私立聖祥大付属小学校4年生のわたし――高町ヴィヴィオは、どこにでもいる普通の女の子。
異形のクリーチャーと少女が戦う奇妙な夢を見た翌日。
学校帰り。
森の中で出会ったモノとは――??
魔法少女りりかるヴィヴィオ第2話、始まります!
ドキドキ……。
何だろう、コレ……?
ヴィヴィオは土の上に横たわる〝ソレ〟を見た。
かのフェレットやネコっぽい豹でもない。
パステルグリーンの髪に、同色を基調とした衣装。それとよく似合う紅いリボン。
女の子のフィギュアだろうか?
ちっちゃいけれど、顔立ちは凛々しい。まるで、本物の人間のようによく出来ている。
こうなると、色々と確かめたくなるのが人の性。
「誰も、見てないよね……」
キョロキョロ周囲を確認すると、拾った人形を、スカートの中をのぞける高さまで持ち上げた。
すると、
「お腹が空きました……」
「ひっ!?」
突然聞こえた声に、慌てて人形を落としそうになる。
「まさか、ね……」
幻聴、幻聴――と、ヴィヴィオが改めて人形のスカートをつまんでめくる。
「黒、かぁ……」
「お腹が空きました……」
「ひぃぃ!?」
間違いなく人形から声が出ていた。
「ビックリしたぁ~。そういう機能があるのかな?」
スイッチを入れた覚えはない。となれば、押すと声が出るタイプの人形なのだろう。
「う~ん、ここかなぁ~」
柔らかそうな頬を突く。作り物とは思えないほどプニプニして心地よい。
「癒されるなぁ~」
続けて二の腕や背中を押してみる。
「コレはコレで……」
残りは、胸やお尻の辺りのみ。
「し、仕方ないなぁ~。別にわたしが触りたいわけじゃなくて、ちゃんと声が出るかどうかのチェックなわけでぇぇいっ!」
全力全開。指先に力をこめた瞬間、
「あの、お尻はちょっと……」
「……へ?」
「あと、お腹が空きました……」
「……」
さん、はいっ、
「しゃ、しゃべってるぅぅぅぅ~~っっ!!?」
――ぐううぅぅ~っ!
ヴィヴィオの驚きは、声と一緒に腹の音でかき消された。
「……」
「……」
人形の少女が頬を赤らめた。
「……あの、とりあえずなんですが、カロ●ーメイトのチョコレート味ならありますけど……食べますか?」
「いただきます!」
少女を地面に下ろす。
ちっちゃな女の子は、スティックタイプのそれを両手で持つと、もしゃもしゃ食べ始めた。
……リスみたいだなぁ~。
「わたし高町ヴィヴィオって言います。あなたのお名前なんですかー?」
「ほうひほふれまひた。はいんはるふぉ、ほふほふほ――」
「いえ、全部食べてからでいいですから」
両頬をパンパンにしている姿は、
……やっぱりリスみたいだなぁ~。
「はい、飲み物もどうぞ~」
ペットボトルのスポーツ飲料を手渡す。
見かけによらず力持ちなのか、自分の体よりも大きなペットボトルを持ち上げて、ごきゅごきゅ飲み干した。
『ナニコレ、家で飼いたいっ!』
「あの、何かおっしゃいましたか?」
「い、いえ、何も言ってませんよ~」
危ない、危ない――つい心の声を口にしてしまった。
ちっちゃい女の子はパンパン手を払う。
「改めまして。申し遅れました。私は魔法の国ミッドチルダから参りました、ハイディ・E・S・イングヴァルトと申します」
魔法の、国……? は一旦置いておく。
「えっと、アインハルトさんとお呼びすれば……?」
「はい。それで構いません。まずは食事のお礼に、この鉄のダンベルか、銅の鉄アレイを……」
金の斧銀の斧的なイベントだろうか?
