アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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〝時の庭園〟でフェイトが傀儡兵から受け取った地図には、謎の島やいかにもといった赤い×印が描かれていた。
プレシア・テスタロッサの財宝(?)を求め、ヴィヴィオたちは未知の島へと向かう!!



宝探しなのっ!

     1

 

 

 時の庭園で傀儡兵から渡された地図には、方位マーク、島の全景、いかにもといった髑髏や船のイラスト、そして赤い×印が、手書きで描かれていた。

 

「もしかして、プレシア・テスタロッサの財宝が隠された地図とかっ!?」

「エエェェ!? そんな話聞いたことないけど……」

 

 フェイトママにも、完全に否定できることではない。

 

「レイジングハート、これ、どこの島かわかる?」

 

 優秀な赤い宝石は、あっさりと答えを導き出す。

 それは――

 

 

     2

 

 

 ギラギラと焼けつく真夏の太陽に、青い空と白い砂浜、そして、

 

 

「「「海だぁぁ――――ッッ!!!」」」

 

 

 と、水着姿の3人でジャンプ。

 

「ヴィヴィオ、これやらないとダメなの?」

「一応お約束だからね~」

「ううっ、恥ずかしいかも……」

 

 マリンブルーのビーチは、どこも多くの海水浴客で賑わっている。

 そう、地図に描かれた島。

 この、とある管理世界のアクレイム島は、一年を通して温暖な気候と綺麗な海で有名な、一大リゾート地だった。

 

 

「――って、誰も訪れないような絶海の孤島じゃなかったのぉぉ!?」

 

 

 お宝が隠されているなら、謎の無人島だとばかり思っていたのだ。

 

「ここ10年で観光地化が進んだとか?」

「ううん、もっと前から人気のリゾートだったと思う」

 

 フェイトママは幼い頃テレビで見たのだという。

 

「それにしても、こんな形で海に来ることになるとは思わなかったなぁ……」

「ヴィヴィオ、家族で海に行きたいって言ってたもんね」

「そうだったの?」

「うん、フェイトちゃんと相談してから決めようって話してたんだけど――」

 

 予想外の形で願いが叶ってしまった。

 ただ一つ、問題なのは、

 

「ママたちに群がる男性が多いっ!」

 

 気持ちはわかるけど。

 

「大丈夫、大丈夫、ヴィヴィオにも需要あるんだから」

「それ何の需要っ!? あんまりよろしくない需要だよねぇぇ!

 はぁ、わたしも大人モードになろっかな」

「それは止めた方が……」

「どうして?」

 

 フェイトママが答えてくれる。

 

「今でさえヴィヴィオが――子供がいてくれるから――一定の歯止めになっているのに、ここでヴィヴィオまで大人になったりしたら……」

「あ~」

 

 とんでもない人だかりができる。

 なのは完売どころの騒ぎではない。

 

「まあ、いざとなったらフェイトちゃんを置き去りするという手も……」

「ちょ、なのはぁぁ!?」

「う~ん、なのはママだって十分人気だと思うんだけどなぁ~」

 

 最後は2人して飛んで逃げそうだ。

 

 

     3

 

 

 地図に記されたポイントを掘り返すと、そこには小箱が隠されていた。中には新たなポイントを指し示す地図が入っており……そんな、宝探しゲームのようなことを繰り返してはや半日。

 途中、海の家リ――何とかとかいう怪しい店でラーメンや焼きそばを食べていると、どこかで見たようなオレンジ髪の少女が元気いっぱいに働いていたのだけどスルー。

 わたしは何も見なかった。

 見なかったことにする。

 気のせいだろう。

 再び、宝探しを再開する。

 

「たぶん、この洞窟がラストっぽいね!」

 

 わたしが地図を見ながら指差すと、フェイトママが「う~ん」と唸った。

 

「どうしたの、フェイトちゃん?」

「うん、これってどう考えても宝探しゲームでしょ?」

 

 シスト――なんて呼ばれることもある、地図に書かれたヒントを頼りに、隠された宝物を見つけ出すゲームだ。

 

