アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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1か月前。

『DSAAドリームタッグトーナメント』本戦に向けたチーム合宿。

ヴィヴィオとアインハルトが向かった先は――地球のイギリス!

引率者は――八神はやて!!

待ち受けるコーチは――リーゼ姉妹!!!

グレアム元提督と、はやて、そして、ヴィヴィオとアインハルト――ベルカの末裔たちが出会うとき、もう一つの『劇場版』が始まる!!!?



ゴーストハンター・ヴィヴィオ 第1夜

第1夜『高町ヴィヴィオと秘密の館』

 

 

     1

 

 

 ――ドッカァァ~~~~ンッ!!

 

 

 深夜。

 古い洋館の地下室で、轟音が鳴り響く。

 

「ひぃぃっ、天井に穴がぁぁ!?」

「ヴィヴィオさんご無事ですか~」

「はい! こっちは無事なんですが、はやてさんのSAN値が大変なことにぃぃ~っ!」

 

 このままでは6人全員生き埋めだ!

〈正気度ロール〉でも〈恐怖判定〉でもどちらでもいいのだけど、今や、はやてさんの精神状態は、SAN値! ピンチ! SAN値! ピンチ! である。

 

「こうなったらアインハルトさん、ドラクエ・FF方式で、一発殴っちゃいましょう。パーティーアタックですよぉぉ!」

「ええええ~っ!? 八神司令にそんなことできませんよぉぉ――っ!」

「どうやらあたしたちの出番のようね!」

「パーティーアタックならお手の物――」

「って『劇場版2nd A's』でハブられた、その懐かしい仮面はぁぁ――っ!?」

 

 双子の使い魔が、

 

 

「あばばばばばば――」

 

 

 はやてさんの頬を、ビビビビビ――っと鬼太郎のねずみ男ばりにビンタする。

 これで正気に戻ってくれただろうか?

 すると、はやてさんの口から謎の言葉が漏れ出し始める。

 

 

『……咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ……貫け、閃光……』

 

 

「え、この詠唱ってもしかして……」

 

 隣の老人に尋ねると、

 

「う……うむ、おそらくなのは君のスターライトブレイカーだと」

「やっぱりぃぃ~~っ!」

 

 いまだ混乱しているのか、いないのか……。

 闇の書が蒐集して撃てるのは知っていたけれど、めぐみんのエクスプロージョンより厄介なママの切り札――その、闇の書の意志Ver.。

 

「まさか、こんなところでお目にかかることになろうとは……って、お願いだから、室内で放つのだけはやめてぇぇ!」

 

 生き埋めである。

 最強使い魔さんたちが叫ぶ。

 

「間に合えバインドォォ――ッ!」

「ヴィヴィオちゃんも!」

「了解ですっ! アインハルトさんは〝旋衝破〟で跳ね返してくださいっっ!!」

「えええええええええええええええっ、アレをですかぁぁ――っ!?」

「この歳で結界を張ることになろうとはなぁぁ~」

 

 

 ああ、わたしとアインハルトさんは、ただ合宿に来ただけなのに……。

 

 どうしてこんなことにぃぃ~っ!?

 

 

     2

 

 

 1か月前。

 ゴールデンウィークの頭。

『DSAAドリームタッグトーナメント』本戦に向けたチームごとの最終合宿。

 わたしとアインハルトさんのタッグは、ノーヴェの指示で、第97管理外世界――〝地球〟のイギリスへ向かうことに決まった。

 引率はこの人。

 

「ああああああ……ヴィヴィオは肩たたきが上手やな~」

 

 夜天の腹黒タヌキ――ではなく、時空管理局本局海上警備部・八神はやて捜査司令。

 なのはママ&フェイトママいわく。

 

『ノーヴェが同行しないって聞いて心配してたんだけど、はやてちゃんが一緒なら私より安心かも』

『あはは、なのはは時々無茶するからね~』

 

 わたしもそう思う。

 なので、中央次元港で船を待つ間、日頃の感謝も兼ねてマッサージのプレゼントをしていたのだけど。

 

「あだっ、いだだっ、あ~、でもこの痛みがまた……あ~、アインハルトのツボ押しもええな~」

「ユミナさんから教わったのですが……」

 

