アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

34 / 127
母の日。
みなさんは何をプレゼントしますか?

決まっているよ――という方、まだ決まってないよ――という方、よければわたしと一緒に考えてみませんか?



ママの日

 みなさんはママの日……じゃなかった、母の日の由来をご存知でしょうか?

 

 古くは古代ギリシア、あるいは17世紀のイギリスから始まった――と言われていますが、本格的に広まったのは20世紀初頭のアメリカだそうです。

 日本でクリスマスが一般化したのと同じ頃ですね。

 亡くなった母を思い、彼女の好きだった白いカーネーションを教会に贈った。その行為の尊さに多くの人が共感したのでしょう。結果、今のような一大イベントに成長したわけです。

 そして、

 白いカーネーションは、亡くなった母へ。

 赤いカーネーションは、生きている母へ。

 さらに、区別や配慮などから、赤いカーネーションに一本化。

 最終的には、現在のような多彩な色のカーネーションから、薔薇、紫陽花といった季節の花まで。

 母の日も、随分とバリエーション豊かに変わったものです。これも、時代の流れというモノでしょうか?

 ただし、それがいいことばかりとは限りません。

 カーネーション以外が許されるなら、それは無限の選択肢があるようなもので、わたしたち子供は「母の日にどんなプレゼントをしようかな?」と、毎年悩むわけですよ。

 しかし、それは大きくなってからも同様なようでありまして……。

 

 

     ●

 

 

「たっだいま~」

 

 帰宅したわたしがリビングのドアを開けると、歳は9歳ぐらい。ツインテールの可愛らしい女の子が、

 

 

「う~ん」

 

 

 と、眉間にシワを寄せていた。

 

「ちょ、なのはママ。また子供モード? てか一体どうしたの??」

 

 ソファーに腰かけた格好で、足をぶらぶらさせている様子は、まあ、何だかんだで似合ってはいるのだけど……。

 

「あ、ヴィヴィオお帰り~。ほら、もうじき母の日でしょ?」

「あ~、うん」

 

 テーブルの上には、たくさんの母の日ギフトのカタログ。某有名デパートのやつまであった。

 もしかして、今年のわたしへの催促だろうか?

 ハードル高いんですけどぉ~。

 

「あはは~、そんな顔しないで。これ、ヴィヴィオのじゃなくて、私がお母さんにあげるやつだから」

「あ~」

 

 そういうことか。

 

「ママのママ。桃子おば……じゃなくて、桃子お姉さん(こう呼ぶと喜ぶのだ)にあげる分かぁ~」

「そういうこと」

「――で、なんで子供モード?」

「あはは、子供の姿になれば、何かいいアイディアが浮かぶかな~って」

「あ~」

 

 気持ちはわからなくもない。

 

「――で、ヴィヴィオは母の日に私に何をくれるのかな~?」

「って、それ今聞いちゃダメだよね!」

「だって~、外見だけちっちゃくなってもいいアイディアが浮かばなかったんだも~ん。ここはもう、リアル小学生――ヴィヴィオの純粋無垢な子供心に頼るしか!」

「もう、ママは大人なんだから、子供にはプレゼントできないような選択肢だってあるでしょ?」

 

 高額な金銭が絡んだ贈り物だ。

 まさか、大人になってまで〝肩たたき券〟や〝お手伝い券〟を渡すわけにもいかないし……。まあ、ネタとしてはアリかもだけど。

 

「確かにね~。でも、翠屋を建て替えるほどのお金は流石に……」

「その辺りは、恭也おじさんに任せておいた方が……」

 

 すると、

 

 

「ただいまー」

 

 

 聞いただけで美人とわかる凛とした声が響いた。

 

「フェイトママだ!」

「フェイトちゃん、ナイスタイミング!」

 

 2人でドタドタ玄関に向かうと、

 

 

「へ?」

 

 

 フェイトママの目が見開かれた。別にセブンセンシズに目覚めたわけではない。少しお疲れ気味のフェイトママの頬に紅が差し、一気に笑顔が戻る。

 

 

「きゃぁ~~~~~~~~~っ!!」

 

