そう、なのはママから問われたけれど、答えが返せなかったヴィヴィオ。
みんなの雛人形を参考にしようと、各家を回るのだけど……???
ひな祭りが近づいたある日のこと。
その戦いは、ママたちの、ほんの小さなすれ違いから始まりました。
「ヴィヴィオは、どんなおひな様が欲しいの?」
「う~ん、どうなんだろう……」
地球の文化なので、そこまで詳しいわけではない。それどころか、どんなタイプのひな人形があるのかもよく知らないのだ。
「おひな様って言ったら、やっぱり7段飾りだよね。最近は、コンパクトな親王飾りや3段も人気みたいだけど……フェイトちゃんはどう思う?」
「いっそのこと特注で8段なんてどう?」
「ムムッ、私なら9段にするかな~」
「じゃ、私は10段で」
「11」
「12」
2人が睨み合う。
「フェイトちゃん、ここぞとばかりにヴィヴィオにいいとこ見せようとして~」
「なのはこそ~」
ガッ――と、両手で組み合った。
「だったら、ひさしぶりに模擬戦で決着つけようか?」
「……そうだね。受けて立つよ、なのは!」
2人とも「負けないよ」と、力比べの格好のままバリアジャケット姿に変身する。
家の中だから、大暴れすることはないだろうけど……。
「13段!」
「14段!」
うん。
黄金聖闘士の千日戦争みたいな感じで、当分は決着つかないな、これ……。
「そういえば、他の家ってひな人形あるのかな?」
そもそも、ミッドチルダでも、ひな祭りをやるのだろうか……?
●
「やるよ?」
突然、八神家を訪れたわたしに、はやてさんは軽い口調で答えてくれた。
「子供が大きくなったらやらない家もあるみたいやけど、うちは毎年ヴィータがおるからな」
「なんでだよ!」
ソファーで寝そべっていた八神家のチビっ子……じゃなかったヴィータさんが、バッと起き上がった。
「あはは、まあ、それは冗談としても、リインにアギト、今はミウラもおるしな」
「なるほど~。それに、八神家はザフィーラをのぞいてみんな女性ですもんね」
「そやな~」
ザフィーラも大変そうだ。
「あの~、それで、はやてさんのところは、どんなひな人形を飾るんですか?」
「うちのはフェイトやな」
「フェイト……って、フェイトママ?」
はやてさんが小さく笑う。
「これがうちのひな人形や――」
シンプルな赤い7段飾りに、シンプルなユ●クロみたいな服を着たお内裏様(?)と、真っ赤な服にツインテールのお雛様(?)。
「――って、これフェイトママじゃなくて『Fate』だよねっ!?」
「衛宮くんに、遠坂凛やな」
「へ、へぇ~」
わたしは突っこまない。
突っこまないぞ~。
「この2段目の三人官女って……」
「セイバー(青)と、イリヤと、桜やな」
「へ、へぇ~」
耐えろわたしぃぃ~~~っ!
「そ、その下のカラフルな五人囃子って……」
「全部セイバーやな。白とか黒とか赤とか……」
納得。
わたしは、さり気なく倒れたままの隋臣ランサーを起こす。
「ところで、青セイバーの横に置いてある菱餅だけなくなってますけど?」
「あ~、またヴィータやね」
「腹ペコ王の隣に置いとくのが悪いんだよ。なくなってる方がリアリティあるだろ?」
確かに……。
あ、
「3色の菱餅で思い出したんですけど、なのはママの魔力光と同じピンクには、桃と一緒で魔除けの意味があるそうですよ?」
「なんだよ魔除けって、あいつにピッタリじゃねーか。どんどん食ってやれ――」
そう言って、ヴィータさんはもう1か所の菱餅にも手を伸ばす。
「ちなみに、緑はフェイトママに近いし、白は、はやてさんの魔力光ですよね」
「げほ、ゲホッ! 早く言わねーから、はやての色食っちまったじゃねーか!」
「あ~」
「あ~って言うな、あ~って! はやてに悪いことでも起きるのかよっ!?」
別に何も起きないけどね。
「ヴィヴィオは、相変わらずの悪魔っ娘やね~」
「へへ、魔王の娘ですからぁ~」
「褒めてねぇぇっ!」
●
次は、コロナハウスへ向かう。
きっと、学院祭の喫茶店みたいにカワイイひな人形が、夢いっぱいに飾ってあるのだろう。
そんな、ぬいぐるみみたいなおひな様を想像しながら、
「おじゃましま~す――って、これガンプラだよねっ!? 何このジオン脅威のメカニズムみたいなひな壇は!」
「やっぱり、おかしいかなぁ~?」
「うん、流石にコレは……」
ないな~。
「やっぱり、1段目は初代ガンダムとシャアザクより、νガンダムとサザビーの方がいいよね! 私も悩んだんだよ~」
「……いや、どうだろ」
かろうじて色で判断できるけど、最早お内裏様とお雛様ではない。
「ヴィヴィオならどっち?」
どっちでもいいよね!?
