アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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以前あやふやのまま終わった『アインハルトさんは飛べるのか?』という疑問に、今度こそ終止符を打つべく、視聴者のみなさんの疑問に、高町家っぽく答えていこうというあのコーナーに、ついにアインハルトさん本人を呼んで徹底検証!!

果たしてヴィヴィオは、アインハルトさんが飛べることを証明できるのか!?



アインハルトさんは飛べますか? 2

 今日は久しぶりにアインハルトさんと2人きりで朝のランニングです。

 川べりの公園に到着すると、早速クリスが撮影開始。本題に入る。

 

「――はい! 次元世界1兆人の聖王教会信者のみなさん、リリカルまじかるこんにちは~。

 お久しぶりですっ!

 あなたの崇め奉る現代の聖王女――高町ヴィヴィオが帰ってきましたよ~。

 毎週異なるゲストをお迎えして、視聴者のみなさんの疑問に、高町家っぽく答えていこうというこのコーナー。

 本日は珍しく、タイトル通りにわたしの学校の先輩――ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトさん――長いっ! を、ゲストにお迎えしました。

 今度こそ、現代の覇王様が空を飛べちゃう本当の理由を検証しちゃいますよ~。

 それでは、今日はよろしくお願いしますね、アインハルトさん!」

 

「はぁ……あの、ヴィヴィオさん1つよろしいでしょうか?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「先日、劇場版『魔法少女リリカルなのはReflection』の記憶ディスクが発売したというのに、私たち、こんなことをしていてよろしいのでしょうか?」

 

「あ~、確かに4月11日に発売しましたね~。

 開始47秒。

 映画館で見たときも思ったんですが、宇宙から俯瞰した惑星エルトリアをバックに『EC4280 惑星エルトリア』って表示されるんですけど……」

 

「4280年ですか……。随分と歴史ある惑星なんですね」

 

「ええ、血のバレンタインが70年。ヤキン・ドゥーエ攻防戦が71年。デュランダル議長が亡くなったメサイア攻防戦が74年ですから、あれから4000年。ナチュラルとコーディネーターの争いはどうなったのかな~、とか、はい、色々と思うことはあるわけですよ」

 

「……って、ヴィヴィオさんしっかりしてください!? CE(コズミック・イラ)じゃありませんよ! ECです! どんなに観たくても、劇場版ガンダムSE●Dは完成しなかったんですよぉぉっ!?」

 

「……はっ!? すみません。N●Kの『全ガンダム大投票』のMS部門で、フリーダムに投票してしまったので、つい。

 そんなわけでこの番組は、そろそろ新しいなのはのアプリゲームが欲しいよね、次元世界最大の信者数を誇る聖王教会の提供で送りしまーす――」

 

 

       ●

 

 

「それでヴィヴィオさん、今回のお題なのですが……?」

 

「あ、はい。それがですね、以前わたしとアインハルトさんが飛行魔法を使えるかどうかについて、考察したことがあったじゃないですか?」

 

「ああ、ありましたね、そんなことも」

 

「はい。あのときわたしについては結論が出たんですが、アインハルトさんが飛べる理由についてはちょっとアバウトすぎたかな~と。

 そんなわけで、今回は改めてアインハルトさんが飛べる理由を、アインハルトさん本人をお呼びして検証してみようじゃないか――という企画趣旨なんですよ」

 

「なるほど。私が飛べる理由、ですか……。例えば、私がヴィヴィオさんに出会う前から頑張っていた――とかじゃダメなんでしょうか?」

 

「ん~、アインハルトさんが色々努力してたことについては、わたしも異論はないんですが、謎のバイザーをつけたり、ストライクアーツの実力者に襲撃を繰り返したり……」

 

「……そういえば、ヴィヴィオさんを襲撃したことはありませんでしたよね?」

 

「いえ、結構です。

 ――と、まあ、それは冗談として、アインハルトさんの部屋にあるトレーニングマシンだけじゃ、流石に飛行魔法のトレーニングまではカバーできないかなーと」

 

「確かに、筋力トレーニングがメインでしたから。……では、こんなのはいかがでしょう?

