よ~し、せっかくだから、今度は『Force』の主人公――トーマ・アヴェニールを見に行くよ、プレシアお婆ちゃん!
ミッドチルダ中央市街地の並木道を歩きながら、わたしは右拳を空に向かって突き出した。
「アヴェニールをさがして!」
『ヴィヴィオ、あなたそれ、言いたいだけでしょ……』
「えへへ~」
アヴェニールではなく『アベニールをさがして』は、その昔、ソノラマ文庫で発売されたSF小説だ。作者は富野由悠季さん。
そう、あのガンダムの富野監督である。
モビルスーツという名称こそ登場しないものの、ミノフスキー粒子といった単語は登場するし、舞台背景の年代から、初代ガンダム以前の世界観と捉える人も少なくない。
なんていうと、ユニコーンファンに怒られそうだけど……。
「ほら、デバイスもサラちゃん(ガンプラ)だし、一度は言っておかないとって~」
ちなみに、イラストは幡池裕行さん。
『聖刻』や『ソード・ワールドRPGリプレイ第2部』といっても「知らないよ?」って方も多いかもしれないので。
別名義の伊東岳彦さん――『NG騎士ラムネ&40』や『覇王大系リューナイト』『星方武侠アウトロースター』と聞けば、覚えのある方も多いのではないだろうか。
とても魅力的なイラストを描く方だ。
「なんて――そもそも、リリカルなのは好きなら知ってると思うけど、なのはの登場人物って、自動車関連の由来が多いでしょ。
だから、アヴェニールも日産の〝アベニール〟って車名から名づけたと思うから、むしろ『アベニールをさがして』の方が、本来の名称に近いのだぁぁ!」
『はぁ……ヴィヴィオ、あなた、どうしてトーマにアヴェニールの姓が与えられたか、本当に理解しているの?』
「え? だから、自動車関連から選ばれただけでしょ。主人公っぽい、カッコイイ名前ってことで」
『違うわよ。アベニールは地球のフランス語で〝未来〟を意味するのよ』
「なにそれ、フューチャータイムで白ウォズだったの!?」
仮面ライダーウォズ……といっても、わたしがTVで見ていたころは変身者が黒ウォズに変わっていたから、まさにトーマカラーである。
『他にも、アベニールには〝将来性〟なんて意味もあるわね。フランス語の辞書の用例では〝有望な青年〟なんて使い方もされているから、いい意味で主人公に相応しい名称として採用されたんでしょう』
「将来性に有望な青年かあ……ちゃんと考えられてたんだねぇ……」
そこまでは知らなかった。
新シリーズの主人公として、トーマがいかに期待されていたかわかる。
「わたしより待遇いい気が~」
『リリカルなのはシリーズ初の男性主人公だものね』
信号で足を止めると、ふわふわ浮かぶサラちゃんが腕を組んだ。
『それはそれとして、トーマ・アヴェニールなんだけど。わざわざ見に行かなくても、元の世界に帰れば会えるでしょ』
「それはー、そうなんだけどー」
この『Force』世界は1年先の未来――新暦81年なので、元の世界――新暦80年にも、トーマは普通に存在しているのだ。
星1カードみたいなものである。
レアリティは低い。
「ただね、わたしとトーマの関係って微妙なんだよ。『Force』にわたしが友情出演したみたいに、『ViVid』にも少しでいいからトーマが顔を見せてくれたらよかったのに……」
『そういえば登場しなかったわね』
『ViVid Strike!』にも、トーマが出ることはなかった。
お婆ちゃんが『う~ん』と唸る。
『原作「ViVid」における、あなたとトーマの関係ってどうなってるの?』
「えっとね、原作中は一切触れられてない。だけど『GOD』でコラボしたとき、直接会ったことはなくて、スバルさんと一緒のとき通信で話しただけ――ってことになってた」
『それはまた、微妙な関係ねぇ……』
「うん、そうなんだよねぇ。でも、まあ、しょうがないんだけどね。そのころのトーマって保護施設に入ってたから。詳しくはわかんないけど、トーマの故郷の鉱山町ってヴァイゼンだから、保護施設もヴァイゼンにあったのかもしれないし……」
『ああ、第3管理世界ね』
「そーそー。トーマがナカジマ家以外、ヘリパイロットのアルトさんとも仲がいいのは、スバルさんとアルトさんが友人だからだけじゃなくて、アルトさんの出身もヴァイゼンだから――ってのもあっただろうし……」
ティアナさんと仲良くなるのはわかるけど『どうしてアルトさんまで、アーちゃん?』と、理由を知るまでは悩んだものだ。
