アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

112 / 127
こんにち令和。
令和元年おめでとうございます。
平成ありがとうでした。

というわけで、
約1年先の未来――『Force』世界に飛ばされたわたし――高町ヴィヴィオは、デバイスに魔改造したサラちゃん(ガンプラ)を操るプレシアお婆ちゃんから、驚愕の事実を突きつけられる。



第3話 『Force』にはすみぺもいのりんもいない

「『ViVid Strike!』が並行世界ってどーいうことぉぉ!? 『INNOCENT』みたいなものって……『ViVid』の正統続編じゃなかったのぉぉ!? 『ビビッドレッド・オペレーション』じゃないんだよぉぉ!?」

 

 

 ナカジマジムの入っているビルの外。大きな窓ガラスから、未来のアインハルトさんたちの練習風景をのぞきこみながら、わたしはプレシアお婆ちゃんが操るサラちゃんを激しく――ブンブン上下に揺らした。

 

『いいから落ち着きなさいヴィヴィオ。冷静に考えなさい。今、ビビッドレッド・オペレーションは関係ないでしょ?』

 

 …………。

 そうでした。

 

「あっちはお尻メインだもんね。リリカルなのは、どちらかというと小さい子だったり、胸がメイン」

 

『そうよ。あなたの中の人がエンジニア役で出演していたアニメ――サークレット・プリンセスも、お尻メインだったでしょ?』

 

「あー、だね~」

 

『そういえば、アニメのラストバトルで、武器を使わずに殴り合いの格闘技に変わっていたのは、あなたの差し金かしら?』

 

「もう~、関係ないって~」

 

 

《どーでもいいので早く話を進めてください》

 

 

 あちらの世界にいるリニスさんから、冷たくお叱りをいただいたので、わたしとお婆ちゃんは脱線した話題を元に戻す。

 

「確かに『ViVid Strike!』には、なのはママたちが出てこなかったけど、それだけで並行世界だと決めつけるのはよくないと思うんだよ。むしろ、フーカさんがいないのは、ただ単に風邪を引いたとかそういった理由で……いや、あのフーカさんが風邪を引くとかないかー」

 

 想像もできないよ!

 

『何気にひどいわね、あなた……』

 

「いやいや、頑丈という意味でー。だって、ふつーあんな正面からリンネさんと殴り合ったら、死んでてもおかしくないのにピンピンしてたし……って、ま、まさか、リンネさんのいるフロンティアジムから引き抜きを受けて、わたしとアインハルトさんの敵に回ったとかぁぁ!?」

 

 リンネさんの移籍は難しいけど、フーカさんが望めば、ノーヴェはきっと快く送り出すだろう。彼女たちの気持ちを一番に考えるからだ。

 それに、フロンティアジムにはヴィクターさんがいる。ジークさんも所属こそしていないものの、主な練習場所はあちら。

 U19のワールドチャンピオンが2人もいるのだ。上を目指すのであれば、これ以上ない環境。

 

「くっ……なんてこったい。わたしとアインハルトさんの前に最強の敵が……」

 

『でもあの子、アインハルトの弟子よね。もしこの世界にいたとしても、移籍なんてしないでしょ』

 

 チッチッチッ、とわたしは指を振る。

 

「弟子は常に師匠を乗り越えるもの。東方は赤く燃えちゃってるんだよ! あ、それはそれで燃える展開かも。そんなわけでお婆ちゃん、ちょっとフロンティアジムのサイトで所属選手を調べてみてよ」

 

『しょうがないわね……』

 

 クリスに頼むときと同じように、プレシアお婆ちゃんが検索してくれる。

 わずか1年しか違わないので、通信規格も変わっていなかった。

 問題なく空間ディスプレーが開き、フロンティアジムに所属する選手の一覧が表示される。

 

「ムムムッ……って、あれ? フーカさんどころか、リンネさんまでいないんですけどぉぉ! ど、どーいうこと!?」

 

 2人で愛の逃避行とかっ!?

 うらやま……違うっ!

 

『だから言ったでしょ。「ViVid Strike!」は並行世界だもの。「INNOCENT」みたいなものね――って』

 

「嘘だッ!!!」

 

『もはやネタなのかの区別もつかないわね』

 

「だってわたし『ViVid Strike!』が並行世界だなんて聞いてないよ~」

 

 だったら、普段わたしたちがいる世界は何なのだろう。

 

『あなた、自分のことでしょ。せめて設定資料集ぐらいは見てないの?』

 

「あー、あれ。みんな『裸参考』のイラストが載ってるのに、わたしだけ載ってないやつでしょ? 一応入浴時くらいはあるけど、水着姿もやっぱりわたしだけ少ないという謎の設定資料集。その反省からかReflection&Detonationの設定資料集は、素晴らしい出来栄えだったけど」

 

『……しっかり見てるじゃない』

 

 

《見るポイントがアホだけどねー》

 

 

 アリシアさんから言われたよぉぉ!