「だから、私の――アリシアの記憶にあるかと思ったんだけど」

「ないんだ?」

「うん」

 

 そうなると、ますます庭園でもらった地図の謎が深まるのだけど……。

 

「クリス、ライト――」

 

 ウサギ型デバイスの両目がピカリと光り、洞窟内を照らし出す。

 

「え、何そのムダ機能?」

「新しくつけてみました。懐中電灯として使う以外に、空を飛んでスポットライト代わりになるとか、怪談話をする時は、顔を下から照らしてくれたり、色々役立つんだよ?」

「ちょっと便利に思えて――いたっ!」

 

 フェイトママが天井からぶら下がっていた鍾乳石に頭をぶつける。

 優れた魔導師であるフェイトママは、常にフィールドをまとっているので、直接的なケガにはつながらないけど、

 

「ううっ、天井が低い……」

「あはは、こういう狭いところに来ると、ユーノ君、スクライア一族がフェレットモードになる気持ちがわかる――ををを!?」

 

 突然、小さな地震のような揺れが起きたかと思うと、

 

 

 ――ガガンッ!

 

 

 音を立てて床が陥没した。

 足下の感覚が消え、3人仲良く落下する。

 

「まさか、プレシアさんの罠っ!?」

「なのは、たぶん、違う~」

「あわわ、クリス、浮遊制御ぉぉ~っ!」

 

 15メートルは潜っただろうか。

 無傷とはいえ、フェイトママは腰を打ちつけたらしく、

 

「あいたたたた……なのは、ヴィヴィオ、上に戻ろうか?」

 

 水着姿で腰をさする仕草は、滑稽ではあるけれど色っぽい。

 

「ちょっと待ってフェイトちゃん、この道、奥まで続いてるかも……」

「アリシアさんの思し召しだね」

「そ、そうなのかな……?」

「まあまあ、どうせこの洞窟でラストなんだから、少しくらい寄り道したって平気だよ」

 

 渋るフェイトママを説得し、わたしとなのはママは洞窟の奥へ進んでいく――が、それが全ての間違いのもとだったのだ。

 

 

     4

 

 

「「「にょわぁぁ~~~~~~~~っっ!!?」」」

 

 

 人工物ではない。

 自然が生み出した超ロングのウォータースライダー。

 

「コウモリ、コウモリっ!!」

 

「次、カーブ、カーブっ!!」

 

「ひぃぃ、鍾乳石が顔かすめたァァ!?」

 

 

     ●

 

 

「岩来た、岩ッ!」

 

「通路いっぱいのやつが転がってくるぅぅ!?」

 

「インディ・ジョーンズじゃないんだからぁぁ~~っ!!?」

 

 

     ●

 

 

「な、なんで、こんなところに海賊船?」

 

「地底湖からと思ったけど、海に通じてるのかも……」

 

「いつの時代の船かな?」

 

「見て、眼帯をつけた骸骨が!」

 

「金貨の山ぁぁ!?」

 

「聖王教会に寄付、寄付、寄付ぅぅ!!」

 

 

     ●

 

 

「大ダコ来たァァ!」

 

「う、え、ちょ、どうして私ばっかりぃぃ~~っ!?」

 

「流石、触手先生わかってるぅ~っ!」

 

「なのはママ、メラゾーマを!」

 

「合点承知っ! フェイトちゃん今助けるからね、食らえっ――カイザーフェニックスっっ!!」

 

「それメラゾーマじゃないよ!?」

 

「ミッドチルダの魔法でもないからぁ~」

 

 

     5

 

 

 そんな大冒険の末、ヘロヘロになったわたしたち家族は、

 

「や、やっともとの場所に戻ってきた……」

 

 いつの間にか日は傾き、遠くから夕暮れを告げる聖王教会の鐘の音が聞こえる。

 あの洞窟も、結局、奥は外へとつながっており、

 

「ここって、私たちが泊まってるホテルの裏手なんじゃ……」

 

 岩場の向こうに、ホテルの白い外壁が見える。

 意気消沈するわたしとなのはママ。

 

