アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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『魔法戦記リリカルなのはForce』の世界に飛ばされたわたし――高町ヴィヴィオは「原初の種ゲットだぜ!」のため、ヴァンデイン本社ビルに向かったところ、エクリプス感染者となったリンネ・ベルリネッタ(?)の妨害に合う。
なんてこったい。早くも原作ルートを無視したツケが回ってきたってことぉぉ!?




第11話 そいえばトーマはガロードに似ている

 ガロード・ラン。

 

 言わずと知れた『機動新世紀ガンダムX』の主人公である……って、本当に言わずと知れたかどうかは置いといて「リリカルなのはと関係ないじゃん!」と、おっしゃる方も多いと思うのだけど、少しだけ時間を割いて傾聴して欲しい。

 

 15歳。身長161cm。体重53kg。一人称は〝俺〟。

 明るい性格で負けず嫌い、その一方でナイーブな面もある。

 戦災孤児。

 ある日、ガロードの住んでいた町は、モビルスーツに乗った盗賊集団に襲われた。本人は奇跡的に助かるも、家族や知人たちは皆殺しにされる。

 天涯孤独となったガロードは、子供の身で1人生き抜いていく。

 そして、依頼により潜入した艦内でティファ・アディール(ヒロイン)と出会い一目惚れ。

 ティファを連れて逃げる際、彼女を守るための力――ガンダムXを手に入れる。

 そんなガンダムXの必殺技といえば、高出力ビーム砲――サテライトキャノン。

 

 一方、トーマ・アヴェニール。

 15歳。一人称は〝俺〟。

 明るい性格で負けず嫌い、その一方でナイーブな面もある。

 ある日、トーマの住んでいた町は、本と銃剣の二人組に襲われる。本人は奇跡的に助かるも、家族や知人たちは皆殺しにされる。

 天涯孤独となったトーマは、子供の身で1人生き抜いていく。

 その後、スバル・ナカジマに保護されたトーマは保護施設に入る。

 そして、過去に踏ん切りをつけるための一人旅の途中、潜入したルヴェラ鉱山遺跡(研究施設)で、リリィ・シュトロゼック(ヒロイン)と出会い、エクリプスに感染。

 リリィを連れて逃げる際、彼女を守るための力――ディバイダーと銀十字の書を手に入れる。

 そんなトーマの必殺技といえば、高出力砲撃――ディバイドゼロ・エクリプス。

 

 さらに序盤。夜。二人っきりで野宿をするシーン。ガロードは焚き火の前で自分の過去を語るのだけど……トーマも同じように、1巻の野宿シーン。リリィとアイシス(ダブルヒロイン)の前で自分の過去を語っている。

 

 そして後半、ガロードとティファが宇宙で再会したシーン。ティファが飛びつき、地球をバックにクルクル回るのだけど……そういえば4巻のトーマとリリィさんの再会したシーン。リリィさんも空中でトーマに抱きついていたなあ……と。

 

 もっとも、ティファは例の紐(某ロリ神様の青い紐。中の人はフーカさんと一緒)を装着しようとして、すとーんと紐が落下してましたが、リリィさんなら胸部がロリ神様クラスなので……って、ああ! もうひとりのヒロインたるアイシスさんが、同じく、すとーんでしたっけ……。はぁ~、ぺったん、ぺったん!

 

 ちなみに、後にガンダムXは改修され、多連装ビームとスラスターを兼ねる多機能大型シールド〝ディバイダー〟(ウェンディのライディングボードみたいなの)を装備し、ガンダムXディバイダーと呼ばれる。

 

 つまり、何が言いたいのかというと、

 

 

「『魔法戦記リリカルなのはForce』の世界に、リンネXディバイダーが降臨したとしても、そう違和感はないんだよっ!」

 

 

『いやいやいや、違和感ありまくりでしょ!?』

 

 わたしの横で浮かぶサラちゃん(ガンプラ)を操るプレシアお婆ちゃんから、切れのいいツッコミが入る。流石は大魔導師。

 

『あなたの思う大魔導師と、私の知ってる大魔導師は別物な気がするわ』

 

 ――というわけで、ここで、現状をおさらいしてみたい。

 現在わたしがいるのは第23管理世界ルヴェラの文化保護区。原作『Force』1巻で主人公トーマが訪れている場所――と言えばわかりやすいだろう。

 物語のスタート地点だ。

 もう第11話なのにっ!? という話はOKいったん置いとこうか……。

 そして、元の世界に帰るために必要な〝原初の種〟なるキーアイテムを手に入れるため、時系列を無視して『Force』のラスボス――ハーディス・ヴァンデインに挑戦しようとルヴェラの空を飛んでいたところ、リンネさんにアッシマーみたいに強襲される。

 Zのアッシマーはもっと評価されるべきだと思う。

 とはいえ、今のわたしは聖王モード。強くてニューゲーム。フィンガー・フレア・ボムズだって使えちゃう。

 わたしは某幼女の皮をかぶった化け物のごとく高高度まで上昇すると、リンネさんらしき人物の頭を冷やすため、最強の砲撃魔法を放った。

 

 ところがどっこい!