 実は私には、ヴィヴィオさんのお母様みたいな、抜群の飛行センスがありました、とか」

 

「それはうらやましい!

 でも、それを証明する手立てはありませんしね。原作にもそういう描写はありませんし」

 

「ですね」

 

「けれど、アインハルトさんは『ViVid』1巻でこんなことを言ってますよね?

 

『覇王の血は歴史の中で薄れていますが、時折その血が色濃く蘇る事があります。

 碧銀の髪やこの色彩の虹彩異色、覇王の身体資質と覇王流、それらと一緒に少しの記憶もこの体は受け継いでいます』

 

 と」

 

「ええ、ノーヴェさんにお話ししました」

 

「ふっふっふ、言質は取りましたよ。

 つまりです、覇王イングヴァルトが空戦できたことを証明できれば、逆に、覇王の身体資質を継いでいるアインハルトさんも〝飛べる〟――ということなんですよ!」

 

「なるほど、そうきましたか。

 そうですね。確かに、クラウスが空戦できたことを証明できれば、私も飛行魔法を使える。

 よって、ヴィヴィオさんと一緒に、過去の海鳴市で、なのはさんやフェイトさんたちと空中で戦えた理由にもなるでしょう」

 

「はい!

 そんなわけで視聴者のみなさん、まずは参考資料①として、『魔法少女リリカルなのはViVid』11巻をご用意ください。

 過去編の辺りです。

 まず、最初の『Memory;53』では、クラウス陛下とオリヴィエが近隣平定任務で一緒に戦に出かけた――ということで、そろって馬に乗っているシーンを見ることができます。

 あ、馬といえば今期やってる『ウマ娘』というアニメが面白いです」

 

「ヴィヴィオさん……」

 

「おっと、閑話休題でしたね。

 次の『Memory;54』では、火を放たれた魔女の森に、オリヴィエが馬に乗って駆けつけるシーンが見られます。

 緊急事態ですし、飛んだ方が早く到着する。それでも馬に乗っていたということは、オリヴィエが飛行魔法を使えなかった――陸戦魔導師だった証ですね」

 

「ですが……クラウスが馬に乗っているシーンはありませんよね?」

 

「はい。

 魔女の森で、クラウス陛下が単独で敵兵の前に回りこんで撃退していることから、ひょっとするとこの時点ですでに、飛行魔法をマスターしている可能性もあります。

 しかし、実際に飛んでいるシーンはありません。

 ここで飛べると断定できれば、これ以上の検証は必要ないんですが……」

 

「これだけでクラウスが飛べると断定するのは、無理がありますね」

 

「はい。なので、ここではまだ飛べない。飛べたとしても、空戦できるほどの技術はなかったと考えておこうと思います」

 

「賢明です」

 

「最後に『Memory;55』の、オリヴィエがゆりかごに乗ったあと、クラウス陛下が兵士たちと馬に乗って行軍しているシーンがあります。

 が、こちらは並足なので、単純に長距離の移動の際、兵士たちに合わせて馬に乗っているともとれるので、やはり〝飛べる〟〝飛べない〟は保留です。

 以上のことから、ViVid本編で、覇王イングヴァルトが飛行魔法を使うシーンはない。けれど、オリヴィエと違い、緊急時に馬に乗っていないことから、飛行魔法が使える可能性もある――ということが言えるのです。

 アインハルトさん、ここまでで何か問題はありますか?」

 

「いえ、特に問題はありません。

 ですが……これだけでは、むしろクラウスも、オリヴィエと同じ陸戦魔導師だったと考えた方が無難なのでは?」

 

「やっぱりそう見えちゃいますか。

 なので、次にコチラをご覧ください」

 

「……えっと、それは?」

 

「ロケット・パァァ――ンチッ!

