アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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日常的に魔法が存在する異世界ミッドチルダ……の割に「乗っているのは地球と変わらない車だよな~」と気になっていたので、ちょっと調べてみました。

理由を知っている方も、知らない方も、よかったら読んでみてください。



ミッドチルダの自動車って?

 とある山奥の、とあるレストラン。

 わたしともうひとり。

 ショートカットのボクっ娘が、ソファー席に並んで座っている。

 

「――はい! 次元世界1兆人の聖王教会信者のみなさん、リリカルまじかるこんにちは~。あなたの崇め奉る現代の聖王女――高町ヴィヴィオです。

 毎週異なるゲストをお迎えして、視聴者のみなさんの疑問に、高町家っぽく答えていこうというこのコーナー。

 今週のゲストはなんと、あのDSAAのU15格闘競技で、ワールドランク5位のミウラ・リナルディ選手です。

 今日は一槍お願いしますね~」

「ここじゃ戦いませんよっ――じゃなくて、えっと、あの、こんにちは! ミウラ・リナルディです。

 力不足だとは思いますが、精一杯みなさんの疑問に答えていきたいと思いますので、今日はよろしくお願いします!」

 

 

 というわけで、今週は聖王教会系列で配信されている番組を、ちょこっとだけみなさんにもお届けしまーす。

 

 

「いや~、それにしてもミウラさんがこのコーナーに出演してくれるなんて珍しいですよね」

「え~っと、呼ばれたの初めてだったんですけど……」

「やっぱりココ――実家のレストランの宣伝目的ということでよろしいでしょうか?」

「違いますよっ! 昨日の帰り、いきなりうちでやりたいって言い出したの、ヴィヴィオさんじゃないですかぁぁ――っ!?」

「まあ、ゲストと言いつつ、大抵リオコロだったり、なのはママだったり、難しい説明が必要な時は、八神指令だったりしますからね~」

「ちょ、ボクの質問に答えてくださいよぉぉ――って、あれ? アインハルトさんは呼ばないんですか?? ヴィヴィオさんのことだから、てっきり、ゲストという名の準レギュラーかと思っていたんですが」

「あ~、そこはちょっと事情がありまして。わたしも呼びたいんですけど、ほら、いくらわたしでも、面と向かってアインハルトさんをいじり倒すことできないじゃないですか」

「あ~、って、それ、ボクならいじり倒していいってことですよねぇぇ――っ!?」

「提供は、次元世界最大の信者数を誇る聖王教会がお送りします――」

 

 

     ●

 

 

「――って、ちょ、さっきの話の続きはどこ行ったんですかぁぁ!?」

「まあまあ、そんなことよりお便りが届いてますよ。

 第97管理外世界、海鳴市にお住まいのイニシャルA・Bさんからのお便りです。くぎゅ~」

「それイニシャルの意味ないですよねぇぇ!」

「まあまあ。ほら、そんなにぜぇぜぇして、試合の時より息切れが激しいじゃないですか~」

「誰のせいだと~」

 

 そこで、突然クリスが謎のポーズをとる。

 

「おっと、メールが届いてますね。

 えっと、ミッドチルダ在住の、人生は全力全開さんからです。

 

『ヴィータちゃんみたい』

 

 おっと、さらにメールが。ミッド南部にお住まいの、呪いウサギさんからです。

 

『諦めろ……』

 

 だそうです。なんだかいやに実感がこもってますね~」

「師匠……」

「それでは、イニシャルA・Bさんからのお便りを読みますね~。

 

 

『ミッドチルダの自動車って魔法で動いてるの? それともガソリンで動いてるの? あたしに教えなさい!』

 

 

 とのことですが……」

「自動車、ですか……?」

「はい。でも、確かに言われてみると何で動いてるんでしょうね。魔法世界なので、魔力なのか、それとも地球のようにガソリン、あるいは電気なのか――外見だけなら、地球の車と変わりませんしね~」

「ボクもその辺はさっぱりです。だけど、家電製品なんかもそうですよね?」

「あ~、確かに家電って言ってる時点で電気っぽいですよね~」

 

 まあ、実際、電気で動くのだけど。

 ただし、各家庭に供給される電力の大本は『魔力 → 電力』の魔導炉なので、ちょっぴり複雑な気分ではある。

 うちなんて、直接魔力でいいのにと。

 すると、ミウラさんが急に言葉を濁した。

 

