目指せ最速クリア!
ハーディス・ヴァンデイン。
彼の初登場シーンは『魔法戦記リリカルなのはForce』原作4巻。
フッケバイン一家の工場襲撃のあと、フェイトママとチンクが、ヴァンデイン・コーポレーションの代表者に事情聴取するシーンである。
ところが、時間軸において1巻開始直後の現在、アミタさんはすでに彼の位置情報をつかんでいるという。
流石は未来の〝猫型じゃないロボ〟。
「だったら――よし、プレシアお婆ちゃん、ハーディスさんちの今日のご飯……じゃなかった、ハーディスさんちを強襲しよう!」
『ヨネスケ的な?』
「違うよ!? ハーさんが油断して、戦力が整わないうちに全力全開――高町流交渉術で原初の種、ゲットだぜっ!」
『いやいやいや、ちょっと待ちなさい』
「もー、どうして止めるのお婆ちゃん?」
『そりゃ止めるでしょう。高町流交渉術ってあれでしょう、いきなりラスボス戦よ?』
「いきなりラヴォス?」
『それはクロノトリガー』
「でも、今の状況って〝強くてニューゲーム〟みたいなものだから、似たようなものでしょ?」
『……それは、そうだけど。ヴィヴィオ、それで迎えるエンディングはドリームプロジェクト――開発スタッフの裏話が聞けるおまけ要素よ?』
「……い、言われてみると~」
すると、サラちゃんからアスナ……じゃなかったアミタさんボイスが。
《……あの、お二人とも、ゲームじゃないんですから》
『そうだったわね』
「これは、ゲームであっても遊びではないっ!」
《やめてください。私としましては、できればヴィヴィオさんにはあまり危険な行為に及んで欲しくないのですが……》
「チート状態なのに?」
《はい。チート状態なのは承知していますが……》
「安全マージンは十分取ってるのに?」
《……言いませんよ?》
ちぇっ。せっかくアスナさん的な台詞を引き出そうと思ったのに~。
《安全マージンの話は置いときまして、実際問題、今のヴィヴィオさんで本当にハーディス氏に勝てるのでしょうか?》
…………。
わたしとしては当然勝てる気でいたのだけど、言われてみると根拠がない。
『そうね。確かに、今のヴィヴィオを脅かせる魔導師なんてそうはいない。というより倒せないわね。エアーマンね。貴方のところのシステムU-Dには出力で劣るけど、あの子、暴走の危険があるから全力は出せないのよね? おまけに、性格同様、戦い方も素直で真っ直ぐだから、搦め手には弱い。魔力量が互角なら、本家と違い今や姑息な手段も自由自在なうちの孫娘の方が、遥かに強いわね!』
《それ、褒めてるんだか貶しているんだかわかりませんが、ただの孫自慢ですよねぇぇ!?》
「いや~、照れますなぁ~」
《ヴィヴィオさんはヴィヴィオさんで、クレヨンしんちゃんみたいな照れ方しないでくださいっ!》
『ヴィヴィオの能力は置いといて、問題はハーディス・ヴァンデインね。原作を読む限りでは、原初の種から唯一直接感染した人物であり、再生能力はもちろん、肉体強化系の病化特性に、おそらく模倣能力も感染で手に入れたんでしょうね。さらに支配種の能力を持つ。ディバイダーを発動できることから、魔法の無効化も可能でしょう』
「ねこぶそうのてんこ盛りや舟盛りもびっくりだよっ!?」
『説明しておいてなんだけど、ぶっちゃけ、今のヴィヴィオ以上にチーターね。
とはいえ、こちらはこちらで第五世代型デバイスだから、魔力近似のエネルギーに変換する機能を使えば、出力は落ちるにせよ、いつもの魔法でダメージを与えられる。
そうなると、結局のところ実際にハーディスと戦ってみないことには勝ち負けはわからない――といったところかしら。とはいえ――』
