アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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『魔法戦記リリカルなのはForce』の世界に飛ばされたわたし――高町ヴィヴィオは、帰還までの時間、未来のナカジマジムを見学に向かう。ところが、ちょっとテンション上がりすぎて、未来の自分たちに見つかったあげく……その、やらかしてしまいました。


第4話 ギャラクシーエンジェルとは違うのだよ

 ナカジマジムの入っているビルの外。

 わたしの目の前には、リオ、コロナ、ミウラさん、アインハルトさん、それに高町ヴィヴィオ――この世界のわたしが立っている。

 未来のアインハルトさんがわたしを指差す。

 

「ど、どういうことですか? ヴィヴィオさんの偽物、名前を、名前を名乗りなさい!」

 

 くっ……こうなったら、

 

「ヴ……」

 

 ヴィヴィで〝V〟が2つだから、

 

 

「V2(ブイツー)! V2・アサルトバスターが、わたしの名前だぁぁ――っ!!」

 

 

「「「「「V2・アサルトバスター……?」」」」」

 

 

 しまった。ちょーしまったっ!

 動揺したせいか、勢いに任せてVガンで答えてしまった。何だか上手い感じに名前と名字に分かれたのだけど、これはないなー。

 百歩譲ってV2はいいけど、名字がアサルトバスターはないなー。

 

「お婆ちゃん、どーしよう……?」

 

『面白そうだから、そのまま行きなさい』

 

 適当すぎるっ!

 クリスがいないため、現在わたしの仮デバイスになっているサラちゃん(ガンプラ)から答えが返ってくる。

 まあ、中身はプレシアお婆ちゃんなんだけど……。

 

 プレシア・テスタロッサ。

『無印』や『The MOVIE 1st』を見て暗いイメージがあるかもしれないけど、考えてみて欲しい。あのアリシア・テスタロッサの母親である。あの性格が遺伝なのだとしたら……そう、基本的にお婆ちゃんはおバカ……じゃなかった、アホ……でもなかった、明るいことが大好きなのである。

 逆に『A's』や『The MOVIE 2nd A's』の狂気に陥る前の彼女を見て、落ち着いた大人の女性のイメージをもつ方も多いだろうが……考えてみて欲しい。フェイトママも子供のころから落ち着いていたけれど、なのはママやリンディさんという一風変わった(いい意味でだよ!?)人たちが大好きなのである。

 そう。どう転んでも、テスタロッサ家は面白いことが大好きな一族なのだ。

 

「前々から思ってたんだけど、お婆ちゃんって無責任艦長というか、無責任魔導師だよねぇ……」

 

『あら、光栄じゃない』

 

 

《あー、そういうところ昔からありますよねえ。面倒くさいことは私に任せて、自分は好きにやってるんですよ》

 

 

『それ今関係ないでしょ!?』

 

 リニスさんとお婆ちゃんのやり取りが、だんだんトムとジェリーに見えてくる。ネコとネズミが逆転してるけど。

 すると、ようやくこの世界のわたしたちの間でも意見の決着を見たようだ。

 

「V2・アサルトバスター……かっこいい名前だよね!」

 

「リオ、絶対偽名だって」

 

「アサルトバスター……何だか強そうなお名前です」

 

「アインハルトさん、流石にそれは~」

 

「ぼ、ボクにはなんとも……」

 

 ……おや~。

 

「ねぇ、お婆ちゃん。わたしとしては、

『なに、その光の翼とか出そうな名前ぇぇ――っ!?』

 みたいに、激しく突っこまれると思ってたんだけど?」

 

『そうね。おそらく、この世界にはガンダムが存在しないんじゃないかしら?』

 

 あ~、なるほど。

 だから初めて会ったとき、コロナはモビルドールサラを見ても、お人形さん――みたいにしか反応しなかったんだ。

 ちょっと寂しいかも。

 

 

「あの、ちょっといいかな?」

 

 

 この世界のわたしが手を挙げる。

 

「さっきから気になってたんだけど、そのお婆ちゃんってなに?」

 

「あ~、実はこのデバイス、わたしのお婆ちゃんが遠隔操作してて」

 

「お婆ちゃんってことは……その、あくまで例えばなんだけど、どこかの管理外世界で喫茶店をやってるとかじゃ……」

 