「あの~、今更なんですが、ヴィヴィオさんはデバイスが何で動いているかご存知でしょうか?」

「ああ、デバイスも普段は意識しないですからね。とりあえず、結論から言っておくと、基本、デバイスは魔力ですよ。

 わかりやすい例で言えば……そうですね……ほら、初めてのインターミドルで、わたしがミウラさんにボコられたことあったじゃないですか」

「あうぅ~、スミマセン、スミマセン!」

「あの時、クリスが予備魔力まで使っちゃって機能停止になったの覚えてますか?」

「あああっ、そういえば……」

「なので、デバイスは魔力で動く。ついでに充電みたいな感じで、魔力を蓄えておける機能もあるわけですね」

 

 確か、〝予備魔力蓄積石〟だったかが使用されている。

 

「なるほど~。じゃ、結局、自動車は何で動くんですか?」

「あはは、そこはわたしもよくわかっていなくてですね……一緒に、いつもみたいに検索してみましょうか?」

 

 わたしとミウラさんは『リリカルなのは』『自動車』『燃料』のワードで検索。いつもお世話になっている『NanohaWiki』で答えを発見した。

 

「ありましたね、読みますよ?

 

『なお、自動車のことをミッドでは「モーターモービル」と呼称する。

 モーターモービルは燃料駆動で、水と微量の化学触媒を組み合わせた燃料によって内燃機関が稼動するシステムとなっている。

 排気は微量の触媒煙を含むだけの水蒸気が排出されるという極めてクリーンなシステムとなっており、環境への配慮がなされている。

 また、オートバイの燃料もモーターモービルと同様である』

 

 ――だそうです」

 

 ミウラさんが「お~」と感嘆の声を漏らした。

 

「ミッドの車って水と化学触媒で動いてたんですね……あ、これってイニシャルA・Bさんの疑問が一発で解決しちゃったんじゃ?」

 

 

「シャラァァァァ~~~~ップ!!」

 

 

「ひぃぃ~」

 

 わたしはフリッカージャブから、ミウラさんの額にデコピンをかます。

 

「あうちっ!」

「ダメですよ、ミウラさん! いきなり信じちゃ」

「でもでも、ここに書いてあるわけですし……ほら、他のSSでも、みんな同じように書いてありますよ?」

「チッチッチ、みんな『NanohaWiki』を参考にしてるだけかもですよ!」

 

 ミウラさんが小首を傾げた。

 

「それの何がマズいんですか?」

「ネットの情報を鵜呑みにしていいのかって話ですよ。万が一、『NanohaWiki』の書きこみが間違っていたらどうするんですか?」

「そ、それは……」

「なので、公式の情報を見つける。あるいはソースは2か所……いや3か所くらい見つけて裏づけし、情報の信憑性を高めないとダメなんですよ!」

「そ、そんなこと言われても、どのサイトも『NanohaWiki』と同じ説明が書いてあるだけですし~」

「だったら、検索ワードを変えましょう。そうですね『モーターモービル』で攻めてみましょうか?」

「モーターモービル、ですか。そういえば、みんな車、車って言ってるから、あんまり正式名称のモーターモービルって使いませんもんね」

 

 ボクもすっかり忘れていましたと、ミウラさんが頭をかく。

 

「ええ。それに、スノーモービルやモビルスーツって単語はありますが、モーターモービルという単語はありません」

「モビルスーツ……」

「もし存在するとすれば、それは『魔法少女リリカルなのは』の造語。架空の乗り物の名称になるはずです!」

「は、はあ……メタ発言すぎてボクには何とも……」

 

 こうして、先程同様『リリカルなのは』と『モーターモービル』で検索していくと

「おっ、有名どころでありましたよ。『Wikipedia』の『魔法戦記リリカルなのはForce』の項目ですね」

「それ未来の話じゃないですかぁぁ!」

「まあまあ今更なんで。えっと――カレドヴルフ・テクニクス社(CW社)……社外も含めたMM(モーターモービル)事業部を持っており……MMですか……。

 燃料まではわかりませんが、少なくともモーターモービルという単語は存在するということですね。

『NanohaWiki』の情報の信憑性が高まりました。

 あとは『NanohaWiki』の元ネタ、元情報が見つかればいいんですが――」

 

