということだ。
「わざわざクリスから外さなくても、デバイスの1つや2つうちに余っているわよ。そうね……インテリジェントデバイスではなく、ストレージ型にして、逆に術者が自由に操れるようにすれば、ガンプラバトルの特訓にもなるんじゃないかしら」
特訓!
わたしの大好きな言葉の1つ。
オラ、わくわくしてきたぞ!
「さっすが大魔導師プレシア・テスタロッサ!」
「フッフッフ、おだてても何も出ないわよ。そうね、リニス。ちょうどいいから、例のデバイスを試してみましょうか?」
「例の?」
「5-01(ごーまるいち)型よ」
なんだか、コロナの中の人が反応しそうな名称だ。パンツじゃないから~。
「ああ~、って、いいんですかプレシア。あれ、失敗作ですよ?」
「失敗作ぅ!?」
「あら失礼ね。失敗ではなく実験機よ。試作型とかプロトタイプとか、ヴィヴィオ、あなたそういうの好きでしょ?」
「そ、それは心惹かれるお言葉かも……」
「しかも、単純に失敗というわけではなく、魔力出力が大きすぎて、私やリニス、アリシアでは扱い切れなかった、いわくつきのデバイスなのよ。
そうね……ガンダムMk-II 試作0号機や、プロトタイプダンバイン――サーバインみたいなものかしら」
「きたこれぇぇ!!」
「ヴィヴィオ~、それ、絶対ママにだまされてるって~」
「ですねえ」
アリシアさんとリニスさんが、がっくりと肩を落とした。
「まったく人聞きの悪い。リニス、あなた、5-01型に使った〝高エネルギー結晶体〟のことは覚えている?」
「それはもちろん……って、あ~、そうでした、そうでした。そういうことですか……。はいはいわかりましたよ、プレシア。あなたの言いたいことが。5-01型デバイス、すぐに用意しますね――」
「?」
ただの失敗作ではなかったということだろうか?
「お待たせしました」
しばらく席を外したリニスさんが、研究室から持ってきたのは小さな宝石。レイジングハートやバルディッシュと同じクリスタルタイプのデバイスで、形は実験機だけあってシンプルなキューブ状。例えるなら、半透明のサイコロっぽい。
インペリアルトパーズのように、赤みを帯びた黄色をしている。
「インペリアル……まさに皇帝……いや、このわたし高町ヴィヴィオにこそ相応しい、聖王カラーだね!」
「ええ」
なぜかツッコミが入らない。
「5-01型デバイスには、レリックやジュエルシードと同じ、高エネルギー結晶体を使っているのよ」
「へえ~」
そっか~、レリックやジュエルシードかあ……って、
「どーして、そんな物騒なものをぉぉ!? というか、お婆ちゃん、どこからそんなもの仕入れてきたのぉぉ!?」
「はあ……。ヴィヴィオ、ここがどこだと思ってるの?」
アリシアさんを蘇らせるために到達した、次元の狭間。アルハザードの一端。
「まさか……」
「あれほどのエネルギーを持つレリックやジュエルシードといった結晶体が、自然界に存在する鉱物や宝石のはずがない。だったらどこで、どうやって生み出されたのか、あなたならわかるでしょ?」
ああ、そこにたどり着いた者は、ありとあらゆる望みが叶うとされた伝説の理想郷――
「すごいぞ! ラピュタは本当にあったんだぁぁ!」
「ヴィヴィオ、あなたそれ、言いたいだけでしょ」
「えへへ~」
まあ、例によって、いつものように、アルハザード由来ということだ。
「でも、なんでそんな無茶なデバイス作っちゃったの?」
確かに強力だとは思うけど、自転車にジェットエンジン乗っけちゃうみたいなノリだ。
「5-01型は、第五世代デバイスの実験機なのよ」
「第五世代デバイス……って『魔法戦記リリカルなのはForce』に登場する、バルディッシュが実験機になってフェイトママが試験運用してるアレ?」
「そう、アレよ」
一応、この小説の時間軸では約1年後の世界。
この小説でも、フェイトママを怒らせたときに、時々登場するけど、だいたいマジンガーブレードとサンダーブレイクだからなあ……。
「でも、第五世代デバイスって『Force』の時代でも未完成だよね。結局、ストライクカノンとか、カレドヴルフ社のAEC装備が採用されてたし」
AEC装備。つまり、エクリプス感染者に対抗する。アンチエクリプス装備という意味だろう。
「だからこそじゃない。管理局がいまだ魔力無効化に対して有効な手を打てないうちに、AEC装備とかいう代替品ではなく、完璧な第五世代デバイスを作り出して、管理局をあざ笑ってやるのよ」
