アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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とある管理外世界で、なんと失われた〝時の庭園〟の一部が見つかったという報告が。
フェイトとなのは、ついでにヴィヴィオもくっついて、早速調査に乗り出すのだけど、そこで待ち受けていたモノとは……!?



お盆だよフェイトママ 前編

     1

 

 先週の回で、アミタさんとキリエさんが帰ってすぐあとのことだ――。

 

 

「なんだか慌ただしい一日だったね~」

「アミタさんとキリエさんが、あんなに可愛い女の子だったとは……昔は、あんなにお姉さんだったのにぃ~」

「なのはママも歳を取ったってこと?」

「ううっ、今日ばかりは言い返せない……。でも、まぁ、こーいう昔のアルバムを開く――みたいなイベントはそうそう起きないし、たまにはいいかもね」

 

 そう言いながら、なのはママがグラスに入った麦茶を口に含んだところで、バァァン――と玄関を開け放つ音が聞こえ、

 

 

「大変っ! なのはっっ!! 時の庭園の一部が見つかったのぉぉ――っっっ!!!」

 

 

「――ブウウウウウゥゥゥゥッッ!!!」

 

 

 と、なのはママがフェイトママに向かって麦茶を吹き出したところから、今回の物語は始まります。

 

 

     2

 

 

 時の庭園とは――かのプレシア・テスタロッサが、アリシアの賠償金と自ら得た富により購入した移動庭園である。

 遺跡級の年代物だったらしいけれど、人目につかず生命蘇生の研究を行うにあたり、次元間航行が可能なこの庭園は、隠れ家として実に都合がよかったのであろう。

 

 

 とかなんとか小難しいことを述べてみたけれど、外観は「庭園???」とコメントしたくなるようなトゲトゲな岩塊で、ガンダムなら〝アクシズ〟、マクロスなら〝ゴル・ボドルザー〟を彷彿とさせる。

 ついでに言うと、なのはママと合体して〝鬼眼王バーン〟みたいになりそうで怖い。

 たぶん、ゆりかごより強い。

 ちなみにサイズはというと、よくわからない。とにかくすんごいデカイ。

 一応、ミッドチルダ南部のアルトセイムに停泊していた頃の庭園を見ると……うん、Vガンダムのバイク戦艦より遥かに大きい。バイク戦艦が全長400メートルくらいだったので、庭園がいかに巨大建造物なのかわかっていただけるかと思う。

 

 え、わからない?

 

 まあ、そこは雰囲気で察していただけたらと思う。

 アインハルトさんみたいにちっちゃくないよ!

 最後は爆発、崩壊し、虚数空間に消えたのだけど……。

 アレだけの大きさの代物。

 一部が飲みこまれずに残っていたとしても、何ら不思議ではないだろう。

 

 

     3

 

 

 紺碧の空の下を、フェイトママ、なのはママ、わたし――の3人がバリアジャケット姿で飛行している。

 眼下には密林が広がっていた。

 

「まさか、管理外世界に落下していたなんて……」

「次元断層が発生していたから、可能性はあったんだけど」

「お盆とはいえ、とんだ里帰りになっちゃったね、フェイトママ――」

 

 というわけで、母娘3人、時の庭園の一部が発見されたという、とある管理外世界を訪れたのだけど、

 

「里帰りかぁ~、言われてみればそうなのかも……」

「フェイトちゃんの昔の実家――だもんね」

「なのはママにとってはラスダンだもんね」

「ラスダン!?」

「ま、まぁ、そうなんだけど……あれなんだよね。ほら、ヴィヴィオも映画を見て知ってると思うけど、ラスボス(プレシアさん)目がけて一直線だったから、ほとんど探索してないという。

 正確に言うと、私とユーノ君は駆動炉を止めにいったんだけど……まあ、結果的に寄り道できなかったし」

「あ~、エクスデス城でカーバンクルを取り逃したみたいな?」

「そうそう。竜王の城でロトの剣を取らずに世界の半分をやろう――みたいな」

「2人とも例えが酷いっ!」

 

 フェイトママが頭を抱えている。

 

「――ということは、未発見のお宝も!?」

「だねぇ~、プレシア・テスタロッサの秘宝みたいな」

「あー、たぶんだけど、2人のご期待にはそえないかと」

 

 フェイトママが指をさす。

 密林の中央に、ひときわ目立つ尖った岩山のような建造物が斜めに建っていた。

 全体を植物が覆っているので、落下してからかなりの年月が経過していることをうかがわせる。

 ただ、空から鳥瞰するだけでは、自然物のようにも見え、言われなければ人工物だと判別するのは難しい。

 周囲に落下時の痕跡もないからだ。

 それが、長らく発見されなかった所以なのだろう。

 

