アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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一足早く衣替え。
ただし、クリスとティオ。



クリスとティオの衣替え

 今日も空は快晴。

 いつもと何も変わらない、平和な、朝の登校風景だ。

 

 

「おっはよー、ヴィヴィオっ!」

 

 

 やっぱりいつもと変わらない元気な声。

 

「おはよー、リオ!」

「クリスもおはー……って、クリスじゃないっっ!?」

 

 わたしの横でフワフワ浮いているデバイスを見て、リオが一歩後退った。

 

「やだな~、クリスだよ」

「いやいや、それどー見ても、いつものジムライトアーマーみたいな軽装じゃなくて、もふもふなアンゴラウサギだよね。なに、ティッピーにでもクラスチェンジしたの?」

「してないよっ!

 ほら、もうじき衣替えのシーズンでしょ」

「うん」

「で、昨日、アインハルトさんとその話をしてたんだけど……」

 

 

     ●

 

 

『衣替えといえば、動物も冬毛から夏毛に生え変わる時期ですよね~』

『換毛期ですね』

『そうそう、それです! いつもはちょっと本物のウサギがうらやましい時もあるんですが、こーいう時は、本物の動物じゃなくてよかったな~と。

 毛がいっぱい抜けると大変そうじゃないですか?』

『それはありますね。ただ、本物の動物もいいものですよ?

 前に、クラウスがシュトゥラの雪原豹を飼っていた話をしたと思いますが、ちょうど毛が生え変わる時期になると、オリヴィエ殿下が楽しそうにブラッシングをしていましたから。

 きっと、ヴィヴィオさんにも喜んでいただけるかと』

『へ~』

 

 

     ●

 

 

「――なんて話をして、家に帰ってクリスをよく見たら」

「あ~、そろそろヤバかったと?」

「うん。テレビに出ずっぱりで薄汚れてきたふ●っしーの1号みたいになってて」

「あ~、ヴィヴィオ、いつもクリスと一緒にトレーニングだもんね」

「はい、反省してます。なんで、とりあえずいつものぬいぐるみ部分の外装は、ママに頼んで洗濯&修繕中。

 これを機に、外装を何着か用意しようかなって」

「ん~、どうせならPSO2のマグみたいに外見を色々と変えてみたら?」

「コラボしてないしな~。いかにもわたしが言いそうな女性追加ボイスならあったけど」

 

 気になった方は、『女性追加ボイス113』で動画検索して聞いてみてください。

 その後、

 

「クリスは1モフおいくらですか?」

「非売品です」

 

 みたいなやり取りをココア……じゃなかったコロナとしていると、ついにアインハルトさんと合流。

 

「ごきげんよう、みなさん」

 

 

「「「――って、アインハルトさんの肩に鉄アレイが乗ってるぅぅ~~~~っっ!??」」」

 

 

「ああ、これはティオですよ」

「にゃあー」

「ホントだ、鳴いてますね」

 

 そして、いつもみたいに、わたしにもじゃれついてきて、

 

 

 ――ボクシッ!

 

 

 顔面をクリーンヒット。

 

「いたァァ! この外装、本物の鉄アレイじゃないですかあぁぁ――っ!」

「危険すぎる……」

「さわり心地が~」

 

 一番可愛がっていたコロナが、悲しみで崩れ落ちた。

 

「いてて、でも、どうしてこんな大惨事に?」

「大惨事って……ほら、昨日ヴィヴィオさんと話したじゃないですか、換毛期――毛が生え変わる時期だって」

「にゃあ、にゃあ~」

「いやいやいや、ぬいぐるみですから~」

「ですが、今朝起きたら、ティオの毛が伸びていて、さらに抜け始めたので……」

 

 アインハルトさんは日課のランニングにも行かず、コロコロで部屋の掃除をしていたと言う。

 

「それで、学校が毛だらけになると迷惑がかかるので、外装だけでも変えることにしたんです」

「にゃぁ……」

「はあ、そこで鉄アレイチョイスが、アインハルトさんらしいですが……」

「ダンベルの方がよろしかったでしょうか?」

「うん、あんまり変わりませんけどね!」

 

 兎にも角にも、

 

「放課後になったら、アインハルトさんちに行ってみましょう!」

 

 

 こうして、高町ヴィヴィオ探検隊は、謎のティオの皮を求めて、アインハルト・ストラトス宅へ向かうのだった。

 

 

「ティオの皮って生々しいよね」

「うん、わたしも自分で言っててそう思った」

「はあ、普通デバイスは毛が伸びないものなんですか……」

「はい。でも、気持ちはわかります。あの八神司令が作ったモノですから」

 

 リオ、わたし、アインハルトさん、コロナの4人は話しながら歩く。

 

「そーいえば、八神家のみんなも髪の毛伸びないよね~」

「ミウラさんは伸びるけどね」

「確かにそうですね」

「もう~、ミウラさんは守護騎士や融合騎じゃないでしょ!」

 

 何にせよ、散髪代は浮きそうだけど。

 そうこうしているうちに、アインハルトさんちに無事――到着。

 

「トラップの一つでもあるかと思ったけど」

「リオ~、いくらアインハルトさんちでもそれはないって」

「開けますね」

 

 

 ――ガチャリ!

