高町ヴィヴィオとアインハルトは、八神はやてとグレアム元提督、それにリーゼ姉妹の6人で古びた洋館を訪れた。
魔法使いと呼ばれたトランザム氏の亡霊から妨害を受けつつ探索を続ける一行。
すると、キッチンから怪しげな物音が。
彼女たちの遭遇した謎のネズミの正体とは!?
第3夜『高町ヴィヴィオとメダパニ』
1
「スタンド使いぃぃ――っ!!?」
「いやいやいやいや! 流石にそれはないやろ」
「せやかて工藤」
「八神や。
確かにな~、管理外世界を探せば、それっぽいネズミの1匹ぐらいは見つかるかもしれへんけど――」
「あの~、一つよろしいでしょうか?」
「どうしたんですか、アインハルトさん?」
「あのネズミ、大きくなっていませんか?」
「「……そう言われると」」
わたしとはやてさんが声を合わせて見つめる中、ネズミがズモモモモ――といった感じで巨大化していく。
「ちょ、アレなんてジュエルシードぉぉ~っ!?」
「異相体やな!」
「ああ、お借りした記憶ディスクで拝見しました! 序盤でユーノ司書長が吹っ飛ばされていた、ちびリオみたいなアレですね!」
「だいたい合ってますけどぉぉ~」
司書長~。
「この屋敷の、異常な魔力に影響を受けたってとこやな――」
というか、
「何このベヒーモスぅぅ!?」
巨大化したネズミは、もう頭から角とか生えちゃって陸の王! ――みたいな姿に。
「とは言っても、しょせんネズミはネズミや――」
――パクっ。
「うわぁぁ~、はやてさぁぁ~~~~んっ!?」
「八神司令ぃぃ~っ!?」
あああ、頭からマミってると言おうか、飲みこまれそうなんですけどぉぉ――っ!?
ヤバイヨヤバイヨ。
「そうだ! アインハルトさんティオですよ! ティオがいるじゃないですか! 雪原豹をモチーフにしたティオなら、あの程度のネズミどーってことありませんよっ!! 捕まえてくれるはず」
「そ、そうでした。ティオ、今こそあなたの力を――って、ティオ、ティオ~~~~っっ!?」
床の上で目をつぶり、大の字になって転がっている。
「まさかの死んだふりぃぃ~~っ!?」
また余計な機能をマスターしてるしぃぃ!
すると、
「「ふううううぅぅぅう~~~~っっ!!」」
「アリアさん? ロッテさん?」
ネズミと遭遇してから一言も話さなくなったリーゼ姉妹が、ベヒーモス(ネズミ)を睨みながら激しく唸っている。
「すまないね。ああなったリーゼたちはもう私でも止められないんだよ」
「あ~、猫のフレンズでしたね~」
「ほたいは!」
たぶん「素体や!」ってツッコミだと思うけど。流石ははやてさん、頭から飲みこまれそうな状況でも結構タフだなぁ~。
「そういえばTV版『A's』でも、ユーノ司書長が初めてリーゼ姉妹に会ったとき、食べられそうになってましたね~」
フェレットですけど~。
●
その後、あっさりリーゼ姉妹に倒されたベヒーモスは、ご主人様であるグレアムさんの前に献上された。
「……あかん、これはあかんでぇ~」
全身がネズミの唾液でベタベタになったはやてさんがムックリ起き上がる。
「流石はやてさんっ!」
しぶといっ!