お婆ちゃんの声がトーンダウンする。
『私としても、あまり危険な真似はせず、おとなしく原作通りにイベントを進めて欲しいのだけど』
《そうですよね。ヴィヴィオさんのお祖母様としたら心配ですよね。遅かれ早かれ、私たちも原初の種の在り処にたどり着けると思いますし》
う~ん……。
『それにね、ヴィヴィオ。前にも話したと思うけど、いくら歴史の修正力があるといっても、アレは長いスパンで見た場合であって、細かい部分では大きく変動するのよ。とーまみたいに。結果的に、私たちの知らないキャラが登場したり、本来いるべきキャラがいなくなったり、未知のイベントが起きるかもしれない。確実に原初の種を手に入れるためにも、目立った動きは避け、不確定要素を減らし、原作通りにストーリーを進める方が賢明だと思うわ』
ん~。
「思ったんだけど、それなら今すぐ決着をつけた方がいいんじゃない?」
今はまだ原作の状況に近い――ということは、ストライクアーツの試合前に、対戦相手の映像を見て、戦い方を分析し終えたようなものだ。
こちらの準備が万端なら、不確定要素が増える前に決着をつけた方がいい。
『……ああ、そう言われると、そうね。放っておいて、ハーディスに未知の能力が追加されても、それはそれで厄介ね』
《なるほど、それは盲点でしたね。でしたらいっそのこと『GOD』の私とキリエのように、管理局に保護してもらうというのはいかがでしょうか?》
「この時代のママたちに、1年前の世界から来ちゃいました~ってバラすってこと?」
《はい。なのはさんやフェイトさんが協力してくだされば、わざわざヴィヴィオさんが危険をおかさずとも、原初の種の入手も容易になるかと》
「それは……うん、アリなのか……な?」
なのはママは主人公だしなあ~。ああ、この世界ではとーまちゃんなのかな? どちらにせよ、よっぽどの事態が起きない限り負けないだろう。
『そうね。ただし、その場合、あの母親のことだから、あなたは完全に蚊帳の外。事件が解決して危険がなくなるまで、この世界のヴィヴィオたちと、ジムで一緒にもふもふトレーニングといったところかしら』
《もしくは聖王教会で保護――というのもありえるでしょうね》
ヴィヴィオ×2で、アインハルトさんとイチャコラ。
ヴィヴィオ×2で、シャンテに「二重奏マスターしたよー」とか。
「それはそれで面白そうなんだけど、せっかくの5-01型デバイスだし、この力を試してみたい気持ちもあるんだよねぇ」
これもサイヤ人……じゃなかった、ベルカ騎士として……いや、オリヴィエの血の影響だろうか。シグナムさんやクラウス陛下と同じで、何だかんだで強くなるのが好きなんだよねえ。
《またそんな……プレシアさんからも何か言ってあげてください》
『……そうね。私も、自分の作った第五世代型デバイスが、実際どの程度、魔力無効化相手に通用するのか、興味がないといったら嘘になるわね』
《プレシアさんまで……》
『まあいいわ。ヴィヴィオ、あなたの人生なのだから、あなたの好きになさい。ただし、いざとなったら私が魔法で強制転移させるから。文句は受け付けないわよ。それだけは覚えておきなさい』
「うん。ありがとうお婆ちゃん……」
《はあ……何だかんだで甘いですよね、プレシアさん……》
『……ふん。私はただ、実験結果が知りたいだけよ』
「とか言って、本当は第五世代型デバイスの研究だってフェイトママのためだもんね。リニスさんから聞いたことあるし」
『くっ、あんの山猫ぉぉ……絶対違うから、違うわよッ!?』