 ――ということで、コロナから借りてきた超合金のマジ●ガーZのフィギュアです」

 

「マジ●ガー……」

 

「ええ、視聴者のみなさんにはスパロボでおなじみ。

 1月に映画も公開されたばかりですが、このロボット、打たれ強く、パワーもあり、多才な武器や技を持っています。

 間違いなく、至高のロボットの一体です。

 ちょっと、クラウス陛下やアインハルトさんに似てますよね」

 

「そう言われると、そんな気も……」

 

「ちなみに、コロナのゴライアスが『ViVid』3巻で使っていたロケット・パンチの元ネタが、マジ●ガーZのロケットパンチだということは、みなさんならご存知だと思います。

 ところがどっこい!

 実は、3巻のロケット・パンチ……コロナにしては調子に乗りすぎましたね。飛ばした拳に回転をかけてしまったことから、おそらく各所からツッコミが入ったのでしょう。

『それ、ロケットパンチじゃなくて、グレートマジ●ガーの〝ドリルプレッシャーパンチ〟だよね!?』

 と」

 

「えー……と……」

 

「なので、6巻でアインハルトさんと戦ったとき、どう見ても同じ技なんですが、ロケット・パンチではなく〝ドリルクラッシャーパンチ〟になっていました。

〝プレッシャー〟にしちゃうと色々と問題があるので若干変えてきていますが、間違いなくグレートマジ●ガーが元ネタです。

 どうでしょうか、アインハルトさん?」

 

「……ええ、そんなこともありましたね……で、クラウスの飛行魔法の件なんですが……?」

 

「おっと、そうでした。

 このマジ●ガーZ。OPで『空にそびえるくろがねの城~』と歌われている割に、物語の前半では空を飛ぶことができませんでした。

 移動タイプが陸の、完全な陸戦型ロボットだったわけですね。

 そのため、物語が進むにつれて現れた、敵の空飛ぶ機械獣に苦戦するようになります」

 

「なるほど。

 つまり、空を飛ぶネウロイに対して、陸戦ウィッチでは、どうしても航空ウィッチのように戦えない――というのと同じことですね?」

 

「ええ、間違ってはいないんですが……間違ってはいないんですが……アインハルトさんがだんだん何かに染まっていってる気がして、イヤァァ~ッ!?

 コロナ(中の人)のせいなの、くぅぅ~、あっちで主人公だったからって~」

 

「いえいえ、ヴィヴィオさん(中の人)も出てましたよね? 劇場版で拝見しましたよ」

 

「あぁぁ~、バレてる~。

 ちなみに、ルッキーニとスバルさん&ノーヴェが未だに中の人が同一人物だとは思えません。

 声優さんスゴぉぉっ!」

 

「おっと、ヴィヴィオさん、ここでメールが届きました。

 ミッド在住の〝今夜はシチューだよ〟さんからです。

 

『少し、頭冷やそうか……』

 

 あ~。

 ……だ、そうですけど」

 

「OH~。

 スミマセン。興奮しすぎました。

 えっと、どこまで話しましたっけ……ああ、そうそう、マジ●ガーZが空飛ぶ機械獣に苦戦する――って話でしたね。

 そこで登場したのが、この支援メカ――ジェットスクランダーです」

 

「紅の翼ですか」

 

「はい。いわゆる飛行ユニットなのですが、マジ●ガーZとドッキングすることで空戦可能になり、今度こそマジ●ガーZは無敵のスーパーロボットになったわけです」

 

「えっと……つまり、ヴィヴィオさんが言いたことは、クラウスも空戦魔導師と戦うために、飛行魔法をマスターしたのではないか――ということでしょうか?」

 

「はい、その通りですっ!

