八神家のパーティーに参加する前に、高町家では母子3人でおしゃべりをしていたのだけど、
「ねぇ、なのはママ、フェイトママ。ひな祭りって何か伝説とかないの? 七夕みたいに」
という話題から、いつしか子供のころの〝八神家ひな祭りパーティー〟で、フェイトが体験した不思議な出来事が語られる……。
今日は3月3日。
いくつまでが女の子なんですか――と、どこかの女神様みたいなことを言いつつ振袖を着たママたち2人とわたしがリビングでくつろいでいます。
もうしばらくしたら、八神家にひな祭りパーティーをしに行く予定なのですが……。
「ねぇ、なのはママ、フェイトママ。ひな祭りって何か伝説とかないの? 七夕みたいに」
「……そう言われると、何かあったっけフェイトちゃん?」
「……日本の風習についてはなのはの方が」
「いやいや、小学3年生から一緒だったんだからほぼ似たようなものかと」
「いやいや、9年のアドバンテージは大きいよ?」
と、押しつけ合っていたので、
「クリス『ひな祭り 由来』で検索してみて――」
①古代中国では、3月最初の巳の日に川で身を清め不浄を祓ったあと、宴を催す習慣があった。
②古代日本では、自分の穢れを移した人形を身代わりに川に流し、厄払いする習慣があった。
※これも中国由来と思われる。
③平安時代。人形などで遊ぶおままごとのことを〝雛(ひいな)遊び〟といった。
※雛はちっちゃくて可愛いものの意。アインハルトさんみたいなものだ。
④平安時代。陰陽道の発達と共に習合。人の厄を移した男女一対の紙人形を川に流す〝流し雛(ながしびな)〟の習慣が生まれる。
⑤室町時代。人形が立派になり、流さずに飾るようになった。
他にもいくつかあったのだけど、いずれも現実的な内容ばかりだ。
「織姫と彦星みたいにロマンチックな物語はないんだね~」
クリスマスやハロウィンはもちろん、5月5日のこどもの日だって調べてみるとそれなりにストーリーがあるのに……。
これでよく、1000年以上も風習が続いたものだ。
「そのうち美少女フィギュア雛に取って代わられる日がくるんじゃ……」
「「いやいやいや」」
すると、なのはママとびしびし殺り合っていたフェイトママが「そういえば……」と遠い目をした。
「直接ひな祭りとは関係ないと思うんだけど、昔、ひな祭りの日に不思議な体験をしたことがあったな~って」
「あ~、昔フェイトちゃんが話してくれたやつ?」
「そうそう」
「えー、どんな話?」
「確か、あの日もはやての家でひな祭りパーティーをやってて……」
「アリサちゃんやすずかちゃんもいたよね」
「そうそう。まだはやてとも仲良くなったばかりの頃で、私が1人でトイレに行った帰りだったかな……ふとキッチンで何かが動いた気がして、のぞいてみたら……」
「みたら?」
「ウサギがいたの」
「ウサギぃ~?」
「最初は〝のろうさ〟かと思ったんだけど……」
「いやいや、アレ動かないよね?」
「そのウサギ、料理の残りを持って逃げようとしたんで思わず追いかけちゃったんだけど……」
「えー、何それ~」
なのはママが笑う。
「まあ、アレだよね。懐中時計は見てないけど『不思議の国のアリス』的な……」
「あ~、『力が欲しいか?』だっけ?」
「おしいっ!」
「じゃあ『まきますか まきませんか』?」
「うん、それもちょっとかすってるけど、人形の方ね」
再びフェイトママが「そういえば……」と口にする。
「人形とは違うんだけど、そのウサギを追いかけていったら、ポニーテールの小さな妖精みたいな女の子とフェレットがいて――」
「はい、なのはママ緊急逮捕ぉぉ――っ!」
「ちょ、私まだその頃ポニテじゃなかったから。ツインテールだよ?」
フェイトママが笑う。
「そうそう。それに、そのフェレットね、オスじゃなくてメスだったの」
「メスっ!? つまりいつものユーノ司書長オチじゃないってこと??」
「うん」
だったら――とわたしは考える。
「例えば、女性のスクライア一族だったとか?」
「まあ、その可能性も否定できないんだけど、フェレットだからといって何でもユーノに絡めるのはどうかと」
「……確かにそうかも。そういえば地球には言葉をしゃべる〝オコジョ妖精〟もいるんだよね? 漫画で読んだよ!」
「えー、あー、うん、ひょっとしたら、いる……んじゃないかな~」
「私も身近にユーノがいたからフェレットだと思いこんでたけど、オコジョやニホンイタチの可能性もあったんだよね」
そもそも、スクライア一族の変身する動物は、厳密に言うとフェレットではないらしい。