「はいはい。ツンデレ乙。それでアミタさん。ハーディスさんは今どこに?」
《はい。彼ならリベルタのヴァンデイン本社ビルの中ですけど……》
第16管理世界リベルタ。例の工場があるのもそこだっけ。
わたしが今いる第23管理世界からも、そう遠くない。急いで次元港へ向かえば、今日中に決着をつけることも可能だろう。
「これは舞空術を使うしか~」
《ちゃんと飛行魔法使ってくださーい》
ふわりと宙に浮かぶ。飛行許可はないけれど、このまま一気に――
《そういえば、以前レヴィから、そちらの世界では勝手に飛んだりしてはいけない――という話を聞いたのですが?》
うっ。
『探知されないように、私がジャマー結界を張るから問題ないわよ』
「あ~、無印のころアルフがフェイトママに使ってたやつ?」
『ええ。アルフに教えたのはリニスだけど、リニスの魔法は私が保有していた魔法だもの。当然使えるわよ』
「プレシアデバイス――ちょー優秀かもしんない」
『カレンデバイスみたいで嫌なんだけど』
5-01型デバイスから流れこむ莫大な魔力を使い、これまで上手く活かせなかった、なのはママから受けた飛行魔法の英才教育の成果を存分に発揮して、ルヴェラの――自然豊かな空を猛スピードで飛ぶ。
「まるで、ナメック星を飛ぶ、クリリンと悟飯のように……栗悟飯とカメハメ波ぁぁ!」
『いやいやいや』
「そういえばなんだけど、これから奪いに行く〝原初の種〟ってどんなアイテムなんだろうね? わかってることって『最古のエクリプスウィルス母体』ってことくらいでしょ」
『そうね。一応、ウィルスとは関係なく推察することも可能なのよ』
「ホントに?」
『ええ。例えば名称。〝原初の種〟を単純に言い換えてごらんなさい』
「言い換えるって……プライマルシードとかオリジナルシードとか……って、あ、ジュエルシード!」
『そう。ジュエルシードが〝宝石の種〟だとしたら〝原初の種〟がどういった外見で、どういった能力を持つのかも、だいたいわかってくるでしょ。「Force」が原点回帰ならなおさら――って、ヴィヴィオ、正面ッ!』
「へ!?」
――ズゴオオオオオオオオオオオオッ!
「砲撃魔法っ!?」
赤色の魔力光が雄叫びを上げて、正面から迫りくる。迷いのない閃光。
あまりに唐突であり――わたしやお婆ちゃんの探知にすら引っかからないほど――あまりに突然であり、目視で視認するまでまったく気づかなかった。というより、言われたときにはもう遅かった。
わたしの意志とは無関係に、聖王家の遺伝子に組みこまれた魔法が発動する。
聖王の鎧。
赤と虹、二筋の光がルヴェラの空で激突した。
眩しさで目がくらむ。右手で目を隠す。薄目で正面を見据えたそのとき、すでに相手は眼前に迫っていた。
「速いっ!」
その速度は射撃魔法並みで、間合いをわずか一秒で詰めてきた。拳を振りかぶる。赤の魔力を帯びた強烈な一撃。聖王の鎧が受け止め、魔力の残滓が後方へ流れた。
なんという馬鹿力!
ダメージはないのに、あるはずないのに、衝撃だけが空気を伝ってわたしの全身を通過する。
「レストリクトロック!」
なのはママ直伝――反射的に魔力リングで相手の手足・胴体を同時固定する。した。いや、したはずだった。
敵は、足裏に赤い魔力をこめるとわたしの防御膜を蹴り飛ばし空中で回転。バインドを避けると、わたしを押して、自らは反動で後方へ軽やかに飛ぶ。そんな軽業を、わざわざ空中でやってのけたのだ。
間合いを広げると動きを止めた。これでようやく姿が拝める。正体がわかる。お・は・な・し、できる!
