アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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『Force』世界の高町なのは(25)の元に、ノーヴェから「ヴィヴィオの偽物が出た」という連絡があって……?


第4・5話 もしもヴィヴィオが2人なら

「――ん、わかった。私からフェイトちゃんに伝えておくね」

 

 本局の技術部にて、カレドヴルフ社の協力で行われていた新型装備――AEC武装のテスト休憩中、愛娘のコーチからの連絡を受けて、私は急いで長年の友人に通信を入れた。

 空間ディスプレーに長い金髪女性の顔が表示される。

 

「ごめんねフェイトちゃん。お仕事中」

 

「大丈夫だよ、なのは。これからフェディキアに向かうところだったから。シャーリーも一緒」

 

「なのはさん、どーもです!」

 

 隣からピョコンと眼鏡をかけた女性の顔も映った。相変わらず騒がしい……じゃなかった明るい子だ。でも、

 

「ちょうどよかった。シャーリーにも伝えなきゃだったし」

 

「おや、それは珍しい」

 

 どういうことでしょうフェイトさんと、シャーリーが小首を傾げた。

 

「あのね、今ノーヴェから連絡があって、ヴィヴィオの偽物が出たって」

 

「偽物? ヴィヴィオの?」

 

「それって、〝ウ〟ィ〝ウ〟ィオとか、偽ブランド的な?」

 

「ううん、そういうのじゃなくて、そっくりさん」

 

「つまり、ヴィヴィオに変装した、あるいはヴィヴィオのフリをした犯罪者が現れたってこと?」

 

「ひょっとして聖王教会絡みなんじゃ?」

 

 フェイトちゃんとシャーリーがわずかに眉をひそめた。

 フェイトちゃんはもちろんだが、シャーリーも本気で心配してくれている。何だかんだで、根は真面目でいい子なのだ。

 はあ、グリフィス君も見る目がない……なんて言ったらルキノに失礼か。

 

「んー、それがね、特に事件性があるわけではなく、大した被害が出たわけでもなく」

 

 むしろ、ヴィヴィオたちが――ミウラちゃんやアインハルトちゃんが加害者だったらしいけど、相手が姿をくらませた――ということは、偽物側にもやましい事情があったのだろうから、お互いに喧嘩両成敗。

 

「そういうことなら、別に焦るようなことでもないんじゃ」

 

「そうですね。世界には自分にそっくりな人が3人はいる――って言いますし」

 

 地球にもそんな格言があったっけ。そうなると、次元世界規模ならもっといそうな気もするけど。そっくりさん。

 

「ただね、妙にヴィヴィオたちの個人情報や事情に詳しいというか……」

 

「ストーカー?」

 

「ううん、今日初めて会ったって」

 

「あー、アレじゃないですか? ほら、最近ストライクアーツの上位選手って人気あるじゃないですか、テレビで特集されることもありますし。その影響か、モノマネする人も増えてきたって」

 

 人気スポーツ選手のモノマネ――みたいなノリだろう。

 

「ヴィクターやジーク、アインハルトに続いて、ついにヴィヴィオもモノマネされるようになったってこと?」

 

 フェイトちゃんはしっくりいかないようだけど……うん、フェイトちゃん自身、昔から鈍感だったからなあ~。

 大変なのは、私やはやてちゃん、アリサちゃんにすずかちゃん、周りにいる子たちなのだ。

 

「なのはさんの娘さん――ということも含めて、むしろ、これまで注目されなかった方がおかしいんですよ」

 

 シャーリーが語気を強めた。

 

「そっか、そういう可能性もあるんだね。人気選手のモノマネをするために、見た目をそっくりにしてジムの練習風景をのぞいていた……かあ」

 

「あれ、なのはがそういう風に言うってことは、モノマネの線もないってこと?」

 

「うん。特にモノマネする気もなかったみたいで」

 

「愉快犯でしょうか?」

 

 すると、フェイトちゃんが真剣な口調で呟いた。

 

 

「ひょっとして……ついに見つかった……ううん、現れたってこと? ヴィヴィオ以外に造られた聖王女の複製体が……」

 

 

「あ、あああああ! そ、そうでした! すっかり忘れてましたけど、ヴィヴィオって……これって大事件じゃないですか!?」

 

 シャーリーが慌てている。

 

「あー、それならそれで私は構わないんだけどね。今更1人くらい増えたところで」

 

「なのはっ!?」

 