かつてなのはママがユーノ司書長を動物病院に連れて行ったとき、槇村委員長も「フェレットなのかなあ?」「変わった種類だけど」と語っていた。
フェレットは地球のヨーロッパで改良された愛玩動物なので、ミッドに生息するイタチ科の動物が変身魔法の元になっているのだろう。
「それでフェイトママ、その3匹は捕まえたの?」
「うん、それが……頭の中に靄がかかった感じではっきり覚えてないんだけど……」
「やっぱりラストは、ウサギ、妖精、フェレットの3匹とバトルになったとか?」
「もー、流石にそれはないよ。なのはじゃないんだから」
「私だっていつも戦うわけじゃないからねっ!?」
フェイトママの瞳が、どこか遠い場所を見つめるように細まった。
「一度は捕まえたんだけど、逃げられて……さらに追いかけて行くうちに……そう、だんだん、おかしな空間に迷いこんで……そうだ、最後にたくさんの猫をみたんだ!」
「え、何そのARIA的な空間……?」
「ARIA……そうだ、思い出した。そのたくさんの猫たちの中央に、1匹だけ大きくて2本足で立っている子がいて……」
「うわ」
「……う~ん、その辺りの記憶が一番はっきりしないんだよね」
ここは1つ華麗なオールさばきを見せつつ、
「その大きな猫。わたしの中の人的に言わせてもらえば猫の王様ケット・シーで、会えたのはミラクルですよー」
ね、灯里さん――となのはママに話を振る。
「いやいや、中の人とは関係ないし。そもそも私もみ子でもドジっ子でもはひーっとも言わないし」
「いや、まあ、ほら立ち位置的に?」
「う~ん、そんなこと言い出したら、ヴィヴィオこそドラマCDで灯里さん役もやったよね?」
おおっと……。
実はあまり知られていないが、アニメ化前のドラマCDでは、わたしの中の人が灯里さん、井上喜久子さんがアリシアさん、林原めぐみさんが藍華さん&アリア社長、草尾毅さんがサラマンダーの暁さん、田中真弓さんがノームのアルさん、他にも大木民夫さんに千葉繁さん――という今考えると超豪華キャストだったりする。
そんな縁もあってなのか、最終的にアイちゃんだったりするのだけど……おっと、話を戻そう。
「それでフェイトママ、最後はどうなったの?」
「あー、実は、その、気づいたら、はやての家のソファーで横になってました」
「フェイトちゃん、それ絶対夢オチだって」
「いやいやいやそんなことないよ!」
再び言い合いを始める。
わたしは「う~ん」と唸りながら考えると、最終判断を下した。
「当時のまだ子供で、しかも純粋だったフェイトママなら、ARIA的な不思議空間に迷いこんでもおかしくないってことで」
「え、そういう結論でいいの?」
「ほら、フェイトママって初代リインフォースさんに、結界魔法を使った夢みたいな空間に閉じこめられたこともあったでしょ?」
「そんなこともあったね……懐かしいかも」
この世界では、今やプレシアおばあちゃんやアリシアさんやリニスさんまでみんな生きてるので複雑な気分なのだろう。
幻覚魔法をかけられたフェイトママの深層意識が見せた夢――という話だけど、ひょっとしたら並行世界の一種である可能性も否定できない。ああいう世界も存在して反映されたのかもしれない。
今度はなのはママが「う~ん」と唸った。
「私だって小学生の時は、フェレット(ユーノ君)に出会うとこまでは行ったんだけどな~」
「なのはママの場合、すぐバトル方面に話がそれちゃうから」
「あう~、その差かぁ~」
「まあまあ、そのお陰で私もヴィヴィオもなのはと仲良くなれたんだから」
「だね――」
こうしてわたしとなのはママ、フェイトママはひな祭りパーティーをしに八神家へ向かったのだけど……。
それがまさか、あんなミラクルに繋がっていようとは今はまだ知る由もないのでした。
「最近アインハルトさんの出番がないな~」と思いつつ、また当分いない話が続くという。
アインハルトさんに優しくない日々が続く……。
さて、来週です。
先週あった〝八神家ひな祭りパーティー〟でのこと。
「私も過去に時間遡行して、先代リインフォースに会ってみたいです!」
リインフォース・ツヴァイに相談されたヴィヴィオは、惑星エルトリアのフローリアン姉妹や紫天一家に事情を説明する。
そして、ツヴァイと一緒に14年前――過去の世界――新暦66年2月末日の海鳴市に飛んだのだけど……!?
次回『ツヴァイ、アインスに会いに行く 前編』
で、リリカルマジカルがんばります!