「もしかしてアレなの!?」

「うん。見つかった――と言っても、本当に庭園の一部だから」

「アレって、庭園のトゲトゲしてた部分だよね?」

「そう。そのうちの1本だと思う」

 

 フェイトママは謙遜して一部なんて言ってるけど、

 

「いやいやいや、十分おっきいよ?」

 

 魔物でも棲み着いていそうな高い塔。

 これがRPGなら、中盤戦の山場。もしくはやっぱりラストダンジョンである。

 

「現地の人は?」

 

 庭園の存在に気づいていたのだろうか。

 

「うん、近くに集落があるから」

「だったら、中はもうとっくに荒らされてるかも」

「それが、そうでもないみたいで――」

 

「「へ?」」

 

 フェイトママの誘導で地上に降り立つ。

 ちょうど、尖塔を見上げる位置だ。

 やはり大きい。

 

「なのは、ヴィヴィオ、入り口のところを見て――」

 

 生きているのか死んでいるのかもわからない。

 体中に青い苔を生やし、下半身が蛇、腕がいくつもある巨大な生き物が、ガーゴイル像のように扉を塞いでいた。

 

「何あれ!? ダームの塔とかにいそうだけど、闇の魔物か何か!?」

「うん、そういうのじゃないから」

「じゃ、ノイズさん!」

「うん、歌わないから」

「SAKIMORIちゃん、あれって……傀儡兵だよね?」

「うん、SAKIMORIじゃないけど、たぶん、そうだと思う」

「プレシアさんが魔界から召喚したという……」

「うん、そういうのでもないから」

「ドラクエで例えるならストーンマン……ううん、キラーマシーンの方が近いかな?」

「無理にドラクエで例えなくていいから。普通に母さんの創ったゴーレムだから」

 

 わたしは無印や映画を思い出し、

 

「時の庭園で、なのはママがドカンドカン倒してた敵のこと?」

「そういうと弱そうだけど、アレって一体一体がAランクの魔導師と同じ力を持つからね?」

「え」

 

 わたしより強いかも……。

 一般人には十分脅威だった。

 

「そりゃうかつに近づけないよね。コロナが見たらとんで喜びそうだけど……」

 

 

「あの子が、この塔を守ってくれていたから――」

 

 

 フェイトママが前に進み出ると、傀儡兵の目に赤い光が灯る。

 

「え、大丈夫なの!?」

 

 なのはママがわたしの肩をポンと叩く。大丈夫だよ――という合図だ。

 

「覚えてるかな?」

 

 フェイトママが、優しく冷たい金属のボディに触れると、傀儡兵が抑揚のない機械的な声で反応した。

 

 

『テスタロッサ・ファミリーとして認証します。

 ようこそ、無事のご帰還を――マスター・フェイト』

 

 

「うわぁ~、フェイトママ、魔王の娘って感じだね!」

「ん~、それを言ったらヴィヴィオもでしょ?」

「あははー、そうでした~」

「ん、んん~~~??」

 

 わたしとフェイトママは「まあ、まあ、まあ」となのはママの肩を叩いて、塔内部へと乗りこんだ。

 

 

    4

 

 

 先導してくれる傀儡兵(意外と優しい?)のあとに着いて進むと、次第に天井や床に明かりが灯り始めた。

 

「この塔って、10年以上放置されてたんだよね?」

「生きてる駆動炉があったってこと!?」

「なのはとユーノが止めたのは、メイン駆動炉だったから、ひょっとしたらサブの駆動炉が残ってたのかも……」

 

 歩きながらフェイトママが話す。

 

「私も、庭園の中を全て自由に行き来できたわけじゃないから。入っちゃダメだって言われてた場所とか、行く必要のないところには行かなかったから――」

 

 もしフェイトママが、もっと人の言うことを聞かない女の子だったら、なのはママと出会う前に、アリシアさんのポッドを見つけてしまったかもしれない。

 もしも、そうなっていたら……歴史はどう変わっていたのだろう?

