アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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『魔法戦記リリカルなのはForce』の世界に飛ばされたわたし――高町ヴィヴィオはリンネさんとの戦いの最中、プレシアお婆ちゃんの魔法で強制転移させられる。
わたしたちの戦いはこれからだ!
だったのに、どうして退却しちゃうの~?



第12話 わたしにその手を汚せというのか

 転移先の空で、プレシアお婆ちゃんが操るサラちゃんがわたしに告げた。

 

『いい、ヴィヴィオ、よく聞きなさい。今のあなたではエクリプス感染者には――ハーディス・ヴァンデインやカレン・フッケバインには、絶対勝てないのよ』

 

「へ? 待って待って、どーいうこと? リアクト状態のリンネさんとは、まだ拳も交えてないんだよ?」

 

 砲撃魔法セイクリッドブレイザー(魔力近似エネルギーver.)をお見舞いしただけ。

 

『そうね』

 

 お婆ちゃんは淡々と答えた。

 むぅ……。そいえば今回の第12話。名作SRPG『タクティクスオウガ』みたいなサブタイトルだし、どうやら真面目モードらしい。

 

「わたしとお婆ちゃんがタッグを組んでるってことは、1期と3期のラスボスコンビなわけだから、ドラクエで例えるところの、竜王とゾーマがタッグを組んで、5のミルドラースだっけ? 影の薄いラスボスと戦うようなものでしょ。負けるとは思えないんだけど」

 

『……そう言われると勝てそうな気がしてくるのだけど、これは単純な強さの問題ではないのよ。あなた、リンネにひとりトリプルブレイカーを放ったあと「非殺傷設定だから~」って言ったでしょ』

 

「うん、言ったけど? リリカルなのはお馴染みの攻撃方法でしょ」

 

 純粋魔力ダメージによって対象の肉体を傷つけることなく、行動能力のみを奪うための設定。

 

『そうね。攻撃の非殺傷設定や相手のバリアジャケットを抜かないよう威力設定する。たとえ犯罪者といえども、できるだけ相手の命を奪わない戦い方。管理局というよりは、今の管理世界の主流となる倫理観ね』

 

「ん~、『ふっ、愚かな倫理観ね……』みたいな?」

 

『別に愚かじゃないわよ。その理念に文句をつけるつもりもないわ。ただ、さっきのセイクリッドブレイザーで確信したの。エクリプス感染者を相手にした場合、これまでの管理局の戦い方では、ハーディスはもちろんフッケバインにも勝てない。かろうじて、グレンデル一家とかいう、感染者に成り立てくらいなら抑えこめるでしょうけど』

 

「というと?」

 

『エクリプス感染者は、例外なく高い再生能力をもつでしょ。もちろんスピードや限界は個人差があるけど。切断された腕が再生するのはもちろん、一次感染者にいたっては、たとえ心臓を奪われても再生できる――』

 

 実際『Force』の未収録分――6巻以降の物語でヴェイロンが再生している。

 

『アンデッドモンスターもビックリよね。「ド●えもん のび太の魔界大冒険」の大魔王だって、心臓に銀のダーツを撃ちこまれたら終わりだったのよ?』

 

「あー、うん」

 

『逆に考えれば、それほどの再生能力をもつエクリプス感染者に対して、非殺傷設定の攻撃をしてどうなるというの?

 まあ、この先はギアーズに聞いた方が早いわね。アミタ、まだ聞いているのでしょ?』

 

 サラちゃんから、中の人がアスナさん的なボイスが聞こえてくる。

 

 

《はい。戦闘の邪魔になると思い黙っていましたが、聞いています》

 

 

『原作SAO2巻で、シリカの使い魔のピナを生き返らせる話があったけど、あのときキリトが9人のプレイヤーから攻撃を受けたことがあったわよね。そのときの話は聞いてる?』

 

 

《キリト君から……って、そんな話、私に振らないでくださぁぁい!》

 

 

『もう、融通がきかないわね。中の人ネタくらい対応しなさいよ。そのときのキリトの台詞がこう――』

 

 

『十秒あたり四〇〇、ってとこか。それがあんたら九人が俺に与えるダメージの総量だ。~(省略)~ 戦闘時回復スキルによる自動回復が十秒で六〇〇ポイントある。何時間攻撃しても俺は倒せないよ』

 

 

「あー、そういうことか~。納得しました」

 

 

《納得しなくていいんですよ、ヴィヴィオさ~ん!?》

 

