エリオとキャロに恥ずかしい画像を送ったことを知ったフェイトママの怒りがMAX!!
ナカジマジムに逃げこんだヴィヴィオは、バリケードを築き、頼りになる会長や先輩と立て籠もるのだけど……??
その日、ミッドの空に暗雲が垂れこめる……というかすでに雷鳴が轟き、グレートマジンガーのサンダーブレークみたいな稲妻が、いくつも地上に向かって降り注いでいた。
高町家鉄の掟の1つに『フェイトちゃんは絶対に怒らせない』というものがあるのだけど、先週恥ずかしい写真をエリオとキャロに送ったことで、怒りがMAX!!
いつも「なのはママは厳しすぎです」と言って甘やかしてくれるフェイトママが……あのフェイトママが、本気でわたしを殺……じゃなかったお仕置き(ホームラン)しようと襲ってきたのである。
そんなわけで、わたしにとっては最後の砦――ナカジマジムに逃げこんだというわけなのだけど……。
「ヴィヴィオ~~~~~~~~~~~ッ! 無駄な抵抗はやめておとなしく出てきなさ~~い! 田舎のお母さんも泣いてるぞ~~っ!」
「田舎のお母さんって誰!?」
「なのはから聞きました。ヴィヴィオが画像を送信したってぇぇ――っ!」
わたしはジムの入口に積み上げたバリケードに身を隠しながら、白いマントに黒いバリアジャケットをまとう執務官を見つめた。
その手にはバルディッシュの進化形態。第5世代デバイスの実験機でもあるライオットブレードⅡが握られていた。
「アレが噂のマジンガーブレードか……」
「違うだろ! というか、どうしてうちのジムに逃げてくるんだよっ!?」
「あ、ノーヴェ」
「あ、ノーヴェじゃない! 逃げるなら聖王教会とか、もっとお前を安全に匿ってくれそうな場所がいくらでもあるだろ!? ここはもう昔と違って一般人の利用者も多くてだな――」
「ノーヴェ、このジムはわたしにとって第2の我が家みたいなものだから……」
「お、おう……」
かつてのナンバーズの一員は、満更でもない様子で頬を緩めた。
すると、わたしたちに差し入れの缶ジュースを持ってきてくれたコロナが言う。
「犯人は土地勘のある場所に逃げこむ――って言うよね?」
「お、おう……?」
「別に犯人とかじゃないからね! それにいざとなったら頼りになるノーヴェが、きっとフェイトママを止めてくれると信じてるから。ね、ノーヴェ?」
「……いや、無理だから。つーか無理だろ。あの人もアレだぞ? なのはさんと同レベルってことは、やっぱり世界人口全部で〝ケンカ強い順〟に並べたら、かなり上位に来る人だぞ!?」
「ヴィクターさんが〝雷帝〟だとしたら、フェイトさんは〝雷神〟って感じだよね?」
なるほど――と、わたしは隣で巻きこまれている(巻きこんだともいう)アインハルトさんに向かって言った。
「雷帝より強い雷神だとしたら、今度のヴィクターさん戦対策のいいスパーリング相手になると思いませんか?」
「な、なるほど! 確かにそうかもしれませんね」
アインハルトさんはひとり立ち上がると、ひとりバリケードを出て武装形態に変身。ひとりで雷神執務官の前に立ち塞がった。
ノーヴェが言う。
「ヴィヴィオ、お前鬼だろ?」
「いやいや、わたしの大好きな尊敬するアインハルトさんなら、フェイトママにだって一矢報いてくれるはず……」
「あ、一矢なんだ……」
「フェイトさん、一槍、お願いいたします!」
そう叫んで、我らが覇王さんは執務官に向かって正面から突っこんだ。アインハルトさんもわかっているのだろう。様子見できるほど楽な戦いではない。初撃から全力全開で行かなければ勝てない相手だと……。
「はぁぁ……ッ! 覇お、はぶぅぅ~~~~っ!」
一撃も与えることなく『ラブひな』や『ネギま』みたいな感じですっ飛んでいく。ノーヴェが頭を抱えた。
「うわぁぁ~~っ! うちの絶対エースがぁぁ!?」
「やっぱりノーヴェが出るしか!」
「絶対無理っ!」
ナカジマジムの関羽雲長ポジ(ちなみに、わたしが劉備でリオが張飛である)コロナが冷静に解説する。
「アインハルトさんがまったく反応できないなんて……。もしかしてフェイトさん、ヴィヴィオよりずっと速いんじゃないかな?」
「えー、でも、うん、そうなんだろうなあ。ソニックムーブとかエリオも使ってたし……」
