『DSAAドリームタッグトーナメント』本戦に向けたチーム合宿。
ヴィヴィオとアインハルトが向かった先は――地球のイギリス!
引率者は――八神はやて!!
待ち受けるコーチは――リーゼ姉妹!!!
グレアム元提督と、はやて、そして、ヴィヴィオとアインハルト――ベルカの末裔たちが出会うとき、もう一つの『劇場版』が始まる!!!?
第1夜『高町ヴィヴィオと秘密の館』
1
――ドッカァァ~~~~ンッ!!
深夜。
古い洋館の地下室で、轟音が鳴り響く。
「ひぃぃっ、天井に穴がぁぁ!?」
「ヴィヴィオさんご無事ですか~」
「はい! こっちは無事なんですが、はやてさんのSAN値が大変なことにぃぃ~っ!」
このままでは6人全員生き埋めだ!
〈正気度ロール〉でも〈恐怖判定〉でもどちらでもいいのだけど、今や、はやてさんの精神状態は、SAN値! ピンチ! SAN値! ピンチ! である。
「こうなったらアインハルトさん、ドラクエ・FF方式で、一発殴っちゃいましょう。パーティーアタックですよぉぉ!」
「ええええ~っ!? 八神司令にそんなことできませんよぉぉ――っ!」
「どうやらあたしたちの出番のようね!」
「パーティーアタックならお手の物――」
「って『劇場版2nd A's』でハブられた、その懐かしい仮面はぁぁ――っ!?」
双子の使い魔が、
「あばばばばばば――」
はやてさんの頬を、ビビビビビ――っと鬼太郎のねずみ男ばりにビンタする。
これで正気に戻ってくれただろうか?
すると、はやてさんの口から謎の言葉が漏れ出し始める。
『……咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ……貫け、閃光……』
「え、この詠唱ってもしかして……」
隣の老人に尋ねると、
「う……うむ、おそらくなのは君のスターライトブレイカーだと」
「やっぱりぃぃ~~っ!」
いまだ混乱しているのか、いないのか……。
闇の書が蒐集して撃てるのは知っていたけれど、めぐみんのエクスプロージョンより厄介なママの切り札――その、闇の書の意志Ver.。
「まさか、こんなところでお目にかかることになろうとは……って、お願いだから、室内で放つのだけはやめてぇぇ!」
生き埋めである。
最強使い魔さんたちが叫ぶ。
「間に合えバインドォォ――ッ!」
「ヴィヴィオちゃんも!」
「了解ですっ! アインハルトさんは〝旋衝破〟で跳ね返してくださいっっ!!」
「えええええええええええええええっ、アレをですかぁぁ――っ!?」
「この歳で結界を張ることになろうとはなぁぁ~」
ああ、わたしとアインハルトさんは、ただ合宿に来ただけなのに……。
どうしてこんなことにぃぃ~っ!?
