アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

74 / 127
「聖王教会は退屈……もとい、私も少し、はやてのバレンタインに興味がありましたし……」
騎士カリムからシスターセインを1日レンタルしたヴィヴィオは、なのは、フェイト、はやてといった管理局組のバレンタインを、ディープダイバーを使ってのぞき……じゃなかった見学しに向かうのだけど??



チョコっとディープダイバー

       1

 

 みなさんこんにちは、高町ヴィヴィオです。

 早速ですがわたしは今、固有能力『ディープダイバー』を使うセイン――青髪の元ナンバーズのシスター――と一緒に、とある管理局の施設に潜入。

 無機物の壁や床の間を移動するのは、ちょうど水中を泳いでいる感覚に近いのだけど、イマイチ慣れないわたしは犬かきみたいにして進んでいる。

 まあ、これでも進むので問題ないだろう。

 壁の中なので念話で会話を交わす。

 

『陛下、電子錠と魔力錠の解錠終わったよー』

 

『了解。はあ、それにしても面白いイベントがあるといいんだけど……』

 

 いくらバレンタインでも、毎年変わった事件は起きない。そんなわけで、今年はわたしたちの学院を飛び出して、ママたち管理局組のバレンタインをのぞいてみようと思い立ったのだけど……。

 

 

       2

 

 

 今朝のことだ。

 

「騎士カリム、今日一日シスターセインを貸してください!」

 

「了承」

 

 と、どっかの秋子さんみたいに微笑みながらカリムさんがGOサインを出すと、隣でいつものようにシスターシャッハが顔をしかめた。

 

「本当によろしいのですか? ヴィヴィオに協力させて。アレの能力はいわば〝のぞきスキル〟ですよ? の・ぞ・き!」

「のぞきとか言うなー」

「ええ、聖王教会は退屈……もとい、私も少し、はやてのバレンタインに興味がありましたし……」

「どっちみちアウトですよ! もう、バレたらどうするんですか!」

「セイン、絶対に気づかれないように。上位命令よ」

「アイアイサー」

 

 上がこーだと、下もあーなる、といういい例である。部屋を出ると、どこから調達したのか口に肉まんをくわえたシャンテとすれ違う。

 

「あれ陛下、セインとお出かけ? いってらっしゃ~い! お土産よろしくぅ~」

 

 大丈夫か聖王教会?

 

 

       3

 

 

 そんなわけで、まずはフェイトママの執務室に潜入成功。

 

『いや~、相手が管理局の執務官だろーと、あたしの敵じゃーなかったね!』

『あはは……』

 

 この場合、喜んでいいのか悪いのか複雑なところではあるのだけど、とりあえず壁からニョキッと頭だけ出して様子を探った。

 フェイトママの隣のデスクで、シャーリーさんがぼやいている。

 

「フェイトさん、またチョコもらったんですか、あげるだけじゃなくて」

「うん、そうだけど?」

「はあ……私なんてあげる相手もいなければ、フェイトさんからもらうくらいなのに……」

「ん~、グリフィスくんにはあげないの?」

「へ? どうしてですか??」

 

 

『あちゃ~』

 

 レティ提督の息子グリフィスさんと、フェイトママの執務官補佐をしているシャーリーさんは、子供の頃から家が近所の幼馴染なのだ。

 

『あの眼鏡もスペックは高いんだけどな~、ガッカリ組の一員だったかー』

 

 

 シャーリーさんが「そう言えば」と眼鏡のズレを直した。

 

「ダンボールいっぱいにもらったチョコは毎年どうしているんですか? まさか律儀に全部食べてるとか? それでそのプロポーションってチート?」

「まさか、全部は食べきれないよ。だから、もらったチョコは保護した子や、身寄りのない子供たちにプレゼントします――って最初から断ってあるから」

 

 

『さっすがフェイトママ……』

 

 いい話だ。ひょっとしたらフーカさんやリンネさんが昔いた孤児院にも、チョコやお菓子が寄付されたのかもしれない。ともあれ、

 

『陛下~、ココには面白イベントないみたいだね』

『うん』

 

 というわけで、次行こう、次……。

 

 

       4

 

 

「――ったく、またお前チョコもらったのかよ」

「そういうヴィータちゃんだってもらったでしょ?」

 

 ご存知、本局にある教導隊本部である。

 わたしとセインはロッカールームに潜入し、よくアニメとかであるようなスチール製ロッカーの内側に隠れて着替えシーン……じゃなかった、2人の会話をのぞき見ることにした。

