アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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現実か、夢オチか!
崩壊した〝時の庭園〟でヴィヴィオが出会ったプレシアとアリシアの正体とは!?
そしてヴィヴィオは、無事になのはとフェイトの元に戻れるのか!!?



お盆だよフェイトママ 後編

     1

 

 

「――さて、私のことをお婆ちゃんと呼び、アリシアのことまで知っていた貴方、事情を説明してもらいましょうか?」

 

 

 みなさんお久しぶりです。

 ていうか、1週間ぶりです、高町ヴィヴィオです。

 目の前にプレシアお婆ちゃんがいます。

 ピンチです。

 シャアじゃないけど、このプレッシャーは何!?

 一応『GOD』で、闇の欠片とはいえお姿拝見しているので間違うことはないと思うのだけど……こうして直接お会いするのは初めてなわけで……。

 

「いつまで黙っているのかしら? まったく親の顔が見てみたいわね」

 

 あ~、あなたの娘ですよ~。

 

「……」

 

 沈黙の視線。

 

「あ」

 

 この目は本気だ。

 フェイトママが時々するマジな目だ。

 高町家鉄の掟の一つ。

 フェイトちゃんは絶対に怒らせちゃダメ――に該当する。

 

「えっと、あの、わたしにもよくわからなくて……」

「ピンポイントで漂流してきたとでも?」

「いや、その……」

 

 漂流ってなに~?

 そこで、ようやく黄金の助け舟がやってくる。

 

 

「――はいママ。そんなに怖い顔しないの。この子、怯えちゃってるじゃない」

 

 

「アリシア、この子が危険な存在という可能性もあるのよ?」

「そんなことないよ! ほらほら、私と同じ金髪だし、よく見れば、どことな~く、私に似てると思わない?」

 

 黒髪の女性が大きく息を吐いた。

 

「……わかったわ」

 

 うわ、あのプレシアさんが先に折れた。

 

「アリシアの直感力は、私にはないものだから。ただし、貴方――名前は?」

「た、高町ヴィヴィオです!」

「そう、ヴィヴィオ――。貴方が、どうしてどうやってここに来たのか、事情だけは説明してもらうわよ?」

「はい! プレシアお婆――」

「……」

「――コホン。雷光少女プレシアちゃん!」

「……アリシア、この子突き落としても構わないかしら?」

「ダメだってばぁぁ――っ!?」

 

 

     2

 

 

 この場所へやってきた理由や方法はわからないのだけど、とりあえず、わたしは自分のこと、フェイトママのこと、なのはママのこと、そして、現在のミッドチルダについて話した。

 

「――そう、あの子の」

「ふぇ~、フェイトがママなんだ……」

 

 2人とも、フェイトママが初めてわたしの大人モードを見た時と似たような顔つきをしている。

 何だろう、この違和感?

 

「あの子、まだ生きていたのね……」

「そりゃそーでしょ! だって、ママの娘だよ? しぶといに決まってるって」

「いいえ、あの子は私の娘ではないわ。私がお腹を痛めて産んだのはアリシア、貴方だけだもの」

「まーた、そんなこと言って~。仮に複製体だとして、ママが全身全霊をかけて生み出したんでしょ? だったらフェイトは、紛れもなくママの子で、私の――アリシア・テスタロッサの妹だよ」

 

 

 ――そうか、ようやくわかった!

 

 

 この違和感の正体が。

 

 

 わたしの目の前にいるこの2人は、わたしの知るどの世界のプレシアさんやアリシアさんとも異なるんだ!

