高町家のリビングでヴィヴィオとなのは(大)が談笑していると、突然大きな震動に襲われる。
「ナニゴト!?」
そこに現れたのはPSP用ゲーム『GOD』後の〝なのは(小)〟と、劇場版『2nd A's』後の〝なのは(小)〟で……。
ある休日の昼前。わたしとなのはママが楽しくリビングで談笑していると、その事件は起こった。
――ガク、ガク、ガク、ドシ~~ン!
突然の震動で、わたしはロングソファごと後ろに引っ繰り返った。天井が見える。
「ナニゴト――――ッ!? (みんな知らないだろうけど)まるで、藤子不二雄先生の名作『タイムパトロールぼん』で、主人公がタイムボートの点検整備を怠って、時間が巻き戻っちゃった時みたいな震動はぁぁ!?」
叫んだ瞬間、私の眼前で映像通信が開いた。
赤毛で三つ編みのお姉さんが映る。
『ありがとうございます、ヴィヴィオさん。ある意味、完璧かつ適切で、ほとんど正解っぽい解説でした』
「アミタさん!? ……って、うわ、頭がアフロになってますよ!?」
三つ編みは無事で、耳から上の辺りがモジャモジャとボンバーしている。
『はい。お恥ずかしい話ですが、現在わたしとキリエ、それに紫天一家、全員アフロです』
「あ~、また何か実験に失敗して爆発したとか、そういう系のオチですか?」
『はい。誠に遺憾なのですがその通りです。時間遡行システムに、レヴィが遺跡で拾ってきたパーツを組みこんでいたところトラブルが発生しまして、そちらの世界にも影響が……』
「またですか……。だけど、去年みたいにわたしとアインハルトさんが過去に飛ばされたー、みたいなことにはなってないみたいですけど、今度は一体何が?」
映像通信で会話しつつ、とりあえずソファから起き上がろうとすると、わたしの横でもぞもぞ動く謎の生物……いや、見覚えのあるツインテール少女が……って、
「な、なのはママぁ~!? もう、こんな時にまた子供モードなんかして~、だいたい、さっきまで向かいのソファーに座ってたでしょ! そうやっていつもみんなのこと驚かそうとするから、ヴィータさんに『お前は子供んときから変わんねーな』みたいに言われるんだよ……って、なのはママ?」
なんだろう? この驚きに満ちた表情は?
「まさか、先週のザッフィーみたいに記憶喪失オチとか?」
小さいなのはママは目をパチクリして、
「え、もしかしてヴィヴィオちゃんなの!?」
「ヴィヴィオ……ちゃん?」
「うん、そうだよ! ヴィヴィオちゃんだよね。久しぶり、高町なのはだよ。元気してた?」
1か月ぶりに再会した友人のように抱きついてくる。
どういうことぉぉ――と思ったら、
「ひゃああああああああああ!?」
今度は、テーブルを挟んで向こう側のソファ――やっぱり引っ繰り返っている――から、大きな悲鳴が聞こえてきた。
「あ、あれ? 今のって目の前のなのはママの声じゃなくて、いつものなのはママの声!?」
「もうヴィヴィオ、変身魔法で昔のわたしの姿になって驚かそうとするなんて。そんなことするからフェイトちゃんがいつも腰を抜かして……って、ヴィヴィオ?」
何だか微妙にデジャヴった会話。
「なのはママ、わたしはこっちだよ?」
「へ?」
ソファを起こしたなのはママの隣には、やっぱりなのはママがいて、わたしの隣にはもうひとりのなのはママがいて……。
「「「「ナニコレエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェ――――――ッッ!!?」」」」
ダメだワケガワカラナイヨ。
「オーケー、オーケー、とりあえず整理してみようか?」
現在、高町家のリビングには、
●高町なのは(大人)×1
●高町なのは(子供・9歳くらい)×2
●わたし――高町ヴィヴィオ(子供)×1
の、合計4人がいる。
「私が2人じゃなくて、私を含めて3人?」
何だかもうなのはママまで混乱している。
映像通信から、アミタさんの申し訳なさそうな音声が聞こえてきた。
『まあ、そういうわけでして……』
「そういうことって、どーいうこと!?」
『ディアーチェによると、おそらくこれまで私たちと接触を持ったことのある別次元のなのはさんが、全て同一人物と認識されてしまい、誤って最近よくお世話になっているそちら――新暦80年の世界にまとめて転移してしまった、みたいな感じらしいんですけど……。詳しくは現在調査中なので、詳細がわかり次第連絡します……って、どうしたんですかシュテル、そんな前のめりになって!』
『た、高町なのはが3人ですか……わ、私もそちらの世界にお邪魔させていただきた――』
『シュテるん、鼻血、鼻血ぃぃ――っ!』
『ぜひお手合わせをぉぉ――』
ブチン――と音がして通信が切れた。
「……ふう。えっと、まあ、そういうわけらしいんで、お二人(子供なのは×2)ともアミタさんたちと面識は?」
「うん、あるよ!」
「うん、ある、けど……」
「私だってあるよ!」