「簡単だよ……友達になるの、すごく簡単。名前を呼んで! 始めはそれだけでいいの……」
『色々すっ飛ばしすぎよヴィヴィオッ!?』
「アインハルトさんのときできなかったから1度やってみたかったんだよぉぉ!」
年齢は……たぶん18歳くらい。身長は『ViVid Strike!』バージョンのわたしの大人モードと同じか、少し高いかな? だけど体格はがっしりして、どちらかというとアインハルトさんに似ている。
雪のような銀髪のストレートロングヘア。けれど、わずかに後頭部で束ねたポニテ風。青い瞳は険しく吊り上がり、常に柳眉を逆立てている。間違いなく美人さんなのだけど、氷のように冷たく近寄りがたい。そんな雰囲気。
そう、イジメっ子をフルボッコどころか血塗れにしちゃってそうな女の子――
「って、リンネ……さんっ!?」
《はあ、あなた、昔からこうなんだ》
頭に直接響く声。
「どういうこと? リンネさん? リンネさんなの!?」
リンネさんらしきファイターが熱い息を吐き出した。
縮んだバネが弾けるように、長い間合いを一瞬で詰めと、きつく握りしめた拳を、何度も、何度も、白い暴風のように叩きこんでくる。
ドレスのような白いバリアジャケット。その肩口から見える鍛えられた筋肉が、軋む音が聞こえそうなほど盛り上がる。
「話を聞いてよ!」
かつて『ViVid Strike!』2話で、ノーヴェやコロナ、ユミナさんが言っていたこと。
『この選手の強さは、突き詰めればただ一点――力が強いこと。腕力が強い。体幹が強い。全身の筋力が強い。だから、どんな状況にも強い』
『パワーが凄すぎて、打撃と投げ技全部が必殺技になっちゃうというか』
『U19でも、ここまで圧倒的な魔力と筋力の持ち主はめったにいないねえ』
そんなリンネさんと正面から殴り合うだなんて馬鹿げている。
本来のわたしのスタイルなら、確実に打撃を避けながら、確実にこちらの攻撃を打ちこんでいき、焦った相手の大振りにタイミングを合わせての一閃必中カウンター。
けれど、今のわたしは5-01型デバイスのお陰で、巨大な魔力と強靭な肉体。さらに、あの覇王クラウス陛下ですら一撃も入れられなかった鉄壁の防御がある。
であれば――わたしは一歩前に出る。
「オリヴィエの名にかけて、正面からの打ち合いも負けるわけにはいか――ぷろぉ~っ!?」
拳と拳が交差した瞬間、派手な音を立ててわたしの身体は後方に吹っ飛んだ。砕かれた魔力の欠片が四散し、ルヴェラの空に虹の光を撒き散らす。
両脇を締めて空中で体勢を整えた。
「しまった! リーチの差を忘れてたあ~」
つい、大人モードの気分で打ち合ってしまった。
『ヴィヴィオ、大丈夫なのッ!?』
「平気、平気、ノーダメージだから!」
とはいえ、だ。
「あのリンネX(エックス)……」
『何よ、リンネXって?』
「ほら、今はまだ本物のリンネさんって決まったわけじゃないでしょ。だから、謎のヒロインXというか、存在Xというか、ミスターXというか、ミネルバXというか……」
『最後のはマジンガーだけど、そうね、偽リンネやリンネもどきよりはマシかもしれないわね……って、ほら、さっさと変身魔法で大きくなりなさい』
ん~。
「考えてみたら、わざわざリンネさんが最も得意とするインファイトで戦う必要もないんだよね」
わたしは飛行魔法で急上昇する。
『逃げるの?』
「ううん、ちょっと試してみたいことがあって――」
空戦魔導師は、高度2万メートル以上の空間で戦闘するという。劇場版のなのはママはちょっとやりすぎだと思うけど。
「いくらリンネさんでも高高度の飛行訓練はしてないだろうから――」
雲の上。彼女の手が届かない場所まで上昇する。
「さて、ここでお婆ちゃんに問題です。一般的に大魔力を持つ魔導師は、どんなことが苦手でしょうか?」
『一般的に? そうね、高速処理と並列処理かしら。ぶつかっちゃうのよ。私の次元魔法がいい例ね』
これは『魔法少女リリカルなのはStrikerS THE COMICS』2巻で、はやてさんも語っていたことだ。なので、はやてさんは自分の魔力運用について、
『立ち止まって展開・発射だけなんよ』
とも言っている。
「では第2問。わたしの魔力資質はどんなタイプでしょう?」
『ヴィヴィオの? 確かシャンテってシスターが言っていたわね。高速並列運用型だったかしら?』
「ピンポン、ピンポ~ン! つまり、今のわたしは、本来、リリカルなのはの魔導師ではありえない、大魔力かつ高速・並列処理が可能という、まさに圧倒的なチート状態なわけであります」
『まあ、そういうことになるわね』
「さらに、ここからが今日一番の見どころだよ! この小説を読んでいた人はちょーラッキー!
『ウィキペディア』にも『NanohaWiki』にも載ってない。誰も知らない、たとえ見たことがあっても、覚えていない――そんな、約10年越しの『魔法少女リリカルなのはStrikerS』新情報っ!」
『……ヴィヴィオ、大丈夫? 大言壮語じゃない? 風呂敷たためる?』
「任せて、お婆ちゃん!