などと話していたら、ひとり携帯ゲーム機で遊んでいたリオが、ようやく一段落したらしく顔を上げた。
「どしたの3人とも? ていうか、いつの間にかアインハルトさんがいないし」
どこいったのアインハルトさん――などとキョロキョロしている。ふむ……。
「実はね、リオって炎と電気の変換資質があるでしょ? それで、リオならフェイトママやエリオみたいにソニックムーブを上手く扱えるんじゃないかって」
「え、ナニソレ!? あたしのパワーアップ回ってこと!?」
「うん。わたしより速くなれるかもね」
よし――と、さっきのアインハルトさんの惨状を見ていないリオは、さっそく大人モードに変身。フェイトママに手を振りながら駆け寄っていく。
「フェイトさ~ん! あたしにソニックムーブを教えて――ぷるあっ!」
やっぱり『ラブひな』とか『ネギま』みたいな感じで一撃KOされていた。ノーヴェが白い目でわたしを見る。
「ヴィヴィオ、やっぱお前鬼だろ?」
慌ててコロナが救出に向かう。
「さっきは雷帝より雷神が強いって言ったけど、こうなったらもう、同属性の雷帝さんに頼むしかないかも……」
さっそく通信を送ると、ヴィクトーリアお嬢様が空間ウィンドウに映った。
『嫌よ』
隣にはいつもの――黒ジャージ姿の――ジークさんもいて、
『映像見とったけど、流石に無理やろ。あんな死神みたいな人には勝てへんって』
チャンピオンでも死神相手には無理かあ……とはいえ、
「わたしだってフリッカージャブ使えますけどね!」
「お前は『はじめの一歩』読みすぎだろ!?」
こうなったら仕方ない……。
「こんなこともあろうかと……こんなこともあろうかと……あらかじめ呼んでおいた秘密兵器に登場してもらうしかないようだね!」
「呼んであったのなら最初から出せよ!?」
チッチッチ。
「アインハルトさんとリオの尊い生け贄……じゃなかったアドバンス召喚により、〝謎のヒロインA〟さんを召喚だぁぁ!」
ジムの屋上から「とうっ!」と飛び降りてくるのは、水色のジャージに短パン、マフラー。頭にはエメラルドグリーンの野球帽を被った謎の金髪美少女。髪型こそポニテにしているものの、ぶっちゃけ昔のフェイトママにそっくりな容姿だ。
『INNOCENT』世界ではないので、当然デバイス〝フォーチュンドロップ〟はない。代わりにその手に握られているのは、どっかで見たような聖剣。一回転して地上に降り立つ。
「お姉ちゃんとしては、大事な姪っ子に襲いかかる妹を止めなくちゃいけないからね。ママの研究室から勝手に持ち出してきたこの剣の力で、姉より優れた妹などいないということを証明させてもらうよ!」
お~。
「いつになく頼もしい!」
アリシ……じゃなかった、謎のヒロインAさんが小柄な体格を活かし疾走する。〝出来のいい妹〟に向けて聖剣を構えた。
「――ミンナニハナイショダヨ! 約束されてない勝利の剣(エクスカリ〝パ〟ー)!!」
「それダメな方のヤツだぁぁ――っ!?」
当然フェイトママに勝てるはずもなく「ぷおっ」とか変な声を発して吹っ飛んでいった。見境のない金の閃光さんは、例え大好きなお姉ちゃんであっても容赦しないということ。つまり、わたしの身もいよいよ本気で危ないというわけだ。
「おい、これもうヴィヴィオが怒られるまで終わらないんじゃないか?」
「ふっ、大丈夫だよノーヴェ。次こそがわたしの本命だからね!」
あれ、私かませだったのぉぉ――とアリシアさんが叫んでいるが問題なし。
わたしはジムの入口に体を向けると、背筋を伸ばし、45度ほど腰を曲げ深々と頭を下げた。最敬礼である。
「先生、お願いしますっ!」
現れたのは、炎のように長いポニーテール。ヴォルケンリッターの将にして剣の騎士。
「シグナム姐さんじゃねーか!?」
何はともあれ、中の人(清水香里さん)ご結婚おめでとうございます!
「まさか、こんな形でテスタロッサと戦うことになるとはな」
「やめときますか?」
いや――シグナムさんがニヤリと笑う。
「あいつも最近はめっきり丸くなったからな、こんな機会でもなければ本気でやり合うこともないだろうさ。むしろ血が騒ぐ」
流石は戦闘狂。
「行くぞテスタロッサ!」
「いくらシグナムでも、今日は死んでもらいます!」
今〝死〟って言った、〝死〟ってぇぇ!?