 

 リンネさんはリンネさんでリアクト。エクリプス兵器。2丁一対の銃剣型ディバイダーを起動して、わたしの魔法を無効化してしまったのだ。

 

「この体は間違いなく強いのに……わたしの心が弱いから……」

 

『はいはい、アインハルトごっこ(1巻)なら元の世界に帰ってからやりなさい』

 

 そんなわけで、現在のわたしは、そのリンネさんを遥か上空から見下ろしているわけなのだけど――。

 

 

「こ……これが勇者アルスがバラモスゾンビを倒したときに使ったというマホステか!」

 

 

『結合分断よ。まあ、味方の回復魔法や補助魔法まで無効化する――という意味では、確かに同じだけど』

 

「ねぇお婆ちゃん。前から1つ疑問だったんだけど、接近戦だとバリアジャケットも無効化されて、薄い本みたいに裸になったりしないのかな?」

 

『……その展開は薄い本だけよ、ヴィヴィオ』

 

「えーっ、そーなの!? わたしてっきりバリアジャケットが一瞬で消えちゃって、白い光や見せられないよ、が飛び交うのかと~」

 

『はあ……その件は、あとでリニスにあなたの母親に連絡させるとして……』

 

「やめてー」

 

『そうね、細かい説明は省くけど、「ViVid」7巻であなたがミウラって子に負けた際、魔力切れで意識不明になったことがあったでしょう?』

 

 あー、そんなこともあったっけ。

 

『あのとき、デバイスの予備魔力を含めて魔力を使い切った状態にもかかわらず、あなたは大人モードのバリアジャケット姿のままだった。これはどういうことだと思う?』

 

「えっと……変身後は魔力を消費しないとか?」

 

『半分正解で、半分ハズレね。これも例え話になるのだけど、「魔法少女リリカルなのはStrikerS THE COMICS」の1巻で、あなたの母親とフェイト、八神はやての3人が、AMFを発生させるガジェットと交戦した話があるでしょ? そのとき八神はやてが、

「魔力が消されて通らないなら〝発生した効果〟のほうをぶつければええ」

 と言っていたのを覚えている?』

 

「うん、覚えてるけど……あ、ひょっとして大人の姿になるのと、バリアジャケットの生成は、すでに〝発生した効果〟になるってこと? だから魔力切れでも、結合分断されても消えない?」

 

『ええ正解。逆に言えば、元の姿や衣服に戻る際にも魔力が必要ってことよ』

 

 なるほど……。

 

『ただし、バリアジャケットに関しては見た目とは別に、不可視の防御フィールドを常時発生させているでしょ。そちらの方に魔力を消費しているから、魔力切れをおこしたり、結合分断されると、防御力という意味では最弱になるわ。2巻のシグナムVSサイファー戦がいい例ね。見た目はいつもの騎士服だったけど、防御力はゼロに等しかったのよ。ただのコスプレみたいなものね』

 

「コスプレ……」

 

 普通の衣服で斬られた――とすれば、確かにあの状況にも説明がつく。

 

『そもそも、あなたのセイクリッドディフェンダーだって、一点に魔力を100パーセント振り分けても、バリアジャケットは消えないでしょ?』

 

「あ、そうでした」

 

 自分がいつもやっていることなのに、すっかり忘れていた。

 

「そっか、これまでのリリカルなのはで、戦闘中ちょっとエッチな感じにボロボロになってもそのままなのは、一度発生した効果であって、すでに魔力とは関係ない衣服みたいな状態だったからってことかあ」

 

 わたしもよく、黒いインナー部分が破れて素肌が露出しているわけですが……。

 あれ?