「うわぁ……」
「ママ、負けず嫌いだからね~」
なんだか、圧倒的性能差があった、ダブルオー・ファーストシーズンのガンダムみたいなことに。
「ヴィヴィオ、あなた、第五世代デバイスがどんなものか知っている?」
「来るべき対話のために~」
「そんなガンダム造らないわよ!?」
劇場版ダブルオーの第五世代ガンダム(クアンタとか)は置いといて、
「えっと『魔法戦記リリカルなのはForce NEXT』によると、
『術者の魔力を機体内に蓄積・変換して活動するシステム』
『魔力無効状況でも魔力を魔法として使用できる』
『魔力有効状況下においてはさらなる強化を得る』
だっけ」
「そうね。だったら、今度は第五世代の欠点はわかるかしら?」
「うん。
『電気や炎といった変換資質がある人か、魔力コントロールが上手い術者でないと、稼働出力が安定しない』
『ついでに、現状ではエネルギーロスが多すぎて、長時間運用が難しい』
だったよね。
だから、戦技教導隊ではなく、電気変換資質があって魔力コントロールも上手い、フェイトママが試験運用してるんでしょ?」
「その通り。
まあ、私の方がフェイトより上手く扱えるんだけど」
「うわ……」
アムロ・レイみたいな台詞を~。
「出力が安定しない。エネルギーロスが大きすぎる。
だったら、もっとも単純かつ簡単な改善方法として、デバイス自体に、高エネルギー結晶を使用すれば、エネルギーロスも気にならないほどの出力と、長時間運用が可能になる――ということよ」
「え~、それってただのゴリ押しというか、力押しなんじゃ……」
「だまらっしゃい。ただの実験機なんだからこれでいいのよ」
「でもでも~、レリックやジュエルシードみたいな結晶なんて数が限られてるし、というか、デバイスの動力に高エネルギー結晶体を使うってことでしょ。
そんなこと本当にできるの? 危なくないかな?」
無印や劇場版で、子供のころのフェイトママが暴走しかけたジュエルシードを胸に抱き「止まれ……止まれっ!」ってやっているシーンを覚えている人も多いと思う。
「あなた、私の専門をなんだと思っているの?」
「……クローン?」
「違うでしょ。エネルギーよ、エネルギー。魔導エネルギー工学。ヒュドラとかいうあんなヘッポコに関わったせいでこんなことになったけど、魔力駆動のシステムは私の得意分野なんだから」
そうでした!
「それに、高エネルギー結晶体を動力に使うのは、すでに確立されている技術なのよ。表向きには知られていないけど。前にスカリエッティが、ジュエルシードをガジェットIII型の動力にしたことがあったでしょ」
「あ~、そういえば……」
アニメ『StrikerS』の5話だ。
「あれは内燃機関だったけど、燃料電池のようなタイプにして、結晶の力を魔力近似のエネルギーに直接変換すれば、どれだけロスが多かろうと問題ない。魔導師は、魔力無効状況でも普段と変わらないパフォーマンスが発揮できる――ということなのよ」
「(よくわからないけど)な、なるほど~」
「まあ、理論上ですけどね」
と、リニスさん。
「ああ~」
だから、失敗作だったんだなあ~。
「確かに、今度は出力が大きすぎて余計に安定しなくなったけど、そこは現状の第五世代が変換資質を持つ人オンリーと同じ。エネルギー結晶をコントロール可能な資質を持つ人が使えば、この5-01型デバイスも安定する――ということよ」
「なるほど~」
「そこでヴィヴィオ、あなたの出番というわけね」
「なるほど~……って、わたしぃぃ!?」
「そう。聖王オリヴィエのクローンのあなたなら『レリック=聖王核』に近い結晶体を使ったこのデバイスの性能を引き出せる。
いえ、インペリアルトパーズカラーの5-01型デバイスは、聖王の血を引くヴィヴィオ――あなたにしか操れない、あなた専用の、ワンオフモデルのデバイスだったのよぉぉっ!」
「ま、マジでぇ……」
「ヴィヴィオ~、だからまたママにだまされてるって~」
「ワンオフというより、ただの実験機ですからねえ……」
「2人とも静かになさい! あと少しなんだから!」
騙されてる感が半端ないけど……。
ワンオフ……専用機……ああ、なんて心躍る言葉なんだろう。
「5-01型……いずれ歴史の闇に葬られ、存在したこと自体を抹消されてしまうデバイス……」
それ、なんてGPシリーズ!