ナカジマジムの前で炎と雷が激突する。
炎が渦を巻き、稲妻がほとばしる。町中でベギラゴンとギガデインを同時に唱えちゃったような光景である。大惨事。
「うわぁぁ~~、あたしのジムがあああああぁぁ~~~~っ!?」
頭を抱えたノーヴェは置いといて、炎と雷かあ……。わたしは目的の人物を捜す。ちょうとコロナに抱えられて治療魔法をかけられているところだった。そろそろいいだろう。
「リオ、炎と雷のスキルを習得するいい機会だよ! ほら、強敵とのバトルこそ高レベルの技を閃くチャンスっていうでしょ!」
「どこのロマサガシリーズ!?」
「ヴィヴィオの閃き道場。これがわたしからリオへのクリスマスプレゼント!」
「いらないよそんなの!?」
「ほらほら、仮面ライダーWみたいに体の左右で能力が違うとか、ちょっとカッコイイよ?」
「イヤ~、Wもいいけど、どうせなら最新のビルドにして~」
「ビルドはわたし向きだから~」
わからない人は『ラビットタンクフォーム』で検索してね。
結局、2人の勝負はつかず、最後はなのはママとはやてさんを呼んで無事解決。
「って、あたしのジムどーすんだよぉぉ!?」
「大丈夫だってノーヴェ、ほらよく見て」
「あ、あれ? 壊れてない?」
すると、フェイトママを諭していたなのはママがわたしの方を見て「あれ~、ユーノ君?」と声を上げた。
こっそり会議を抜け出してもらったフェレット司書長が、かつてのようになのはママの左肩に駆け上がった。
「大丈夫、結界は展開完了済みだったからね。たぶん壊れないと思ったけど、2人とも昔より強くなってたからなあ……」
「おいおい、無限書庫のユーノ司書長まで呼んであったのかよ!? ヴィヴィオ……おまっ、そんな根回ししてる暇があったら、さっさとフェイトさんに謝った方が早かったんじゃないか?」
「あ」
言われてみると……というか、言われなくてもそんな気がする。
むむむ……。
やっぱりわたしが悪いんだろうなあ~。
これ以上フェイトママが悲しむのも見たくないし……。
わたしは〝死〟を覚悟してバリケードを飛び出すと、フェイトママの前で平身低頭に謝った。何だかもうボロボロになったアインハルトさんと、「しかたねーな」と口にしたノーヴェも一緒になって頭を下げてくれた。やはり持つべきものは立派な先輩と会長である。2人とも愛してるよ~。
「ごめんなさいフェイトママ! あまりに幸せそうな寝顔だったから、エリオとキャロにも教えてあげたくて」
すでに、いつものような冷静さを取り戻したフェイトママもバツが悪そうに、
「……うん、私もちょっと大人げなかったかなと反省してます」
そんなことを話していると、回復した謎のヒロインAさんもやってきた。
「せっかく、今日こそお姉ちゃんの威厳を見せようと張り切ってきたのに~」
「ごめんねアリシア」
妹をグーでぽかぽか叩く姉。やっぱりどっちが姉でどっちが妹かわからないなあ……。などと思っていると、激闘ですっかりポニテの解けた剣の騎士さんとはやてさんも集まってきた。
「経緯はどうあれ、私は久しぶりに本気のお前と戦えてうれしかったがな。――ヴィヴィオ、またこいつを怒らせてやってくれ」
「ちょ、シグナム!?」
「たまにはそれもええかもな~」
「はやてまで!?」
「あはは……はあ、ホント、なのはママも〝止めなかったから〟、フェイトママに確認せずに送信しちゃったんだよね。ごめんなさい」
すると、フェイトママの動きがピタリと止まった。
「あ、あれ……なのはも止めなかったの?」
そうだよね――と聞こうとすると、いつの間にかなのはママの姿が見えない。
「さ、さーて、ユーノ君。たまには昔みたいに2人で空を飛ぼうか?」
「え、ちょ……」
飛び立つ白いエース・オブ・エースと使い魔。
再び雷神降臨。フェイトママの全身に、超サイヤ人2みたいなスパークが走った。なのはママたちに向かって大剣――ライオットザンバーⅡの剣先を向ける。
「逃がすか、プラズマザンバァァ――ッッ!!」
「「ぎにゃああああああああああ!!」」
ああ~。ドーンと打ち上げ花火みたいな音がして、1人と1匹が撃墜された。
まあ、あの2人なら大丈夫かぁ……。
ちなみに、後日こっそり撮影しといた〝フェイト執務官VSシグナム一尉〟の決戦を管理局に送ってみたところ、無事、高ランク魔導師のための教導ビデオとして採用されることに。
フェイトママの黒歴史がまた1ページ……。
銀河の歴史がまた1ページ……最近、昔の漫画や小説がリメイクされてアニメ化することが多いので『銀河英雄伝説』もやらないかな~、と思っていたら来年4月から放映だそうで……。これって、ラストまで描いてくれるのかなあ……? それともアルスラーンみたいに中途半端に終わるのかなあ……?
次回予告では是非また「銀河の歴史がまた1ページ」と言って欲しいものです。
そんなわけで、来週はいい加減クリスマスシーズンということで……。
今年のクリスマス・イブ。
ヴィヴィオ、なのは、フェイト、エリオ、キャロの5人で祝っていたところ、ルーテシアからもらったお手製のオカルト雑誌『月刊ルー』に、『無人世界のベルカ上空で、謎のサンタクロースを見た!』という記事が。しかも、そのサンタさん『小柄で、赤髪で、少女で、銀のハンマー』を手にしているという。
フェイト一家を残し、なのはとヴィヴィオは早速サンタクロースを捕まえに向かうのだけど……??
次回『サンタクロースを捕まえろ! 前編』
で、リリカルマジカルがんばります!