アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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映画、絶賛公開中なのに、空気を読まず『GOD』アミタが、ヴィヴィオの机の引き出しから現れる!!


アミティえもん

 午前は、ジムでスパーリング。

 お昼は、うちに帰ってなのはママと昼食。

 午後は、自分の部屋で夏休みの宿題。

 ――という流れだったのだけど、

 

 

 ――ドゴスッ!

 

 

「おうふっ!」

 

 突然、腹部を強打。アインハルトさんやリンネさんのパンチを食らった時みたいに、腹から押し出された空気が口から漏れる。

 

「な、何で、いきなり机の引き出しが……」

 

 ドリフのコントじゃあるまいし……。

 わたしは右手にノート、左手にシャーペンを握りしめたまま必死に机にしがみつこうとしたのだけど、そんな努力を嘲笑うかのように、体は椅子ごと後方に。

 

 あ~。

 

 すると、開いた机の引き出しから、ニョキッと赤いタケノコ――じゃなかった、赤毛で三つ編みのお姉さんが姿を現した。

 青い衣装。松岡●造みたいにやる気に満ちた瞳。

 そして、快活な声音で空気を震わせた。

 

 

「お久しぶりです、ヴィヴィオさんっ!」

 

 

「え、あ……も、もしかして映画が絶賛公開中だというのに空気も読めずに『GOD』アミタさんっ!?」

「はい! みんなのお姉ちゃん、アミティエ・フローリアンですよ――って、『GOD』アミタ??」

「ああ、スミマセン! 色々と紛らわしいんで、ゲーム版の方を『GOD』アミタ。劇場版の方を『Reflection』アミタとお呼びしようかと……」

「はぁ……」

 

 いまいちピンと来てないようなので、

 

「えっと、プロトタイプガンダムが昔ながらの黒と白のカラーリングか、オリジン仕様のゴーグルセンサーか――みたいな」

「えっと、何のお話でしょうか?」

 

 しまったぁぁ――っ!!?

 

 わたしの周囲はだいたいそれで話が通じちゃうので、ついガンダムで例えてしまったのだけど、

 

「流石のガンダムもエルトリアじゃ放映してなかったか~」

 

 こっちは『ガンダムビルドファイターズ バトローグ』で、あの2人が戦っているというのに……。

 

「???」

「帰ったら王様にガンダムのこと相談してください」

「はぁ……」

 

 娯楽の少なそうなエルトリアなら、毎日ガンダム祭りで二月もあればどうにかなるだろう。

 

「――って、そんなことはどうでもよくて、アミタさん、どうして机の引き出しから出てきたんですか!?」

「はい! 前にキリエから、こちらの世界にお邪魔する時は、出口を机の引き出しに設定しないとダメよん――とか言われまして。そういう慣習があるんですよね?」

「あ~」

 

 今やミッドでも有名な、青い猫型ロボットのことか……。

 

「もしかしてウソだったんですかぁぁ!?」

「いえ、当たらずといえども遠からずと言いましょうか……」

 

 わりかし正解な気もする。

 

「キリエさんらしいで――」

 

 

「あああああああああああああああっ!!」

 

 

「ちょ、どうしたんですか!?」

「キリエですよっ!」

「はい?」

「今朝はふつーにうちにいたのに、お昼に姿が見えないなーとか思ってたら、

『ちょっとミッドに出かけてきまーす♪』

 って書き置きが残っててぇぇ!」

「はあ……」

「もおおっ! 未来に影響が出ないよう、よっぽどじゃない限り時間転移装置は使わないって約束してたのにぃぃ――っ!!」

「はっ! もしかして……またエルトリアに危機が!?」

「ん~っ、特にそういったことは起きてないはずなんですが……。

 

 いつもどーり、王様の朝食を食べて、

 

 いつもどーり、王様の昼食を食べて、

 

 いつもどーり、王様の夕食を食べるだけですよ?」

 

 王様の料理の話しか出てこない!

 だけど、

 

「完全にいつもと変わらないってことですよね……」

 

 はて?

 そうなると、どうしてキリエさんはわざわざこっちの世界にやってきたのか??