「あー、そっちじゃなくて。というか、あっちのお婆ちゃんは、お婆ちゃんって呼ぶの禁句でしょ?」

 

「まあ、そうなんだけど……」

 

「やっぱり、ママのママなのに〝さん〟付けで呼んでるの?」

 

「うん。桃子さんって……」

 

「うわ~、そっちも大変だねぇ~」

 

「あはは……って、やっぱりあなたわたしじゃないの!?」

 

 ちっ……。

 

「なんという誘導尋問……」

 

 

「あっちのヴィヴィオ、アホだね……」

 

「やっぱり偽物なんじゃ……」

 

 

 くっ……。

 未来とはいえリオコロめぇぇ~。

 こうなったら、

 

 

「初めてですよ、聖王であるわたしを、ここまでコケにしたおバカさんたちは……」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 あれ?

 

「ちょ、お婆ちゃんドラゴンボールネタが通じないんだけどぉぉ!?」

 

 ちなみに、フリーザ様の名言をパクって改造してみました。

 

『ドラゴンボールもないんでしょ』

 

 くっ……なんてやりにくい世界だ!

 未来のわたしが小首を傾げる。

 

「……今、聖王って……」

 

「ノー、ノー、ノー、聞き間違えです」

 

「あの、今更なんですが、その紅と翠の虹彩異色の瞳は……」

 

「……か、カラーコンタクトでーす」

 

「変身魔法ではなく?」

 

「…………変身魔法です」

 

 

「「「「「遅すぎる!?」」」」」

 

 

 なんだか、真綿で首を絞めるようにジワジワ包囲されていく。しかし、わたしがヴィヴィオであるという証拠がない。あと一歩が踏み出せないでいると、ミウラさんが恐る恐るといった感じに手を挙げた。

 

「あの~、どうでしょうか? ここは1つリングで決着をつけるというのは。彼女が本当にヴィヴィオさんだとしたら、ファイトスタイルでわかるかと」

 

「確かに、あのカウンターは誰にでも真似できるというものではありませんし」

 

「本物のヴィヴィオなら、負けず嫌いだからわざと負けるなんてできないだろうしね」

 

「つい本気になっちゃうよね」

 

「えー、わたしそんなに負けず嫌いじゃないよー」

 

 

「「「「いやいやいや」」」」

 

 

 おかしいな。

 こっちの世界でも言われ放題だな、わたし……。

 

『どうするのよ、ヴィ……V2?』

 

 自分でもすっかり忘れてたよ。アサルトバスター。

 

「もうひとりのわたしと戦う。それはそれでちょー貴重な体験だとは思うんだけど、できれば、時間までにもう1つ見ておきたいモノがあるんだよね」

 

 しょうがない。

 ぽくぽくぽくぽく……チーン!

 そろそろ一休さんとかリメイクされそうな予感。

 

「えっと、そっちのボクっ娘――というかアホ毛が3本ある方」

 

「ぼ、ボクのことですか!? アホ毛3本って……」

 

 ミウラさん。実際、設定資料集に『アホ毛3本あります』って書いてあるのだからしょうがない。

 

「あなたのちっちゃい師匠といい、高町家といい、すぐにバトルで白黒つけようとするのはよくありません」

 

「「あう」」

 

 何気にあっちのわたしもダメージを受けている。

 

 

「そんなだから……(ここで溜め)……アインハルトさんですらふつーのブラをつけてるのに、ミウラさんだけわたしたちと同じキャミソールのままなんですよぉぉ!? 中3ですし、そろそろヤバイんじゃぁぁ!」

 

 

「普段はスポーツブラつけてますよぉぉ!?」

 

「いえ、私服のときです」

 

「ど、どーして知ってるんですかぁぁ!? ヴィヴィオさんたちにも話したことなかったのにぃぃ!?」

 

 むぅ……流石はミウラさん。1年後も育ってなかったかあ~。設定資料集を見ると、大人モードに成長しても、あのシャンテと同じ身長だからなあ……というのは置いといて。

 この『Force』世界。ユミナさんがいない分、わたしがアインハルトさんにかかりきりなのだろう。つまり、ミウラさんとの友情度が上がりにくい。そう、いまだに、

 

『一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし……』

 