『魔法少女リリカルなのはStrikerS オフィシャル ファンブック』に、聖王ヴィヴィオの能力として、
『〝データ収集〟による魔法戦闘』
と書かれており、魔法辞典にも、
『なのはの保有魔法だが、ヴィヴィオは〝データ収集〟によって獲得している』
と書いてあることから、わたしが〝データ収集〟により魔法を真似る――ゲットできるというのは、多くの人が知るところ。
だけどお婆ちゃん、この〝データ収集〟ってどんな能力かわかる?」
『高い学習能力のことでしょ』
「甘い、甘いよ、お婆ちゃん。このデータ収集の真の名は『高速魔法蒐集』!」
『魔法蒐集って、八神はやての……?』
「そう。闇の書がリンカーコアから魔力を奪う際、魔法のデータを蒐集・記録していたことを、わたしは――生身で、それも見ただけで、行使することができる。
それが、『StrikerS』のラストバトルで、何故わたしが、あんな簡単に、なのはママやフェイトママの魔法を使っていたのか――その解答なんだよ!」
『それは、流石にチート過ぎなんじゃ……』
「うん、だよね、わたし自身、そう思ってた……。だけど、お婆ちゃん、よく考えてみて……。
『StrikerS』って『無印』『A's』と続いた――いわば『リリカルなのは3』ってことだよね? 例えるなら『ドラクエ3』みたいな感じ」
『ええ、まあ、そうね』
「だとするならば、
●『竜王』→『破壊神シドー』→『大魔王ゾーマ』
●『プレシア・テスタロッサ』→『闇の書の闇(ナハトヴァール)』→『聖王ヴィヴィオ』
となる」
『あー、私、竜王ポジションなのね。まあ、変身前は杖持ってるし、黒いローブだし、似てるといえば似ているのかしら……?』
「もしも、RPGの続編で、前作より弱っちい、インパクトのないラスボスが登場したらどう思う?」
『それは……』
「しかも、リリカルなのはの場合、前作の10年後が舞台で、さらに研鑽を積んで強くなった前作主人公が、そのまま主人公なんだよ? これで、前作より弱いラスボスが登場してしまったら……」
『反感を買うわね……』
「うん。原作者やスタッフが、好む好まざるとにかかわらず、わたし――聖王ヴィヴィオの能力は、初代リインさんやナハトヴァールを超える必要があったの。そのための力が、ゆりかごであり、闇の書を超えるデータ収集能力――『高速魔法蒐集』だったんだよ!」
『そういうこと……。強くするしかなかったということね。わかったわ。ヴィヴィオ、あなたが実は強かったというのはわかった。けれど、その「高速魔法蒐集」とやらのソースは? 情報のソースを出しなさい。オリジナル設定なら興ざめよ?』
「大丈夫だよ、お婆ちゃん。オリ設定でも真偽不明のネット情報でもない。
表面のちょっとエッチなリインさんの格好に目を奪われて、誰もがちゃんと読んでこなかった『ブロッコリー・ハイグレード・カードコレクション魔法少女リリカルなのはStrikerS』の裏面――『マジカル魔法辞典 その6』に、
『――血族固有の機能として無敵の防御を誇る〝聖王の鎧〟を保有し、〝高速魔法蒐集〟によって得た攻撃魔法で玉座の間に近づく驚異を排除する』
と書いてあるの。ちなみに、初出は『月刊メガミマガジン2007年11月号』らしいけど、この『高速魔法蒐集』という能力は、れっきとした公式情報なんだよっ!」
『つまり、これまでの「ウィキペディア」や「NanohaWiki」などの執筆者たちは、幼女(リイン)に気を取られて、大事な情報を見過ごしてきたってわけね?』
バックベアード様が待機してそうだ。
「と、いうことはだよ? 『StrikerS』から5年が経過し、わたしはありとあらゆる魔法を見て、蒐集してきた。そして、これまでは魔力量が足りなくて使えなかった魔法も、聖王モードの今なら、無制限に――自由自在に――それも高速で――並列に扱える」
白い雲の合間。遥か眼下にリンネさん――いや、リンネXを見下ろす。
ふっ……。
思わず頬がにやけてしまう。
まずは1つ目!
「星よ集え――」
わたしの前方、左斜め上に巨大な魔力で編まれた虹色の光球が生まれる。
さらに2つ目!