 こうして、わたしとミウラさんは検索を続けて行き……そして、

 

「ゔぃ、ヴィヴィオさん……」

「はい、ミウラさん……」

「ついに見つけましたね!」

「はい! まさか、魔法少女リリカルなのはStrikerSのDVD第2巻についてきた魔法辞典が出典だったなんて……」

 

『NanohaWiki』は、しっかりした情報を元に書かれていた――ということだ。

 ただし魔法辞典。魔法ではなく、フェイトママの車についての解説の方が詳しく書いてあるのはどうだろう――とは思うけれど。

 ミウラさんがガッツポーズで立ち上がる。

 

「これぞまさしく公式情報! ヴィヴィオさん、今度こそ、これでまるっと完全解決ですねっ!!」

 

 

「……まだだ! まだ終わらんよぉぉ!!」

 

 

「どこのクワトロ・バジーナですかぁぁ!? もう認めましょうよ~」

「諦めたらそこでぇぇ――」

「試合終了じゃないですからぁぁ~」

「――は、冗談として」

「いや、絶対本気でしたよね……」

「だっておかしいじゃないですか。魔力があるのに、どうしてわざわざ他の燃料使ってるんですかッ!?」

「……そ、そう言われると、デバイスの件もありますし、魔力の方が便利なような」

 

 停電もなければ、ガソリンスタンドも必要ない。まあ、ガソリンじゃないですがぁぁ。

 それに、

 

「車にタイヤがついてるのもおかしいじゃないですかぁぁ――っ!」

「えっ、そこもですかぁぁ!?」

「はい、例えばなんですが『ドラ●もん のび太の魔界大冒険』みたいに――」

「ド●えもん……」

「『自転車やオートバイ → 空飛ぶ箒』『自動車 → 空飛ぶ絨毯』の方が、魔法の世界らしいと思いませんか?」

 

 ミウラさんが「う、う~ん」と唸った。

 

「どうなんでしょう。確かにタイヤがなくても自由に飛べそうなんですが、ミッドの街中って、非常時しか飛んじゃダメですよね。これって、みんなが好き勝手に飛ぶと、ぶつかって危ないからだと思ってたんですが……」

 

 ムムッ、ミウラさんのくせに生意気なぁぁ――っ! とジャイアン気分で。

 

「だったら『F-ZERO』みたいに、路面からちょっと浮いてるぐらいでもいいじゃないですか!

 どんな悪路でも、タイヤじゃ不可能な雪道や水面だって走れますし、騒音も少ない。

 だいたい、金属の塊に乗って走るだなんてことが危ない。むしろ、箒や絨毯にして、バリアジャケットみたいな防御フィールドを張っておけば、もし交通事故が起こっても、ドライバーと歩行者の両方が無事。

 究極の交通安全対策ですよっ!」

「ううっ……」

 

 ミウラさんが困った顔をしている。

 ちょっと興奮して、ミウラさんをイジメすぎただろうか。

 

「そうですよね、ドラえ●んみたいな空飛ぶ箒や絨毯の方が……ドラえも●、箒や絨毯……あ、そうだ、そうですよ、ヴィヴィオさんっ!

 ド●えもんののび太くんみたいに箒に乗れない人。いや、もっと根本的に、魔法を使えない人はどうするんですか? 自分じゃ運転できないってことじゃないですか!」

「っ!?」

 

 そうきたかぁ~。

 流石はわたしに勝ったボクっ娘。

 

「つまりミウラさんは魔法が使えない人――リンカーコアを持たない、魔法の資質を持たない人のために、タイヤのついた燃料駆動の車が走っていると?」

「はい」

 

 言っていることは正しいと思う。が、

 

「それって、どれくらいいるんでしょうね、魔法を使えない人。仮にも魔法が普及している世界ですよ?