バリアジャケットがあるので、肉体的にはノーダメージなのだけど、精神的には結構食らってる気がする。
SAN値大丈夫かな~。
すると、アインハルトさんが奇妙なことを口にした。
「この巨大化したネズミ……どこかで見たことがあるような……」
「まさか、アインハルトさんちに!?」
「いませんよぉぉ!」
覇王様はコホンと咳をして、
「じっくり見て思い出しました。確か、シュトゥラの森でクロが――ああ、初代の魔女クロゼルグのことですが、丸焼きにして食べていました」
「コレをですか……?」
ダンジョン飯の世界である。
「わたしはちょっと~」
「森ではごちそうだったんですよぉぉ!?」
とりあえず、パシャリ――と1枚撮って、これはクロへのお土産にしよう。
2
「やっぱり、さっきのネズミも、トランザムさんの仕業だったんでしょうか?」
「トランザム・バースト許すまじっ!」
「もう~、そういうはやてさんだって、ダブルオーライザーみたいになるじゃないですかぁ~」
「ユニゾンや! まあ、確かにリインがおらんと安定しないとことか、似てると言えば似てるんやけどな~」
「――ほら、バカばっか言ってないで先に進むわよ」
1階の探索が空振りに終わったわたしたちは、一旦入り口のホールへ戻ることにした。
先に地下へ向かったものの、思ったより狭いワインセラーがあるだけ。空っぽの樽は残っていても、隠し通路や扉の類は見つからなかった。
階段を上がって2階へ向かう。
早速エンカウントしたのは、
「さ、さまようよろい?」
「ドラクエかよ……」
「キラーアーマー?」
「普通にアンデッド系モンスターでいいんじゃない?」
「ピサロナイト」
「あいつは中身入ってるだろ?」
「ええ加減ドラクエネタはやめぇぇい!」
「じゃ、キャラメルマン7号で」
「そんなん鳥山●大先生でも忘れとるわぁぁ!」
しかも、どちらかと言えば〝よろいのきし〟の方である。
はやてさんは手のひらをかざすと、特に詠唱することなく純粋魔力の衝撃波だけで動く鎧を吹き飛ばす。
これが怒りのパワーか……。
壁にぶつかると、ガシャン――という音と共に鎧がパーツごとに散らばった。
「あ、ホントに中身空っぽだ……」
「コロナさんが操っているということは?」
「そんな肝試しじゃあるまいし~。でも、そうか、これ、操作系魔法の一種だとしたら……」
「錬金術の可能性もあるぞ?」
「あ~、アリサさんみたいな声が鎧から聞こえるアレですか……」
どちらにせよ、
「ええ加減にせぇぇ! 魔導師トランザムっ!!」
はやてさんがキレた。
「いつまでも隠れとらんと、とっとと姿を現しぃぃ!
ネタは上がっとるんや!
私は時空管理局本局海上警備部の八神はやて捜査司令やぁぁ――っ!!」
「ちょ、八神っ!?」
「他にも元提督に最強の使い魔。さらに古代ベルカのツートップ――聖王と覇王もおるでぇぇ!」
ツートップって……。
「確かに知名度だけならツートップですけどぉぉ――って、アインハルトさん、なにうれしそうな顔してるんですかぁぁ!?」
「いえ、別に、そういうわけでは――あ、あそこを見てください! 白い影が出ましたよっ!!」
「そこかぁぁ! もう逃さへんでぇぇ、クラウソラ――ふごふご」
「八神、ストップストップ!」
「ほら落ち着いて、屋敷を破壊しないの!」
リーゼ姉妹が素早く動き、はやてさんの口に蓋をする。
その姿に、わたしは何となくだけど納得してしまう。
わたしの知る限り、いつも落ち着いて見えるはやてさんだけど、考えてみれば今のわたしより二つも年下の頃からお母さん役をやっていたわけで……。
ひょっとすると、両親を早くに亡くしたはやてさんにとっては、ずっと援助を受けていたグレアムさんの前が、数少ない〝子供っぽくいられる場所〟なのかもしれない……。
「――なんて感傷的になってる場合じゃなかった! はやてさん、トランザムさんの亡霊が右の部屋に入っていきましたよ!」
「よっしゃ、追うでぇぇ!」
「おお~っ!」
拳を振り上げたはやてさんの後ろを、アインハルトさんが追いかけていく。
まるで親分と子分だ。
「――ったく、父様の面倒は私が見る、みたいなこと言っておいて」
「結局こうなるんだから」
「たはは……」
「まあいいじゃないか」
そう言うグレアムさんがはやてさんを見る目は、本当に娘か孫を見守るおじいちゃんのようで……。
――ああ、そうか……。
わたしを見るなのはママの瞳や、フェイトママを見るリンディさんに似てるんだ……。
その優しげな眼差しは、ミウラさんを見守るはやてさんにも受け継がれている。
だけど、だからこそ、どうしてこんなにも心優しい老人が、あの時、はやてさんを封印――凍結する道を選んだのか?