 でも……だとすると1つ疑問が。

 

「1度バリアジャケットを解除して、もう1度生成すれば、バリアジャケットはもとに戻るってことだよね。だったら、激しい戦闘中は無理でも、戦闘の合間とか、余裕があれば可能だよね。どうしてやらないの?」

 

 わたしもだけど。

 

『別にもう1度生成してはいけないというルールはないわよ。そもそも、解除しなくても再構築すればいいだけだし。アインハルトが試合中にやっているでしょ』

 

「……そう言われると」

 

 やっていた。

 

『基本的には、見た目が変化したところで防御フィールド自体は変わらないのだから、破れた格好のままは嫌だとか、再構築に使う魔力も惜しいとか、そこにどれだけの価値や意味を見出だせるかでしょうね。

 あとは……そうね、実はこれが一番大事なことなのだけど、いわゆるサービスシーンというやつよ』

 

「あ~」

 

 大人の事情でした~。

 

「でも、サービスシーンっていうなら、結合分断でバリアジャケットもスパーンって、ドレスブレイクみたいに破けた方が面白かったんじゃ……。

 ――ディバイドゼロ・エクリプス!

 ――スパーン!

 で、みんな真っ裸になるという」

 

『やめなさい。一応言っておくと、あの時点で、バリアジャケットもAEC装備使用になっていたはずだから、分断対策はしていたはずよ』

 

「くっ……」

 

『「ViVid LIFE」や「魔法戦記リリカルなのはForce Dimension」だったら、コメディ路線だから可能かもしれないけど、そもそも深刻な本編では無理でしょ』

 

「やっぱり?」

 

『たぶんだけど、それを本編でやったのが「DOG DAYS」ね。防具破壊とかいって、よく衣服が破けてたでしょ?』

 

「あ~」

 

 アレか!

 

「はあ、藤真拓哉先生が『ViVid』と『DOG DAYS』をコラボした漫画を連載してくれたら最強だったのにね」

 

『それは……あー、まあ、確かにアリといえばアリだったかもしれないわね。というより違和感ないわね。今からでも描いてくれないかしら?』

 

 合法(?)的に脱がせられるし。

 

「なんにせよ、魔力無効化なんて、いよいよ『Force』らしくなってきたね!」

 

 ついに、眼下に見下ろすリンネさんと決着をつけるときがきた。

 このまま未来のわたしたちとモフモフし続ける『ご注文はクリスですか?』みたいなノリになったらどうしようかと思っていたのだけど。

 リンネさんがディバイダーを持っている以上、相手は魔導殺し。しかし、わたしのデバイスは、そんな魔力無効化に対抗するために生み出された新世代のデバイス!

 分断効果なんてなんのその!

 粒子攻撃であっさり切断されるフォートレスの盾(5巻のキャロやエリオのやつ)とはわけが違う。

 

「ふっ……カレドヴルフ社製AEC装備とは違うのだよ、カレドヴルフ社製AEC装備とは!」

 

 ジオン初のビーム兵器を標準装備したゲルググみたいなものだ!

 

『それ負けフラグなんじゃ……』

 

「大丈夫だって。ギレンの野望のランバ・ラルは、グフより強いドムを用意すれば、ホワイトベース隊にだって勝てるんだから!」

 

 サラちゃんを右手でつかむと、わたしは頭上に掲げた。今こそ5-01型デバイスの真の力を見せるとき!

 

「術者からデバイスへの魔力供給カット!

 予備魔力に切り替え!

 行くよ、お婆ちゃん!」

 

『ええ』

 

「5-01型デバイス、魔力変換機構、スタートアップ!

 マスター認証、高町ヴィヴィオ、結晶体からの直接魔力供給を許可!」

 

『術者及び蓄積石からの魔力供給を再開』

 

「変換機構への回路開け!」

 

『セーフティロック解除』

 

「変換開始!」

 

『変換開始!

 いいわよ、ヴィヴィオ。

 魔力近似エネルギーへの安定変換確認!』

 

「最終セーフティ解除!」

 

『デバイス内、圧力上昇!

 86……97……100!

 エネルギー充填、120パーセント!!』

 

 

「120パー……120パーセントぉぉ!?

 ヤマトじゃないんだから爆発オチぃぃ!?」

 

 

『あー、もう、いいのよ! 前に話したでしょ。第五世代デバイスはまだまだ変換効率が悪く、エネルギーロスが多いから、普段と同等の出力を得るためには、魔力供給を120パーセントまで上げる必要があるのよ!』

 

「そ、そういうこと!?

 フィールド再生成用意!」

 

『再生成10秒前!