2
1か月前。
ゴールデンウィークの頭。
『DSAAドリームタッグトーナメント』本戦に向けたチームごとの最終合宿。
わたしとアインハルトさんのタッグは、ノーヴェの指示で、第97管理外世界――〝地球〟のイギリスへ向かうことに決まった。
引率はこの人。
「ああああああ……ヴィヴィオは肩たたきが上手やな~」
夜天の腹黒タヌキ――ではなく、時空管理局本局海上警備部・八神はやて捜査司令。
なのはママ&フェイトママいわく。
『ノーヴェが同行しないって聞いて心配してたんだけど、はやてちゃんが一緒なら私より安心かも』
『あはは、なのはは時々無茶するからね~』
わたしもそう思う。
なので、中央次元港で船を待つ間、日頃の感謝も兼ねてマッサージのプレゼントをしていたのだけど。
「あだっ、いだだっ、あ~、でもこの痛みがまた……あ~、アインハルトのツボ押しもええな~」
「ユミナさんから教わったのですが……」
練習台になったわたしとリオは、あまりのパワーに1ラウンドKOされたのだけど、大人のはやてさんには丁度いいらしい。
たぶん、ママたちも「気持ちいい」って言うんだろうなぁ~。
怖いものなんて何もない。
絶対無敵の管理局3人娘の一柱。
一緒にいるだけで安心・安堵してしまう。そんな存在だ。
「それにしても、この3人で旅行に行くことになるなんてな~、思いもしなかったで」
「同感です。はやてさんって、どちらかと言えば、ミウラさんと一緒のイメージがありますしね」
「そやな~、でも、あっちはミカやんが一緒やからね。私が行く必要もないやろ」
「あの……であれば、八神司令、わざわざ私たちの合宿にご一緒していただいて、本当によろしかったのでしょうか?」
アインハルトさんが恐縮気味に尋ねると、
「あ~、かまへん、かまへん。私もおじさんの顔見に行こうと思っとったトコや。
それにな~、ヴィヴィオやアインハルトと一緒におると、何だか昔のなのはちゃんとフェイトちゃんと一緒みたいで、なんや懐かしいと言おうか、若返った気分が……ううっ」
「ちょ、泣き出さないでくさぁぁい! ヴィータさんやリインさんが娘だとしたら、ミウラさんは孫みたいなものですけど~」
「ぐはぁぁ――っ!!」
そんなわけで、長らくお待たせしました。
DSAAドリームタッグトーナメント外伝・イギリス編・ゴーストハンター・ヴィヴィオ――始まります!
3
日本を経由することなく、ミッドから直接イギリスに渡ったわたしたち一行は、その後バスに揺られて4時間。
イギリスの片田舎。
素敵な――緑の庭のある木造の邸宅を訪れていた。
薔薇のアーチをくぐると、玄関前には白い簡素なテーブルと椅子が一揃え。腰かけるのはひとりの老人。そして、彼を守るように隙なく立つのは、2人の若い女性たち。
はやてさんが優しい笑みを浮かべて手を振る。
「お久しぶりです、グレアムおじさん」
老人もまた優しい笑みを返すと、
「ああ、久しぶりだね……はやて」
はやてさんは座ったままの老人を抱きしめると、両頬に軽くキスをした。
そして、左右に立つ女性たちに視線を向ける。髪の長さをのぞけば、どちらもそっくりな顔立ちで、頭部にアルフやザフィーラのような獣耳が生えていた。
「リーゼたちも元気そうやね」
「ああ、お前もな」
「久しぶりね、八神。それと――そっちの2人も」
髪が長い方の女性が、涼しげな瞳でわたしとアインハルトさんを見やる。
「はい! お久しぶりです、アリアさん、それに、ロッテさんも!」
「ああ、おひさ……てか、お前らホントに昔と変わってないのな」
「この度はお世話になります」
わたしとアインハルトさんはそれぞれの女性――髪の長いリーゼアリアさんと、髪の短いリーゼロッテさんと握手を交わしハグをした。
どことなくリオを彷彿とさせるテンションのロッテさんが、複雑な表情を浮かべる。
「あれからもう14年なんだよなぁ~、長かったような、あっという間だったような」
「わたしたちにとっては、去年の出来事なんですけどね」
「そりゃ最近だわ」
「変わってないのも当然よね」
「まあ、アインハルトさんは、成長してないだけですけどね~」
「ちょ、ヴィヴィオさぁぁ――んっl!?」
そんなわたしたちと、リーゼさんたちとの関係。
『魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE GEARS OF DESTINY-』――今から14年前の新暦66年。ママたちが子供の頃に起きた『砕け得ぬ闇事件』に、時間移動という形で、わたしとアインハルトさんは巻きこまれたのだ。
