ヴィヴィオ、なのは、フェイト、エリオ、キャロの5人で祝っていたところ、ルーテシアからもらったお手製のオカルト雑誌『月刊ルー』に、『無人世界のベルカ上空で、謎のサンタクロースを見た!』という記事が。しかも、そのサンタさん『小柄で、赤髪で、少女で、銀のハンマー』を手にしているという。
フェイト一家を残し、なのはとヴィヴィオは早速サンタクロースを捕まえに向かうのだけど……??
1
ミッドチルダには〝クリスマス〟がない――と思っている方も多い。けれどそれは違います。普通に存在しています。
「なぜ?」
と問われたら「外国から日本にクリスマスの習慣が伝わったように、地球からミッドにも伝わったんだよ」と答えます。
なのはママたち、少し前ならグレアム提督、もっと昔ならナカジマ家の祖先。ミッドだけじゃない、古代ベルカと地球にも繋がりがあり、遥か昔から他の次元世界同様に、地球の風習も多く渡ってきていた――と、現在では多くの歴史学者が認めるところです。
その辺りはユーノ司書長が詳しいので、知りたい方は一度尋ねてみるといいかも。忙しくなければ、きっと快く答えてくれるはずです。
そして、クリスマスやサンタクロースのように地球で広まった人気のイベントごとは、どうやらこちらの世界でも広まるのが早いらしく、古代ベルカ時代(数百年前)には、もうすでに一部の地域で行われていたことが文献から確認できます。
ひょっとしたらオリヴィエやクラウス陛下も祝っていたかも。アインハルトさん、あるいは1000年前のベルカの王だったイクスに聞けば、その辺りの事情も詳しくわかるかもしれませんね。
クリスマスではなく聖ニコラウスの命日ではあるけれど、14世紀の地球にはもう、子供たちにプレゼントを配る風習があったのだから。
当然、当時の〝彼女〟が知る機会もあったのでしょう……。
2
というわけで、今年のクリスマスは、わたし、なのはママ、フェイトママ、エリオ、キャロの5人家族でパーティー。
プレゼント交換や食事も終わり、リビングにいると、エリオがわたしに声をかけてきた。
「ヴィヴィオ、そのプレゼントは誰から?」
「この本? ルールーからだよ。月刊『ルー』の創刊号。ルールーが集めた情報をまとめたオカルト雑誌なんだって」
「ルーちゃん、また怪し気なものを~」
とはキャロ。
聞いていたなのはママとフェイトママも苦笑している。
「あの子も多才だね~。はやてちゃんの手伝いもしてるんだっけ?」
「うん。どうせなら執務官補佐をやってくれれば、私やティアナも楽になるんだけど」
わたしはページをパラパラめくる。
「でも、この本結構面白いよ? 例えばこの記事なんだけど――『無限書庫で謎の半人半フェレットを見た!』とか」
「いやいやいや」
「顔がフェレットで体が人間なんだって。しかもほら、憶測だけで終わらず、しっかりインタビュー記事まで載ってるし……『昔の癖で~』とのことですが、なのはママ?」
「まあ、中途半端に変身解除しちゃったんじゃないかなと。ほら、私(の中の人)がグルグルで鍋焼き姫を演じてた時、アヒルマンっていたでしょ、あんな感じで」
ああ~。ちょっと納得。
「じゃあ、こっちの記事なんてどう? 『無人世界のベルカ上空で、謎のサンタクロースを見た!』とか」
「ナニソレ? もしかしてルーテシアが捕まえたの?」
「ううん。それがね、毎年クリスマスの夜にだけ現れるらしくて、この雑誌を作ってる時には、捜したけどまだ会えなかったんだって」
「なにそのクリスマス限定イベントキャラ」
「ちなみにルールーの記事によると、このサンタクロース、ずっと昔、それこそ古代ベルカ時代から目撃情報が残ってるんだって」
「へえ……古代ベルカ時代から……」
「うん。多数の目撃情報を総合すると、そのサンタさんの外見は、赤髪の小柄で可愛らしい少女の姿をしていて、赤いスカートのサンタ衣装をまとい、手にはシルバーのハンマーを持って……」
「古代ベルカで赤髪で小さくてハンマー……」
「それって……」
「うん……」
「1人しかいないんじゃ……」
少しお酒に酔っていたのだろう。なのはママが赤ら顔で勢いよく立ち上がった。
「よしヴィヴィオ、ヴィー……じゃなかった、そのサンタさんを今から捕まえに行くよっ!」
「えーっ! 今から!?」
「そう、今から。いくら無人世界とはいえ、時空管理局の一員として、そんな不審者を野放しにはしておけないからね!」
「もう、なのは!」
「エリオ、キャロ、今年のクリスマスはフェイトちゃんと3人、家族水入らずで過ごしてね。私とヴィヴィオはちょっとベルカに行ってくるから」
そんなコンビニ行ってくるみたいに――とも思ったけれど、それはそれで楽しそうなので、
「ま、いっか。じゃ、3人とも行ってくるね。よい聖夜を~」
こうしてわたしとなのはママは、現在無人世界になっている古代ベルカの地へ向かったのだけど……その時は、まさかこんな大事になるとは思いもしなかったのだ。
3
時刻はすでに真夜中に近く、間もなく日付が変わろうとしている。頭上に浮かぶ白い月。満天の聖夜に星々が輝いていた。
サーチャーを飛ばし広域を調査すると、目的の相手はすぐに見つかった。出会うには日付や時間帯が重要だったのだろう。
「ルールーの記事通りだね」
赤いサンタ帽子にサンタ服。背中には大きな白い袋を担いでいる。
そして、髪型こそ三つ編みではなく真っ直ぐに伸ばしたストレートだけど、サンタさんの外見は紛れもなくヴィータさんその人だった。
上空から無言で地上を見下ろしている。
植物も生えない荒野と化したベルカには、人っ子一人住んでいないのだけど……。一体何を探しているのだろうか?