「ふっふっふ、お婆ちゃん、わたしに任せてぇぇ!」
「流石このわたしの孫ねっ!」
「ヴィヴィオ~、やめた方がいいって~」
「そうですね。自分で用意しておいてなんですが、やっぱりやめた方がいいかと」
「アリシア……リニス……。
魔導技術の発展のためには、多少の犠牲はつきものなのよ!」
「ママーっ!?」
「そうだよ! ガンダムだっていわば実験機みたいなものでしょ! トールギスだってそうだし!」
「ヴィヴィオまでっ!?」
「そうよ、ヴィヴィオ! サーバインを思い出しなさい!」
はっ!?
「サーバイン……試作機で、さらに、前半主役機ダンバインのプロトタイプなのに、その性能は後半主役機のビルバインや、ラスボス機体ズワァースよりも上、最強のオーラバトラー!」
「オーラロード開いちゃうよ!?」
「確かにスパロボでは強かったですけど~」
わたしは躊躇うことなく、ガッと5-01型デバイスをつかむ。
「――で、このデバイス、サラちゃんのどこに取りつけたらいいの?」
「見なさいヴィヴィオ。あたかも最初からコアを入れてくださいと言わんばかりに、お腹の部分が上下に開閉するでしょ」
確かに、洋服のヒラヒラを意識したのか、不自然に開くようになっている。たぶんだけど、本来はビルドデカールなど、各種ICチップが収まる箇所なのかもしれない。
「穴を空けて、デバイスをはめこめるように改造すれば……ほら、完成よ」
「おーっ!」
「私たちは前にマスター認証してあるから、あなたも登録しなさい。管理権限、新規使用者設定機能オープン――」
そう唱えると、プレシアお婆ちゃんは、サラちゃんを「はい」と手渡してくる。
わたしは両手で人形を握りしめた。
サラちゃんの周囲に、小さな空間ディスプレーがいくつも表示される。
「マスター認証――高町ヴィヴィオ。
術式は、ベルカ主体のミッド混合ハイブリッド」
サラちゃんを中心に、わたしの魔力が小さな虹色の魔法陣を展開する。グルグル~。
こうすることで、デバイスがわたしの音声と魔力を認識し、機体に自動登録してくれるのだ。
「こたつに入ったまま登録って、冬にアイスを食べるような感じだよねぇ~」
普通は広いところでやるものだ。
「あれは半分慣習なのだけどね。あなたの母親や『Force』のトーマなんて、戦闘中に登録してたでしょ?」
「あ~」
言われてみると、そんな気がしてきた。
正確にいうとデバイスではないけど、トーマなんて瓦礫の中でリリィさんと誓約してたたしなあ……。未来の話だけど。
「……ん~、んん?」
起動、登録した途端、魔力が……魔力が……。
「どうしたのよ、ヴィヴィオ?」
「オラ、すげぇ気を感じっぞ!」
「はいはい。ドラゴンボールごっこならよそでやりなさい」
「冗談、冗談。そうじゃなくって、このサラちゃんデバイスからわたしに、補給なしで戦い続けられそうなエネルギーが送られてくるんだけどっ!?」
「だから、フリーダムごっこならよそでやりなさいと」
「本当なんだってぇ~」
「はいはい。別に不思議なことでもなんでもないわよ。聖王家の血統――特に、オリヴィエのクローンであるあなたは、エネルギー結晶体から力を取り出すスキルが、人よりずっと優れているんだから」
「それはわかってるけどぉ~」
そう。わかっている。わかってはいるのだ……。
だって、わたしは5年前、スカリエッティにレリックを移植され、ゆりかごと接続し、ゆりかごの駆動炉から無限の魔力を得たことが……。
「そっか……そうなんだ……この感覚。あのときは必死だったからイマイチよく覚えていないと思ってたけど、ゆりかごに接続してたときに似てるんだ……」
前にもこんなことあったような気がするけど、今回は輪をかけてとんでもない魔力が送られてくる。
「そんなに? 確かに高エネルギー結晶体ではあるけど、ゆりかご内部の駆動炉と比べたらたいしたことないはずよ?」
いやいや。
「ひょっとしたら太陽炉……お婆ちゃん、知り合いの科学者にイオリア・シュヘンベルグさんっていない?」