いくらクロノ提督の父親の一件があったにせよ、それだけがわからない。
そんなわたしの心情の変化に気づいたのか、グレアムさんが優しく頭をなでてくれようとする――が、わたしは思わず避けてしまう。
「あ……すみません!」
「いいんだよ。私は切り捨て、なのは君たちは拾い上げることを選んだ。その結果なのだからね」
「グレアムさん……」
「だけど、一つだけ覚えておいて欲しい。
もしはやてが私と同じ道を選んだその時は、君が……君たちが、助けてあげて欲しい。
かつての、なのは君やフェイト君のようにね――」
3
「ここって……」
壁一面に古い本が並んでいる。
白い影が逃げこんだ部屋に入ると、そこはまるで図書室のようだった。
明らかに客室や使用人部屋の類ではない。
「トランザムさんの私室か書斎だとは思うけど……」
「ヴィヴィオさんっ!」
「トランザムがどこにもおらんで!?」
「はーい、そこのベルカコンビ、いい加減正気に戻ってくださーい」
すると、
「ん~」
辺りをクンクンしていたロッテさんが、
「あたしは別に犬じゃないけどさ、この書棚の向こうから、例の変な魔力が臭ってきてると思うんだよね」
「そう言われると……」
「壊しましょうか?」
アインハルトさんが断空拳のポーズで身構えた。
「いやいや、隠し扉だろ。八神、アバカムは蒐集してないのかよ?」
「流石にドラクエの魔法はな~」
「〝さいごのかぎ〟はどうですか?」
「持っとらんわ!」
「壷かタンスを調べれば……」
「どこの勇者やねんっ!?」
「――ん~」
「どうかしましたかヴィヴィオさん? もしかして壷の中に何か……」
「いえ、壷はないんですが、この肖像画なんですけど」
「あ~、この背景もベルカっぽいですね」
「そうですか……となると、人物と一緒に描かれているこの杖も……」
「カートリッジシステム?」
「はい。これまでトランザムさんが使ってきたのが魔法だとして、しかも、古代ベルカと関係があるとすれば――」
わたしは本棚の前で詠唱を始める。
「アバカムかっ!?」
「違いますよ! だけどこれで――えいっ!」
本棚が中央から縦に割れる。
そして、両開きのドアのように、わたしたちの目の前で大きな口を開いた。
下へと続く階段が現われる。
「「「「お~っ!」」」」
「流石は私のヴィヴィオさんです!」
「今のって?」
「はい。古代ベルカで使われていた魔法の鍵を、解錠するための魔法です」
「それは、もしかして聖王女の……?」
「いえ、わたしそういうのはあんまりないんで。ただ、小さい頃ユーノ司書長から教わったことがあるんですよ。トレジャーハンターには必須スキルだ~、みたいなこと言われまして」
「あ~、フェレットのあの子か~」
「遺跡探索が生業のスクライア一族らしいわね」
昔を思い出し、一瞬、和やかな雰囲気になったところで、
「みんな、あんまり、のんびりとはしてられへんようやで――」
はやてさんが凛とした声を発し、階段の下を睨みつけた。
「何なんですか、この腐ったような、饐えた魔力の臭いは……?」
「全員、当てられないようにしたまえ」
ロッテさんを先頭に階段を下りる。
1階どころか、地下1階……いや、地下2階まで続いている。
「そっか、それで入ってすぐの地下室にあったワインセラーが、屋敷の規模に比べて狭かったんですね」
「本命はこっちってこったな――っとぉぉ!」
階段を下りきった先。
再び待ち受ける扉を、ロッテさんが蹴破った。
と、同時に飛びこんだアリアさんが「光よ――」目眩ましを兼ねた、これまでよりも強烈な明かりの魔法を唱えた。
「これは……」
相当広い。ストライクアーツの練習場としても申し分ないほど。
「地下室より地下洞窟、と言った方が相応しいわね」
「何でしょう、地面に大きな石が等間隔に置かれているようですが……?」
ロッテさんがしゃがみこんで、
「コイツはどれも墓石だな」
「――って、じゃあ、ここ一面、地下墓地ってことですかぁぁ!?」
――ズボッ!
「「ヒィァァァァアア~~ッ!?」」
墓石の置かれた地面から、次々と手が生える。そして、ゆっくり這い出してきたのは、
「スケルトン! ソンビ!」
「あっちはスペクターかしら? それともレイス? ああ、もう、これは写真に収めなくちゃ!」
「ちょ、アリアさんしっかりしてぇぇ!」
「金の成る木キタァァ――ッ!!」
「ロッテさんも写真撮るか戦うかどっちかにしてぇぇ――って、アインハルトさんもいっぱいいるからって数えなくていいですからぁぁ!」
「すみません、つい物珍しくてぇぇ」
みんな興奮してしまっている。
そんな中、ただ1人押し黙っていたのが、
「はやて、さん……?」
「あかん、あかんで……こんなの、こんなの……おるはずない……こんな、うじゃうじゃ……のろいうさぎのダンス……」
「はやてさんのSAN値がヤバイ!」
虚ろな目で現実逃避している。
「まさか、はやてがここまで心霊現象を苦手としていたとは……」
「わたしだって初耳ですよぉぉ――あ」
『クラウソラス』
前触れなく、はやてさんの高速で直進する砲撃魔法が放たれる。
「そういえば~」
初めて闇の書が起動した時、はやてさんは驚きのあまり気を失ったという。
劇場版『2nd A's』でも見た。
その時に比べれば、気絶することなく攻撃魔法を唱えている分、成長したと言えるだろう……けど、
「最強火力がメダパニって、最悪じゃないですかぁぁ――――っっ!!」
――ドッカァァ~~~~ンッ!!