しばらくすると、サンタヴィータさんはトナカイ(ザフィーラじゃない!)の引くソリに乗って、ベルカの空を駆けていった。
わたしとなのはママはいったん地上に下りると、岩場の影で感想を述べ合った。
「やっぱり、どこからどう見てもヴィータちゃんだったよねえ……何してたんだろう?」
「はやてさんちに連絡してみたらどう?」
だね――と答えて、なのはママは早速映像通信を送る。エプロン姿の八神捜査指令が映った。
『メリークリスマスっ! なのはちゃん! ヴィヴィオ!』
「メリークリスマス、はやてちゃん! こんな夜遅くにゴメンね。ところでヴィータちゃんなんだけど、今そっちにいる?」
『あー、おるでー。代わろか?』
「「あれぇぇっ!!?」」
わたしとなのはママは顔を見合わせた。
「もしかしてヴィータさん、空間転移したとか?」
「いくらヴィータちゃんでも、そんな長距離は……」
すると、八神家から聞き慣れた〝はすっぱボイス〟が聞こえてきた。
『あ? なんだなのはかよ』
空間ウィンドウに映ったのは、赤いサンタクロースの格好をしたヴィータさん。
「やっぱり犯人はヴィータちゃんだったか!」
『は? 犯人って何だよっ!?』
「ヴィータちゃん、ついさっきまでベルカの空をトナカイのソリに乗って飛んでたでしょ」
『あたしが? 馬鹿言うな、あたしはずっとここにいたんだぞ!?』
「またまた~」
ほんまやで――とはやてさんが擁護する。
『ヴィータ、今年はな、ミウラや道場の子供たちにみんなで手分けしてプレゼントを配るんだ~、とか気合入れとってな。ほんでこの可愛いサンタ服を着てるってわけや』
『言うなよな、はやて!』
サンタ衣装はどうあれ、顔を赤らめたヴィータさんが嘘をついているとは思えない。
「あ、あれ~? 本当にそっちにいたの?」
『だからいたって言ってんだろ!』
う~ん、ひょっとしたらこれは演技で、はやてさんがかばっている可能性もあるかもしれないわけで、最も嘘がつけない人を……。
「ザフィーラ、いる? 本当にヴィータさんずっと八神家にいたの?」
姿は見えなかったけれど『いたぞ』という男性の声が返ってきた。
その後、シグナムさんにシャマルさん、リインさんにアギトもみな一様に頷いた。
「あれ、あれ~?」
あまりにわたしたちが信用しないのを不審がり、はやてさんが事情を聞いてきたので、先程までの一部始終――ベルカの上空でサンタの格好をしたヴィータさんそっくりな少女を見たこと――を伝える。
『ベルカに、サンタの格好をしたあたし、か……』
鉄槌の騎士が深く考える目をした。
『けったいな話やな。ヴィータのことをよく知らん人が言うならまだしも、なのはちゃんが見間違えるとは思えんし……。もっと詳しい話も聞きたいし、なのはちゃんいったんうちに来るか?』
「そうさせてもらおうかな~」
「ちょっと待ってなのはママ。ルールーの雑誌によると、サンタクロースの出現期間は、1年に1度。24日の夜から25日の未明にかけてだよ」
「そっか。期間限定レイドボスだもんね」
「いやいや」
「それは冗談としても、もうはやてちゃんちに戻ってる時間はないってことか……。ごめんねはやてちゃん。わたしたちこのままそのサンタの子を追いかけるから――」
『なのはちゃん!』
なのはママは通信を切った。
「ねえ、ヴィヴィオ、今回の一件どう思う? もしこれが私とヴィヴィオのよく知るアレのせいだとしたら……」
「うん。どうしてサンタの格好をしているかは知らないけど、たぶん夢を見ているような状態。たぶん自分で自分のことをよくわかっていないんだと思う……」
「だよね。まだ実害は出ていないみたいだけど」
「いつまでもこのままってわけにはいかないよね」
「行くよ、ヴィヴィオ!」
「はい!」
わたしとクリスは14年前に時間遡行した際、艦船アースラから補助を受けて空戦をこなしたようにレイジングハートに姿勢制御を委ねると、なのはママと一緒にベルカの聖夜に飛び立った。
感想欄では時々話題に上がるのですが、ヴィヴィオはクリス(デバイス)の補助を受ければ「浮かんで移動する」ことくらいは可能です。
さらにレイジングハート大先生の補助を受ければ、ある程度空戦も可能だと思われます。
ひょっとしたら訓練大好きなヴィヴィオのことなので、高町なのはの娘としてこっそり練習を重ねて『ViVid Strike!』~『Force』の時代くらいには普通に飛べるようになっている可能性もあるのですが、あくまで可能性ですので、この小説ではデバイスの補助を受けて飛行しています。
詳しく解説することもできるのですが、試しに書いてみたところ「長っ!?」となったので、ちょっとあとがきでやるような内容じゃないなと。機会があれば、いつかまとめて解説しようと思います。
クリスマスの夜。
現在では無人世界になっている旧ベルカ上空に現れたのは、ヴィータそっくりなサンタクロース姿の謎の少女。
彼女の正体に気づいたなのはとヴィヴィオは説得を試みるが……??
聖夜の空を彩るように、桜色と赤色の魔力光が15年ぶりに激突する!!
果たしてサンタ少女の正体とは!?
次回『サンタクロースを捕まえろ! 後編』
で、リリカルマジカルがんばります!