「GNドライヴじゃないんだから……。
でも、おかしいわね。移植したわけでもない。どんなに出力が上がっても、せいぜい、あなたがトラックやガジェットをぶち壊したときくらいが限界なはず」
「ぶち壊したとか言わないでー」
わたしの身体から溢れる余剰魔力が、こたつの上で、勝手に三角形のベルカ式魔法陣を描き出す。
「うおおおおおお、お婆ちゃん、本当にスゴいよこれ、今ならトランザムとかできちゃいそう!」
「むしろ見てみたいくらいだけど……むぅ、聖王の血はそこまで力を引き出せるものなのかしら? 私でもここまでは……。まあ、いいわ。リニス、ひょっとしたら、今日は貴重なデータが取れるかもしれないわよ」
「まったく……でも、そうですね。私、ちょっと研究室まで行って、モニタリングしてきますね」
リニスさんがこたつを離れると、アリシアさんが溜め息を吐いた。
「ヴィヴィオ~。これ絶対、いつもの爆発オチだよね~?」
「…………はっ」
そうかも!?
「って、どうしてアリシアさん、プトレマイオスアームズ片手に、こたつに潜ろうとしているのぉぉ!」
「うちのこたつは簡易シェルターになってるからね。リニス2世は出ないように押さえとくから、あとよろしく~」
すぽっ! アリシアさんのアホ毛が、こたつの中に消えていく。
うあああ、逃げられたぁぁ!
とか言ってる間にも魔力供給がぁぁ!
「あっ……あ……」
部屋の中が、勝手にわたしの虹色の魔力光で満たされていくのがわかる。
「ヴィヴィオ、魔力量が増えてうれしい気持ちはわかるけど、もう少しコントロールしなさい。できるでしょ?」
「うん、してる、してるんだけど……なんだろう、なのはママが子供のころ、スターライトブレイカーの発射シークエンスを変えてヒャッハーしたときみたいに、どんどん魔力が送られてくるんだけどぉぉ!? ナニコレ、ナニコレぇぇ!?」
光が強まり、視界が白く染まっていく。
レリック1つでこれはありえない!
「……あら、これはちょっとマズいわね。
――結界、展開」
「ちょ、お婆ちゃんばっかなにやってんのぉぉ!?」
どこから取り出したのか、ヤマトで波動砲を発射するときみたいな対閃光ゴーグルまで装着してるしぃぃ!
「……魔導技術の未来は明るいわね」
「物理的に明るくなってるだけだよねぇぇ!?」
「大丈夫。あなたには聖王の鎧があるでしょ。移植してないから不完全版になるけど、それだけの魔力量があれば私の結界より頑丈よ。
スレイヤーズの神滅斬(ラグナブレード)だって、未完成版でも十分強かったでしょ?」
「そりゃ強かったけど……って、そんなことじゃ騙されないよぉぉ!?」
すると、研究室に向かったはずのリニスさんが、真剣な表情で映像通信を送ってくる。
『プレシア! ヴィヴィオ! 冗談言ってる場合じゃないです。マズいですよ。強引にでもいいから押さえて! このままじゃ次元――』
「え? ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
眼が潰れるかのような閃光。
ガガガガガ――っと、ガオガイガーがヘルアンドヘブンでも使ったかのように、虹色の魔力が強烈な渦を巻く。無理だ! もう押さえ切れない! 解き放たれたエネルギーの本流が周囲を吸いこみ、突風となってわたしの身体をさらう。
ふわっと、浮いた感覚。
同時に、ドン――という爆発音と共に、わたしの身体は、ふんがっ――と前のめりに放り出された。
一瞬の闇のあと、
「これ、ギャグ小説じゃなかったら死んでるやつだよねっ!?」
お約束。いつものように黒焦げで、モジャモジャなアフロヘアになったわたしは、頭を抱えながら立ち上がる。
「あいたたた……って、ここどこぉぉ!? お婆ちゃんちじゃない! プレシアお婆ちゃん!? アリシアさん!? リニスさーんっ!?」
返事がない。
さっきまで入っていた、こたつもない。
というかそもそも、
「部屋の中ですらない! え、マジでオーラロードとか開いちゃったの!?」
海と大地の狭間に来ちゃったとか!?