 例えば『ブレイクブレイド』の主人公ライガットさんは――」

「ブレイクブレイド……」

「100万人に1人の確率で生まれると言われる魔力無者であり、魔力を持っていることが普通のブレイクブレイドの世界では、機械や生活用品の一切を使えない。

 次元世界も同様です。

 そんな少数の魔法を使えない人たちのために、世界全体で便利な魔導技術を使わない――なんて有り得ると思いますか?」

 

 すると、ミウラさんが大きく首を傾げた。

 

「あの、ヴィヴィオさん。魔法を使えない人が少ないって、そもそもどこ情報なんでしょうか?」

「……おや?」

 

 そう言われると、確かにそう。

 正確な情報がないなら、思い込み、ただの偏見でしかない。

 

「う、う~ん、悔しいですが、ミウラさんの言う通りかもですね~。ミッドチルダってどれくらいの人が魔法を使えて、どれくらいの人が魔法を使えないんでしょうね? 中学で習ったりしないんですか?」

「……ううっ、すみません。ボク、学校の成績はぁ~」

「あ~、いえいえ、知らないのはわたしも一緒なので」

 

 はやてさんがいれば一発で解決なのだろうけど。

 

「とりあえず調べてみましょうか?」

 

『リリカルなのは』『魔法を使えない人』――なんて検索しても、答えが出てくるはずもない。

 

「もしかしたら、これまでついてきた魔法辞典や他の何かに載っているのもしれませんが手元にありませんしね、これは別角度からアプローチしないと」

「別角度、ですか?」

「はい。まず、わたしの通っているSt.ヒルデ魔法学院には魔法の授業があります。ここまではいいですよね?」

「はい」

「魔法学院――つまり、魔法学校のことなんですが、ミッドにおける魔法学校とは『魔法資質をもった一般人が通う専門学校』という扱いだそうです」

「専門学校……ですか」

「ええ。他にも『魔法少女リリカルなのはStrikerS THE COMICS』の第1巻を見てください。

 ティアナさんとギンガさんの会話をしているシーンで、

 

『あの子、魔法学校とか行ってなかったんですか?』

『うん、普通校。魔法歴1年以下……』

 

 というやり取りがあります」

「それって……」

「はい。普通の学校では、魔法を教えない。魔法を学ぼうと思ったら、専門の魔法学校に通うか、個人的に習うしかない――ということなんです」

「ってことは、つまり……」

「一般人は魔法を使えない。ミッドにおいても魔法は特殊なスキルであり、魔導師とは専門職である――ということです」

「だから自動車は、デバイスと違い、魔力を使わない、水と化学触媒の燃料で動いてるんですね~」

 

 と、頷いたところで、ミウラさんが再び大きく首を傾げた。

 

「あの、だったらどうして運転するんでしょうね?」

「運転、ですか?」

 

 ミウラさんの言ってることがわからない。

 

「ほら、確かに魔力がなければデバイスは動きませんが、デバイスのAIって、別に妖精さんが入ってるわけじゃないですよね?」

「はい。電子機器ですけど……」

「だったら、自分で運転しなくても、自動運転でいいんじゃないかなぁ~って」

「……あああっ、そ、そうですよね! スターライトブレイカー食らっても壊れないほど頑丈だし、レイジングハートなんて、あんなに頭いいし、人が運転するよりよっぽど安全ですよね!」

「はい。なのに、はやてさんといい、みなさんどうして自分でハンドル握ってるのかなぁ~って」

「コレはもう趣味としか……地球出身者というより、あ~、ひょっとすると、作者の、都築先生の趣味かもしれませんね~」

「それを言い出したら、もうどうしようもありませんよ、ヴィヴィオさ~ん!」

「はは、ですよね~」

 

 でも、う~ん、そうなんだろうなぁ~。

 

 

     ●

 

 

「というわけで、イニシャルA・Bさんの疑問に対する答えとしまして――」

 

 わたしとミウラさんが声を合わせる。

 

 

「「本日の結論っ!」」

 

 

「ミッドチルダに魔法は普及している。けれど、まだまだ魔法を使わない、使えない一般人の方が圧倒的に多い。

 そのため、水と微量の化学触媒を組み合わせた燃料によって、ミッドの自動車は動いている。

 ――ということで、リリカルマジカルまた来週! お相手は」

「ミウラ・リナルディでしたぁぁ!

 今日は、何だかいっぱい調べましたけど、ヴィヴィオさん、実は『NanohaWiki』だけで解決してましたよね?」

 

 うっ。

 

「それ言わないでくださいよぉぉ――っ!」

 

 

 

 




今更ですが「アインハルトさんまったく関係ないな」と、自分自身にツッコミを入れざるを得ない。
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