 練習台になったわたしとリオは、あまりのパワーに1ラウンドKOされたのだけど、大人のはやてさんには丁度いいらしい。

 たぶん、ママたちも「気持ちいい」って言うんだろうなぁ~。

 怖いものなんて何もない。

 絶対無敵の管理局3人娘の一柱。

 一緒にいるだけで安心・安堵してしまう。そんな存在だ。

 

「それにしても、この3人で旅行に行くことになるなんてな~、思いもしなかったで」

「同感です。はやてさんって、どちらかと言えば、ミウラさんと一緒のイメージがありますしね」

「そやな~、でも、あっちはミカやんが一緒やからね。私が行く必要もないやろ」

「あの……であれば、八神司令、わざわざ私たちの合宿にご一緒していただいて、本当によろしかったのでしょうか?」

 

 アインハルトさんが恐縮気味に尋ねると、

 

「あ~、かまへん、かまへん。私もおじさんの顔見に行こうと思っとったトコや。

 それにな~、ヴィヴィオやアインハルトと一緒におると、何だか昔のなのはちゃんとフェイトちゃんと一緒みたいで、なんや懐かしいと言おうか、若返った気分が……ううっ」

「ちょ、泣き出さないでくさぁぁい! ヴィータさんやリインさんが娘だとしたら、ミウラさんは孫みたいなものですけど~」

 

「ぐはぁぁ――っ!!」

 

 

 そんなわけで、長らくお待たせしました。

 DSAAドリームタッグトーナメント外伝・イギリス編・ゴーストハンター・ヴィヴィオ――始まります!

 

 

     3

 

 

 日本を経由することなく、ミッドから直接イギリスに渡ったわたしたち一行は、その後バスに揺られて4時間。

 イギリスの片田舎。

 素敵な――緑の庭のある木造の邸宅を訪れていた。

 薔薇のアーチをくぐると、玄関前には白い簡素なテーブルと椅子が一揃え。腰かけるのはひとりの老人。そして、彼を守るように隙なく立つのは、2人の若い女性たち。

 はやてさんが優しい笑みを浮かべて手を振る。

 

 

「お久しぶりです、グレアムおじさん」

 

 

 老人もまた優しい笑みを返すと、

 

「ああ、久しぶりだね……はやて」

 

 はやてさんは座ったままの老人を抱きしめると、両頬に軽くキスをした。

 そして、左右に立つ女性たちに視線を向ける。髪の長さをのぞけば、どちらもそっくりな顔立ちで、頭部にアルフやザフィーラのような獣耳が生えていた。

 

「リーゼたちも元気そうやね」

「ああ、お前もな」

「久しぶりね、八神。それと――そっちの2人も」

 

 髪が長い方の女性が、涼しげな瞳でわたしとアインハルトさんを見やる。

 

「はい! お久しぶりです、アリアさん、それに、ロッテさんも!」

「ああ、おひさ……てか、お前らホントに昔と変わってないのな」

「この度はお世話になります」

 

 わたしとアインハルトさんはそれぞれの女性――髪の長いリーゼアリアさんと、髪の短いリーゼロッテさんと握手を交わしハグをした。

 どことなくリオを彷彿とさせるテンションのロッテさんが、複雑な表情を浮かべる。

 

「あれからもう14年なんだよなぁ~、長かったような、あっという間だったような」

「わたしたちにとっては、去年の出来事なんですけどね」

「そりゃ最近だわ」

「変わってないのも当然よね」

「まあ、アインハルトさんは、成長してないだけですけどね~」

「ちょ、ヴィヴィオさぁぁ――んっl!?」

 

 そんなわたしたちと、リーゼさんたちとの関係。

『魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE GEARS OF DESTINY-』――今から14年前の新暦66年。ママたちが子供の頃に起きた『砕け得ぬ闇事件』に、時間移動という形で、わたしとアインハルトさんは巻きこまれたのだ。

 過去に遡ったわたしたちは、ママたちやはやてさんだけでなく、アリアさんやロッテさんとも出会い、共に戦った。

 だから、2人の実力はよく知っている。

 

「チビども、あれから少しは強くなったのか?」

「はい! そりゃもちろん、わたしもアインハルトさんも、前よりずぅぅっと強くなってますよ~」

 