 

 わたしとなのはママを両腕でぎゅ~っと抱きしめると、

 

 

「写真、写真撮ってもいいかなっ!?」

 

 

 あ~、なのはママ、子供モードのままだったんだっけ……。

 フェイトママ、子供姿のなのはママのこと大好きだからなぁ~。

 仕方ない。

 ていうか、意外と子供モードのママと行動する機会が多いので、わたしとしてはどちらの姿でもあまり違和感を覚えなくなっているという。

 フェイトママの荷物を持つと、幼妻というか娘というか、そんな感じでなのはママが尋ねる。

 

「ねぇ、フェイトちゃん。フェイトちゃんは母の日――リンディさんに何をあげるの?」

「母の日? 私はお兄ちゃんと一緒に旅行でもプレゼントしようか――って計画してるけど」

「それだぁぁ!」

 

 どうやらなのはママも旅行をプレゼントするつもりらしい。

 

「それで――なのはとヴィヴィオは私に何をくれるのかな?」

「うん、フェイトちゃん。別に私はフェイトちゃんの娘じゃないからね?」

 

 とか言ってるなのはママを、フェイトママが抱きかかえてスリスリしている。

 

「にゃ~」

 

 まあ、それはそれとして、

 

「ママ~、たまには桃子さんと2人で母娘旅なんてどう?」

 

 なのはママの案内で、ミッドチルダなどの管理世界を回るのもいいと思う。

 うちの場合、旅行――というとイコール合宿みたいな面があるから、たまにはママたちと水入らずで行きたいと思うし、桃子さんだって、たまには自分の娘と二人きりで出かけたいと願うのではなかろうか?

 

「あ、それいいんじゃないかな――」

 

 フェイトママが賛同してくれる。

 

 

「「どう、なのは/ママ?」」

 

 

 わたしとフェイトママが口をそろえて言うと、なのはママは少し照れくさそうにはにかみながら頷いた。

 

 

     ●

 

 

 こうして、なのはママから桃子さんへの母の日が決まった晩。

 今度はわたしが、

 

 

「う~ん」

 

 

 と、唸っていた。

 確かにママは決まった。けれど、肝心のわたしからなのはママへのプレゼントが決まらない。

 

「わたしにも、アインハルトさんみたいにオリヴィエの記憶があればな~」

 

 ベルカ案内! とか出来そうだけど、そんなことはない。

 

「〝お手伝い券〟は去年あげたし……」

 

 ちなみに一昨年は〝肩たたき券〟だ。

 別に何度あげても構わないとは思うのだけど……ちょっとは工夫してみたい。

 

「オーソドックスなところでカーネーションかぁ~」

 

 悪くはない。むしろいい。

 

「あとはスイーツ系に、変わったところでローズバスとか……」

 

 お風呂に薔薇の花を浮かべるという、ちょっと高級感あふれる優雅なアイテムだ。わたしも体験できるので、そそられる気持ちはある。

 

「でもなぁ~」

 

 こういうお金をかけたプレゼントは中等部に上がってからにしたい。今は、もっと子供らしい、できれば、なのはママが驚いてくれるようなのがいいのだけど……。

 

「サプライズになるものかぁ~」

 

 手紙、似顔絵、歌をうたう。

 なんて、いずれもお金をかけない、子供らしいプレゼント。きっとママたちも喜んでくれるだろう。

 

「たぶん、その辺りが落としどころなんだろうなぁ~」

 

 もしわたしがコロナだったら、ちっちゃいなのはママとフェイトママのゴーレムを作ってプレゼント――なんてこともできるのに。

 それで人形劇をやるのだ。

 あの名シーンを再現する。

 なのはママとフェイトママの一騎打ち。

 

 

『受けてみて!

 これが私の全力全開ッ!!