 だって、古代ベルカには、シグナムさんやヴィータさんといった空戦魔導師――正確にはベルカの騎士ですが――が、存在したんですよ。

 当然、他にもヴォルケンリッターに匹敵するような、強い空戦魔導師がいたはずです」

 

「確かに、存在したでしょうね」

 

「アインハルトさん、飛行魔法や空戦技術なしで、シグナムさんやヴィータさんに勝てますか?」

 

「それは……流石に無理かと……」

 

「ええ、だけど、そんな古代ベルカの戦場において、クラウス陛下は歴史に名を残すほどの武勇を示しました。

 あのヴィクターさんも、3巻で、

 

『旧ベルカの最強覇者は、聖王でも覇王でもなく雷帝ダールグリュン。その現実を、雷帝の血を(ほんの少しだけ)引くこのわたくし! ヴィクトーリア・ダールグリュンが叩き込んでさしあげますわ!』

 

 と、厨二病っぽい台詞を、全力全開で口にしていました。

 つまりクラウス陛下は、ベルカ戦乱期『ベルカ最強は、聖王か覇王かっ!?』くらいまでの強さを誇っていたというわけで――」

 

「……あの、ヴィヴィオさん、またメールが」

 

「はい?」

 

「ミッド南部に在住の〝執事は武内P〟さんからです。

 

『これからノーヴェ会長に、ヴィヴィとの試合を申し込もうと思いますが――よろしいですわね?』

 

 だそうです」

 

「あばばばば……」

 

「芥川龍之介ですか?」

 

「いえ、すみません、取り乱しました。

 ヴィク……こほん、オカンさん、ベルカ最強は聖王というのが通説なので、先に中ボスの覇王を倒したら、いつでも受けて立ちますよっ!」

 

「それ私ですよねぇぇ!? まあ、私はいつでも戦う準備はできていますが」

 

「タイトルマッチですね~」

 

「ヴィクターさん、お待ちしてます」

 

「――と、まあ、話が脱線しまくりましたが、古代ベルカの戦乱期、諸王時代において、聖王がゆりかごに乗っている以上、間違いなく覇王イングヴァルトは地上に残る最強の魔導師の1人でした。

 そして、ベルカ平定間近の時期に戦場で命を落とすまで、彼は勝ち続けました。

 時には敗北することもあったかもしれませんが、生きてさえいれば、再戦時に必ず相手を打ち破っていたのでしょう。

 そんな偉業、飛行魔法を使わずに達成できたと思いますか?」

 

「それは……」

 

「ほぼ、不可能でしょう。

 なぜなら、ドラマCD『StrikerS サウンドステージX』のジャケットに載っている〝History of Belka〟でも、

 

『たった一人の優れた王が強大な質量を操る兵器となり、戦場では万騎を屠りうる時代』

 

 と書かれているからです。

 ヴォルケンリッターにせよ、ロード・ディアーチェにせよ、ユーリ・エーベルヴァインせよ、古代ベルカの実力者は、みな飛んでいるんです。

 そんな彼らを相手に、勝利し続けるのは、陸戦魔導師では不可能なはずです!」

 

「……」

 

「アインハルトさんも2巻で言ってましたよね?

 

『皮肉な話ですが、彼女を失って彼は強くなりました。全てをなげうって武の道に打ち込み、一騎当千の力を手に入れて――』

 

 と。

 才能があったかどうかはわかりません。

 ですが、クラウス陛下は手に入れたんですよ、ひたすら武の道に打ち込むことで、空を飛ぶ力を、覇王イングヴァルトのジェットスクランダーを!」

 

「……確かに、戦乱の古代ベルカで勝ち続けるためには、飛行魔法は必要だったと思います。

 クラウスが空を飛べたことは疑いようがない。

 ですが、ヴィヴィオさんの考察には1つ、大きな穴があります」

 

「え?」

 

「それは、仲間の存在です。

 ヴィヴィオさんが教えてくれたことですよ。

 クラウスがどんなに強くても、1人で戦争はできません。

 つまり、敵の空戦魔導師には、仲間うちで最も優れた空戦魔導師があたり、クラウスはあくまで陸戦をメインにした魔導師として、地上の敵のみを相手にしていた――とも考えることができます」

 

「そうきちゃいましたか……」

 

「そうきちゃいました」

 

「仕方ありませんね、とっておきです」

 

「まだ、何かあったんですか?」

 

「はい。アインハルトさん、これを一部とはいえクラウス陛下の記憶を持っているアインハルトさんに伝えるのもどうかと思ったんですが……クラウス陛下には、空を飛ばなくちゃいけない大事な理由があったんですよ」