 

「最近、王様たちがよくこっちに来るから、キリエさんも遊びに来たくなったんじゃ?」

「それならそうと言ってくれれば……じゃなくて、そんなホイホイ来てもいい場所じゃないんですよ!」

「ま、まあ、そう熱くならないで、落ち着いてください。キリエさんのことだから、その辺りは色々器用にやるはずじゃ……」

 

 たぶんだけど~。

 

「それは……まあ、優秀な妹ですからね!」

 

 何気に妹自慢来たァァ!

 

「あ、そうだ。キリエさんがこっちに来てるとしたら、ママなら何か知ってるかも」

 

 わたしとクリスが気づかなくても、ママとレイジングハートなら察知している可能性が高い。

 

「ヴィヴィオさんのお母さんというと、もしかして――」

「とにかく聞いてみましょう!」

 

 わたしはアミタさんを机の引き出しから引っ張り出すと――つい、中をのぞきこんだのは言うまでもないけど、猫型ロボットのタイムマシンはなかったです――手を引いてリビングに向かった。

 

 

     ●

 

 

「なのはママ~、アミタさんが遊びに来たんだけど~」

「遊びじゃないですよ!」

「スミマセン……つい。それよりママ、キリエさん見なかった? 先にこっちの世界に来たみたいなんだけど」

 

 昼食の洗い物も終わり、リビングでくつろいでいたなのはママが、うれしそうに笑みを浮かべる。

 

「わ~、アミタさん、いらっしゃ~い! ホントに久しぶりですね~」

 

「……なのは、ママ? ……なのは、さん。

 

 ――うええええええええええええええええええええええええっっ!!?

 

 れ、レヴィから話は聞いていましたが、まさか、こんなに大人の女性になられていたとはぁぁ――っ!?

 私の覚えてるのはこんなで……。

 な、何ですか、それ……胸なんて私より大きいじゃないですかッッ!!」

 

「こらこら」

「アミタさ~ん、無意識に揉んでますよ~」

「はっ!? ス、スミマセン、つい!」

「んー、でも、昔自分よりお姉さんだと思っていた人が、年下になるってのは、ちょっと複雑な気分かも……」

「……」

「どうしたんですか、アミタさん? ぼーっとして」

「い、いえ、私より年上の女性――もちろん村に行けばいたんですが――と、こんなに近くで接する機会がこれまでなかったと申しましょうか……」

「そういえば映画だとミウラさんボイス(かな恵隊)で、母親のエレノア・フローリアンさんがいましたが、ゲーム版の『GOD』では父親――グランツ博士しかいませんでしたもんね」

「そっか、じゃあ、アミタさん……ううん、アミタちゃん、ずっとみんなのお姉さん役お疲れ様でした――」

 

 なのはママがアミタさんをぎゅ~っと抱きしめた。

 

「はうぅぅ~~~~~~~~~~っっ!?」

 

 真っ赤な顔で身体をピンと縦に硬直させたアミタさん。

 なんだか、とっても不思議で、新鮮な光景でした。

 

 

     ●

 

 

「……コホン。そ、それでですね、なのはさん」

 

 すっかりおとなしくなったアミタさんの前には、夏らしく、麦茶の入ったグラスが置かれている。

 

「キリエがこちらの世界にお邪魔していないかと思いまして」

「キリエさん、またいなくなっちゃったんだって」

「あー、それなら午前中に来たけど?」

 

 

「ホントですかぁぁ!?」

 

「どうして言ってくれなかったのぉぉ!?」

 

 

「ヴィヴィオ、午前中はジムに行ってたでしょ?」

「それはそーだけど~」

 

 アミタさんは勢いよく立ち上がると、まるで湯上がりにビン牛乳を飲むかのように、腰に手を当て、麦茶を一気に飲み干した。

 そして、敬礼。

 

「情報提供ありがとうございました! それでは、早速キリエを追いかけま――」

 

 

「ちょっと待ったぁぁ――っっ!!」

 

「グエっ!?」

 

 

 リビングから庭に飛び出そうとしたアミタさんを、なのはママがバインドした。

 