 ――スターライトォォブレイカァァ――ッ!!!』

 

 

 そして、フェイトママの人形の首が飛ぶ。

 ――って、最近どうも思考がなのはママみたいになってきている気がする。

 いかんいかん。

 

「あ、そういえば……」

 

 なのはママに子供のころ何をあげたのかと訊いたら、

 

『私、ヴィヴィオの歳にはもう管理局で働いてたからな~』

 

 と語っていた。

 たぶん、同年代の子供に比べて、自由に使えるお金も多かったことだろう。

 あんまり参考にならない気がする。

 でも、

 

「昔のママかぁ~」

 

 クリスに移した最も古い写真データを再生してみる。

 わたしの最も古い記憶と同じ――六課時代。みんなも写っている。一番変わったのはエリオだろうか。まだまだちっちゃい。

 

「みんな年取ったねぇ~」

 

 とか口にしたら怒られるだろうか……。

 怒られなくても、たぶん、おかずが一品減る。

 

「この頃も、ママは母の日に何かあげてたんだよねぇ~」

 

 当たり前のことだけど。

 わたしはどうだったろうか?

 

「まだ、なぁ~んにもわかってなかったからなあ……」

 

 六課時代から現在まで、わたしとママたちの記録を順番に眺めていく。

 そして――

 

 

「これって……」

 

 

     ●

 

 

「ヴィ、イ、タ、ちゃ~~~~んっ!!」

 

 

 教導先の更衣室。

 朝っぱらから、なのはママがヴィータさんに抱きついていた。

 

「だぁぁ~、鬱陶しい! 何だよ一体?」

「ほらほら、昨日って母の日だったでしょ」

「あたしはおめーの娘じゃねぇぇ――っ!」

 

 ママの膨らみがヴィータさんの頭を圧迫する。

 

「いやいや、そーいうことじゃなくて、これ見てよ。昨日ヴィヴィオからもらったんだけど――」

 

 それは1枚の写真データ。

 9歳のなのはママとわたし――ヴィヴィオがテーブルでへたっている。それを、隣に座っているフェイトママ(やっぱり9歳)とアインハルトさんが笑って見つめている。

 そんな光景。

 わたしたちが時間移動して、ママたちと一緒に戦った『砕け得ぬ闇事件』の時に撮った写真のうちの1枚だ。

 ハッキリとは思い出せないこともあるけれど、おそらく、アミタさんやキリエさんが、時が来たら――歴史に影響を与えない――と判断したら、自動的に閲覧できるよう、大事なママたちとの思い出を消去せず、残しておいてくれたのだろう。

 

「ほら、懐かしくない? あれからもう14年だもんね~。感慨深いと言うか、私たちも成長したなぁ~、とか」

 

 なのはママは遠い目をして写真を見つめている。

 

「あんまり変わってないような気もしてたけど、こうして、あの当時の気持ちを思い出してみると、ミッドに引っ越して、ヴィヴィオの母親になって……やっぱり、随分と物事を見る目や感じ方は変わっているんだなって、改めて思うんだよ」

 

 そして、ヴィータさんもジッと写真を見つめて……眉根を寄せた。

 

「なんだ、また子供モードかよ。遊んでばっかいないで、お前も仕事しろよなー」

「ちょ、違うって、これ14年前の私たちだよ! ほら、このテーブルとかソファー席、アースラの休憩室でしょぉぉ!!」

「わかるかぁぁ!」

 

 確かに、あの写真、いつもの高町家と変わんないかもです。

 

 

 




母の日――というわけで、実際に、大手百貨店やスーパーなどから〝母の日ギフト〟のカタログをもらって、片っ端から読んでみました。

何だか、スゴイことになってます(笑)。
こんなに多彩になっていたとは……。
一部のギフトに関しては、編集している方も「これ、もう母の日関係ないな」と思っているに違いありません。

ちなみに、カタログにはある共通項があって、どこも、こそっと〝父の日ギフト〟が一緒に掲載されています。
母の日・父の日セットとかもあります。
さらに最終形態は、カタログの右開き、左開きで、それぞれ、母の日、父の日になっているという。
なるほど、納得です。
父の日は6/18なので、まとめてプレゼントを決めるのは効率的だと思います……思いますが……何だかなぁ~(笑)。

いつもはプレゼントをネットで検索することが多いのですが、たまにはこうしてリアルで小冊子を見るのも面白いと思いました。
予想外の発見があるかもです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。