今回も主人公はヴィヴィオです。
内容はタイトル通りなんで、取り立てて書くこともないのですが、とりあえず、はやてさんに幸あれ! あとヴィータにも。あ、こそっとヴィータも出ます。
ところで、本文を書き終わってから、思ったんですが、これだけ多くの人が、10年以上も『なのはのSS』を書いているんだから、ネタが被ってる作品あるだろうな~、と。もしあったらすみません。
ことの発端は、こんなだったそうです。
今朝、なのはママとフェイトママが本部のドアを開けると、執務机に座ったショートカットの女性が、口もとを隠すように顔の前で手を組んでいた。
「久しぶりやな」
「はやてちゃん、碇指令ごっこはやめよーよ。いくらBSで再放送してるからって……」
「一度やってみたかったんや~」
フェイトママが苦笑しながら尋ねた。
「それで、わざわざ私となのはを呼び出したということは、何か事件でもあったの?」
「んん、それなんやけど、ほら、先日なのはちゃんとヴィヴィオが、アインハルトの件で変身魔法の話をしてたやろ?」
「うん、してたね」
「変身魔法といえば、昔、ユーノ君はフェレットになってたし……」
「あ~、懐かしいね~。淫獣疑惑とか」
「ヴィヴィオは大人モードになれる。っちゅーことは、子供モードってのもできるんやないかなーと思ってな」
「あ~、なるほど~」
「なんで、3人でやってみませんかー、というお誘いなんやけど」
フェイトママは「いやいやいや」と抵抗したものの、なのはママの「面白そうだね!」という一言に押し切られてしまった。
フェイトママは、いつも毅然としてカッコイイけど、なのはママの押しにはめっぽう弱いのだ。
「ところではやてちゃん。どうして私とヴィヴィオの会話の内容を知ってるのかな? もしかしてうちに盗聴器とかしかけてないよねぇ?? シャーリーじゃあるまいし……」
「さ、さ~て、たまにはヴィータとパトロールにでも……」
「どうして横向くのかな、はやてちゃ~ん???」
そんな2人のやり取りを、フェイトママは生温かい目で見守っていたそうです。
●
そんなわけで、夕方、いつものようにわたしがトレーニングから帰ると、キッチンで小さなツインテールがピョコピョコ動いていた。
「――って、なのはママぁぁっ!?」
「あはは、ヴィヴィオ驚いた?」
なのはママは「なのはママさんだよ~」と、鍋つかみをはめた両手を上げて、クルクル回っている。
「ど、どうしたの、アポトキシン4869でも飲まされたの!?」
「そんなの飲まされたら、仕返しに車ごと焼き払っちゃうけどね」
そうだった。なのはママは9歳になっても戦闘力が落ちないんだった。
逃げてー、黒い人!
「と、まあ冗談はさておき――」
こうして、なのはママは冒頭の出来事を語ってくれた。
「それで子供の姿なんだぁ……」
「そうそう」
「わたしだったら、断然、大人モードの方がいいけどな~」
なのはママやフェイトママのように、スタイル抜群になってモテモテになるのだ。
「ヴィヴィオも大人になればわかるよ……」
なのはママの目からリアルな涙がこぼれ落ちた。
すると、
『なのは、ヴィヴィオ、ただいまぁ~』
「あっ、フェイトちゃんおかえりなさーい」
9歳の体でパタパタ駆けていくママの背中は、ちょっと愛らしい。
ところが、
「ちょ……フェイトちゃん、その荷物どうしたの!?」
玄関から、なのはママの悲鳴が聞こえてきた。
どうしたのだろう、と思っていたら、リビングに入ってきたフェイトママが、両手で抱えきれないほどの紙袋や箱などを運んできた。しかも、子供モードの姿で。よほど疲れたのか、なのはママとおそろいのリボンがしおれている。
「フェイトちゃん大丈夫?」
「うん。ちょっと荷物が多かっただけだから……」
こ、これは……。
「あ~、フェイトママ、子供モードを解除すればよかったんじゃ……」
「「あ」」
フェイトママがカーペットの上で、両手両膝をつけたorzのポーズをとった。
「そ、それで、フェイトちゃん、この大量の荷物は何なのかな~?」
慌ててフォローに入ったなのはママが、わたしのお尻をポコンと叩く。
「そ、そうだよね! フェイトママ、こっちの紙袋は~、あ、お手紙でいっぱいだよ。何が書いてあるのか知りたいな~」
「……」
ようやく幽鬼のようにフラリと立ち上がったフェイトママは、人生に疲れた顔をしてつぶやいた。
「子供モードになったら、いきなりたくさんの手紙やプレゼントをもらっちゃって……」
「え、これ全部、フェイトママが、今日一日でもらったラブレターとプレゼントの山なの!?」
フェイトママが力なく頷いた。
ついでにメールも大量らしく、バルディッシュもお疲れモード。
「そういえば、小、中学のころも、こんなだったよーな気がするけど……」
まさか、子供モードになった途端、大人社会でも同じ現象が起きるとは……。
わたしは、なのはママと目を合わせた。
「うん、時空管理局は、一度潰れた方がいいんじゃないかな?」
などと話していると、映像通信が入った。
『こにゃにゃちわ~、高町家の諸君』
「は、はやてさん!?」
画面上で、ショートカットの少女が片手を上げた。
「ヴィヴィオも元気そうで何よりや。で、なのはちゃんとフェイトちゃん、今日一日子供モードで過ごしてどうやった?」
「私はいつもと変わらなかったけどね~、フェイトちゃんが――」
と、なのはママはフェイトママの戦利品を指差した。
「うわ~、相変わらずやね。私もなのはちゃんと一緒で平常運転やった……って、どうしたんやヴィヴィオ、私の顔をジッと見て。ん~、私の子供時代の姿は珍しいか? それとも、やっぱ変なんか?」
「えと、そうじゃなくて……いつもとあまり変わってないな~って。髪型も一緒だし」
「ぐほっ!」
画面からはやてさんの姿が消えた……と、思ったが、また下からせり上がってきた。
「プラス思考、プラス思考、そうや、今と昔の姿が変わらないっちゅーことは、私は普段から若く見えるってことやな!」
「あ、そうじゃなくて、昔から近所のおばちゃんっぽかったんだな~って」
「ぐぼォォォォ!」
今度こそ、はやてさんの姿が画面の下に沈んでいく。
「おい大丈夫かはやて!」
すると、画面上に赤い髪の少女が映り、はやてさんを抱きかかえた。
「あ、ヴィータさん!」
「って、何だヴィヴィオと通信してたのか……って今はそれどころじゃない」
ヴィータさんが「はやてー、はやてー」と何度も叫んでいる姿を見て、わたしは思わず問いかけた。
「ヴィータさんも子供モードですか?」
「……(なのは)」
「……(フェイト)」
「……(はやて)」
「ちっげーよ、いつも通りだよっ!」
――プツン!
「あ、通信切れちゃった……」
「ヴィヴィオ……流石は高町家の血を受け継いだ娘だよね」
「うん。血は引いてないけどね、確かになのはの娘だとは思う」
「あれ? フェイトちゃんの娘でもあるんだよ?」
「あう」
こうして、高町家の夜は今日も静かにふけていくのでした。