 

『個人差はあるだろうけど、基本的にはエクリプス感染者が諦めない限り、降伏してこない限り、延々と戦いが続くということよ』

 

「でも、4巻のヴァンデイン社の手下2人組とフッケバインがバトルしたときみたいに、圧倒的な力の差を見せつけてやれば、あっさり降伏してくるんじゃない?」

 

『ハーディス相手に? カレン・フッケバインだってかなりの強敵よ?』

 

「それは……」

 

『そもそも、あのとき手下が降参したのは、仲間が殺されたから。お前も殺す――という脅しね。

 管理局は殺さないけど、拘置所や刑務所に放りこまれる。これ以上抵抗するなら、一生お前の自由を奪う――という脅しね。

 あなたは管理局員じゃないから、拘束しておくための施設を持たない。

 相手を上回る力で気絶させたとして、そのあとどうするの? じっと待つわけにはいかないでしょう。

 であれば、エクリプス感染者を殺せる――ということを示さなければならない。

 あなた、諦めない、降伏してこないエクリプス感染者の命を奪える?』

 

 

「殺すって……無理、無理、無理! そんなことできるわけないって!」

 

 

『そういうことよ。どれだけあなたの方が強かろうと、あなたに自分を殺せないと、あまちゃんだとバレてしまえば、相手は降伏しないだろうし、あなたも、それ以上はもう手出しできない。戦う意味がないのだもの』

 

「じゃ、わたしじゃハーディスさんはもちろん、他のエクリプス感染者からも情報は得られないってこと?」

 

『そうね。今のままでは……』

 

 お婆ちゃんの声音がラスボスチックに変わる。

 

『だからね、ヴィヴィオ。殺せないなら殺せないで、管理局側につけばいいのよ。素性を隠しなさい。とーまを手助けしなさい。私たちの手で『Force』の歴史をコントロールするため、原作ルートを維持していくのよ』

 

「動きやすいように、なのはママたちに正体を明かしちゃダメなの?」

 

『ええ。前にも言ったけど、高町なのはやフェイトは、あなたを危険な目に遭わせないよう、戦いからは遠ざけるでしょうからね。蚊帳の外ルートに突入よ?』

 

 

《私としてはそちらをオススメしたいのですが……》

 

 

『はあ、忘れたのアミタ。あなたが教えてくれたことじゃない。そもそもヴィヴィオの時間移動の原因となった、実験に干渉してきた第三者。この世界にはフッケバイン一家やハーディス以外にも、まだ〝未知の敵〟が潜んでいるということを』

 

 

《あ……》

 

 

「ああっ! ひょっとして、リンネさんがその未知の敵ってことぉぉ!?」

 

『さあ、どうかしらね。現段階の可能性としては3つ。

 

①現在、ルヴェラ鉱山遺跡でヴァンデイン社の撤収作業中であることから、見張りを行っていたヴァンデイン側の感染者。

 

②このあとすぐ、ヴェイロンやサイファーが登場することから、フッケバイン一家の一味である。

 

③ヴィヴィオの言う通り、第三者である可能性』

 

 う~ん……。

 

『どれにせよ1つ言えるのは、すでにリンネという不確定要素が現れた以上、早いうちに手を打たないと、ますます私たちの知る「Force」からかけ離れてしまうということね。結末が不確定である以上、最悪、特務六課が敗北の未来もあり得る。

 ギレンの野望の連邦編で、ホワイトベースへの補給をケチったら、ホワイトベース隊が全滅したようなものね』

 

「ひぃぃ~。つまり、ホワイトベース隊が全滅しないように、マチルダさんみたいに補給したり、黒い三連星にミデアで特攻しろってことぉぉ!?」

 

 

《なんだか死亡フラグみたいですね……》

 

 

「いやぁ~、どーせサポートするなら、ジョブ・ジョンポジがいいよ~」

 

『ジョブ・ジョンって……なにその安泰ルート……』

 

 

 ジョブ・ジョン。

 髪は金髪。予備パイロットとしてホワイトベースに乗艦したが、ガンペリーやガンタンクのサブパイロット、砲撃手を務めるなど様々な役割を果たし、一年戦争を最後まで生き延びた。

 漫画『機動戦士ガンダムF90』では、第一次オールズモビル戦役時にサナリィの幹部として登場。

 

 ウィキペディア『機動戦士ガンダムの登場人物 地球連邦軍』より。

 

 

