わたし――高町ヴィヴィオはミッドチルダに飛ばされてしまい「やれやれ~」なんて思っていたら、今度は、中等科の制服を着たリオやコロナがいて……。
「ヴィヴィオ、だよね?」
振り返ると、中等科の制服を着たリオコロが立っていた。
うわ~、本物だ。
この黒いアホ毛といい、あざとい感じのポーズといい、リオコロだ。
間違いない。
しかも、さっき見たわたしとアインハルトさんと同じ、グリーンの中等科の制服を着用している。
でも、スカートの丈が長いせいか、リオみたいな元気っ子には似合っていない。そのうち慣れるのかもしれないけど、そっかー、アインハルトさんは、いつもこんな動きにくそうな格好で戦ってたのかあ~。
とはいえ、なんてこったい……。
ドッキリにもほどがある。
わたしが返答できずに、眼前の光景にわなないていると、
「ねぇ、リオ。やっぱり違うんじゃない?」
「そう? コロナが言うならそうかもしんないけど、んー、やっぱりこの子、ヴィヴィオに似てると思う」
なんだかんだで最も野生の勘に優れたリオが、うろんな眼差し向けてくる。
「私だってそう思ったけど、本物のヴィヴィオなら……こんな黒焦げで、アフロになんかならないよ、うん、絶対。ついでに言うと、靴も履いてないし」
そうでした。白い靴下のままでした。
なにせ、ついさっきまでこたつに入ってたから~。
とはいえ、いつものコロナなら、
『あ~、また爆発オチ?』
くらいに突っこんでくれるはずなのだけど……これが中学生……大人に成長するということなのだろうか?
「ヴィヴィオの金髪はいつも綺麗だし、こんなギャグ漫画みたいな格好にはならないよ」
うう……なんだろ、このプレッシャーは。
「コロナって、いつもは表に出さないけど、ヴィヴィオのこと大好きだよねえ。ストライクアーツをやめなかったのだって、ヴィヴィオがいたからでしょ?」
「もう、リオ!」
じゃれるように、コロナがリオの頬を引っ張っている。
おう……なんてこったい。
一応、『ViVid』6巻――アインハルトさん戦の回想シーンのおかげで、なんとなく知ってはいたけれど、まさか、こんな飛ばされた先の世界でコロナの本心が聞けるとは。
もとの世界に帰ったら、どんな顔をして彼女に会えば……ていうか、ガンプラバトルで対戦するんだっけ。
接待プレイは……う~ん、逆に手加減してもらう側だしなあ……。うん、せめて、優しく、イチャイチャしてあげなければー。
などと、わたしが帰還後のことを妄想していると、コロナが申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんね、人違いしちゃって。あなたが私のお友達によく似ていたから間違えちゃったの。えっと、その手に持ってるお人形さん可愛いね」
この年下に対する余裕というか態度。これが中等科の実力か……じゃなくって、お人形さん……?
コロナの視線の先。
わたしの手のひらに目を向けると、
「あ、ああああああああああああああああああああああああっ!?」
空色の髪をした、リインさんみたいなガンプラ。
「サラちゃん! っていうか、5-01型デバイスだ!」
そっか! 飛ばされる前は、こたつに入ったままサラちゃんを握りしめてたんだっけ。
というか元凶。
さっきから異常事態ばかり起きていて気が回らなかったけど、わたしのデバイスとしてマスター認証も終わってるし、これで、クリスがいなくてもお婆ちゃんに連絡できる!
「へえ~、そのお人形さんデバイスなんだ」
「うん。外装だけで中は普通のクリスタルタイプだけど」
「ヴィヴィオやアインハルトさんのデバイスみたいだよねー」
「「「あははー」」」
本人ですけどねぇぇ!