空が青いよ!?
月も2つあるし!
周囲を見渡すと……、
「駐車場?」
自動車がいっぱい停まっている。
「チェーン展開してるファミレスに、あっちはコンビニ。どこか見覚えがあるような……って、あれ? ここミッドだ」
ミッドチルダの中央市街地。前になのはママたちと車に乗って来たことがある。
そもそも、空に浮かぶ2つの大きな月は、ミッドの証なのだ。
「そういえばここ、王様とシュテルとレヴィの3人が、次元トラブルで飛んできたところだっけ……」
ドラマCDのときの話。
うちからもそんなに遠くないし、なによりナカジマジムが近くにあるので、最近ではこの辺りを通ることも少なくない。
「ひょっとして、ただ単にミッドチルダに帰ってきちゃったってオチぃぃ!?」
ハッ!
「クリスがいない! というか、鞄もコートも、全部お婆ちゃんちに置きっぱなしだ!」
ついでにいうと靴もない。靴下だ。
う~ん……連絡を取ろうにも、クリスがいなくちゃ……。
「はあ、やっちゃったなあ~。いったん家に帰って……ううん、ここからならノーヴェのところの方が近いかな」
よし、ジムに向かおう――と、意気込んだ瞬間、前方に見知った顔が2つ。
ん~。いやいや。
「ご冗談を。まさか、神眼を持つこのわたしが幻覚を見ることになろうとは~」
ただの見間違えだろうけど。
改めて、ロックオンでストラトスをストラトス。
「んんんんんんん…………んんっ!? あ、あれ~? でも……うそ……うええええええええええええええええええええええええええええええええええっっ!!?」
こりゃマズい!
「――ジェットステップ!」
アスファルトを蹴って高速移動。
思わず、ファミレスの看板の陰に隠れてしまった。しゃがんでじっと見つめる。こういうときはちっちゃくてよかったと思うけど、やっぱり間違いない。
「ど、どうして……?
どうして、中等科の制服を着たわたしとアインハルトさんが、並んで歩いてるのぉぉ――っ!?」
しかも、
「ちょー楽しそうというか、仲良さそうなんですけどぉぉ!?」
お婆ちゃんちに置いてきたはずのクリスがふわふわ寄り添って飛んでいるし、とても偽物とは思えない。
となると、
「ひょっとして、また桃色な人のせいだとか……?」
この手の事件はだいたいキリエさんが……。
すると――トントン。びくぅぅ。
突然、背後から肩を叩かれる。
「は、はいっ!?」
「ヴィヴィオ、だよね?」
振り返ると、中等科の制服を着たリオコロが立っていた。
【次回予告】
はあ……お婆ちゃんなのか、それとも桃色さんや意外にドジっ子な赤毛さんのせいなのかはわからないけど、またどんでもないことに……。
次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第2話。
【タイトルはネタバレの始まり】
で、リリカルマジカルがんばります!
エイプリルフールネタ……と言いつつ「ホントでした~」みたいなのが最近増えている気がします。
ちょっと古いですが『Rewrite』とか。4月1日に発表されたので、見た瞬間「エイプリルフールネタかあ」と思い込んでしまい、あとで本当だと知って大変驚きました。
最近では、2018年の『ねこぶそう』もそうでしたけど。
今年のエイプリルフールはどうなるのでしょうか?
というわけで、今回の小説がエイプリルフールネタだったかどうかは、次回までのお楽しみということで。