信号が青に変わり、わたしとお婆ちゃんは再び移動を始める。
『まあ、「Force」は黒歴史だからしょうがないわよね』
「ちょ、勝手に『Force』を黒歴史扱いにしないでよぉぉ!?」
『あら、確か「ViVid Strike!」の主人公――フーカとリンネは孤児院の出身だったわよね? 保護施設つながりでトーマとも顔見知りなんてことも可能だったはずでしょ。休載中の「Force」の設定を活かす絶好の機会だったじゃない』
「ううっ……でもでも、『GOD』じゃわたしトーマと一緒に戦ってるんだから!」
『つまり、未来のトーマと会って、話したことがあるってことよね。だったら、やっぱり見に行く必要ないじゃない』
「あう……それはお婆ちゃんの言う通りなんだけど……だからこそ、なんだよ~。
知らないというか、覚えていない人の方が多いと思うんだけど、『GOD』のトーマって『Force』第二部以降の――新暦82年のトーマだから、わたしはまだ、新暦81年のトーマには会ったことないんだよ~」
普段の世界は、いわゆる〝サザエさん時空〟なので、この時代のトーマに会うことは一生できないのだ。
『あ~、そういうこと……』
「うん。だから一度くらい拝んでおこうかなって」
『拝むねぇ……そんなこと言って、以前に登場したハーディス・ヴァンデインのように、トーマも訳知り顔で現れそうよね』
「うわ、ありそう……」
いつもの小説は何でもアリになってきてるからなあ……。
「ていうか、今から『Force』のラスボスのハーディスさんのところに行って倒せたら、
『魔法戦記リリカルなのはForce 完』
みたいになるのかな?」
『本当、クロノトリガーみたいなことになってるわね』
「ちょうど、強くてニューゲームみたいな感じだしね」
『Force』の漫画を読んでおり、おまけに今のわたしはちっちゃくても聖王モードだ。
『まあ、惜しむらくは「Force」が「6巻+雑誌連載分」しか発表されていないことね』
「だね~。そこまでなら無敵なのに」
逆に考えれば、そこまでなら無敵ということでもある。
エクリプスウィルス? なにそれ美味しいの??
『それで、そのトーマ・アヴェニールなんだけど、どこにいるかはわかっているのかしら?』
「それは『Force』1巻を読めばー……って、あれ? 『Force』の事件っていつから始まったんだっけ??」
とりあえず、1巻の裏表紙に、
『新暦0081年、空戦魔導師・高町なのは25歳――』
と書いてあるので、新暦81年は間違いない。
「細かい日付まではわからないけど、トーマが厚手のジャケットを着てるから……」
『あら、アイシスって子は半袖じゃない』
「……おや~」
しかも、半袖パーカーの下は、丈の短いタンクトップというちょー薄着だ。
そういえば、トーマとリリィさんが最初に立ち寄った港町も、温暖な気候だった。
『そもそも、舞台のルヴェラは、確か第23管理世界だったわよね。ミッドと同じ季節じゃないでしょ』
「うっ……」
そもそもミッドだって、首都近郊が真冬のとき、南国のミラベルは真夏だったりする。
日本とオーストラリアみたいな関係だ。
「だったら、『Force』5巻でわたしが登場したとき、中等科の制服が夏服だったから、ミッドの衣替え前ということで――」
『それもアウトね。5巻のころは、まだ「ViVid」の秋服が存在してなかったのよ』
年中夏服だ。
「ふんがっ! え~っ、じゃ、どうしろと……」
『そうね。かつての機動六課が再編成されたとなればニュースになっているでしょ。だから、この世界の情報網で、新たな特務六課の動きを追えば、現在が「Force」のどの辺りかわかるという――』
サラちゃんの動きがピタリと止まった。
『あら、ないわね。1巻最初の、フェディキアやイスタの事件についてのニュースも見つからないわ』
「それって、まだ『Force』の事件が発生していない。トーマがリリィさんと出会う前ってこと?」
『ええ、そういうことでしょうね』
「そっか~。となると……トーマって確か自分探しの旅の最中だったよね?」
『自分探し……まあ、踏ん切りをつけるための旅よね』
「お婆ちゃんがつけられなかったやつだね」
『ほほう……言ってくれるわね、ヴィヴィオ……』
中身はお婆ちゃんだけど、外見はサラちゃんなので、荒ぶる鷹のポーズもお可愛いこと!