 みたいな関係。

 ここは、未来のわたしに1つアドバイスをあげねば。

 

「たとえ、アホ毛3本の方が、

『ぼ、ボクにはまだ早いですからぁぁ~』

 とか恥ずかしがったとしても、みんなで一緒についていって、彼女に似合う可愛いブラを選んであげてくださいね」

 

 

「ふにゃああああああああああああああああああああああ~~っっ!?」

 

 

 顔が赤く染まる。ミウラさんが吼えた。同時に、足元の魔法陣に、なのはママとよく似た桜色の魔力光が集中する。

 集束系魔法――抜剣。

 こりゃ凄い! たった1年で、わたしの知ってるミウラさんより、格段に威力がアップしている。

 

『大丈夫なのかしら……これ?』

 

 お婆ちゃんは集束魔法にあまりいい思い出がないらしい。主になのはママのせいだけど……。

 

「うん。このまま暴走したミウラさんの技を食らったフリして、後ろに吹っ飛んで逃げる作戦」

 

『あら、意外に策士ね?』

 

「まあね。伊達に毎回爆発オチみたいな感じで、すんごい必殺技食らってるわけじゃないからね。いくらパワーアップしてるミウラさんといえども、一撃くらいならセイクリッドディフェンダーで受け流せるよ……たぶん」

 

『たぶんなのね……』

 

 すると、もうひとり追加戦士(緑)が。

 

「あの、ヴィヴィオさん……先程の、私ですらってどういう意味でしょう?」

 

「あー、アインハルトさんも思ってたより成長してなかったので、まだまだ必要ないかな~って思うんですが、ミウラさんよりはかろうじておっきいですし。まあ、わたしとしてはちっちゃいままの方が……って」

 

 おや~。

 アインハルトさんの右拳に、グリーンの魔力光が集まっていく。

 

「逃げてー、そっちのわたし逃げてー」

 

 もうひとりのわたしがアインハルトさんを必死に押さえつけ、リオコロがミウラさんの両腕をつかんで……いやいや蹴り技ですから~。

 スパロボでいうところの合体攻撃だな~、これ……。

 

『ヴィヴィオ……あなたよく落ち着いていられるわね?』

 

「こういうときは平常心なんだよ、お婆ちゃん。高町家ではよくあること!」

 

『嫌な家ね……』

 

 実際問題、八神さんちのヴィータさんとフェイトママが同時に近接攻撃魔法を放ってくるようなモノと考えれば~。

 

「次回までには復活できてるといいなあ~」

 

『ちょ、次回予告には早いわよッ!?』

 

 ミウラさんの脚とアインハルトさんの拳にさらなる輝きが宿る。

 まばゆい光が解き放たれた!

 

 

「抜剣――星煌刃!」

 

 

「覇王! 断空拳ッ!」

 

 

 桜色の蹴りと緑色の拳が正面から突き刺さり、わたしの小さな身体は「ぷろぉぉ~」と遥か後方へ弾き飛ばされる。

 

 死んだー、これ死ぬやつだ~。

 

 車椅子はやてさんのように闇の書が助けてくれるわけではなく、ヴォルケンリッターが現れることもなく「ボコン!」とトラックにはねられたわたしは、ふんがっ――と向かい側の通りへ。

 最後はとどめとばかりに、カエルが潰れるような感じで、舗装された並木道に、うつぶせの格好で叩きつけられた。

 びたん!

 あ~、Tシャツに張りつきそうかも。

 

『ヴィヴィオ~ッ!?』

 

「うん、大丈夫、大丈夫――」

 

 わたしは何事もなかったかのように――ゾンビランドサガみたいに――ムクリと起き上がった。

 

「こっちの世界のわたしたちが追いついてくる前に逃げないと」

 

『ちょっとあなた、平気なの?』

 

「……うん。わたし自身、驚いているところなんだけど」

 

 アレだけの攻撃を受けて無傷。

 

「斬魔剣二の太刀みたいに、服だけ切れたわけじゃないし……」

 

 服だけ切れて厄災切れず――っ!