「つまり、蚊帳の外を避けながら、とーまちゃんをサポートして、原作ルートから外れないよう歴史を裏で操る……って、わたし黒幕?」

 

『いいじゃない、黒幕。灰色の魔女みたいで憧れるでしょ』

 

「灰色の魔女も死亡フラグなんだけど。どうせなら『ジョニー・ライデンの帰還』のゴップみたいなのが~」

 

『あなた、本当に安泰ルートが好きね。まあいいけど、おそらくそれが、原初の種を手に入れるための、最も確実な方法なのよ』

 

 

《そうですね。私たちのシミュレーション結果にも影響が出ますし、できれば原作ルートの方がありがたいです。そういうことでしたら、私もそろそろ作業に戻りますね。なるべく早いうちに原初の種の在り処を突き止めますので、しばらくお待ちください。その間お話しすることはできませんが、ヴィヴィオさんも頑張ってください。気合いと根性ですよ!》 

 

 

「ありがとうございます。といっても、またすぐに話すことになると思いますけどね」

 

 

《……え? どういうことでしょうか》

 

 

「だってアミタさん、リリィさんと中の人一緒じゃないですか~。出番すぐですよ、すぅぐぅ~。直葉さんじゃないですけど」

 

 

《そーいうこと言わなくていいんですよぉぉ!?》

 

 

 ひとしきり熱く叫んだあと、アミタさんの声は聞こえなくなった。

 

「さてと……原作ルートってことは、わたしはこれからルヴェラ鉱山遺跡に向かえばいいってことだね」

 

 空が暗くなり、トーマ……じゃなかったとーまちゃんが訪れるのを待てばいい。

 あとは、鉱山遺跡内部の研究施設で、とーまちゃんとリリィさんが出会えるようサポートするだけだ。

 

「現在位置は……あれ? ここって……」

 

『ええ、安心しなさい。こんなこともあろうかと、転移先はルヴェラ鉱山遺跡の真上にしておいたから』

 

「さすプレ。でも、まだ昼間だよ? 原作通りならトーマというか、とーまちゃんが来るのは夜でしょ?」

 

 ちょうど正午くらいなので、時間には余裕がある。というかありすぎだ。どこかで昼食を取ってきたいぐらい。

 

『ええ、知っているわ。だけど、そろそろ調査結果が出るころね。アリシア、エルトリアの方はどうかしら?』

 

 明るい、ちょっと舌足らずな声が聞こえてくる。

 

 

《うん。たぶん、ママが気にしてた通りだね。今のままじゃ、原初の種の在り処はわからないんじゃないかな》

 

 

「アリシアさん? レヴィと遊んでたんじゃなかったの!?」

 

 

《ふっふーん、ママの命令でスパイ中なんだよ!》

 

 

「えーっ!? お婆ちゃん、ひょっとしてアミタさんや王様たちのこと信用してなかったのぉぉ!?」

 

『いいえ、ギアーズや紫天一家の能力は、その知識や技術を含めて信頼しているわ。だけど、今回の事件に関しては信用できない。原作未登場の原初の種を含めて、不確定要素が多すぎるのよ。リンネって子も登場したし、尚更ね』

 

「でも、どーせスパイ役なら、リニスさんの方が相応しいんじゃ?」

 

『ヴィヴィオ、アリシアは一見アホの子っぽいけど――』

 

 

《アホの子言うなぁぁ!》

 

 

『意外と感情を隠して、相手に合わせることが得意なのよ。逆に、リニスは真面目だから向いてないのよね、隠し事は。私もダメね。フェイトもダメね、真っ直ぐだから。そういった意味では、アリシアよりフェイトの方が私に……いえ、止めておきましょう』

 

 そういえばアリシアさん『The MOVIE 2nd A's』でも見事な腹芸を披露してたっけ。

 

「これでフェイトママみたいな色気があれば魔性の女になれたのに……」

 

 

《ヴィヴィオは一言多いよねぇぇ!?》

 

 

『そんなわけだから、エルトリアだけに任せず、こちらも原作ルートを逸脱しない範囲で情報収集を行いましょう、という話よ』

 

「というと?」

 

『せっかく、目の前に敵の研究施設があるのよ? しかも撤収作業中。この混乱に乗じて、原初の種やエクリプスの情報を手に入れる。たとえ原初の種についてわからなくても、管理局よりも進んだヴァンデイン社のエクリプス研究の成果が手に入れば、これから先の戦いにも役立つでしょう』