 

『無印』や『The MOVIE 1st』で見ることができる、優しかった頃と、狂気に取り憑かれたあとのプレシア・テスタロッサ。

 

『A's』や『The MOVIE 2nd A's』で、フェイトママの夢の世界に現れた、穏やかなプレシア・テスタロッサ。

 

『INNOCENT』で、恥ずかしげもなく〝娘☆命〟と言い切る、親バカ全力全開のプレシア・テスタロッサ。

 

 そして何より、

 

 

「アリシアさんが、全然、まったく、ちっちゃくないよぉぉ――っ!!?」

 

 

「なにそれぇぇ!?」

「フェイトママの中1くらいあるし!」

「ちゅ、中1……」

 

 アリシアさんが、ズーンとorzポーズで落ちこんだ。

 あれ?

 もしかしてもっと年上なのだろうか?

 

「あの~、ヴィヴィオ、ちょっとたんま。フェイトって、外見はどんな風に成長したのかな?」

 

 クリスがいれば映像でお見せできたのだけど、残念ながらいない。

 なので、

 

「えっと、モデルをやっててもおかしくないくらいで――」

 

 わたしはフェイトママがいかに美人さんなのかを、原稿用紙なら10枚くらいのエピソードつきでお話しする。

 

「そういった意味では、たぶん、よく運動をして体を鍛えているプレシアさん――って感じのスタイルでしょうか?」

「それ最強じゃん!」

「あはは、ですね~」

 

 アリシアさんが、悔しそうに地面をバンバン足裏で蹴る。

 

「むきぃぃ~、やっぱりフェイトは私の妹じゃないかもっ!?」

 

「エエェェ~」

「姉よりすぐれた妹なぞ存在しねぇ~っ!」

「どこで仕入れてきたんですか、そのネタぁぁ――っ!?」

 

 アリシアさんは恨めしそうな顔つきで、

 

「私、背も低いけど、魔力量の値も低いしなぁ~」

 

 チラッとプレシアさんを見やる。

 

「私、誰かさんと違って雷撃魔法得意じゃないしなぁ~、あ、フェイトって得意なんだよね?」

「はい。電気の変換資質があるので、得意というよりもはやプロフェッショナルかと」

「はぁ~、私じゃなくてママの複製体なんじゃない? っていうくらい似てるのに、どうして認めようとしないかな、この頑固ママはっ!」

「頑固なのは貴方もでしょ!」

「あー、そーいうとこ、2人とも似てますよ~」

 

 何だコレ!?

 

 

     3

 

 

 カフェテラスのように、外に置かれた白いテーブル席に案内されたわたしは、しばらく歓談に興じた。

 今度はわたしから尋ねる。

 

「あの、今更なんですが、ここって何処なんでしょうか?」

 

 薄々夢なんじゃないか――と思い始めてはいたものの、訊かずにはいられなかった。

 ひょっとしたら――という可能性だって捨て切れない。

 プレシアさんが神妙な顔つきで答えた。

 

「アルハザード……と言ったらわかるかしら?」

「へ?」

「過去に存在し、未来にも存在する。

 ゴウゴウと流れ落ちる滝のように、時間が渦を巻く――時の行き着く先。狭間」

「それって……っ」

 

 突然、頭に鋭い痛みが走る。

 脳裏に、人差し指を唇に当てたアミタさんとキリエさんの顔が思い浮かぶ。

 

 ――記憶封鎖?

 

 わたしは聞いたことがある、ということだろうか?

 時の果てについて、〝時の庭園〟という名に相応しい、この空間について。

 確かに、あの2人なら知っていてもおかしくないとは思うけど……。

 

「貴方、時間移動能力者とも出会っているのね?」

「どうしてわかるんですかぁぁ!?」

 

 察しがよすぎる。

『砕け得ぬ闇事件』の時にも思ったけれど、この人、フェイトママのママ――というだけじゃない。

 ジェイル・スカリエッティと同じで、違法研究者でなければ、間違いなく歴史に残る天才のひとり――。

 

 

「こりゃ美人でも離婚するわけだ……」

 

 

 ピキッ――と、プレシアさんの眉間にシワが寄る。

 

「ねぇ、アリシア。この子、フェイトが私に文句を言うため送りこんだのかしら?」

「う~ん、流石にそれはないかと~」

「――って、あれ?」

 

 わたしの手足が透けている。

 

「どうやら時間切れのようね」

「エエェェ!? まだ聞きたいことがいっぱいあったのにぃぃ!」

「……そういえば、ヴィヴィオ、貴方、聖王の複製体なのよね?」

「え、あ、はい。そうですけど……?」

 

 何か問題なのだろうか。

 

「別に何でもないわ。確認しただけよ」

「???」

「ふっふ~ん、ママはね、こう言いたかったんだよ。

 聖王は外部からエネルギーを受け取ることができたんでしょ?