とはいえ、
「え~っと、マジレスすると、初代ガンダムとジオングかな。スカートっぽいし」
「な、なるほど。流石はヴィヴィオ……」
コロナが「う~ん」と長考に入ったので、次いこ、次――。
●
というわけで、次はリオハウスなのだけど……すでに嫌な予感しかしない。
「……」
家の前を無言で通り過ぎる――と、
「ちょっと待ってよヴィヴィオ! あたしんちのおひな様も見てってよぉぉ~っ!」
気づかれた!
まさか、ずっとわたしが来るのを正座待機してたの!?
結局、強引に室内に引きずりこまれる。
「コレがあたしの仮面ライダー雛だぁぁ――っ!」
「あ~」
何というかリオらしい。
「戦隊モノとどっちにしようか悩んだんだけど、戦隊は人数が多すぎて」
「うん。賢明な判断だと思う」
意外なほどまともな理由だった。
ちなみに、1段目は今年のライダーが来るそうです。
●
こうして、ナカジマ家でチンクが飾りつけしていたプリキュア雛を眺めつつ、最後の目的地――アインハルトさん宅へ。
「アインハルトさんのことだから、お内裏様がダンベルで、お雛様が鉄アレイ――みたいな感じで飾ってあるんだろうなぁ~」
縦に立たせたダンベルに、着物を羽織わせているイメージ。
「逆に、ちょっと見てみたいかも……」
わくわくしながらインターホンを押す。
「こんにちは~。アインハルトさん、ひな人形を見に来ましたよー」
「ようこそヴィヴィオさん。一応、手作りで作ってはみたんですが、あまり上手くはできなくて……」
手作りっ!
期待が高まる。
「いえいえ、大丈夫ですよ~。みんな変わり雛でしたしね」
きっと、最強の変わり雛が爆誕してくれることだろう。
今日回った各家のおひな様について話しながら、アインハルトさんの部屋へ――。
「あ、あの、これなんですが……」
最上段のみ。男女一組の、シンプルな親王飾り。
だけど、ひと目見てピンときた。
「これって……」
「はい。覇王イングヴァルト――クラウスと聖王女オリヴィエのひな人形を、ゴーレム創成で作ってみました」
「……」
「えっと、また何か間違っていたでしょうか!?」
確かに、造形――という点では失敗したねんどろいどみたいなんだけど、ひな人形にこめられた想いと願いは誰よりも強い。
「いえ、これはスゴくいいですね。たぶん、今日見てきた中で一番の作品です」
「ほ、ホントですか!?」
「はい!」
●
こうして、数々のひな人形を見たわたしは帰路についたのだけど、
「ただいまっ――」
――ドッカァァ~ン!
「ちょ、なのはママ、フェイトママ、まだやってたのぉぉ――っ!?」
本気で千日戦争に突入するつもり!?
「ピラミッドひな壇、31段、1800体……」
「だったら私は、日本一高い32段……」
「ああ……もう……こんなに部屋の中を散らかしてぇぇ~」
フツフツと怒りが沸いてきた。
「セットアップ!」
わたしは思わず、黒いバリアジャケットをまとってしまう。
「ヴィヴィオっ!?」
「聖王モードっ!?」
「2人とも、その場で正座っ!」
「「あう~」」
なのはママとフェイトママは、バリアジャケット姿のまま並んで正座する。
「まったく、こんなに仲良しなのに……あ」
ピンときた。
わたしは直ぐに写真を撮ると、アインハルトさんに送信する。
『これがうちのおひな様です』
と。
雛人形。
すでに、アンパンマンやドラえもんといった、一般層向けのキャラクター雛人形は販売されていますが、人気のアニメやゲームのキャラクターを使った雛人形も、販売すればそれなりに売れそうな気がします。
『ねんどろいどぷち』くらいのサイズがいいです。
場所もとらないし。
背景や台座も含めて、全種類コンプリートすると7段飾りになるフィギュアコレクションなんて面白いと思うんですけど、どうでしょう?
劇場版の後編に合わせて出ないかな~、と思ってみたり。
ちなみに、作中で戦隊モノの雛人形の話が出ますが、実際、それに近いモノを見ることができます。
昔、なのはの声優の田村ゆかりさんが声の出演をしていた『海賊戦隊ゴーカイジャー』という作品に『レンジャーキー』という、各戦隊ヒーローの小型フィギュアみたいなアイテムが登場しまして、実際に199体販売されました。
検索すると、全部コンプリートして段上に飾った画像が見つかるので「あ~」とイメージできるかと。圧巻です。
それにしても、よく集めたな~、これ。
一括販売じゃなかったんで、新品で買い集めようとしたら、とんでもない苦労が……スゴい。