 そりゃ楽しみだ――と笑うリーゼ姉妹は、猫を素体とした双子の使い魔。

 姉のリーゼアリアさんは魔法戦。妹のリーゼロッテさんは格闘戦を得意とする。

 あのフェイトママの義兄――クロノ・ハラオウン提督に戦闘技術を叩きこんだ師匠でもあり、おそらく使い魔としては、管理局でも歴代トップクラスの戦闘力を誇る。

 そんな2人のコンビネーションは、当時から悪魔的だったママたち、さらには、シグナムさんやヴィータさん、ヴォルケンリッターをも退けた。

 正直、どうやったらそんなことが可能なのか――わたしにはさっぱり妖精である。

 もはや、伝説的な存在。

 タッグチーム戦のコーチとしては、これ以上の人材は望めないだろう。

 そしてもう1人。

 わたしは老人――リーゼ姉妹の主人――の前に立つ。

 

「初めまして、グレアムさん。高町なのはの娘――高町ヴィヴィオです」

「そうか、君がなのは君の……やれやれ、あの小さかった少女がもう母親とは、私も年をとるわけだ」

 

 眼鏡をかけた老人は、ヒゲの隙間から、穏やかな顔つきで笑う。白髪に深いシワ。もう70歳は越えているであろう。けれど、その仕草はいかにも英国紳士といった風で、落ち着いた色のカーディガンとズボンも、品の良さを感じさせる。

 続いてアインハルトさんが挨拶した。

 

「お初にお目にかかります。ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトと申します」

「イングヴァルト……そうか、覇王家直系の……ヴィヴィオ君と君が出会うとは、これも運命かもしれないな」

 

 この老人はどこまで知っているのだろう。

 

「リーゼから話は聞いている。遠いところからよく来たね、歓迎するよ」

「はい」

 

 本当に優しそうな老人だ。

 士郎さんはまだまだお爺ちゃんといった感じがしないので、もしわたしに祖父がいたとしたら、こんな人がいいなと思う。

 

 ――けれど……。

 

 ギル・グレアム元時空管理局提督。

 艦隊指揮官、執務官長を歴任し、最後は時空管理局顧問官まで務めた、ママたちの遠い先輩。

 いくら理由があったにせよ、彼がはやてさんにしたことは許されることではない。それは、辞職したグレアムさん自身が一番よくわかっているはず。

 そんな老人に対して、はやてさんはどんな気持ちで会いに来ているのだろうか?

 スカリエッティと面会する元ナンバーズみたいな気持ち? それとも、もっと複雑な何かがあるのだろうか?

 決して表に出さないタヌ吉さんなので、彼女の心中をうかがい知ることはできないし、わからない。

 

「――そんなわけやから、リーゼたちにはヴィヴィオとアインハルトのことを頼みたいんよ。バッチリ鍛えたってや。その間、グレアムおじさんのことは私に任せとき!」

 

 ドンと胸を叩く。

 

「ああ、わかってるって。くろ助からもよろしく頼まれてるしね」

「ただし、その前に――みんなこれに乗ってもらえる?」

 

 6人全員、アリアさんの運転する車でガタンゴトンと数時間。

 連れて行かれた先は、コックスウェルの丘に建つ、曇り空や雷雨のよく似合う、いかにもアンデッドが出そうな古びた洋館。

 

 

「――って、なんで幽霊屋敷やねんっ!!?」

 

 

 タイミングバッチリ。

 はやてさんのツッコミが、もうじき夜を迎えそうなイギリスの空に響き渡る。

 

 

     ●

 

 

次回、ゴーストハンター・ヴィヴィオ 第2夜

 

『高町ヴィヴィオとトランザム・バースト』

 

に――リリカルマジカル、がんばります!

 

 

 




――というわけで、劇場版でハブられた……というか、削られた3人を登場させてみたいな~と思ったことがキッカケで書いてみたこの企画。

『The MOVIE 2nd A's』に出れなかった――グレアム提督、アリア、ロッテ
『Reflection』に出れなかった(たぶん)――ヴィヴィオ、アインハルトさん、アリア&ロッテ(2回目)

まあ、はやてはどっちもメインで出てますが、何だろう、すでに〝負け組臭〟が漂っている『5人+1人=6人』で、『劇場版第3弾 公開記念 1時間SPアニメ!』みたいなノリで書けたらいいなと思っています。
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