 

『そんなだから気づかないのよ。ほら、設定資料集恒例の1ページ目。キャラクター対比表を御覧なさい――』

 

 空間ディスプレーに表示される。

 

「う~ん、そういえば珍しいことに年齢が書いてある……アインハルトさんとユミナさんとミウラさんが14歳で、わたしとリオコロが11歳……学年で考えれば問題な……あれ、ちょっと待って!?」

 

 

●新暦79年『ViVid』本編より

・初等科4年……ヴィヴィオ、リオ、コロナ 10歳

・中等科1年……アインハルト、ユミナ、ミウラ 12歳

 

●新暦80年『ViVid Strike!』本編 公式サイト&設定資料集より

・初等科5年……ヴィヴィオ、リオ、コロナ 11歳

・中等科2年……アインハルト、ユミナ、ミウラ 14歳

 

 

「――どうして3歳も離れちゃったの!?」

 

 誕生日がー、とか言うなら、全員一律でズレるなんてことはないはず。同じ作品内で満年齢と数え年を分けるとも考えられない。明らかに、わたし世代とアインハルトさん世代の年齢の差がおかしなことになっている。

 

『単なるミス――と、片づけてもいいのだけど、これを解消するための、たった1つの冴えたやり方があるのよ』

 

「そんな有名SF小説のタイトルみたいな台詞言わないでぇぇ!」

 

 確かに、アレを初めて読んだとき、主人公がわたしやフェイトママみたいな金髪で16歳の女の子だったときは驚いたけど。

 もっと、敷居が高いイメージがあったから――

 

『そう。リリカルなのはも、長い年月とシリーズを重ねている間に、ファン以外にとっては敷居が高い作品になっていたのよ』

 

 新規ファン層を獲得せねば~。

 

「だからタイトルに〝なのはママの名前〟がついてないと?」

 

『ええ、だから高町なのはを登場すらさせなかった。そしてもう1つ。ミッドチルダの小学校は5年制――という制度が、リリカルなのはを知らない、地球の、日本の一般層に受け入れられるかというと……』

 

「ああ、難しいかもっ!」

 

『そう。だから――』

 

 

これまでのリリカルなのはシリーズでのミッドチルダ

●初等科5年……11歳

●初等科6年……存在しない

●中等科1年……12歳

●中等科2年……13歳

 

   ↓

 

『ViVid Strike!』でのミッドチルダ

●初等科5年……11歳

●初等科6年……12歳

●中等科1年……13歳

●中等科2年……14歳

 

 

『――と、いうふうに、日本と同じ6年制に改編してしまえば、全て解決なのよ』

 

「……な、なんてこったい」

 

 これが本当であるなら、確かに『ViVid Strike!』が並行世界であることを認めないわけにはいかない。

 

『あとは、本来、あなたの大人モードより身長が低いはずのノーヴェが「ViVid Strike!」のキャラクター対比表では高く描かれている――なんてのもあるわね』

 

 ノーヴェの身長はスバルさんと一緒。なのはママと同じくらいなので、フェイトママやシグナムさんより高いわたしより上というのは――多少の変化があったとしても――無理があるのだ。

 

『でもね、ヴィヴィオ。こんなのは考察とは呼べない。ただの推論。あくまで私の憶測にすぎないわ。だって、この程度のズレ、たいした問題じゃないもの』

 

 

「ええええええええ!? じゃあ、なんで並行世界だなんて言い出したのぉぉ?」

 

 

『そうね。少し言い換えましょうか。「ViVid Strike!」は「Force」にとっての並行世界なのよ』

 

「『Force』にとっての……?」

 

 つまり、現在わたしがいる世界にとっての――という意味だけど。

 

 

『ヴィヴィオ、よく思い出して御覧なさい。「魔法戦記リリカルなのはForce」が連載していたころは――まだ「ViVid Strike!」が存在していなかったのよ』

 

 

 …………。

 

『だから「Force」の世界観に「ViVid Strike!」の物語は反映されていない。だって、ないものを前提とした世界だもの、当然よね』

 

「あ……」

 

 単純だけど、そりゃそーだ!

 身も蓋もないメタ発言だけど、反論しようがない。

 

『ViVid Strike!』のキャラ――フーカさんを登場させてしまった時点で、それはもう『Force』とは別の、並行世界になってしまうのだ。

 

「そっか、だからなんだっ!

『Force』の長期休載が発表されたのは、『娘TYPE』2013年11月号。

 一方で、ユミナさんが初登場した『ViVid』13巻の初版発行日は、2015年1月26日。

 すでに、『Force』の連載がストップしていた……。じゃあ、この世界には、水瀬いのりさんや上坂すみれさんはもちろん、小倉唯さんもいないってことぉぉ!?」

 

『声優の名前で言わないの。まあ、あくまで「Force」本来の漫画での話だから、フーカやユミナ、リンネって子が、この世界にいないとも限らないわ。いたとしても別の人生を歩んでいる可能性もあるでしょうけど』

 

 

「あっ……あああああああああああああああああああ!」

 

 

『今度はなによ』

 

「だからだよ! この世界、わたしとアインハルトさんがやけに仲がいいと思ったら、ユミナさんがいないからだぁぁ!」

 

『……あら、三角関係?』

 

「そうじゃなくて! あ、それもあるかもだけど、ユミナさんがいないということは、アインハルトさんは、学校のクラスでぼっち街道まっしぐらなんだよぉぉ!」

 

『……あー』

 

「つまり、アインハルトさんにとって、学校で最も親しい、唯一ともいえるお友達は、わたしオンリー。……あ、リオコロとノーヴェもいるけど、どう考えてもわたしが頭一つ分抜け出してるし!