ていうか、銅の鉄アレイって……。
「いえ、そういうのいいですから~」
「そうですか……中々の逸品なんですが」
しょんぼりしているアインハルトさんも悪くないなぁ~、などと思っていると、
「ヴィヴィオ~、そっち何か見つかった~?」
木々の奥から、元気いっぱいな声が聞こえてきた。
「今のは?」
「すみません。実は、友達と一緒に来てまして」
「なるほど。であれば、私は姿を隠していた方が良さそうですね」
「はい。ちょっとの間でいいんでお願いします。リオー、こっちだよ~、こっち~、おいで~、カム!」
ガサガサと葉のこすれる音。
枝葉の間から、ヴィヴィオと同じ制服を着た子供が犬みたいに顔を出す。八重歯のキュートな女の子だ。
「やっと見つけたぁ~。ヴィヴィオってばこんなところで何を――って、ぎにゃぁぁ~~~~~~~~っ!!」
「ちょ、り、リオ? リオ、どうしたのリオぉぉ――っ!?」
目の前で、同級生の少女が苦しみ出す。
「こ、これは……」
「知っているのか雷電」
「アインハルトですが、知っています。というか、知っているも何も、コレが私が地球に来た理由なんです。ジュエルシードを回収するという――」
「ジュエルシード?」
「はい。その名の通り、光り輝く小さな種のような宝石です。ジュエルシードには願いを叶える――というプラスの面と、対象を変質させ暴走させる――マイナスの面があるのですが……」
全身がリオの髪と同じ黒一色に染まっていく。さらに、頭部だけが巨大化。首から下の胴体も消失し、頭に直接足が生えているような姿に変わった。
「リオ……」
無表情のため、何を考えているかはわからない。けれど、リオの面影は残っている。
腕の変わりに、頭部のアホ毛2本を伸ばして近づいてくる。
「何このタタリ神ぃぃ――っ! も●のけ姫で見たよ!?」
「これがジュエルシードの異相体化です」
とてもじゃないが止められない。ヴィヴィオはアインハルトを抱えると、脱兎のごとく逃げ出した。
背後でズシン――とブナの木が薙ぎ倒される。
「アインハルトさん、どうやったらリオを助けられるのっ!?」
「ヴィヴィオさん、これを使ってください――」
手渡されたのは丸く小さな虹色の宝石。
「これは?」
「セイクリッドハートです。今の私の魔力では無理ですが、あなたの力なら彼女を止められるかもしれません」
「何だかわからないけどわかったよ! で、どうすればいいのっ!?」
「私に続いて詠唱を――」
ヴィヴィオはアインハルトに合わせて、魔法の呪文を叫ぶ。
「左手に星を、右手に雷を――」
「左手に星を、右手に雷を――」
「虹は天に、聖なる魂はこの胸に――」
「虹は天に、聖なる魂はこの胸に――」
「この手に魔法を――」
「この手に魔法を――」
「「セイクリッド・ハート! セ――ット・ア――――ップ!」」
全身が光に包まれる。次の瞬間、ヴィヴィオは――どこか学校の制服に似た――白と青の防護服に身を包んでいた。
頭のリボンも、青から白に変わっている。
「この服って……」
「バリアジャケットと言います。それを着ていれば、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしませんから。
あとは、セイクリッドハートの音声に従ってください。全て上手く行くはずです」
「セイクリッドハート……ううん、クリスよろしくね!」
ところが、
『……』
「何もしゃべらないんですけどぉぉ!?」
「……そうでした。この子はしゃべらないデバイスでした。どうしましょう。ヴィヴィオさん、都合よくウサギのぬいぐるみを持っていませんか?」
「流石にそれは~」
無理。両手をばってんにクロスする。
「ウサギの人形がついたストラップでもいいですよ?」