「なのはさん~」

 

「なんだったら、さらにもう1人増えてくれれば、1人は無限書庫でユーノ君の後を継いで司書になって、もう1人は私の後を継いで局の魔導師になって……あ、どうせならもう1人が翠屋を継いでくれれば……まあ、そっちはお姉ちゃん次第だけど。お父さんとお母さんは喜ぶかな~。そう考えると、あと3人はヴィヴィオが必要だね」

 

 合計4人。うん、それくらいならなんとか……。

 

「なのは~っ!?」

 

「ごめん、ごめん、冗談だってフェイトちゃん」

 

 

「私も、愛玩用に1人欲しいかな」

 

 

「愛玩用って……」

 

 あのシャーリーが「まじひくわー」みたいな表情で一歩下がった。

 

「私も冗談だから!」

 

「まあ、気持ちはわかるけどね。最近のヴィヴィオってストライクアーツの練習やら試合やら合宿やらで、家を空けることが多いし、母親としては寂しく感じることもあるんだよ」

 

「そういうものなんですか?」

 

「そういうものなんですよー」

 

 私はシャーリーに微笑んだ。

 

「――と、まあ、それはさておき。その偽物ちゃん、複製体でもないみたいなんだよね」

 

「というと?」

 

 フェイトちゃんが首を捻った。

 

「ヴィヴィオ本人……ううん、もう1人のヴィヴィオかな」

 

「どういうことですか、なのはさん?」

 

 意味わかんないですよ、とシャーリー。うん、そうだろう。

 

「本人はヴィヴィオじゃないって、全力否定してたみたいなんだけどね。口にした内容は教会関係者……ううん、それどころか、わたしやフェイトちゃんしか知らない海鳴のことまで含まれてたって。ヴィヴィオいわく、家族と話してたみたいだって……ちょっとおかしいよね」

 

「そんなことってあるんでしょうか?」

 

 シャーリーが唸る。

 

「……なのは、〝闇の欠片〟ってことは?」

 

 かつて戦った闇の書の残滓。過去の負の記憶や感情を再現したコピーのような存在。

 

「うん。私も疑った。でも、それだと説明できないことが1つあって……。偽物ちゃんが連れてたデバイスが、クリスじゃなかったってこと。

 リインみたいに小さな人型で、やたら偉そうな年配の女性が遠隔操作で操っていた。そして、その女性のことを、偽物ちゃんはお婆ちゃんと呼んでいたって」

 

「お婆ちゃん? ヴィヴィオのお婆ちゃんってことは、桃子さんってこと?」

 

「普通に考えるとそうだよねえ。でも、うちのお母さん、そこまで偉そうじゃないし……あ、高町家のヒエラルキーでは頂点だけどねー」

 

「士郎さん、大変そうだったもんね」

 

 フェイトちゃんがクスクス笑っている。

 

「そうかな?」

 

「なのはさんの実家の家族構成って……」

 

「ああ、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、と私の5人家族だよ。お兄ちゃんは仕事で家を離れちゃったけど」

 

 

「となると、なのはさんのお父様は、お一人で〝なのはさん×3人〟を相手にしていたようなものですか……へー、そりゃ胃に穴が開き……」

 

 

「んー、シャーリー何か言ったかな?」

 

「いえいえ、何にもー。ぜひティアナを居候させてあげたい環境ですよね~」

 

「シャーリー……それは酷というもの」

 

「え、フェイトちゃんまで!? なんでぇぇ~?」

 

 フェイトちゃんとシャーリーが苦笑いを浮かべている。この件は今度追求するとして。

 

「まあ、うちのお母さんではないにしても、フェイトちゃん、ヴィヴィオのお婆ちゃんっていうと、まだ他にいるでしょ」

 

「え?」

 

「だって、ヴィヴィオにはもう1人ママがいるんだから」

 

 あ~、と声を発したシャーリーが、隣にいる上司の執務官をうながした。

 

「私? 偽ヴィヴィオのお婆ちゃんの正体は……リンディ母さんってこと!?」

 

「確かに、距離にも寄りますけど、デバイスをリアルタイムで操るなら、魔導師でないとダメなとこがありますからねぇ。その点、リンディ提督なら合格です」

 

「う、う~ん、そうかなあ……? リンディ母さんも、偉そう――とは無縁の存在だと思うんだけど」

 

「もう、フェイトちゃん、私リンディさんとは一言もいってないでしょ」

 