過去に遡ったわたしたちは、ママたちやはやてさんだけでなく、アリアさんやロッテさんとも出会い、共に戦った。
だから、2人の実力はよく知っている。
「チビども、あれから少しは強くなったのか?」
「はい! そりゃもちろん、わたしもアインハルトさんも、前よりずぅぅっと強くなってますよ~」
そりゃ楽しみだ――と笑うリーゼ姉妹は、猫を素体とした双子の使い魔。
姉のリーゼアリアさんは魔法戦。妹のリーゼロッテさんは格闘戦を得意とする。
あのフェイトママの義兄――クロノ・ハラオウン提督に戦闘技術を叩きこんだ師匠でもあり、おそらく使い魔としては、管理局でも歴代トップクラスの戦闘力を誇る。
そんな2人のコンビネーションは、当時から悪魔的だったママたち、さらには、シグナムさんやヴィータさん、ヴォルケンリッターをも退けた。
正直、どうやったらそんなことが可能なのか――わたしにはさっぱり妖精である。
もはや、伝説的な存在。
タッグチーム戦のコーチとしては、これ以上の人材は望めないだろう。
そしてもう1人。
わたしは老人――リーゼ姉妹の主人――の前に立つ。
「初めまして、グレアムさん。高町なのはの娘――高町ヴィヴィオです」
「そうか、君がなのは君の……やれやれ、あの小さかった少女がもう母親とは、私も年をとるわけだ」
眼鏡をかけた老人は、ヒゲの隙間から、穏やかな顔つきで笑う。白髪に深いシワ。もう70歳は越えているであろう。けれど、その仕草はいかにも英国紳士といった風で、落ち着いた色のカーディガンとズボンも、品の良さを感じさせる。
続いてアインハルトさんが挨拶した。
「お初にお目にかかります。ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトと申します」
「イングヴァルト……そうか、覇王家直系の……ヴィヴィオ君と君が出会うとは、これも運命かもしれないな」
この老人はどこまで知っているのだろう。
「リーゼから話は聞いている。遠いところからよく来たね、歓迎するよ」
「はい」
本当に優しそうな老人だ。
士郎さんはまだまだお爺ちゃんといった感じがしないので、もしわたしに祖父がいたとしたら、こんな人がいいなと思う。
――けれど……。
ギル・グレアム元時空管理局提督。
艦隊指揮官、執務官長を歴任し、最後は時空管理局顧問官まで務めた、ママたちの遠い先輩。
いくら理由があったにせよ、彼がはやてさんにしたことは許されることではない。それは、辞職したグレアムさん自身が一番よくわかっているはず。
そんな老人に対して、はやてさんはどんな気持ちで会いに来ているのだろうか?
スカリエッティと面会する元ナンバーズみたいな気持ち? それとも、もっと複雑な何かがあるのだろうか?
決して表に出さないタヌ吉さんなので、彼女の心中をうかがい知ることはできないし、わからない。
「――そんなわけやから、リーゼたちにはヴィヴィオとアインハルトのことを頼みたいんよ。バッチリ鍛えたってや。その間、グレアムおじさんのことは私に任せとき!」
ドンと胸を叩く。
「ああ、わかってるって。くろ助からもよろしく頼まれてるしね」
「ただし、その前に――みんなこれに乗ってもらえる?」
6人全員、アリアさんの運転する車でガタンゴトンと数時間。
連れて行かれた先は、コックスウェルの丘に建つ、曇り空や雷雨のよく似合う、いかにもアンデッドが出そうな古びた洋館。
「――って、なんで幽霊屋敷やねんっ!!?」
タイミングバッチリ。
はやてさんのツッコミが、もうじき夜を迎えそうなイギリスの空に響き渡る。
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次回、ゴーストハンター・ヴィヴィオ 第2夜
『高町ヴィヴィオとトランザム・バースト』
に――リリカルマジカル、がんばります!
――というわけで、劇場版でハブられた……というか、削られた3人を登場させてみたいな~と思ったことがキッカケで書いてみたこの企画。
『The MOVIE 2nd A's』に出れなかった――グレアム提督、アリア、ロッテ
『Reflection』に出れなかった(たぶん)――ヴィヴィオ、アインハルトさん、アリア&ロッテ(2回目)
まあ、はやてはどっちもメインで出てますが、何だろう、すでに〝負け組臭〟が漂っている『5人+1人=6人』で、『劇場版第3弾 公開記念 1時間SPアニメ!』みたいなノリで書けたらいいなと思っています。