「まあまあ、そういえば、こういうとき突っこんでくるリニスさんやアリシアさんはどうしたの?」
『あの子たちなら、エルトリアのギアーズたちと通信中よ』
「うわ、急がないと、トーマを見る前に戻されちゃうかも!」
アミティえもんは、時間移動に関する掟――航時法にうるさいのだ。
「いざとなったら、お姉ちゃんと連呼して滞在時間を引き伸ばさねば~」
『嫌なお子様ね』
こうなると、いつまでものんびり考察している時間はない。
「しょうがないかあ~。攻略本や攻略サイトを見るようなものだけど、トーマが今現在どこを旅しているのか聞いちゃおっと」
『できるなら最初からそうしなさいよ』
一応、この世界のわたしのことを考えて遠慮していたのだ。
人通りの少ない公園に向かう。
「1巻を読む限りでは、トーマってちょくちょくスバルさんに連絡を入れてるでしょ」
1巻の出だしから、次元間通信が不自由な文化保護区で、電信絵葉書を送っていた。
きっと、新しい場所に移動する度、珍しいものを見たとき、こまめに連絡していたのだろう。
「ナカジマ家の共有アルバムみたいなのもあるかもだけど、わたし知らないし。だから、スバルさんに直接聞いちゃおうかなって」
『大丈夫なの?』
「いや~、最初はほら、スバルさんが、万が一『Force』2巻でフッケバインの飛空艇に乗りこんでる最中だったら大変かなって思ってたんだけど」
『危機感だいなしね』
「まだ1巻前みたいだし、大丈夫でしょ」
変身魔法を使い、わたしは中等科の制服を身にまとう。普段からアインハルトさんの制服を見ているので、再現度はバッチリだ。
あとはスバルさんに連絡を入れるだけ。
「お婆ちゃん、映像通信よろしく」
『はいはい。上手くやりなさいよ』
空間ディスプレーに、白い制服姿のスバルさんが映る。
「こんにちはスバルさん。ヴィヴィオです。今大丈夫ですか?」
『う、うん、大丈夫だけど……』
「あの~、ちょっと尋ねたいことがありまして~」
『あ、あのさ、ヴィヴィオ。その前にちょっといいかな?』
「はい?」
『えっと……さっきノーヴェから連絡があったんだけど、ヴィヴィオの偽物が出たとかなんとか……』
「っ!?」
ノーヴェ、こういうときの対応早すぎ~。
わたしは「あはは」と乾いた笑みを浮かべる。
「えっとー、確かにわたしの偽物というかそっくりさんが出たんですが、アインハルトさんとミウラさんが撃退してくれたので、もう平気ですよー。それに、何か被害が出たわけじゃないですしねー」
『あー、そうなんだ。それで、なんだけど……気を悪くしないで聞いてね。そのう、ヴィヴィオの横に浮かんでる、クリスじゃないお人形さんは何かな~って。ノーヴェが言ってた偽物のデバイスの特徴によく似てるんだけど。リインさんっぽいってところが』
「あ」
『あ』
プレシアお婆ちゃぁぁ~~んっ!!
『フッ……』
開き直ったのか、焦るでもなく、腕を組んで踏ん反り返るサラちゃん……お可愛いこと!
くっ……。
こうなったらわたしも……。
「ふっ……よく気づいたね、スバル!」
お婆ちゃんを見習い、腕を組んで踏ん反り返った。
『うわ~、やっぱり偽物だったぁぁ!?』
「わたしの名前は、V2(ブイツー)!」
アサルトバスターは流石にアレなので今回はパス。
『えっと、それってヴィヴィだからVが2つってこと?』
「違くないけど違うの!」
『えぇぇ~っ!?』
「とーにーかーく、わたしは今、トーマがどこにいるのか知りたいだけなの。それだけ教えてくれれば、これからもずっとへい……平和じゃないかもだけど、大丈夫、スバルさんがトーマのことを信じていれば、夢はきっと叶う!」
『え、なに、その締め方!? 意味わかんないんだけど!?』
しょうがない。こうなったら、
「スバルさん……教えてくんないと、暴れ……じゃなかった、マッハキャリバーでティアナさんをローアングルで撮影しまくってたってこと、みんなにバラしちゃいますよっ!? てか、考えてみたら、なのはママとフェイトママのローアングルだって多いですよねぇぇ!? しかも六課時代の大切な思い出だからって、絶対消さずに持ってますよねぇぇ!?」
『な、な、なんで知ってるの、ヴィヴィオぉぉ――っ!?』
「執務官に通報しました」
『やめてぇぇ!』
「ほーら、ほーら、ノーヴェやトーマにもチクっちゃいますよ~、いいんですか~?」
『くっ……の、ノーヴェはいいとしても、とーまには~』
「弟の前では、いいお姉さんでいたいですもんねぇ~。というわけで交渉成立ですねー」
『弟じゃないけど、ううっ……こんなあくどい子がヴィヴィオのわけない……』
「ふっふ~ん、悪魔でいいよ!」