「どうしてウサギ限定なんですかぁぁ!?」
「仕方ありません。ヴィヴィオさん、ちょっと靴下を脱いでいただけませんか?」
「靴、下……?」
疑問は残るが緊急事態。指示に従って片方だけ脱いだ。
「ありがとうございます。それでは、脱いだ靴下の中に、セイクリッドハートを入れてください」
何だかとてつもなく胡散臭い光景なのだけど……入れた途端、風もないのに靴下がフワリと浮いた。
「こいつ、動くぞ!」
一見すると白いフェレットのようで、愛らしい小動物みたいなのだけど……。
落ち着け。
コレはわたしの靴下だ。
けれど、自分の靴下だけあってか、動きを見ていると、
「何となく言わんとしていることはわかるかも……」
「流石はヴィヴィオさん。やはり、あなたには才能があるようですね」
何の才能だろう――と思ったが、気にしたら負けなので、とりあえずクリスから攻撃魔法の基礎を学ぶ。
「助けるため――とはいえ、お友達を傷つける行為。ヴィヴィオさんにも、ためらいや葛藤といった複雑な想いがあると思います。ですが――」
「ソニックシュータァァ! ソニックシュータァァァ!! ソニックゥゥシュウタァァァァ――――ッッ!!!」
ヴィヴィオは、ちびリオというかタタリオに向かって光弾の雨を降らせる。
「えぇぇ~!?」
さらに、怯むことなく飛びかかってきたタタリオの体が、虹色の球体によって拘束される。
「かかったね、リオ……それはわたしのバインドだぁぁ!
はぁぁああっ!!
一閃必中ッッ!! セイクリッドォォブレイザァァ――――ッ!!!」
特大の閃光がリオの体を飲みこみ、
――チュドォォォォォンッッ!
耳をつんざく轟音が、空と大地を揺るがした。鳥たちが一斉に舞い上がる。
「まったくためらわないですねっ!?」
バタン――とリオが地面に倒れこむ。
いつの間にか元の姿に戻った彼女は、全身が茶色で、髪はアフロ、口からは煙を吐いている。
「よかった、命に別状はないみたい……」
「え、ええ……」
ヴィヴィオはクルリと回転して蹴りのポーズを決めた。
「チャララララ~チャッチャ~、愛がアップ!」
「しませんよっ!?」
すると、黒焦げになったリオの体から、光り輝く種のような宝石が現れた。
「コレって……」
「はい。これが念願の――」
「アイスソードを手に入れたぞぉぉ!」
「ジュエルビーストです。ヴィヴィオさん、コレが他の生物を暴走させる前に、早く封印してしまいましょう」
魔法の杖は持っていないので、代わりに拳を近づけると、
「その封印、ちょ~~っと、待ったぁぁ~~~~っっ!!」
戦いの余韻が冷めやらぬまま、ヴィヴィオやアインハルト、ましてやリオでもない――第三者の声が響き渡った。
「だ、誰っ!?」
「ココだよ!」
「木の上です、ヴィヴィオさん!」
見上げる。枝に乗ってコチラを見下ろしていたのは、金髪ツインテールに水色の衣装をまとう快活そうな少女。
その隣には、落ち着いた雰囲気をもつ、黒みがかった茶色のショートカットの女性。
「私の名前はアリシア――アリシア・テスタロッサ。
そしてこっちは、ママの使い魔リニス。
あなたの見つけた、7つ集めればどんな願いも叶うという地球のロストロギア――龍球を、さあ、私たちに渡してもらいましょうかぁぁ!」
「「色々と間違ってるぅぅ!!?」」
ついに現れたもうひとりの魔法少女。
わたしと金髪かぶってるよねっ――と言っても、ちっとも聞いてくれなさそうなやんちゃぶり。
わたしとアインハルトさんは、あの高いテンションについていけるのか!?
次回、魔法少女りりかるヴィヴィオ、第3話
『ライバル!? 謎の少女はEクラス!』
りりかるマジカル、がんば……らないよぉぉ!
4月1日なので……。