 

「空戦魔導師と戦うこと以外に、ですか?」

 

「はい。

 それは――クラウス・G・S・イングヴァルトが、空を飛ぶ〝ゆりかご〟に、オリヴィエを迎えに行くという理由です」

 

「あ……」

 

「ただ、すぐに向かったところで、オリヴィエはゆりかごを出ようとはしないでしょう。

 彼女の目的である戦乱を終わらせること。

 まずはそれが第一です。

 しかし、ゆりかごの聖王は、わずか数年でその命を燃やし尽くすそうです。

 だから、クラウス陛下はベルカ平定を急いだはずです。

 その焦りこそが、平定間近の彼の死につながったのかもしれませんね。

 また、ゆりかごの聖王は、玉座を守る生きた兵器として自我を奪われます。

 このことは、城の書庫に文献があったので――リッドさんからも聞かされたでしょう――当然、知っていたはずです。

 8巻の『Memory;42』でも、クラウス陛下自身が危惧していました。

 つまり、仮に戦争を終えたとしても、オリヴィエがゆりかごを降りない可能性も大いにありました。文献が正しいとすれば、数年で彼女は死に、そのままゆりかごは眠りにつく。

 だから、そうなる前にクラウス陛下は、場合によっては、ゆりかごと一戦交えるつもりだったのかもしれません。

 ゆりかご内部に侵入して、オリヴィエを救い出す。

 なのはママがわたしにやってくれたのと同じようなことを、かつてクラウス陛下も考えていたのかもしれません。

 立場的なことを考えれば、王位を譲る、あるいは国を出奔したあと、単独でゆりかごを襲撃する」

 

「いくらなんでもそこまでは……」

 

「いえ、やったはずです。だって、わたしと出会う前のアインハルトさんだって、同じようなことをやったじゃないですか」

 

「あ……」

 

「アインハルトさんとよく似た、思い詰めたクラウス陛下なら、必ず実行していたはずです。

 だから、覇王イングヴァルトは飛ばなくちゃいけなかったんです。空を飛ぶ才能があろうとなかろうと、空を目指す。

 誰よりも強い、ゆりかごに対抗できる空戦魔導師になって――」

 

「オリヴィエを救うため……ですか。そんなことを言われたら、私には何も言えないじゃないですか。

 ただ……9巻でもお話ししたように、クラウスはゆりかごの王になどならなくても、戦乱を終わらせる方法はあるはずだ――と考えていました。

 逆に言えば、戦乱さえ終われば、オリヴィエがゆりかごの王にならなくていい――とも考えていたはずです。

 私から言えるのは、これくらいでしょうか」

 

「ありがとうございます。

 そんなわけで、今回の結論です。

 

 覇王クラウス・G・S・イングヴァルトが、聖王のゆりかごの鍵となった聖王女オリヴィエを救い出すためには、一日でも早くベルカの戦乱を終わらせる必要がありました。

 しかし、たった1人の優れた王が、戦場では万騎を屠り、また、禁忌兵器が使用され、数多の騎士たちが飛び交い剣を合わせる時代。

 そして、最終目標である聖王のゆりかご。

 それら全てを打ち倒し、ベルカの天地に覇をもって和を成そうとしたら、クラウス陛下に〝空を飛ぶ以外の選択肢〟は、残されていませんでした。

 空を自在に駆け巡り、ヴォルケンリッター級の敵相手に、一騎当千の武勇を示し続けた結果、彼は後世に名を残すほど偉大な覇王――最強の空戦魔導師に成長しました。

 そんな、覇王イングヴァルトの記憶や身体資質を受け継いだアインハルトさんだからこそ飛べる。

 

 いいえ――うちのアインハルトさんが飛べないわけがないっっ!!