 9……8……7……6……』

 

 おおう……。

 わたしの全身を覆う、不可視のはずの防御フィールドが、魔力近似エネルギーの影響なのか、徐々に赤みを帯びていく。

 こ、これは……。

 映画『Reflection』や『Detonation』でアミタさんやなのはママが使った加速システム――アクセラレイター(一方さんではない)のようだけど、おそらくこの絵面は……。

 

『3……2……1……ゼロ!

 5-01型デバイス、完全稼働! 行けるわよ、ヴィヴィオ!!』

 

 

「了解! トランザム!」

 

 

『違うでしょ!?』

 

 

「はぁぁ、界王拳、4倍だぁ――っ!!」

 

 

『それ言いたいだけよね!?』

 

 

「狙い撃つぜぇぇ!」

 

 

『それも違っ――』

 

 

「一閃必中っ! セイクリッドブレイザ――ッ(魔力近似エネルギーver.)!!」

 

 

『――うくないわね!?』

 

 

 使い慣れた虹色の魔力砲でまずは様子見。

 ギャリック砲のように収束された光線が、真っ直ぐ頭上からリンネXディバイダーに襲いかかった。

 閃光が白いバリアジャケットをまとうリンネさんを飲みこむと、光の中に溶けるように消えていく。ルヴェラの空に轟音を響かせ直撃した。

 

「よしっ!」

 

 今度は無効化されない。

 変換機能が正常に働くか心配していたのだけど、これでお婆ちゃんの研究が正しかったことが証明されたわけだ。

 とはいえ、あのリンネさんがセイクリッドブレイザー一発で終わるはずもない。

 

「やっぱり無事だったか!」

 

 光が収まると、砲撃を受ける前と寸分違わない場所に浮かんでいた。

 けれど今回は銀髪が焦げ、防護服の破損も見える。

 リンネさんが空を――わたしを無言で見上げた。

 

「余裕ぶっこいてセイクリッドブレイザーを避けないから……。だったらお望み通り、接近戦でとどめ! わたしの前に立ち塞がったこと、そして聖王に牙をむいたこと! 地獄で後悔しながら懺悔なさい! ゴッドブロォォ――ッ!」

 

 

『それも違っ……ああ、もういいわよ、ほら退却するわよ、退却!』

 

 

「はい?」

 

 言うが早いか、わたしの身体は虹色のフィールドに包まれる。一瞬にして周囲の風景が変化――してないな、これ。同じ雲の上だから違いがわからない。一面青と白。眼下のリンネさんが消えたので、かろうじて、別の場所へ移動したことだけは理解できる。

 お婆ちゃんが転移魔法を使ったのだ。

 

「も~、どうして逃げちゃったの!? 別にまだ負けたわけじゃないのに! ここからが本番でしょ? お婆ちゃんが試したがってた第五世代型デバイスが、実際どの程度魔力無効化に通用するかの実験だって、これからだったのにぃぃ!」

 

『あー、はいはい。でもね、ヴィヴィオ、今の攻防だけで大事なことがわかったのよ』

 

「大事なこと? ひょっとして……ゴッドブローよりゴッドレクイエムの方がよかったとか!?」

 

『そうそう……って、このすば関係ないでしょ! いい、ヴィヴィオ、よく聞きなさい。今のあなたではエクリプス感染者には――ハーディス・ヴァンデインやカレン・フッケバインには、絶対勝てないのよ』

 

 

 

【次回予告】

 

待って待って、どーいうこと? わたしじゃハーディスさんやカレンさんに勝てないってどーいうことぉぉ!?

聖王教会が崇めるご神体としては、アクア様のゴッドブローではなく、ここはオリジナルのセイクリッドブローを習得しろってことぉぉ!?

セイクリッドブローとは! 聖王の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳! 相手は死ぬ!

 

次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第12話。

 

【わたしにその手を汚せというのか】

 

で、リリカルマジカルがんばります!

 

 




トーマとガロードなんですが、最初は「ちょっと生い立ちが似てるなあ……」程度で軽くまとめようと思ったのですが、比較すれば比較するほど似た部分が増えすぎて……。今回書かなかった部分も含めて、あまり追求しない方がいいかも(笑)。

ただ、2人の共通点を追求していくと、ある部分で『Force』最大の謎の1つにたどり着けるので、興味がある方は探ってみるのも面白いかもです。

バリアジャケットについて
術者の魔力で生成、編まれているので、魔力切れや魔力無効化になると薄い本みたいに消える……だから、本当はディバイドゼロ・エクリプスを食らうと、バリアジャケットは消えて真っ裸になる――みたいな結論に持って行きたかったのですが、ごめんなさい、無理でした(笑)。

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