 いつもより身軽に、まるで忍者のようにぴょんこぴょんこ街路樹や街灯をジャンプして移動する。

 

「はあ、こんなことしてるから、ユミナさんから『汚い、さすが陛下汚い!』とか言われるんだよなあ~」

 

 この世界のわたしでは、追いつくこともできないだろう。

 

『強くなったわね、ヴィヴィオ。流石は私の孫だわ』

 

「うん。たぶん、この力、お婆ちゃんのおかげなんだよね」

 

『私の?』

 

「サラちゃん――5-01型デバイスに、レリックと似た高エネルギー結晶体を使ったでしょ」

 

 さらに、第五世代デバイスの『魔力有効状況下においてはさらなる強化を得る』という設計が、正しく機能したのだろう。

 よかった~。

 今回は暴走しなかったらしい。というよりも、これが本来の5-01型デバイスなのだろう。わたしに適したピーキーな機体。

 

『ああ、そういうこと。つまり今のあなたは――』

 

「聖王モード。アインハルトさんとミウラさんの合体攻撃を食らっても平気だったのは、こっちに飛ばされる前に、お婆ちゃんが言ってた通り〝聖王の鎧〟が発動したから。聖王の鎧は、無意識に発動するパッシブスキルだからね。条件さえ揃えば、勝手にわたしを守ってくれるんだよ」

 

『そうだったわね。そういえば、以前から聞いてみたかったのだけど、あなたのセイクリッドディフェンダーって……』

 

「防御全振りのクリスを使って、本来、聖王の鎧が自動的に行うことを、〝技術的〟かつ〝意識的〟に、擬似再現した魔法だから、劣化聖王の鎧、あるいは聖王の鎧の下位互換になると思う」

 

『確かに〝瞬間的な防御〟――という意味ではどちらも同じなのよね』

 

「本当はディフェンダーだって、聖王の鎧みたく全身防御にしたいんだけどね」

 

『あなた、4巻の魔力負荷トレーニングでようやく一点防御。それも、他の部分の防御魔力をゼロにして、やっと発動だものね』

 

「うん。だから、遥かに高性能な聖王の鎧なんて無敵バリア、今回みたいにレリックの莫大な魔力がなかったら、とてもとても……。たぶん、大人になっても使えないんじゃないかな?」

 

 よく、わたしは『なのはママのスターライトブレイカーにより聖王の鎧を無くした』と言われているけれど……ピンポーン! 正解である。

 

 ただし、それは莫大な魔力の源であったレリック――聖王核を失ったからであり、決して、遺伝子に刻まれた固有スキルまで失ったわけではない。

 

 それはどういうことかというと……ちょこっと思い浮かべて欲しい。

 

 これまで、リリカルなのはの世界で――なのはママの極大魔法を食らって、スキルを失った魔導師がいただろうか?

 

 どう見てもオーバーキルされたフェイトママを含め、誰一人いないのである。

 

 しかも、あの時なのはママは、

 

『防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン。いけるね、レイジングハート!』

 

 と言っているのだけど……これ、いわゆる〝非殺傷設定〟というやつである。

 

 わたしの肉体そのものは傷つけないように撃っている。そう、破壊されたのはレリックのみ。傷つけられなかったわたしの体が、遺伝子に刻まれた固有スキルを失う理由はどこにもない。

 

 そもそも、両腕や主要臓器を欠損するような負傷を負ったオリヴィエですら、聖王の鎧を失わなかったのだ。

 

 たいした怪我も負っていないわたしが失ったのでは、オリヴィエに申し訳が立たない。

 

 もちろん『スターライトブレイカーの影響で偶然失った』可能性もある。

 

 けれど『偶然失った』――なんて言い出したら、それこそ、なんでもアリになってしまう。今、この時、『偶然、聖王の鎧が戻った』と言ってもアリになってしまう。

 

 流石に、それはナシだろう。

 

 だったら、なぜ? どうして? わたしは聖王の鎧を失ったのか?

 

 難しく考えることはない。

 

 単純な理由。

 

 最初に述べた通り、

 

『わたしが、魔力補助コアであるレリック――聖王核を破壊され、莫大な魔力を失ったから』

 

 だ。

 

 12巻で、奇しくもアインハルトさんが語っている。

 

『ディフェンダーもきっと同じだ――防御箇所以外は裸に等しい状態』

 

 そう。

 

 わたしの魔力量では、セイクリッドディフェンダーですら一点防御しかできなかった。

 

 それなのに、全身防御で、なおかつ、ディフェンダー以上の防御力を誇る聖王の鎧を、どうしてわたしが使えるというのか?