「もう~、そんなに焦らないの」

「ですがっ!!」

「大丈夫。王様たちが心配するから、夕食までには帰る――って言ってたから、夕方には戻ってくるって」

 

 キリエさんらしい。

 

「そういうことなら、ママ、アミタさんにはうちで待っててもらおうよ!」

「うん、いいんじゃないかな」

「ですが、そんな、せっかくの家族の団らんを……ご迷惑じゃ……」

「大丈夫、大丈夫」

「そうですよ! 夏休みらしいイベントになりますし、明日ジムでみんなに話すいいネタが出来ちゃいますから、むしろ大歓迎です」

 

 それに、高町家はこういうイベント事が大好きなのだ!

 

 

     ●

 

 

「――一応、王様やシュテルたちから話は聞いてるけど、実際問題、アミタさんたちギアーズの目から見て、エルトリアの状況はどうなの?」

「ん~、まだまだですかね~。王様たちのお陰で復興が軌道に乗ったのは確かですが、ここから先、一体どれほどの時間がかかるのかまでは……レヴィいわく『目指せスイカ割り!』だそうですけど」

 

 海で遊べるようになりたい――という意味だろう。

 

「レヴィらしいね……あ、だったら、今度みんなで遊びに来たら? それくらいなら、たいしてこの時間にも影響ないんでしょ?」

「はい、まあ大丈夫かと……」

「いえいえ、わかりませんよ~。

 Aさんが、むしゃくしゃして蹴飛ばした小石がBさんに当たり、追いかけたBさんが、穴の底に落ちていたCさんを救い、そのCさんが病気の治療法を発見し、そのお陰でDさんの命が救われ、最終的にDさんが世界大戦の危機を解消し、人類は絶滅のピンチから救われた。

 ――という、話を聞いたことがありますから」

 

 ちょっとしたことで歴史が変わるという最も有名な例え話だ。

 

「ほ、本当ですかっ!?」

「はい、本当です」

「も……もしかして、私がここにやって来ただけで歴史に変化がぁぁ!?」

「こらヴィヴィオ、そんなに驚かさないの」

「はーい」

 

 アミタさんのグラスに新しく麦茶を注ぎながら、

 

「そういえば、うちもまだ今年は海に行ってなかったよね?」

「そーだっけ?」

「そーだよっ!」

「にゃはは、それはまあ、フェイトちゃんが帰ってから相談しようね」

「フェイトさんはお仕事ですか?」

「ん~、フェイトちゃんはちょっと過去と対面中」

「過去と……ですか?」

「うん。昔――それこそ、アミタさんやキリエさんと出会うより前、フェイトちゃんがやんちゃしてた頃、〝時の庭園〟ってところに住んでたんだけど……」

「時の庭園、ですか?」

「えっと、わたしも実物は見たことないんですが、空中移動要塞的な……」

「く、空中移動要塞ですか……何ですか、そのラスボスとかいそうな響きは……王様は好きそうですけど」

「まあ、実際、私にとってはラスダンだったんだけどね。庭園が飛び立つ前、地上に残された建物とか荷物とか、管理局に押収されたものが、少しずつ返却されてるんだよね。

 学術的なやつは、ユーノ君に押しつけ――じゃなくて、無限書庫に寄贈してるみたいだけど、それ以外はフェイトちゃんが直接見て判断してるみたい」

「何だか大変そうですね」

「まあね。でも、フェイトちゃん的にはうれしいらしいよ? 日記とかもあるし。数少ないプレシアさんやリニスさん、それにお姉ちゃん――アリシアさんが生きた証だから」

 

「お姉ちゃん……やっぱりお姉ちゃんは重要ですよねっ!」

 

 どーも、別の部分に食いついたらしい。

 

「――あ、ところでアミタさんどら焼き食べる?」

「どら焼き???」

「あれ? 未来から来た猫型ロボットはどら焼きが好きなはずなんだけど……」

「ママ、流石にそれは無理があるかと」

 

 ギアーズだし、青いカラーリングはちょっと似ている気はしますが~。

 あと、ちょっぴりポンコツなとことか。

 あれ?

 結構似てるっ!?