 チョコの箱を開けたなのはママが肩を落とす。

 

「それに私の場合もらったと言っても……ほら、金箔が貼られた画びょう型チョコとか、わら人形にパイルバンカーみたいな五寸釘が打ちこまれた形をしたチョコとか……」

 

 

『なのはママ~』

『いや、むしろ手がこんでないかアレ? ちょー気合が入ってるんだが……』

 

 

「私、そんな恨まれることしたのかなあ……」

「したんだろ? 自ら悪魔でいいよと言い放った鬼教官どの~」

「うぇぇ~ん! ――と、まあそれはそれとして、ヴィータちゃん私にチョコは?」

「どーしてあたしが……と言いたいところだが、ほれ今年も作ってきてやったぞ」

 

 

『お~』

『まさかあの鉄槌の騎士が、なのはさんに毎年チョコを送ってたとはね~』

 

 

「今年こそはてめーでも食えねえ、シャマルの力を借りて作った超合金チョコだ。試したら釘も打てるほど――って、どーしてバリバリ食ってるんだよぉぉっ!?」

 

 ガキーン、ガキーン――と、もはやチョコを噛み砕く音じゃない!

 

「お前の口はなんだ、デスピサロの腹の部分か何かかよっ!?」

 

 どうやら毎年の勝負事だったらしい。

 残念だったようなホッとしたような……次行こう、次……。

 

 

       5

 

 

 最後にわたしたちが潜入したのは、本局の海上警備部。

 

『ついに来たね、セイン!』

『おう、ようやく本命だな!』

 

 騎士カリムからも言い渡された〝八神はやて〟のバレンタインである。

 

『やっぱりこう、〝1/1等身大ザフィーラ型チョコ〟みたいなやつかな?』

『いや~、あのたぬ吉のことだから、〝自白剤入りのチョコ〟とか、ルーテシアお嬢と共謀して〝魅了の魔法がかかったチョコ〟とか……』

『あ~、バレンタインだから――とか言ってさりげなく取り調べ相手に食べさせることが出来るんだ』

 

 バレンタインの時期は検挙率アップである。

 

『これはヤバイね。管理局の闇を見てしまうかもしれないね!』

『カリムに正直に報告すべきかどーか、悩むところだな』

 

 ――とか言って、2人で半日ほどはやてさんの行動を監視していたのだけど……、

 

『何もない!?』

『おかしいな、ふつーだぞ!?』

 

 確かにチョコは作ってきていたのだけど「みなさんでどーぞ」みたいな感じで、局員も犯罪者も隔てなく口にしている。

 というか、わたしとセインもこっそり食べたのだけど、非常に美味しくいただきました。

 

『あれ~? どういうこと、セイン?』

『あたしに聞かれてもなー』

 

 面白イベントもなければ色恋沙汰もない。

 

『まさか、大本命にオチがないなんて……』

『陛下、ひょっとしてもっと身近なところにオチがあるんじゃない? 例えば、陛下が大事な人たちにチョコを作り忘れたとか、よくある砂糖と塩を間違えました的なオチとか?』

『う~ん、それがね、今年に限ってはないんだよねぇ……。今年はね、ジムのみんなと一緒にチョコを作ったんだよ。ノーヴェんちで。爆発するかもしれないから』

『ノーヴェ……』

『大丈夫、大丈夫。料理が得意なユミナさんやミウラさんもいてくれたし、ノーヴェもどういうわけか料理得意でしょ?』

『ノーヴェぇ……』

『まあ、アインハルトさんだけは爆発したり鉄アレイみたいなの作ってたけど、想定内だったし』

『覇王っ子のそれ、想定内なんだ……。じゃ、その場でチョコを配りっこしたと?』

『そうそう。だからキッチンの惨劇を見てノーヴェが騒いでたくらいで、後は平和なバレンタインだったんだよ』

『ノーヴェぇぇ……あ、そーか、そーいうことか。陛下帰りにジムに寄ってみなよ』

『え、どうして?』

『まあまあ、あたしの予想が正しければ、そこにオチが待っているっ!』

 

 というわけで、海上警備部を後にしたわたしとセインは、ディープダイバーを解除してからナカジマジムに向かったのだけど……。

 

「ナニコレ!?」

 

 トラック1台分のチョコが届いていた。

 ノーヴェやユミナさん、それにスタッフのみなさんが一生懸命に仕分けしていた。

 