 

「その真面目なところが、フェイトちゃんの良いところだけどね」

「ありがとう、なのは。母さんが、駆動炉からのエネルギーを自分の魔力として運用できたことは知ってるでしょ? 逆に言うと、母さん自身の魔力量は普通だったから、メイン駆動炉に何かあった場合を想定して――」

「そっか、いくつかサブを用意しておいたんだね?」

「そう、アリシアのポッドのこともあったし、用心するに越したことはない――と、当時の母さんなら考えたと思うんだ」

 

 

     5

 

 

 大きな書棚のある部屋で、わたしは検索魔法陣を展開した。

 

「ヴィヴィオ、わかる?」

「ん~、ゴーレム関連と、アルハザード関連だとは思うけど……ユーノ司書長を連れてきた方が早いかも」

「半分遺跡みたいなもんだしね、ユーノ君なら喜びそう。アルフさんも何か知ってるんじゃない?」

「そっか、連れてくればよかった~」

「今度はみんなで来ようね!」

 

 リオコロとアインハルトさんも連れてきてあげよう。

 そんなことを話しながら各部屋を調べている間、例の傀儡兵はずっとおとなしくしていたのだけど、

 

「映画の時は、もっとこう――ハッスルして襲ってきたよね?」

「うん、だから、こう――私もつい砲撃したくなっちゃうんだよね。

 私とフェイトちゃん、初めての共同作業――」

「そんなロマンチックに、ケーキ入刀じゃないんだから。合体攻撃だったよねっ!?」

 

 そもそも共同作業なら、それ以前にあった気もするし……というか、2人がかりじゃないと倒せないって、この傀儡兵強いな。

 

「もう~、倒したって今のなのはのレベルじゃ経験値入らないんだからね」

 

 高すぎるのだろう。

 

「じゃ、わたしならレベルアップできるかな?」

「おっ、やってみる?」

「やめてェェ! 2人とも経験値とか冗談だからぁぁ~っ!!」

 

 慌てて割って入るフェイトママ。

 だけど、フェイトママの冗談とは珍しい。

 やはり生まれ育った場所ともなれば、いつもとテンションが違うのかもしれない。

 とはいえ、

 

「実際問題、あの傀儡兵って暴れたりしないのかな? 侵入者は追い払ってたんでしょ??」

 

 マスター権限のないわたしとなのはママが声をかけても何も答えてくれないのだ。

 

「ん~、私がいるから大丈夫かな。母さんもリニスもいない今、私より上位のマスター権限を持つ人はいないはずだから」

「アルフは?」

「どうだろ?」

 

 今度一緒に来た時にでも試してみるという。

 その辺りの詳しい事情はわからないけど、少なくとも現在、わたしやなのはママに危害を加える意思はないようだった。

 

 

      6

 

 

 一通り調べ終わると、外はもう真っ暗だった。木々の隙間から、星が綺麗に見える。

火を使わない携帯食料も用意したけど、わざわざ飯盒でご飯を炊いた。

 

「キャンプみたい!」

「テントもあるけど、せっかくだし、今日はフェイトちゃんの実家にお泊まりだね!」

「う、う~ん、そんな感じなのかなぁ~」

 

 フェイトママの白い耳の先が、火色に染まったように見えた。

 

 

     7

 

 

「ふぁ~っ、トイレまで使えたのはラッキーだったよね」

 

 深夜、塔の中を歩きながらクリスに話しかける。

 暗いと、わたしの横を飛んでいるのか飛んでいないのかわからない時があるので、今度マリーさんにお願いして喋るようにしてもらうのもいいかもしれない……。

 

「てか、ウサギって何て鳴くんだっけ?」

 

 などと考えていたら、突然、目の前を昼間の傀儡兵が通り過ぎた。

 

「のわっ!?」

 

 夕食の時も、ガーディアンよろしく塔の入り口でスタンバってたのに……一体どこへ行くのだろう?

 ぐっすり寝ているママたちを起こすのも気が引けるし、

 

「追うよ、クリス!」

 

 ウサギのデバイスがビシッと手を挙げた。

 後をつけていくと、

 

「この場所って……」

 

 どうやら、まだ調べていない部屋があったようだ。

 傀儡兵が扉の中に消える。

 外でしばらく待っていると、入れ替わるように鎧騎士タイプの傀儡兵が現れた。塔の外に向かって歩き出す。

 

「もしかして――」

 

 わたしは急いで部屋に入ると、自分の仮説が正しいことを知る。

 そこでは、昼間の傀儡兵がプラグのような物と接続しており、他にも複数の傀儡兵が眠っていた。

 

「充電――魔力の補充をしてるんだ……」

 

 本来は、庭園のメイン駆動炉から直接エネルギーを供給されていたけれど、それが停止したので、サブから蓄積する形で稼働しているのだろう。

 よく見ると、傀儡兵のサイズや形に合わせて、色々な魔力補充台が置かれている。

 

 

「これなんてベッドみたい……」

 

 映像では見なかったけど、意外と人間サイズの傀儡兵なんてのもいたのかもしれない。

 大きい傀儡兵ばかりでは、入れない、守れない場所もあっただろうから。

 ふむ。

 

「これは使えるかも……」

 

 ママたちのところに戻るのも面倒臭いし……。

 わたしは台をポンポン叩いた。

 固くはあるが、高さはちょうどいい。

 2人から受け継いだこのスピリッツ。

 何事もチャレンジである。

 

「お休みなさ~い……」

 

 魔力補充台で横になると、わたしはここで眠ることにした――。

 

 

     8

 

 

「――ん~っ、あれ? ここって……」

 

 おかしい。

 確か、時の庭園の一部――塔の中、魔力補充台で眠ったはずなのに……。

 見上げると、

 空……いや、空なのだろうか?