 

 使えないのだ。

 

 そして何より、思い出して欲しい……。

 

 もし、わたしがレリックなしで、聖王の鎧を使えるのだとしたら……。

 

 

「そもそも『StrikerS』の六課襲撃のとき、ルールーやガリューにさらわれるなんてことなかったもん」

 

 

 わたしが身を守っている間に、気がついたヴァイスさんが、ルールーはダメでも、ガリューを背後から狙撃したかもしれない。

 

 エリオとキャロが間に合って、室内での陸戦が始まったかもしれない。

 

 そうなれば……最強の援軍が到着した。

 

 わたしがさらわれなければ、ゆりかごは飛ばない。

 

 機動六課は、ヴェロッサさんとシャッハさんが発見したスカリエッティのアジトに、全員で突入。

 

 ゆりかごは浮上することなく『JS事件』は解決していた。

 

『StrikerS』の物語は、そこで試合終了である。

 

 

『これは検査してみないとわからないのだけど、そもそも聖王の鎧は、最初から、聖王核があることを前提としたスキルなのかもしれないわね。レリックウェポンになること。故に強力。

 けれど、それだけではなくて、例えば聖王家の一族と一般庶民との間に生まれた子供が聖王の鎧を使えたとしたら、選民意識を持つ中枢王家はどう思うかしら?』

 

「……嫌がるってこと?」

 

『ええ、嫌がるでしょうね。庶民の子が、庶民と結婚し、やがて聖王家にのみ許された秘中の秘が、民間に広まってしまう。全ての庶子を迎え入れたり、始末したりすることはできないでしょうし。

 だから、安全装置を設けた。

 聖王核だけが盗まれても、遺伝子だけが流出しても――使えない。両方がそろって初めて、聖王の鎧が使える。ゆりかごもそうだったでしょ?』

 

「あー、そっか、そういう考え方もあるんだ……」

 

 遺伝で発現する虹彩異色や虹色の魔力光とは別に、ゆりかご内部で生まれた、ゼーゲブレヒト家をはじめとする中枢王家の子である正統な証――みたいなものだろうか?

 

『それはそれとして、聖王の鎧を完全に発動させるためには、ある程度、身体の成長も必要なのかもしれないわね。聖王核からの魔力を安定させるためか、莫大な魔力量に肉体が耐えるためかはわからないけど』

 

「スカさんが、ゆりかごを動かすためにわたしを大人モードにしたのも、その辺りが理由ってこと?」

 

『ええ。子供のころから聖王の鎧を完全に発動できるなら、そもそも、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトが両腕を失うこともなかったでしょうしね』

 

 11巻を読む限り、オリヴィエも5歳児くらいまでは両手があったのだ。

 

「単純に聖王核があるくらいじゃ、まだ足りない。発動はできても、まだ不完全……」

 

 そう。

 

 

「FF4のテラのように……」

 

 

『あー、ちょっと待ちなさい。〝おもいだす〟から……えっと、最大MPが90だから、イベントで全ての魔法を思い出しても、消費MPが99のメテオは使えないってことね』

 

「うん。でも、プチメテオなら消費MP50でしょ」

 

『……えー、まあ、そうね。テラは使えないけど、1000歩くらい譲ってよしとしましょう』

 

 ちなみに『GOD』では、セイクリッドディフェンダーが上手く機能したおかげで、わたしは作中でも、なのはママより上、ユーリに次ぐ防御力を誇った――ということになっている。

 

 ドラマCDのとき、ミッドで再会したレヴィが『そういえばヴィヴィオも堅かったなあ~、防御』と語っていたのも、そのためだ。

 

 ただ、どうして『GOD』のときだけ、あんなに上手くセイクリッドディフェンダーが機能したのかは、未だによくわからないのだけど……。

 

 ゲーム世界だから――以外にも、何か理由があるはずなのだ。

 

 この旅でわかると面白いのだけど。

 

『トップクラスの防御魔法なのに、他の魔導師が真似できない――という点では、セイクリッドディフェンダーも、あなたの固有スキルと呼んでいいのでしょうね』

 

「そう言われると……そうかも」

 

 ちなみに、聖王の鎧は防御性能にばかり目が行きがちだけど、実は、わたしが〝可愛く生まれてきたこと〟にも関係している。

 

 自分で言うな、と突っこまれそうだけど、苦情は聖王家にお願いします。

 

 その件はまた別の機会にでも。

 

「そろそろいいかな」

 

 わたしは足を止めた。振り返るが、もう誰も追ってきてはいない。流石に諦めたのだろう。

 街路樹から下り、一般人に紛れて並木道を歩き始める。

 

「はあ、まさかガンダムがない世界なんてね~」

 

『もともと、リリカルなのはにガンダムはないでしょ』

 

 そうでした!