「よっ、陛下、人気選手!」

「あ、そーいうことか! でも大半はアインハルトさんあてなんじゃないかな~」

「まあまあ、陛下だって十分人気あるって、ほらあっちの山は陛下に届いた分みたいだよ」

「あはは、うれしいけど……ん、これってクッキーの缶だ。そーだ、シャンテももらってるかもしれないけど、これをシャンテのお土産にしよう!」

 

 気を利かせてチョコではなくクッキーを送ってくれた方に感謝である。

 

「それにしてもトラック1台分ってホントにあるんだね~。初めて見た。フェイトママは昔あったって聞いたけど」

「あげる方じゃなくて?」

「うん。中学の時に文化祭の劇で王子役をやったんだって。そうしたらバレンタインで……」

「あ~、色々納得。カッコイイもんねぇ、フェイトさん。まあ何にせよ、これでギリギリ変わったバレンタインを堪能できたかと」

「カリムさん納得してくれるかな?」

「あの人、結構何でも楽しんでくれるからな~、大丈夫じゃね?」

 

 と笑いつつ、シャンテのお土産――クッキー缶――を片手に聖王教会本部に帰ったのだけど……。

 

 

 

「「な、な、な、なんじゃこりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???」」

 

 

 

 聖王教会本部がチョコの山で埋もれていた。

 空中には配達業者の車代わりなのか、アースラみたいな艦船が浮かんでいて、真下に開いたハッチからドバドバとラッピングされたチョコが降り注いでいた。

 ちょうど、かき氷の機械で器に盛った氷が山になるような感じで、教会の尖塔までチョコが積もっている。

 

「な、ナニコレ……敵が攻めてきたの!?」

 

 こんな爆撃、仮面ライダーに年賀状を送るショッカーでもやらないよ!?

 

「そ、そーだ陛下、さっきのストライクアーツじゃないけど、今年は神社だけじゃなく握手会とか色々やったでしょ!?」

「そ、そーか、その時ナカジマジムやフロンティアジムに迷惑がかからないよう、ファンレターやプレゼントは聖王教会あてに送るようお願いしたんだっけ……」

 

 地球で例えると、キリスト教徒は約22億人。イスラム教徒は約15億人。ヒンズー教徒は約9億人。仏教徒は約4億人いるらしい。

 それが、次元世界で最大規模の宗教組織である聖王教会の信者数ともなれば……推して知るべしである。

 

「つまり、数百億はいるという信者のほんの一部がチョコを送ってくれただけで……?」

「ああ、大惨事に……って」

 

 

「「あ!?」」

 

 

 わたしとセインは叫ぶ。

 

 

「「カリムー! シャッハー! イクスー! シャンテェェ――っ!」」

 

 

 無事避難しているといいのだけど。

 すると、チョコの山からオレンジの頭が飛び出した。

 

「「シャンテ!?」」

 

「これ……分身、だから……かゆ、うま……」

 

 シャンテの姿が掻き消えた。

 

 

 

「「うわぁぁ――っ、みんなチョコの底だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!??」」

 

 

 

 結局のところ、みんなは無事に救出。大量のチョコもフェイトママを見習って次元世界の恵まれない子供たちに配ることになりました。

 よかった、よかった。

 そうそう。大事なことを1つ。みんなもディープダイバーはのぞきではなく人命救助に使おうね。大活躍するよ?

 

 

 

 




一足早くバレンタインでした。
恋愛の『レ』の字もありませんでしたが、まあ、ええ、そんな感じで(笑)。
ちなみにバレンタイン話は来週にしようかどうか悩んだのですが、2月10日(土)と17日(土)。「どっちもあまり変わらないなあ」ということで先にしました。
突然『バレンタイン禁止令』とか発布されるかもしれませんが……ないな~。特に問題なさそうです。

ちなみにセインなんですが、あの能力、どう考えてもシスターよりスバルと同じ特別救助隊向きだと思うのですが、どうでしょう?

さて来週です。

2018年公開予定の映画『魔法少女リリカルなのは Detonation』の件で惑星エルトリアを訪れたヴィヴィオとなのは。
「よしヴィヴィオ、ダンジョンに遊びに行こう! もちろんユーリも一緒にね!」
大人組が話している間暇だったヴィヴィオは、レヴィ、ユーリと共に惑星エルトリアに眠る古代遺跡に潜ることに!

次回『レヴィの不思議なダンジョン』

で、リリカルマジカルがんばります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。