3人でひとしきり笑ったあと――わたしは冷や汗モノだったけど――リオコロは「これから行くところがあるから」と、立ち去っていく。ナカジマジムへ向かうのだろう。
そんな2人の背中を見送りながら、わたしはある重大な違和感に気づいた。
「……こ、コロナの方が、背が高い……?」
『ViVid Strike!』では、わたし、リオ、コロナの3人は同じくらいの身長である。ついでにいうと、ミウラさんも同じくらい(ミウラさんは2歳年上ですがー)。
なのに、
「あ、明らかにコロナの方が伸びてる……って、はっ!?」
よく見れば、何やら胸の辺りの膨らみも……。
「なんてこったい……はっ!?」
そういえば『ご注文はうさぎですか?』の最新7巻でも、チマメ隊。
チノ → わたし
マヤ → リオ
メグ → コロナ
と、仮定して、メグちゃんだけ、昔は3人とも通れた狭い抜け穴が「胸が苦しくて通りにくい」とかなんとかで……。
「ふう……ヴィ・リ・コ隊も解散だなあ……」
『誰がヴィリコ隊よ!』
「あいたー」
ほっぺにローリングソバットを食らったような衝撃。
「だ、誰っ!?」
『私よ、私』
目の前に、ふわふわ人形が浮かんでいる。
「サラちゃん!?」
いつの間にか、わたしの手を勝手に抜け出していたらしい……。
「って、あれ? 確かストレージ型デバイスだったような……」
勝手に動くなんてことあるはずがない。
「まさか、わたしは今まさに、機械に生命が宿る瞬間を目撃しているのではぁぁ!?」
トラ●スフォーマー的な。
『そんなことあるはずないでしょ。忘れたの? ガンプラバトルの特訓のため、外部操作できるようにデバイスを埋めこんだんでしょ』
「そうでしたー。ってことは、中の人はプレシアお婆ちゃんっ!?」
『中の人って……声優じゃあるまいし』
「スーツアクターでもいいけど?」
『やめなさい』
「見た目がサラちゃんなのに、声がお婆ちゃんって、違和感が半端ないけど」
『だまらっしゃい』
それにしてもだ。
「はあ、こっちはミッドチルダなのに、そんな遠くからデバイスを制御できるなんて、流石は次元魔法が使える大魔導師。メテオやコメットも使えそうだね」
『それはFFの時空魔法――』
《プレシア、そんなことより、現状説明をしないと》
《ヴィヴィオー、そっちは怪我してない?》
サラちゃんから、お婆ちゃんだけでなくリニスさんやアリシアさんの声も聞こえてくる。
「そうだった! わたしは平気だったけど、そっちは大丈夫なの?」
『ええ。聞いての通り、こちらは3人とも無事よ』
《私は研究室にいましたから。ただ……》
《聞いてよヴィヴィオ~。こたつから出たら天井がなくなってたんだよっ!?》
「うわ……それは本当にごめんなさーいっ!」
わたしが5-01型デバイスをコントロールできなかったばかりに、大惨事を引き起こしてしまった。
『いいえ。それを言うなら私のミスよ。まさか、あんなエネルギーの暴走が起きるなんて……。もう二度と起こさないと誓ったのに……本当にごめんなさい』
「えっ!?」
《ええっ!?》
「お婆ちゃんが……」
《ママが……》
《プレシアが……》
「《素直に謝るだなんてぇぇ!?》」
『私だって謝るときは謝るわよッ!? まったく、あなたたちは私をどんな風に――』
《こ、こういうときは、お赤飯とかいうのを炊くんでしたっけ!?》
《ふぇ……フェイトに教えてあげないと……》
『そんなことでいちいち通信しなくていいわよッ!』
ああ~。なんだかあっちは賑やかそうだ。
家屋的には大惨事だけど、人的被害がなかったのは本当によかった。
『――あー、コホン。それはそれとして、ヴィヴィオ、気づいている? あなたが飛ばされた場所なんだけど』
「うん。単純にミッドに転移しただけかと思ったけど、たぶんここ、1年後くらい。未来だよね」
『1年後、ね。どうりで座標の特定に手間取るはずだわ。それで何か確証はあるの?』
「うん。正確な日時はわからないけど、アインハルトさんとわたしが同じ中等科の制服を着るチャンスは、来年――新暦81年しかないから」
わたしが1年生。アインハルトさんが3年生。わずか1年の間。
「ひょっとしたらもう『Force』の事件が始まっているかもだけど、漫画じゃ日付まで出てなかったから……って、あれ? ここが未来ってことは、わたしすぐには帰れないってこと?」
『そうなるわね。5-01型デバイスがあったからこうしてつなげることはできたけど、映像までは送れないもの』
「そうなんだ……」
単純にデータ量の問題なのか、もっと他に理由があるのか、こっちの映像は見えているみたいだし、その辺りはエルトリアのみなさんに聞いてみないとわからない。
『とにかく、時間移動は私の管轄外だから、クリスを借りるわよ。エルトリアのギアーズたちと直接連絡を取りたいから』
「うん、それは構わないんだけど……。ねぇお婆ちゃん、どうしてこんなことになったのかな?」
いつものように桃色さんたちが関わっているなら、すぐに向こうから連絡が来るはずなのだけど。
『そうね。あなたにもわかりやすいように説明すると、クロノトリガーってゲームはやったことある?』
「うん。ちょー有名RPGだし、当然あるけど」
『だったら、〝時の最果て〟って場所は覚えてるわよね』
「スペッキオや時の賢者がいたとこでしょ」
『そう。〝全ての時代に通じていて、どの時代にも属さない時空を越えた謎の場所〟。今、私たちがいる〝次元の狭間〟も、似たような場所なのよ』
「あ~、それで……」
色々な世界に通じている可能性があるということだ。
しかも、
「考えてみたらサラちゃんって名前、クロノトリガーやクロノクロスの……」
『まあ、それは偶然でしょうけど』
わたしやプレシアお婆ちゃん、サラ、全てラスボスつながりである。
「ってことは、飛ばされた先が1年後くらいでむしろラッキーだったのかなあ?」
B.C.65000000に飛ばされて恐竜人とか出てきたら、流石にちょっと泣けてくる。
ラヴォスが降ってきたり。
「あ、B.C.18000なら興味あるけど」
『それ、あなたの母親が中の人やってたシュタゲゼロのラストじゃない』
あっさりバレた!