『!? それってなのはさんの……』
「おおっと~。スバルさん……この世界にはまだまだ魔導や科学じゃ解明できないこともあるんですよー。というわけで、トーマの行き先を教えてください」
『……悪用しない?』
「はい。それはもちろん。なのはママとオリヴィエ、それに……そうですね、クイントさんに誓って」
『……はあ、母さんに誓われちゃね。ところでヴィヴィオ』
「はい?」
『はいって……』
しまった。
『V2、だっけ。やっぱりヴィヴィオなんじゃないの?』
「……違いますよ~。この世界の高町ヴィヴィオは、今もナカジマジムでノーヴェやアインハルトさんと一緒に練習中の女の子なんです。わたしとは別人。それでいいんです。だってわたし、クリスもいないですしね~。もし会うことがあっても、V2でお願いしますね」
まず会うことはないだろうけど。
『了解……って、あ、そうだ。今度の出張、なのはさんと待ち合わせてるんだけど、何か伝えておくことある?』
「へ? ママに……って、だからヴィヴィオじゃないよー」
こうして、スバルさんからトーマの現在位置を聞き出したわたしは、空間ディスプレーを閉じた。
「お婆ちゃん、トーマ、もうルヴェラにいるって」
『そう。でも、電信絵葉書が届いていないところをみると、ギリギリセーフ。「Force」の物語が始まる直前といったところね』
「ということは、今から急いで向かえば、事件に巻きこまれることもないだろうし……なんていうか、このタイムリミットがあるドキドキ感」
『懐かしいわね。私も、私の庭園に踏みこんできた、あなたの母親とフェレット、それに黒い執務官がいつ来るかと……』
「それ、ガチなやつだよね」
サラちゃん越しに哀愁を感じる。
『それで、あなた、どうやって第23管理世界の〝ルヴェラ〟に渡るつもりなの?』
「そりゃもちろん、中央次元港から船に乗って……。お金ならお年玉を貯めた分が……って、クリスがいない! あ、それどころか、この世界で支払った場合、この世界のわたしのお金を使ったことになるの!?」
『そういうことよ』
なんてこったい……。
「わたし、無一文じゃん……」
はやてさんみたいに、懐かしのorzポーズで、両手両膝を地面につけた。
『安心しなさい、ヴィヴィオ。こんなこともあろうかと調べておいたのだけど、この世界にも、私が別名義で作っておいた口座がいくつか残っていたわ』
「え、ナニソレ?」
『そうね。あなたが好きな言葉でいえば、プレシア・テスタロッサの隠し財産――さしずめ、プレシア・テスタロッサの埋蔵金といったところかしら』
「ま、埋蔵金っ!?」
【次回予告】
プレシア・テスタロッサの埋蔵金って……隠した本人がいるんだから、徳川埋蔵金やM資金、テンプル騎士団の財宝なんかよりずっと現実味がある……っていうか、もう、完全にあるよね!? ヤバイ、わたし次回から大金持ちだ!
次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第6話。
【アインハルトさんのバイザーでは3倍のスピードは出ない】
で、リリカルマジカルがんばります!
以前から思っていたのですが、プレシアの特許権、フェイトが相続していたとしたら、フェイトに特許料が入ることになります。色々と問題はありますが、もし、フェイトにプレシアの特許料が毎月入っていたとするならば……?
「フェイトちゃん、わたし新しいスマホ欲しいなあ~」
「まかせて、なのは!」
まあ、くぎゅ……じゃなくてアリサやすずかもお金持ちでしたけど。
今更ですけど、なのはの周囲って、一般人がいない(笑)。
それは置いといて『アベニールをさがして』つながりということで。
かなり古いのですが、例えば、再びロードス島戦記をリメイクするのも(どうせなら伝説から続けて戦記をやって欲しいです。途中で魔法戦士リウイがロードス島訪れたときの話も混ぜて)いいんですが、『ソード・ワールドRPGリプレイ』シリーズを各パーティ3話くらいでアニメ化したら結構面白いと思うのですが……って、無理か(笑)。
ちなみに『聖刻』の方は〝聖刻リブートプロジェクト〟ということで、新しい作品がアニメ化するそうですが……どうなんだろう? 個人的には初期の泥臭い部分や、細かいメカ設定に神話、そしてなにより、幡池裕行さんのイラストこそが聖刻最大の魅力だったと思うのですが……。
正直な話、新規層獲得を目指すよりは、昔のファン層や、幡池裕行さんにお願いしてリューナイト層などを取り込んだ方が、上手くいく気がします。
どちらにせよ、〝聖刻リブートプロジェクト〟成功するといいなあ……。