 

 ――みたいな感じでどうでしょう?」

 

「……いや、その、なんでしょう。そこまでクラウスを高く評価していただけるというのも恥ずかしいですが……そうですね、ゲームとはいえ『GOD』でも飛んでいましたし、私は飛べる。

 その結論で構わないと思いますよ?」

 

「そっか、よかった~。

 これで、わたしとアインハルトさんが2人とも飛行魔法が使えて、なおかつ空戦できるだけの技術を持っているということがわかっていただけたと思います。

 そんなわけで、本日の考察はこれでおしまいっ!

 視聴者のみなさん、長い時間お付き合いいただきありがとうございました。

 ここまでのお相手は現代の聖王女――高町ヴィヴィオと」

 

「覇王流――アインハルト・ストラトスでした」

 

 

「「ではまた次回お会いしましょう!!」」

 

 

       ●

 

 

 クリスが撮影を終えると、ようやくわたしとアインハルトさんは一息ついた。

 

「ふぅ~、お疲れ様でしたー、アインハルトさん」

 

「いえいえ」

 

「ところでアインハルトさん、1つ大きな問題がありまして……」

 

「え、今更ですか?」

 

「いえ、そのぅ……学校遅刻しそうです」

 

 

「え、えええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっ!!

 そ、そういうことはもっと早く言ってもらわないと!」

 

 

 このあたふたした混乱っぷり。

 いつもみたいに、アインハルトさんが間違って初等科の制服を着ちゃいそうな勢いだ。

 それはそれで見たいのだけど、今日はちょっと試したいこともあった。

 わたしはポン――と手を打つ。

 

「そうだ、せっかく考察も終わったことですし、学校までビュ~ンと飛びましょうか? 飛行魔法で」

 

「……そ、そうですね。たまにはビュ~ンと飛びましょうか。クラウスもそれくらいは許してくれると思いますし」

 

「それでは――」

 

 せーの、とわたしとアインハルトさんは声をそろえて飛び立つ――が、

 

「はーい、そこ、ミッド市街地での飛行は禁止されています。2人とも勝手に飛んだらダメだよー」

 

 いきなりストップをかけられた。

 

「って、フェイトママっ!? どうしてこんなところに?」

 

 金色の執務官さんの手には、黄色い旗が握られていた。

 

「あー、もしかして旗当番?」

 

 色的には似合っている。

 けれど、あのシステムってミッドにもあったのか~。

 

「2人には違反切符を切らないとね」

 

 

「「ナニソレぇぇ!?」」

 

 

「もう、普段から調子に乗って飛行魔法を使わないようにって言ってるでしょ。

 あの〝なのは〟だって、ビュ~ンと飛びたいのを我慢して、自動車で職場に通ってるんだから」

 

「そ、そうでした……」

 

 帰りに車で、ヴィータさんを八神家に送ったりなんかしちゃってるんでした……。

 

「はぁ、だから私もヴィヴィオさんも、普段は〝飛べるけど飛ばない〟――ということなんですね」

 

 

 




どうも、お久しぶりです。
今回も、完全に趣味で考察してみました。

さて『魔法少女リリカルなのはReflection』の円盤、特製ブックレットにいつもの〝魔法辞典〟を期待していたら、映画のパンフレットと変わらない用語解説で、ちょっとガッカリでした。
一応、キリエが使っていたヴァリアントザッパーみたいな形をしていた銃が、ヴァリアントザッパーの派生形態で、しっかり別名称があったことはわかりましたが……。
「これ、ヴァリアントザッパーとはちょっと形が違うなあ」
と、ずっと気になっていたので、それが判明したのはよかったです。
あ、名称を知りたい方は円盤を購入しましょうね(笑)。
小説でキリエを登場させて、銃を使わせようと思っている方はちょこっと注意した方がいいかも。
まあ、そんな細かい部分まで気にしたり、突っこんだりする人も、中々いないとは思いますが。
自分も、読む側のときはまったく気になりませんし。

あと、リリカルパーティーのブックレットの表紙がア●ドルマスターみたいだなあ……と思ったら、そういえば昔マンガ書いてたっけ……と思い出し納得。
これの大きいイラストが欲しいです。
今度出る画集には……流石にまだ載ってないんだろうなあと、これも残念です。

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