 それってさ、つまり、ママの特殊技能と同じ――」

 

「あ」

 

「なのは――っていうフェイトの親友には悪いけど、ヴィヴィオはどっちかというと、テスタロッサ・ファミリーに近い。

 フェイトの娘で、私の姪ってこと。

 ついでに同じ金髪だしね!」

 

 ああ、そういうことか……。

 わたしは感慨をこめてその名を呼ぶ。

 

 

「……アリシア、おばさん」

 

 

「おばァァ――――ッッ!!?」

「…………プッ」

「ちょ、何笑ってるのママぁぁ――っ!?」

 

 アリシアさんはブンブン手を上下に振って騒いだあと、

 

「あ、そーだっ! ママ、ヴィヴィオにアレ渡してもいいよね?」

 

 アリシアさんが耳元でささやくと、プレシアさんは一言だけ、

 

「勝手になさい」

 

 と告げた。

 気に食わないけれど、止める気はない――といったところか。

 

「アレ??」

「お・み・や・げ――私の代わりにフェイトと一緒に探してあげて」

 

 アリシアさんの言葉と同時に、わたしの五感はシャットダウン。

 真っ暗闇に陥る。

 最後に見えたのは、手を振るアリシアさんの姿と、わたしが遠出をする時、いつも見守ってくれるフェイトママと同じ視線だった――。

 

 

     4

 

 

『――ヴィヴィオ、ヴィヴィオ!』

 

 

 誰かが呼んでいる気がする。

 ゆっくり目を開けると、ぼやけた視界がだんだん像を結ぶ。

 目に映るのは、アリシアさんとプレシアさんではなく、懐かしい、なのはママとフェイトママの顔。

 

「――あ、あれ、ここって?」

「もう~、ヴィヴィオってばこんなところで寝て」

「捜すの大変だったんだから」

「あ~、はは、ごめんなさ~い……」

 

 知っている天井。

 時の庭園の一部――塔の中、魔力補充台で眠ったままの格好。

 隣にはもちろんクリスもいる。

 ……ということは、

 

 

 

「うわぁぁぁ~、やっぱり夢オチだったぁぁ~~~~~~っっ!!?」

 

 

 

 普通なら有り得ない超体験だったのに、フェイトママには超朗報(?)だったのにぃぃ――っ!

 

「な、ナニソレっ!?」

「ヴィヴィオ、一体どんな夢を見たの?」

 

 台をドンドン叩くほどの悔しがりっぷりに、ママたちが驚いている。

 

「えっと、それは――」

 

 わたしはアルハザードで、プレシアさんとアリシアさんと出会い、色々な話を交わしたことを伝える。

 

「……そっか、そんな夢なら、フェイトちゃんにも見せてあげたかったね」

「そーだっ! フェイトママもここで寝てみる? ひょっとしたら同じ夢が見れるかも」

「う、う~ん……それで見れるなら挑戦してみたいけど、ちょっと台が固いかなー」

 

 苦笑いを浮かべたフェイトママに、やんわりとお断りされた。

 まあ、科学的根拠は何もなく、台が固いのだけは本当だ。

 わたしも、ちょっと身体が痛いし……。

 わたしは「ですよね~」と、台から降りようとして、

 

「……っ!?」

「どーしたの、ヴィヴィオ?」

「ううん、なんでもない――」

 

 わたしは手を握ったり開いたりする。

 これって……。

 ゆりかごの駆動炉から無尽蔵に魔力を受け取っていた時と似た感覚。

 どうして、いまさら……?