 雲一つない――というか、濃い青に、うっすらとオレンジの混じった夜明けの空。いわゆる黎明に近い。

 だけど、何かがおかしい。

 肌寒くもなく、朝のランニングで感じる澄んだ空気もない。何より、たいして明るくもないのに全てを見通せる。

 いちいち日常の感覚とズレているのだ。

 そもそも、

 

「何でわたしはこんな草原で寝てたんだろう?」

 

 傀儡兵に連れて行かれた?

 

「いやいやいや」

 

 流石に起きるだろう。

 しかも、

 

「おおぅ……結構ギリギリだ……」

 

 目の前は崖っぷちだった。

 地面はそこで途切れており、下をのぞきこむと、空と同じような青で、あ~、でもよく見ると雲のようにうねっているような……。

 もしかして、

 

「ラピュタは本当にあったんだっ!」

 

 と叫んでも誰も突っこんでくれない。

 

 

「――って、あれ?」

 

 

 振り返ると岩山……いや、違う、巨大な人工物が多く混じった残骸。

 近代的な部分と、石造りの柱など。

 

「これって……」

 

 つい最近見た。

 

「時の……庭園……?」

 

 一部ではない。もっと、残り全てを合わせたように巨大で……。

 ――はっ!?

 

 

「さて、時の庭園のことを知っている貴方は何者かしら?」

 

 

 ――一瞬でわたしの間合いに入られた?

 気づくと、目の前には藤色の衣服に身を包んだ長い黒髪の女性が立っていた。

 長身で、それなりの年齢だというのにスタイルもいい。

 この人って、まさか……、

 

 

「ぷ、プレシアお婆ちゃぁぁ~~~~んっっ!!?」

 

 

「お婆っ……!?」

「プッ、あっはっはっはぁぁ――っ!」

 

 続けて姿を見せたのは、お腹を抱えて笑い転げる長い金髪の女性――というか少女。

 

「お、お婆ちゃんだって、おばっ!」

「アリシア、黙りなさい!」

 

 アリ……シア……?

 

「だって、おば、お婆ちゃんって……ひっ、ひっ、笑いすぎて息がぁ~」

「アリシア!」

 

 確かに、若い頃のフェイトママに似ているけれど……。だって、プレシアさんも、アリシアさんも……。

 ああ~、

 

「クリス、なのはママとフェイトママに連絡連絡ぅぅ~~って、クリスいないし、通信も届かないしぃぃ~~~~っ!?」

 

 どうなってるの??

 

 

「ほ、本当にプレシアさんとアリシアさんなんですかっ!!?」

 

 

 わたしが叫ぶと、プレシアさん(?)は、急に真顔になった。

 

 

「――そう。貴方、私だけでなくアリシアのことまで知っているのね。気になる名前も口にしていたようだし……事情を説明してもらいましょうか?」

 

 

 それはこっちの台詞だよぉぉ~~っ!?

 

 

 プレシアさんに睨まれ、アリシアさんに興味津々見つめられたまま、来週まで続く!

 

 

 




そろそろお盆で帰省シーズンなわけですが、ちょうどいいので前々からやりたかったフェイトの実家ネタをやってみました。

後半のイメージは〝イース2のOP〟で。
見たことない方は『イース2 OP』で検索してみてください。ゲームが移植・リメイクされすぎて種類が多いですが、初見ならなるべく新しいOPの方がいいと思います。
ちなみに、有名だから知ってるという方は、
アドルがヴィヴィオ
2人の女神がなのはとフェイト
リリアが……プレシアさん(笑)
のイメージに置き換えて見てもらえるとちょっと納得す……るかなぁ~?

そんなわけで、

現実か、夢オチか!?
ヴィヴィオが出会ったプレシアとアリシアの正体とは?
そしてヴィヴィオは、なのはとフェイトの元に戻れるのか??

次回『お盆だよフェイトママ 後編』

で、リリカルマジカルがんばります!
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