 

 

「さあ、どう――むぎゅぅぅ~~~~~~~~っ!」

「ちょ、アインハルトさぁぁんっ!? ひぃぃ! 家の中から大量の毛がぁぁ――っ!」

 

 グリーンの頭だけ見えて流されていく。

 

「な、ナニコレ……」

「珍百景?」

「うん、珍百景だとは思うけど――アインハルトさん無事ですかぁぁ――っ!?」

「help! help!」

 

 アインハルトさんを救出すると、高町ヴィヴィオ探検隊は、大量のもふもふをかき分けつつ家の奥へ進んでいく。

 

「よくわかんないけど、元凶っぽいティオの外装にバインドォォ――ッ!」

 

 どうにか毛の噴出がストップする。

 

「おかしいよね、コレぇぇ――っ!」

「にゃにゃにゃああ~っ!」

「そうだ! 同型機のウラカンにも同じ症状が出てるかもしれないよ?」

「さっすがコロナ大先生!」

 

 早速フーカさんに通信を送るも、

 

 

『わしもウラカンもいつもと変わらず、元気じゃけん』

 

 

 と、返信があった。

 

「う~ん、となると……これは新種のカビですかね?」

「ヴィヴィオさん、カビとか言わないでくださぁぁい!」

 

 リオが笑っている。

 

「部屋中カビだらけって、腐海みたいだよね~」

「その者、青き衣をまといて――」

「私のバリアジャケットは緑ですから!」

「日本では、昔から緑を青って言うんですよ?」

 

 青信号、青りんご、青汁、etc.

 

「知りませんよ!」

 

 何にせよ、このままでは話が進まない。

 コロコロをかけているコロナを横目に、わたしは真剣に考えてみることにした。

 

「この呪いの人形みたいな怪現象、アインハルトさんだけに起こっている……呪い、アインハルトさん、呪いとアインハルトさんに共通する……何か、犯人は……あ、いた」

 

 こんなことができそうな唯一の人物。

 魔法で呪いをかけることができて、アインハルトさんに近しい関係者。

 

 

「魔女の館をガサ入れじゃぁぁ~~~~っっ!!」

 

 

 というわけで、体をぐるぐる巻きにしたロープを、天井の梁に通して、魔女っ子を吊り下げている。

 もちろんチンクではない。

 ファビア・クロゼルグ――最近は魔女のとんがり帽子より、マリンベレーを被ることの多い――クロだ。

 

 

「ほら~、吐け~、吐くんだ~、クロぉ~」

 

 

「うん。リオ、それ悪役の台詞だから」

「ううっ、わたしやってないのにぃぃ~~っ!」

「確かに、今のクロが私に迷惑をかけるとは思えないのですが……」

「そうだよ、リオ、ヴィヴィオ~」

 

 ティオも「にゃあ! にゃあ!」抗議の声を上げている。

 すると、それを聞いた宙吊りのクロが、海老反りで顔を上げた。

 

「アインハルト! ティオを、アスティオンをわたしの近くに!」

「?」

 

 意味もわからないまま、アインハルトさんはティオをクロの顔に近づけて、

 

 

 ――ボクシッ!

 

 

 わたしのように顔面をクリーンヒット。

 

「あう~」

 

 外装が〝鉄アレイver.〟だと伝えていなかった。

 けれど、クロはめげずにティオに声をかける。

 

「ふんふん」

「にゃあ、にゃぁ~」

「なるほど、なるほど……」

「にゃにゃにゃ~にゃ」

「お~、流石は魔女っ子。動物の言葉がわかるんだね~」

 

 リオが感心している。

 

「わたしだって、リオの言葉わかるよ?」

「お~って、あたしは犬じゃないからねぇぇ――っ!」

「ん~っ……」

 

 コロナがなんともいえない表情でわたしとリオを見つめていると、クロの「ありがと、アスティオン」と言う声が聞こえてきた。

 

「リオとヴィヴィのお馬鹿さんコンビは置いといて、謎は解けたよ?」

「本当ですかっ!?」

 

 お馬鹿さんコンビって……。

 

「うん。昨日アインハルト、本物の動物で毛が生え変わる時期なら、ヴィヴィが喜んでくれる――みたいな話をしたんでしょ?」

「……ええ、しましたね」

「わたしも聞きました~」

 

 クロが一拍置く。

 

「それで、アスティオンが気を利かせて、自分で機能をアップデート――自己進化したんだよ。毛が伸びて生え変わるようにね」

 

 

「「「「マジかぁ~~~~~~~~っっ!」」」」

 

 

 なに、その斜め方向の超進化。

 そっか――だから今日のティオは、それを説明したくて、やたらと「にゃあ、にゃあ」鳴いていたのか。

 

「流石はアインハルトさんの愛機ですねっ!」

「はい! ……って、それ褒めてないですよねぇぇ――っ!?」

「いえいえ、似た者同士だなぁ~って」

「それ、褒められてるんでしょうか……」

「にゃあ~」

 

 ちょっとから回ってしまったけれど、わたしへの深い愛情に、アインハルトさんとティオの深い絆が感じられる。

 きっとオリヴィエも、こんな気持ちでクラウス殿下や雪原豹と接していたのだろう。

 

「……って、いい話ふうに終わらそうとしてないで、そろそろわたしのことも下ろしてよぉぉ~~っ!」

 

 

「「「「あ」」」」

 

 

 たぶん、シュトラの森の魔女クロゼルクともこんな感じだったのだろう。

 

 

 

 




勢いだけで書いてみた。
後悔はしていない。
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