 

 

「ヴィヴィオ、行くよ~」

 

 

「あ、うん!」

 

 ま、いっか……。

 体が不調なわけじゃない。

 生きていれば、そういうことだってあるのだろう。

 

 

     5

 

 

 わたしたち3人は塔の外に出た。

 眩しい白光。早朝のわずかに湿った森の空気が気持ちを切り替えてくれる。

 近いうちに、今度はユーノ司書長とアルフを連れて再調査しよう――という話になっていた。

 

「そーいえば、昨日の傀儡兵がいないね」

 

 わたしが起きた時、すでに部屋から姿を消していたのだ。

 おそらく、魔力の補充が完了したのだろうけど、塔の入り口には鎧騎士タイプすらいない。

 

「あ、あれじゃない?」

 

 なのはママが指を差す。

 ちょうど、例の傀儡兵が塔から出て来るところだった。

 コチラへ近づいてくる。

 フェイトママが代表し、

 

 

「またしばらく留守にするけど、庭園の管理をよろしくね」

 

 

 そっか……。

 確かに、現在の傀儡兵は守護者――というより管理人といった方がしっくりくる。

 

 

『イエス、マスター・フェイト。それとコレを――』

 

 

 傀儡兵が思いがけない動きを見せた。

 フェイトママに向けて差し出したのは、青いリボンをかけて丸めた1枚の地図。

 

「え……これって……庭園から持ち出してきたの?」

 

『イエス、マスター・フェイト』

 

「気持ちはうれしいけど、ダメだよ、勝手に持ち出したら。元の位置に戻しておいて。そして、次に私が来る時まで大切に守っておいてくれるかな?」

 

『ノー、マスター・フェイト。その命令には従えません』

 

「え、どうして?」

 

 主人であるフェイトママの言うことが聞けないというのだ。

 

「マスターの言葉に逆らうってこと?」

 

『ノー、マスター・フェイト』

 

 どういうことだろうか?

 わたしとなのはママも互いに顔を見合わせる。

 傀儡兵は赤い瞳をゆっくり明滅させた。

 

 

『時の庭園の〝真のマスター〟より、あなたに渡すようにとのご命令です』

 

 

「「「真のマスター!!?」」」

 

 

「それって……」

「プレシア、さん……?」

「でも、そんなわけは……」

 

 ない。

 ないのだ、絶対。

 だってアレは夢だったわけで、もしそれが本当だとしたら、

 

 

「この塔の――庭園のどこかにプレシアさんとアリシアさんが隠れてるってこと!?」

 

 

『ノー、〝マスター・ヴィヴィオ〟』

 

 

 あれ?

 やっぱり違うのか……。

 だったら、

 

「どういうことなの、フェイトちゃん?」

「わ、私にも何がなんだか……」

 

 傀儡兵は、無言のまま塔の入り口に移動すると、まるで、時が止まったかのように、瞳から赤い光を消して動きを止めた。

 

 

 

 




結局のところ、あのプレシアとアリシアは何だったのか?
「野暮かな?」と思ったので、あえて作中では詳しい事情説明をしていません。
とりあえず1つ言えることは、あくまでリリカルなのはの世界(公式)で起きたことのある事象(とある事件)を利用しているので、もしこんなイベントが発生したとしても、何ら不思議ではない――ということです。
たぶん、理由を聞けば1発で「ああ、そういうこと」と納得してもらえるかと。
結構単純な理由なので、よかったら推理してみてください


〝時の庭園〟でフェイトが傀儡兵から受け取った地図には、謎の島やいかにもといった赤い×印が描かれていた。
プレシア・テスタロッサの財宝(?)を求め、ヴィヴィオたちは未知の島へと向かう!!

次回『宝探しなのっ!』

で、リリカルマジカルがんばります!
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