ここで、第1夜の冒頭にあるような、なのはママとは違う、〝闇の書の意志Ver.〟とも呼ぶべき、はやてさんのスターライトブレイカーが炸裂するという大惨事。
正直、
『おお ヴィヴィ! しんでしまうとは なにごとだ!』
になるかと思いました。
4
パラパラ……と、天井から砂や石の欠片が落下する。
「助、かっ、た……?」
アレだけの規模の爆発が起きたのに、わたしはケガ一つない。それどころか、生き埋めにもなっていなかった。
「ふぅ~、なのは君のような結界を破壊する効果がなくて助かったよ」
「「父様っ!」」
グレアムさんの張った結界のお陰だろう。
「流石は元提督っ!」
艦隊指揮官、執務官長を歴任しただけのことはある。地球出身者の魔力資質は高い。ひょっとしたら、若い頃のグレアムさんは、なのはママやはやてさんと、ガチンコで戦えるほどの魔導師だったのかもしれない。
「コチラもどうにか終わりました」
アインハルトさんが、手刀ではやてさんを昏倒させていた。
「もう~、アインハルトさん、旋衝破で跳ね返してくださいって言ったのにぃ~」
「あんなの受けたら死にますからぁぁ!?」
何にせよ、一面焼け野原――まあ、元から墓地だったのだけど――ゾンビやスケルトンは跡形もない。
ん~。
「結局、わたしたちはトランザムさんの罠にはめられたってことでしょうか?」
「どうかしら……」
ハッ――と、アインハルトさんが振り返る。
「ヴィヴィオさん、上です! 例の白い影が浮かんでますよ!」
「あっ――」
トランザムさんの亡霊が、まるで、わたしたちを睥睨するかのように、天井付近に浮かんでいた。
ロッテさんの毛が逆立つ。
「お前ら、注意しろッ!」
地下墓地の地面に、白いベルカ式の魔法陣が浮かび上がる。
「これは――」
「「「「「転移魔法陣!?」」」」」
わたしたち6人の姿が、屋敷の地下から消え失せた。
●
次回、ゴーストハンター・ヴィヴィオ 第4夜
『高町ヴィヴィオと奈落からの呼び声』
に――リリカルマジカル、がんばります!
『はやてはお化けが怖い?』
特に、公式においてそういった記述はないのですが、とりあえず今回の話を書くにあたって『The MOVIE 2nd A's』を見直したところ、ヴォルケンリッターとの出会いのシーン。
冒頭、車椅子に乗って、横断歩道を渡ろうとしていたところ、居眠り運転のトラックに轢かれそうになり――
さて、そこは流石はやてさん。
あんな死にそうな目にあっても、決して気絶なんてしません。
驚いてはいても、しっかり起きています。
ところが……
浮かんでいる闇の書、何だかよくわからないけど、突然現れて自分を取り囲む4人。
トラックに轢かれるよりも、そっちの方にびっくり――朝まで気絶します。
たぶん、子供の頃から達観しているので、現実的な出来事に対しては、冷静かつ客観的に判断できるけれど、非現実的な出来事に関しては、意外と耐性が低いのかなと。
こういうのは、いくら慣れても生来の性質もあるので、大人になっても苦手かもしれないな~、と思ったわけです。
ちなみに、これが、我らがなのはさんの場合、気絶せず「何だかよくわからないけど、まかせといて!」で、引き受けちゃいそうです。
一方、ピクチャードラマ「魔法少女リリカルIF」で、なのはではなく、はやてがユーノと出会う話がありましたが、実際、あの当時のはやてがユーノと出会っていたら、
「しゃべるフェレットぉぉ!?」
みたいな感じで、ヴォルケンリッターと出会った時と同じように目を回して、ユーノ大ピンチというか、GAMEOVER、バッドエンドだったかと……。
ただ、まあ、こういう欠点や弱点っぽいのがあった方が可愛いかな、と思うのですが、どうでしょう?
ちなみに、はやてはサウンドステージで、自分のことを「動くオカルト」と言ってますが……この場合、心霊現象ではなく、超古代文明(アルハザード)由来のオーパーツ(ロストロギア)的な意味合いだったと思うので、セーフ(?)かな~と。