『たぶんそれくらいなら、すでにアルハザードが存在してたと思うけど……まあいいわ。おそらくだけど、以前ドラマCDで、闇の書事件の最中の高町なのはやフェイトが、未来のエルトリアに飛ばされる――ということがあったでしょ?』
「うん、あったね」
『アレの原因の1つに、並行世界の出来事とはいえ「GOD」での接触により「ギアーズや紫天一家」と「高町なのはやフェイト」の間に、何らかのつながりが形成されていた――と考えることができるのよ』
「そっか。逆に、エルトリアから王様たちがミッドに――なのはママたちのそばに飛ばされてきたこともあったし」
『ええ。だとするなら、あなた「GOD」で「Force」の子たちと接触してるでしょ。偶然というよりは、同じようにつながりが出来てきていたから――と考えるべきでしょうね』
「そっか~」
そういう意味では、やっぱりキリエさんが原因なのかもしれない。いや、今回の場合はむしろ助かったというべきか。
変な世界や時代に飛ばされなくて。
いきなりラヴォス戦みたいになっても、勝てないよ?
『それでも、あの小規模次元震が起きるほどのエネルギーは理屈に合わないのよね』
「やっぱり、またキリエさんが、レヴィが拾ってきたオーパーツを蹴ったり水をかけたりして、時間転移装置を誤作動させたとか?」
『その辺りも聞いておくわよ。何にせよ、あなたが高町なのは――主人公の関係者である限り、そういった事件に巻きこまれる可能性が常にある――ということよ』
そんなメタ発言されても~。
「でも、なんだかんだいって、みんなすぐに元の世界に帰れてるしね。わたしもそんなに心配してなかったりして」
『そうね。半日もあれば帰れるでしょ。座標の特定も終わっているし。詳しい検証は、あなたが戻ってからすればいいわ』
「だね~」
よし、そうと決まれば!
「帰るまでに、もっとこの『Force』世界を堪能しちゃおう!」
わずか1年先の未来ではあるけど。
『それもいいかもしれないわね。でもヴィヴィオ、宝くじは止めておきなさい』
うっ。
「……と、当選番号をメモっとくとか、し、しないですよー?」
『……まったく』
「えっとー、ほら、ナカジマジムの様子でも見に行こうかなと」
『たいして変化ないでしょ?』
「それはそうなんだけど~『Force』だとジムの様子が描かれたことってなかったでしょ。主人公はトーマだったから」
『そういえばそうだったわね』
「一応、わたしやアインハルトさん。それにノーヴェも登場してたけど、あくまでちょい役。ひょっとしたら、ジムの経営が悪化して潰れてるかもしれないし。ノーヴェが、
『すまんヴィヴィオ、やっちまった!』
とかー」
『いや、ないでしょ。あれだけ人気選手を抱えておいて』
「ある日、謎の大爆発で潰れるとか」
『……あー、そうね、予想外のことは常に起きるものよね』
こうしてナカジマジムの入っているビルの外。大きな窓ガラスから、みんなが練習している競技ジムエリアをのぞくことにしたのだけど……。
「あれ? フーカさんがいない。受付にもいないし……って、そういえば変態……じゃなかった、ユミナさんの姿もない!」
『ああ、それはしょうがないわよ。だって「ViVid Strike!」は並行世界だもの。「INNOCENT」みたいなものね』
「……え?」
【次回予告】
ちょっとたんまお婆ちゃん。『INNOCENT』みたいってどーいうことっ!? 百歩譲ってフーカさんがいないのはしょうがないにしても、ユミナさんまでいないってどーいうこと? あの変態は島に飛ばされたの??
次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第3話。
【『Force』にはすみぺもいのりんもいない】
で、リリカルマジカルがんばります!
というわけで第2話です。
『Force』世界なので、すぐに主人公のトーマが登場する予定だったのですが……ええ、物の見事に、影も形もありません。
なんというか……2話にして、すでにちっとも話が進まない!(笑)
それは置いといて。
サラちゃんをデバイスの外装にした理由は、リインⅡみたいなサイズとカラーリングだったことで、
『時間移動・強くてニューゲーム → クロノ・トリガー → クロノ・クロス → サラ』
といったことは、考えていませんでした。
なので、そのことに気づいたとき――ゲームをプレイした人ならわかっていただけると思うのですが、偶然とはいえ、ピタッとハマったというか、腑に落ちた気がしました。
ビルドダイバーズのサラも、ある意味、事件の元凶みたいなポジションだったわけで、プレシア・ヴィヴィオ・サラ・サラちゃん――意図せずしてラスボスコンビが結成されてしまったなと。
次回こそトーマを! ……と思いつつ、すでに次回タイトルが怪しい(笑)。