 

『ただ、わかったことも多いわね。あなた、原作の世界で黒焦げアフロになることはあったのかしら?』

 

「ボロボロになることはあったけど、黒焦げアフロはなかったかなあ……。あ、フーカさんなら『ViVid Strike!』で、リオの春光拳を食らって黒焦げになってたけど」

 

『そう、やっぱりね。コロナが、

「本物のヴィヴィオなら……こんな黒焦げで、アフロになんかならないよ」

 と言っていたでしょ?

「ViVid Strike!」の出来事が反映されていないこの世界は、より原作の「Force」に近い世界観なのかもしれないわね』

 

 黒焦げアフロになんてならない世界。

 

「いつもの『ViVid LIFE』的な、コメディ世界ではなく?」

 

『ええ。隕石が落ちてきて世界が滅んでも、次の回には何事もなかったかのように復活する世界とは違うのよ』

 

「つまり……なのはママの中の人が出てた『ギャラクシーエンジェル』みたいに、投げっぱなしじゃないってことだね?」

 

『また古い例を持ち出してきたわね』

 

 ちなみに、とてつもなくどーでもいい話題なのだけど、ギャラクシーエンジェルのインタビューで、なのはママの中の人は、次は魔法少女をやりたい――みたいに答えていたので、それがリリカルなのはにつながったんじゃないかなあ……と勝手に思っています。

 

「真面目な世界かあ~。何かあったら大変かも……って思ったけど、GNフィールドをもつ今のわたしを傷つけられる敵なんて、そうはいないだろうし」

 

『実際、ヴァーチェみたいなものよねぇ』

 

 ナドレ!

 

「そうなると、次はやっぱりアレを見に行かないとね」

 

『アレ?』

 

「トーマだよ、トーマ。トーマ・アヴェニール。『Force』の主人公」

 

 

 

【次回予告】

 

ようやく『Force』につながったわけだけど……あれ? 今ってもう『Force』1巻の事件が始まってるのかな? それとも、まだ旅の途中かな? というか、トーマどこにいるんだろう? わたしとトーマの関係を含め、まだまだ問題は山積み!

 

次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第5話。

 

【アヴェニールをさがして!】

 

で、リリカルマジカルがんばります!

 

 

 




今更ですが、ガンダムなどのネタが通じない――というコメディ世界のヴィヴィオたちにとっては致命的な世界です。
有名なアニメの台詞を口にしても、オールスルー。
「祝え!」
など、最新の仮面ライダーネタやってもやっぱりスルー。

ちなみに、アニメの『ギャラクシーエンジェル』なんですが、当時、あの投げっぱなしが面白かったです。漫画やゲームのしっかりした世界観に基づくストーリーもよかったのですが、アニメの投げっぱなしというか、適当というか、あのバカバカしさは、最近あまりないので……。
ただ、シリアスな方とギャグの方、両方あったからこそ面白かったのかもしれませんが……。
あとは、ノーマッドがゲームや漫画にも登場できたらよかったのに……。ヴァニラではなくノーマッドEDとか、欲しかったです。主人公の艦長……タクトでしたっけ、彼とノーマッドって結構息が合いそうだと思うのですが(笑)。ヴァニラさ~ん。

たぶん、この小説が原作より『ViVid LIFE』寄りなのも、アニメ版ギャラクシーエンジェルが好きだったことと無関係ではないのだろうなあ、と思います。


最後に、次回のタイトルを見て、意味がわかった方は素晴らしいです。祝え! です。
主人公がトーマ・〝アヴェニール〟で、ガンダムネタときたら、避けては通れないかなと思うのですが、どうでしょう?(笑)

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