「うん、なのはママ(大)は答えなくていいからね~。記憶封鎖が解かれてるから、事情は何となく理解していると思うんだけど、一応、お互いに自己紹介しときましょうか? まずは、わたしの隣にいるなのはさんからお願いしまーす――」
「あ、はーい。聖祥大附属小学校3年生、高町なのはです。アミタさんとキリエさんと会ったのは『砕け得ぬ闇事件』の時で、ヴィヴィオちゃんとも会ってるんだよ?」
「あ~、『GOD』の時のなのはママだ!」
久しぶり~、ともふもふし合う。
そして、今度はもうひとりのなのはママ(小)が話し出す。
「えっと、私はみなさんとは初めましてだと思うんですが、私立聖祥大附属小学校3年生、高町なのはです。アミタさんやキリエさんたちに会ったのは、『闇の書事件』の最中で、今は事件が解決した後ですね」
ん~、もしかして……。
「あの、グレアム提督や、リーゼロッテさんやリーゼアリアさんって名前に聞き覚えはありますか?」
「ううん、ないけど……」
「やっぱり! これって劇場版のなのはママだぁぁ――っ!!」
「げ、劇場版っ?」
「いえいえ、こっちの話なんであまり気にしなくて大丈夫ですよ~。そうなると……そっか『GODサウンドステージM』の時かぁ~。時期的にはこっちのなのはさんと一緒くらいだし、ある意味次元を越えた〝双子〟みたいな感じですね~」
双子かあ――と、なのはママ(小)は2人で手を取り合った。まるで〝鏡〟。リフレクションのよう……って、あ。
「まだ『Reflection』前ってことなんだ……」
「リフレクション?」
「いえいえいえ、それもこっちの話なんで~」
ひょっとして映画『魔法少女リリカルなのは Reflection』の時、なのはママとフェイトママがシュテルやレヴィに会っても『自分に似ている』的な台詞が一切なかったのは、かつて一度会ったことを無意識に覚えていたから――とか??
それはそれとして、いくら後で記憶封鎖がかかるとはいえ、何がきっかけで思い出すかわからないので、映画関連の事情にはおいそれと触れないよう注意しないと……。
それにしても……。
2人の高町なのは(小)が、学校やフェイトママについて楽しそうに話している姿は、どちらがどちらか判別不能である。
常時バリアジャケットでも着てもらわないダメかなあ――などと思っていたら、
「あ、キタコレ! 違い発見! 私服だとリボンの色がGODなのはママ(小)が〝白〟で、映画版なのはママ(小)が〝ピンク〟。ついでに、ポニーテールなのが、なのはママ(大)だね!」
「そんな(大)とか(小)とか、どこぞの未来人じゃないんだから……って、まあ未来人だから概ね間違ってないんだけど」
「「ねえ、さっきから気になってたんだけど……」」
おお、なのはママ(小)がシンクロしてる。
「「もしかして、この人が、未来の私なのぉぉ――っ!?」」
2人は「きゃー背が高い!」「美人っ!」「胸が大きい!」「カッコイイ!」などなど、お世辞でも使わないような、あらん限りの美辞麗句を並べていく……というか、これって自画自賛だよねぇぇ!?
「そうだ! せっかくの機会だったのにフェイトママがいなくてごめんね。なのはママの小さい頃ならきっと大人のフェイトママにも会いたかったよね。今日は休日だけど出勤だから――」
「「フェイト……ママ!?」」
「うん、そうだけど?」
何かおかしかっただろうか?
GODなのはママが呟いた。
「前に会った時、ヴィヴィオちゃんが未来の私の子供だろうなあとは薄々気づいていたんだけど……まさか、わたしとフェイトちゃんの子供だったなんてぇぇ――っ!?」
「流石はミッドチルダの科学力……そういうことも可能なんだ……」
2人のなのはママ(小)は、手をつないだままキャーキャー騒いでいる。
「ヴィヴィオちゃんの金髪はフェイトちゃん譲りなんだね!」
「声がユーノ君っぽかったから、てっきり私とユーノ君の子供かと――」
色々と認識にズレが生じているようなので、わたしとなのはママ(大)は、色々あって養子になったのだと説明する。
「「そうなんだ~」」
「そんなガッカリしなくても!?」
「ちなみに、お姉ちゃんもまだ独身だよー」
2人は「そういうことなら」と納得した。
流石はなのはママ同士。よくわからないけど、自分の承知するツボは心得ているらしい。
こうして、昼食をなのはママ(大)の手作りで和気あいあいと過ごした後は、
「やっぱりこうなったか……」
訓練所で模擬戦である。
そりゃシュテルが参加したがるはずだ。こんな状況、彼女にとっては〝精神と時の部屋〟みたいなものだろう。理想的な修行場だ。
なのはママ(大) VS なのはママ(小)×2 ――なんて夢のバトル。しっかり撮影して後でシュテルに送ってあげよう。
とはいえ、せっかくなので、
「かつてはラスボスとして君臨したものの敗北、しかし『ViVid』ラストでついになのはママに雪辱を果たしたわたし、高町ヴィヴィオも参戦させてもらいますよぉぉ――っ!」
「「「じゃあヴィヴィオ、私たちとやってみようか!」」」
なのはママ×3 VS わたし。
ん、んん~?