 

 

     ●

 

 

 窓ガラスに夕日の色が混じった頃、

 

 

「――たっだいま~」

 

 

 玄関から明るい桃色声が聞こえてくる。

 アミタさんは条件反射か――と思うくらいの速度で立ち上がると、

 

 

「キリエエエエエエエエエエエエッッ!!」

 

 

 と、玄関に向かって猛ダッシュ。

 キリエとかキリトとか中の人大変だな~。

 

「お、お姉ちゃん!? どうしてここにぃぃ!!?」

「それはこっちの台詞です! あなたこそ、どうしてこっちの世界に来たんですか!?」

「それは、その~」

 

 ようやく追いつくと、目を逸らした様子のピンクな人を発見。

 

「キリエさんお久しぶりでーす。ヴィヴィオですよ~」

「わ~お! おっきくなったような、なってないような気がするわね~、ヴィヴィオちゃん」

「あはは……」

「もぉぉ、キリエ、誤魔化さないでくださいっ!!」

 

 すると、なのはママがやけにタイミングよく間に割って入った。

 

「まあまあ」

「棒?」

「うん、そういうひみつ道具はあったけど違うからね。

 2人とも、夕食までに帰らないと王様がすねちゃうんじゃない?

 それともうちで食べてく?

 私はそれでもいいけど、その時は腕によりをかけて作っちゃうよ」

「はわわ、そ、そうでしたっ!」

「そーね、話の続きはうちに帰ってからってことで――」

 

 キリエさんがなのはママに小さくウインクした。

 まーた、何か悪巧みでもしてたのかな~。

 なのはママまで巻きこんで……。

 アミタさんは、なのはママとわたしに向き直ると頭を下げた。

 

「本日は大変お世話になりました。今日のところは、ヴィヴィオさんの机の引き出しから帰らせてもらいますので――キリエもすぐ帰ってくるよーに」

「了解、了解。じゃ、私も帰るけど……今日はありがとね、なのはちゃん」

「いえいえ、どういたしましてー」

 

 2人で微笑み合う。

 

「そーだ、今度はキリエさんもゆっくりうちに遊びに来てくださいね、アミタさんと一緒に。映画の座談会みたいなのもやる予定なので」

「かしこまり~。じゃーね、ヴィヴィオちゃん――」

 

 そう言って手を振ると、なのはママの部屋に消えていく。

 

「ねぇ、ママ。キリエさんは最初どこから来たの?」

「私の机の引き出し」

「あ~」

 

 アミタさんに教えたのは、冗談やイタズラではなく……ガチだったらしい。

 

「って、そうだった。そもそもキリエさんはどうしてこっちの世界に??」

「あはは、それはね、もうじきアミタさんのお誕生日なんだって」

「……あ~、それで、わざわざこっちに買いに来たんだ」

 

 何だかんだでお姉ちゃん大好きっ子なのである。

 

「はぁ~、あの人も器用なんだか不器用なんだかわかんないね」

「だね~」

 

 映画版のキリエさんも、色々やらかしてたし……。

 わたしとなのはママは顔を見合わせると、遠くエルトリアの空の下、紫天一家と卓を囲むフローリアン姉妹の姿を思い浮かべるのであった。

 

 

 

 




『Reflection』ネタは、まだちょっと早いかなと思ったので(ネタバレになるので)、週替わり入場者プレゼントも終わり、平均上映期間と言われる1か月が過ぎた9月頃に触れようかと思います。

何だかんだ言って映画結構面白かったので「映画なんて普段見ないんだけど……」って人も行って損はしないと思います。
あと、パンフレットに魔法辞典なみに色々な設定が書いてあったので、なのは系の小説を書く人なら購入した方がいいと思います。これは役に立ちます。

さて、今回の話はちょっとしたジャブで、本命は来週(とか言ったら、アミタとキリエに怒られそうですが)。
とある管理外世界で、なんと失われた〝時の庭園〟の一部が見つかったという報告が。
フェイトとなのは、ついでにヴィヴィオもくっついて、早速調査に乗り出すのだけど、そこで待ち受けていたモノとは……!?

次回『お盆だよフェイトママ 前編』

で、リリカルマジカルがんばります!
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