 

「なるほど」

 

『上手くいけば、殺す以外にも、感染者を無力化する方法が見つかるかもしれないわ』

 

「そっか! うん。そういうことなら潜入するよ。ばっちこーいっ!」

 

 タイムリミットは日が落ちるまで。とーまちゃんが現れる前に、必要な情報をいただくわけだ。

 

「撤収作業中ならダンボールだっていっぱいあるだろうしね!」

 

『そうね。ダンボールが置いてあっても不自然ではないわよね……って、ちょっと待ちなさいヴィヴィオ、あなた、メタルギアじゃないのよ?』

 

「ヴィヴィオ・スネーク!」

 

 出生が他人事とは思えない。

 

「大丈夫、大丈夫。だってわたし、ティアナさんの幻術魔法見たことあるし。ステルス化したダンボールなら問題ないでしょ」

 

「……ああ、そういうこと」

 

 わたしは地上に下りると、ヴァンデイン社の私設軍隊なのか警備会社なのかわからないけど、実弾兵器を持った警備の目をかいくぐり、ダンボール箱を手に入れる。

 

「よし、オプティックハイド!」

 

 ダンボールの表面に複合光学スクリーンを展開。これで不可視のダンボールの完成だ。この中に入ってしまえば、もう、誰の目にもわたしの姿は映らない。

 

「お婆ちゃん、一応ジャマー結界もお願い」

 

『ええ』

 

 こうして、なんだかインディー・ジョーンズやトゥームレイダーみたいな感じで、鉱山遺跡の暗い通路を進んでいく。

 

 ひたひた……。

 

 その間、銃を持った警備員とすれ違うことがあるものの、まったく気づかれない。完璧だ。わたしは見つからない。

 

『……って、ねぇ、ヴィヴィオ。思ったのだけど、これ、ダンボールを被る意味はあるのかしら?』

 

 …………。

 

 ダンボールを被らなくても、ティアナさんのように自分自身が透明になればいいだけである。

 

「昔の偉い人はいいました。『なぜ、山にのぼるのか? そこに、山があるからだ』と。ダンボールも以下同文!」

 

『……あー、うん。深い意味はないのね』

 

「でも、これちょっと面白いな」

 

「でしょ~。ダンボールを被って施設に潜入するってのは、1つのロマンなんだよ、ロマン……って、おや?」

 

 わたしのダンボールの後ろに、もう1つダンボールが連結してるのだけど……。

 

「いつの間に2両編成に……って、あ、さっきの声……ま、まさか……」

 

 

「おう、あたしだぞ、ヴィヴィ姉ちゃん!」

 

 

 アリシアさんとは別タイプの、元気いっぱいといった感じの声。

 

「とーまちゃん!? って、え、あれ? どうして、こんな早く? まだ外も明るいのに!?」

 

「スゥちゃんから、暗くなったら外出しないように言われてるからな。明るいうちに探検に来たんだ」

 

「なるほど~」

 

 9歳の女の子だもんね。

 

 

「至極まっとうな理由だったぁぁ!」

 

 

 

【次回予告】

 

夜の女の子の一人歩きは危ないよね。遺跡の観光に来るなら昼間だよね。うん……って、なんてこったい! 思ったより早くとーまちゃんと合流しちゃったよ!? あれ? ちょっと待って。これって色々とマズいんじゃ……。まったく情報収集してないし。このままリリィさんを救出しちゃっていいのかな?

 

次回【この世界が『Force』だとわたしだけが知っている】第13話。

 

【潜入! ルヴェラ鉱山遺跡】

 

で、リリカルマジカルがんばります!

 




トーマをのぞいて、エクリプス感染者の怖いところは「相手を殺せる」ところだと思います。
リリカルなのはの世界観では、非殺傷設定があるため、あまり死者が出ません。ところが、『Force』の敵は、殺すことに躊躇いがありません。
『ViVid』や『ViVid Strike!』の世界で、競技選手として戦っているヴィヴィオに敵は殺せない。
この差は大きいかなと。
「降参、降参」と言いつつ、平気で背後から殺しにかかってくる。

これは、原作のトーマにも言えることかなと。
スバルたちナカジマ家のみんなといたことで、優しい世界を知ってしまったことで、正義の味方になったことで、復讐という相手を殺す牙を失ってしまったのだと。
トーマが本気を出せば、フッケバインは無理でも、グレンデル一家ぐらい倒せると思うのですが……。
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