先程まで戦っていた3人の桜色の魔力が一か所に収束していく。
「「「全力全開! スターライト……ブレイカ――――ッ!!!」」」
トリプル(スターライト)ブレイカー。
あ、これ死んだな~。
わたしがコンティニューする気力と魔力がないほどプスプス黒焦げになった頃、アミタさんからようやく連絡が入った。
『みなさん、お待たせしてしまってすみません。ようやく復旧の目処がつきました。ただ、もう少し安全確認を行いたいので、帰るのは明日の朝くらいになってもよろしいでしょうか?』
「「「もちろんっ!」」」
と、元気にトリプルなのはが答えた。
『あ、そ、そうですか、ありがとうございます……』
何だかわけがわからないパワーを前に、流石のお姉ちゃんパワーもたじたじである。
『は、早く私も参戦を……』
『おとなしくせんかシュテル!』
映像通信の向こうで爆発音が聞こえた。いつもは冷静なシュテルさんが大変なことになっている。
なのはママ3人も大概だけど、流石にここまでの事態にはならないなあ……と思っていたら、
●
夜。高町家。
ただいま~、という水樹奈々ボイスを出迎えたのは、
「「「お帰り、フェイトちゃん!!!」」」
「お帰りなさ~い、フェイトママ」
フェイトママの動きが止まり、手にした荷物を落とした。ギギギ……と、油の切れたブリキ人形のようにわたしに顔を向けた。
「ゔぃ、ゔぃ、ヴィヴィオ! うちはいつから〝なのはランド〟になったの!?」
「なってないよ!?」
てか、なのはランドってなに!?
「か、カメラ、カメラ……」
「いや、メガネ、メガネじゃないんだから……」
その後もフェイトママのボルテージはMAX。
いや、もう、こんなテンション高いフェイトママは高町家の子になってから初めて見ました。もう凄いから、一度みなさんにも見てもらいたいくらいです。
そして、お風呂ではっちゃけた後は、いつもなのはママ(大)と一緒に寝ているはずのベッドで、なのはママ(小)の2人を、両腕に抱きしめて眠っています。
『え、うん……なのは……でへへ……』
そんなフェイトママの姿を、わたしとなのはママ(大)はベッド脇で苦笑しつつ眺めていた。
「なんかもう幸せそうな寝顔だね~」
世間的なイメージが崩れそうだけど。
「あはは、私がちょっと苦しそうだけどね」
「そういえば、なのはママは今日どこで寝るの?」
「ん~、じゃ、今日は久しぶりにヴィヴィオの部屋で2人で寝ようか?」
「うん!」
こんなことでもなければ、最近では一緒に眠る機会もなかなかない。
「――っと、その前に」
フェイトママの毛布をはがすと――ちょっとみっともないけど――よだれを垂らしながら、なのはママ(小)×2を抱きしめている姿を全身撮影。
「こんな幸せそうな寝顔、エリオとキャロにも教えてあげなくっちゃ」
――はい、送信。
一応、自分の覚えている中で、公式(サウンドステージなど)にエルトリア(GOD版)と関わった〝なのは〟は、今回の3パターンなのですが、他にあったらすみません。勉強不足です。
夏の映画で、なのはたちが王様、シュテル、レヴィに会った時、自分たちに似ている発言がなかったのは、〝記憶封鎖をかけられているものの(サウンドステージで)会ったことがあるから無意識に受け入れた〟と考えると、意外と説明がついちゃったりします。
まあ、実際は尺の都合か、次回の映画であるのでしょうが……。
さて来週は……。
ミッドの空に雷鳴が届く。
エリオとキャロに恥ずかしい画像を送ったことを知ったフェイトママの怒りがMAX!!
ナカジマジムに逃げこんだヴィヴィオは、バリケードを築き、頼りになる会長や先輩と立て籠もるのだけど……。
「こうなったら〝謎のヒロインA〟さんを召喚するしかない!!」
次回『進撃のフェイト』
で、リリカルマジカルがんばります!