「ほ、ほら2人とも、とにかくここを掘ればいいんだよね? ここ掘れわんわんっ!」

 

 フェイトママの「わんわん」に癒されたわたしとなのはママは、ヒントを頼りに、最後の力を振り絞って砂をかき分けた。

 すると、これまでより大きな――といってもオルゴールくらいだけど――古い宝箱が現れる。

 もちろん罠などない。

 

「開くよ?」

 

 中には、まず一番上に、二つ折りになった紙が1枚。

 そこには幼い子供の文字で、

 

 

『いもうとへ』

 

 

 とだけ書かれていた。

 続けて、

 

「フェイトちゃん、この写真……」

 

 若い頃のプレシアさんと、幼いフェイトママ――ではない、アリシアさんと、猫――リニスさんの2人と1匹が写っている。

 それが10枚ほど入っていた。

 

「みんな、楽しそうだね」

 

 猫のリニスさんはよくわからないけど、きっと、喜んでいるのだろう。

 

「まだ何か入ってるよ?」

 

 それは色とりどりの貝殻。

 中でも、ひと際大きいのは、あまり見たことがない爽やかなミントブルーの貝殻。

 子供なら、間違いなく宝物にするだろう。

 

「これ、アリシアさんのリボンの色に似てるね」

 

 夢で見たのと同じ。

 フェイトママが呟く。

 

「そっか……きっと、これ、アリシアが妹が欲しいって母さんに話したあとだ……。

 たまの休みで、母さんがアリシアを喜ばせようと、2人でこのリゾート地に遊びに来て……。

 たぶん、アリシアは自分の楽しかった思い出を、妹にも分けてあげたいと思って宝箱に詰めて……。

 いつか、私と一緒に宝探しゲームをしようと隠したんだ……」

「フェイトちゃんの記憶になかったのは、アリシアという名前を思い出すキッカケにならないよう、消されてたからなんだね――」

 

 アリシアさんが妹を欲しがった時の思い出と共に。

 

「あ……フェイトママ、まだ何か入ってるよ?」

 

 わたしはお札くらいの紙切れを取り出し、フェイトママに手渡した。

 

「メモ書き?」

「ううん、違うみたい……」

 

 それはアリシアさんの文字ではない。

 もっと大人の、整った文字で、

 

 

『お母さんとお姉ちゃんが何でも言うことを聞く券』

 

 

 ――何でも!?

 

 なんて言える雰囲気じゃない。

 きっとプレシアさんのことだ。

 当時、子供だったアリシアさんに『ママも宝箱に宝物を入れて!』と頼まれたけれど、突然のことに思いつかず、かつ、たいした物も持ち歩いておらず、仕方なく、こんな券を書き、入れたのだろう。

 夢で散々会話したおかげで、プレシアさんの困り顔が目に浮かぶようだ。

 

 

「ねぇ、なのは……もし、昔これを持っていたら、もっと、仲良くできたのかな……?」

 

 

 ――母さんと。

 

 

 そんなフェイトママの肩を、なのはママが優しく抱き寄せた。

 

 

 

 




一応これでフェイト三部作(?)は終了。
たぶん、誰にも気づかれていないと思うので書いておくと、今回の最初の方でフェイトが幼い頃に島のことをテレビで見た――というのは、アリシアが見た記憶だったりします。
アリシアとプレシアがビーチリゾート島を訪れたという伏線。

そういえば「結局のところ、アリシアとプレシアは生きてるの? 亡くなってるの?」みたいなことを聞かれました。
どこぞの祥子様みたいに「ご想像にお任せします」でもいいかなと思ったんですが「自分だったら知りたいかな」とも思ったので、一応ちょこっと書きます。

上手い具合に、

ウサギヴィヴィオ(クリスのきぐるみ)・質問役
アリシアおねえさん(ちっちゃい)・進行役
プレシア・テスタロッサ(白衣)・解説役

がそろっているので「3・2・1 どっか~ん!」とやれそうな気が(笑)。
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