 わかりやすく説明すると、プリズマイリヤで全てのクラスカードを回収したあと、2巻ラストの美遊が、イリヤにべったりだったみたいな感じぃぃ!」

 

 わたしの友達は生涯イリヤだけ、他の人なんてどうでもいいでしょ――みたいな。

 

「なんてうらやましぃぃ!」

 

『ヴィヴィオ、どうどう。落ち着きなさい』

 

「ご、ごめんなさいお婆ちゃん……」

 

 道行く人が、何やら不審者を見る目でこちらを見ているので、深呼吸して心を静めることにする。

 

「すー、はー、あー、それにしてもこの『Force』世界だと、リンネさんのゴリラパワー(怪力)が見れないなんて……」

 

『ゴリラパワーって……まあ、あの子強かったものね』

 

「うん。それに、設定資料集の裸イラストを見ればわかるんだけど、リンネさん、変身前からムチムチボディなんだよ?

 アインハルトさんなんて、初めて見たとき「へー」とか、平静なフリして、サンドバッグに穴開けてたし。

 はあ、あのムチムチボディは、わたしたちの理想だったのに……」

 

『そういうものかしら?』

 

「お婆ちゃんやフェイトママにはわかんないんだよ!」

 

 

《そーだ、そーだ!》

 

 

 アリシアさんの声がさり気なく聞こえてきた直後、今度は騒がしい(リオ)声が聞こえてくる。

 

 

「外で騒いでたの、さっきのヴィヴィオのそっくりさんだ!」

 

 

 しまった!

 ちょっとはっちゃけ過ぎたか!

 続けて複数の足音。ガラスの自動ドアが開いて飛び出してきたのは、コロナに、ミウラさん、アインハルトさん、それに高町ヴィヴィオ――この世界のわたし。

 

「黒焦げアフロじゃなくなると、ますますヴィヴィオにそっくり……」

 

「えっと……わたしの……そっくりさん?」

 

「あ、あの、ボクには区別がつかないんですが……」

 

「ど、どういうことですか? ヴィヴィオさんの偽物、名前を、名前を名乗りなさい!」

 

 くっ……こうなったら、

 

「ヴ……」

 

 ヴィヴィで〝V〟が2つだから、

 

 

「V2(ブイツー)! V2・アサルトバスターが、わたしの名前だぁぁ――っ!!」

 

 

 

【次回予告】

 

しまった! つい勢いでヴィクトリーガンダムふうに答えてしまったけど、せめてコードギアスのV.V.(ブイツー)にしとけばよかった~。一生背が伸びなくなりそうだけど……っていうか、これどうしたらいいの!?

 

次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第4話。

 

【ギャラクシーエンジェルとは違うのだよ】

 

で、リリカルマジカルがんばります!

 

 

 




『VIVIO』だから〝V2〟なんですが、実はもう1つ理由があったりします。
サラちゃん経由なんですけど、わかる人は「ああ、いつかあの技を使うつもりか!」と笑っていただけるとうれしいです。
ただ……アレを使うような激しいバトルがあるかといわれると……いまのところないなと(笑)。

それはそれとして、作中に登場した『ViVid Strike! 設定資料集』の裸イラストの件なのですが、フーカ、リンネ、アインハルトさん、リオコロ、ミウラさん、みんな『裸参考』で載っているのに、ヴィヴィオだけいくら探しても見つかりません。
ひょっとして〝落丁?〟とも思ったのですが、ページ番号ないですし、1冊しか持ってないですし、回りに持ってる人もいないですし、立ち読みもできないので、調べようがありませんでした。

これまでページ番号が書いてなくてもあまり気にしない派だったのですが、なるほど、落丁かどうか判断するには必須なんだなと。もしも、ページが抜け落ちていたとしても、このタイプの設定資料集では、前後のページで判断できないという孔明の罠。

逆に、落丁ではなく、最初からの仕様だった場合、ヴィヴィオだけなかったのはなんでだろう? 幼女だから(笑)とか思ったりもしたのですが、同い年のリオコロは載ってるし……さっぱりです。ノーヴェとユミナの裸がないことから、おそらく、バリアジャケットを装着した――変身バンクがあったキャラのみ用意されたのでしょうが……でも、そうなるとヴィヴィオだけない理由がさらに不明。
なので『単に掲載を忘れた』か『落丁』のどちらかだと思うのですが……??

まあ、お風呂シーンの設定資料のおかげでミウラさんとは乳比べできるので、いいんですけど。
ミウラさんやばいです(笑)。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。