「雷光一閃――」
電気変換資質がないと使えないと思われがちだが、ところがどっこい、わたしは電気変換魔力の打撃――プラズマアームをフェイトママから獲得して『StrikerS』で使用している。つまり、大魔力であれば変換効率なんて無視、無視、無視、問答無用で使えちゃうということ。
わたしの前方、右斜め上で青白い放電現象が起きる。
そしてラスト3つ目!
「響け、終焉の笛――」
わたしの真っ直ぐ前方、無数の虹色の魔力球が一点に集まる。続けて、三角形のベルカ式魔法陣が浮かび上がる。
「刮目せよ! 前代未聞、驚天動地、曠古の盛儀ッ! コレが、今のわたしにできる、最強・最大の攻撃魔法――」
ぶっちゃけ、集束もカートリッジもないけれど、機体内に蓄積した大魔力を瞬間的に放出してカバーする。
「スターライトブレイカ――っ!」
虹色の光の柱が、リンネXの全身を頭上から飲みこむ。
「プラズマザンバ――っ!」
雷撃のエネルギーをまとう魔力砲が、虹色の刃となって斬りかかる。
「ラグナロクっ!」
3つの発射体から放たれる、3種類の直射型砲撃魔法が、ただ一点をえぐり取る。
「リンネさん、少し頭を冷やそうかぁぁ! 今必殺の、石破天驚(ウソ)――ひとりトリプルブレイカァァ――――ッッ!!」
三大魔法の並列起動。
眼下に広がる青い世界で、リンネXを中心に魔力の光が虹色のドームを形作る。
フェイトママよく生きてたな~、という1期を彷彿とさせる閃光。
世界が白に染まる。
『……ヴィヴィオ……これ、やり過ぎじゃない? 3人分よ? オーバーキルでしょ……』
「大丈夫、大丈夫、非殺傷設定だから。バリアジャケットは……ちょっとエッチな感じでボロボロになるかもだけど~」
リンネさんだからいいよねっ!
『前々から思っていたのだけど、非殺傷設定といえば何でもアリなのかしら?』
「高町家限定のローカルルールじゃない?」
『何よそのエクスプロージョンルール』
あとはもう「ちゅどーん!」と落ちるだけ……だったのだけど、
「――リアクト、オン」
突然、虹色の魔力が竜巻のように渦を巻いたかと思うと、やはり、虹色の魔法陣――バカみたいにでっかい円形だった――に吸いこまれて、いや、魔力エネルギーが結合分断されて消えていく……。
残ったのは、両手に2丁一対の銃剣らしきものを持つリンネさんの姿。
魔法を無効化する銃剣って……まさか……。
「リンネXディバイダー……だと!?」
【次回予告】
いやぁぁ~、なにこのガンダムXディバイダー!?
10年越しの新情報で、聖王ヴィヴィオの最強っぷりをアピールした直後のわたしが噛ませって、どーいうことぉぉ!?
大型の盾はないようだけど、リンネXさんがディバイダーを持ってるわけだから、リンネXディバイダーで間違いない!?
とはいえ、このリンネさん、本当に本物のリンネさんなの? 早くも原作ルートを無視したツケが回ってきたってこと?
次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第11話。
【そいえばトーマはガロードに似ている】
で、リリカルマジカルがんばります!
リンネXディバイダー……元ネタはもはや言うまでもないわけですが……。
さて、今回『ViVid Strike!』2話を見直して、リンネに対するノーヴェの評価を書き出してみたのですが……。
『この選手の強さは、突き詰めればただ一点――力が強いこと。腕力が強い。体幹が強い。全身の筋力が強い。だから、どんな状況にも強い』
……ちょっと待て、と。
〝強い〟って全部で5回言ってるんですが、そのうちの〝力が強い〟〝腕力が強い〟〝筋力が強い〟って、被ってるような……。5回のうち3回も〝力が強い〟って……アインハルトさんでもこうはいかない。どんだけパワーキャラなんだろう(笑)。
フロンティアジムじゃなくて、シルバーマンジムにでも通ってるんじゃ。
来年の学院祭で、もしまた腕相撲をしたとしたら、アインハルトさんに土をつけることができるのはリンネだけかもしれません。