「だって……」

 

「リンディさんじゃなくて、もう1人いるでしょ、お婆ちゃん。まあ、フェイトちゃんに向かって、その人が〝偉そう〟なんて言うのもどうかと思うんだけど……」

 

 

「もう1人……偉そう……って、あ……でも……だって……」

 

 

 口籠るフェイトちゃんを見て、頭に疑問符を浮かべていたシャーリーが、突然、奇声を上げた。

 

「あ、あああああああああ! そ、そういうことでしたか! あの、デバイスマイスターの資格を持つ身として、1つ発言よろしいでしょうか?」

 

「はい。いいよ、話して」

 

「デバイスの遠隔操作って……その、ゴーレム操作に似ている部分がありまして……」

 

 わたしの脳裏に、100のゴーレムを操る黒衣の大魔導師の姿が思い浮かぶ。

 なるほど、できるわけだ。

 

 

「だから、さ、ホント〝もしも〟の話だよ。あの人が生きていて、ヴィヴィオがお婆ちゃんなんて呼んでいる世界があったとしたら……それって、ちょっと素敵じゃない?」

 

 

「…………どう、なのかな?」

 

 フェイトちゃんが言い淀む。

 

「そんな世界でも、やっぱり、母さんは私を認めてくれないんじゃないかな」

 

 

「そうかも」

 

 

「ちょ、なのはぁぁ!?」

 

「なのはさ~ん」

 

「そこは『そんなことないよ』って慰めてくれるところでしょぉぉ!?」

 

「いや~、つい、正直に」

 

「はあ、そんなだからなのはさんのお父様、胃に穴が開くんですよ~」

 

「開いてないからね!?」

 

 私は「だって」と言い訳する。

 

「今なら、何となくプレシアさんの気持ちもわかるんだもん……。アリシアさんを亡くした……ね」

 

「なのは……」

 

「それにさ、子供の頃のフェイトちゃんってすっごい頑なだったし。ちっともお話聞いてくれないし」

 

「うっ……」

 

「そんなフェイトちゃんのお母さんでしょ。そりゃ、簡単には納得してくれないだろうし、説得もできないだろうなって」

 

「あー、最後はやっぱりズドン! ですか?」

 

「まあ、ズドン! だろうねえ」

 

「やめてー、母さん死んじゃうからー、もともと病気だったし、あと半年の……あと半年?」

 

「うん、そういうこと。病気が治ったのなら時間はあるよ」

 

 フェイトちゃんの表情が少し和らいだ。

 

「でも、ズドンしそうですよねぇ……なのはさん」

 

「うん、一度、全力全開の大魔導師と戦ってみたかったんだよねえ」

 

「あああああ……」

 

「まあ、とは言っても、あくまで〝もしも〟の話だから。そのためにも――」

 

 フェイトちゃんが真顔で答えた。

 

「そうだね。まずはエクリプスの案件を早く解決しないと。明日の取引で、ディバイダーと銀十字が押収できればいいんだけど」

 

「ですね。そうだ、あとでティアナと合流するので、偽ヴィヴィオの件、伝えておきましょうか?」

 

「うん、お願い。スバルが伝えてるかもしれないけど。ティアナによろしくね――うち、怖くないよって」

 

「あ~、そっちはお約束できないかもでーす」

 

「なのは、今度はヴァイゼンで会おう」

 

「うん――」

 

 笑いながら空間ディスプレーを閉じると、私は頬を叩いた。気合いを入れ直す。

 子供たちの笑顔を守るために、

 

「さあ、フォートレスの完成まであとわずかだ!」

 

 

《Let's do our best, master》

 

 

 レイジングハートと共に、私は再び走り出す。

 

 

 

 




万策尽きたわけではなく、サウンドステージみたいなモノということで。
今回の話を読むと、ヴィヴィオの飛ばされた『Force』の世界が、現在どの時期なのかがわかります。
あと、最近なのフェイの出番がなかったので、そろそろ出さないとなあ……という謎のプレッシャーが(笑)。

そのうち元の世界の話もやらないとなあ……と思いつつ、よく考えると、作中ではヴィヴィオが飛ばされてから、まだ半日も経過していないという。
誰も心配してないな、これ……。
コロナが、ヴィヴィオとのガンプラバトルに向けて「うんうん」唸ってるくらい。
積みプラから選ばねば~(笑)。
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