というわけで、今回はヴィヴィオが『ベルカ平定間近の時期に戦場で命を落とした』という覇王イングヴァルトが、一体誰に討ち取られたのかを推理します。
ある日の放課後のこと。
「なのはママの名にかけて!」
ちょっと違う……。
「オリヴィエの名にかけて!」
これもちょっと違う……。
「あの、ヴィヴィオさん、一体なにをされているのでしょうか?」
校門で待ち合わせていた碧銀の髪の先輩がやってくる。
「あー、アインハルトさん。今回は〝高町ヴィヴィオの事件簿〟ということで……」
「そんなタイトルだったでしょうか?」
「真実はいつも1つか2つ!」
「ええ、毎回そんな感じですけど……」
「ヴィヴィっと閃いた!」
「……それは?」
「名探偵ピカ●ュウの決め台詞『ピカッとひらめいた』をまねてみました!」
「ピカ●ュウ?」
「あ~、なんだろう、こうフェイトママが縦にぎゅ~っと縮んで、お尻は……まあ、今のままでいいかな、おっきいし、それで獣人化したような……?」
「はぁ……それは新手のUMAですね」
「ええ、UMRで宴を……じゃなくて、ポ●モンバトル……でもなくて、今回のお題は〝ラストバトル〟です」
「ビームライフルを真上に突き出したような……?」
「惜しい!
それは〝ラストシューティング〟ですっ!
というわけで全ガンダム大投票、作品部門1位、ファーストガンダムおめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「キャラクター部門1位のオルガは意外だったんですが、鉄華団全員でオルガを推した――みたいな話で、そういうことならしょうがないというか、ちょっぴり納得してしまいました。
そんなわけでラストバトル――まあ、単純に最後の戦いのことなんですが……あの、クラウス陛下が最後に戦った戦場ってどんな様子だったか、アインハルトさんは覚えているんですか?」
「最後に戦った戦場というと、クラウスが亡くなったときのことでしょうか?」
「はい、そうです」
「そうですね、最も印象深い記憶の1つであるはずなのですが、その辺りは霞がかかっているといいますか、おそらく死の記憶というのは、あまりいいものではないですから、潜在的に避けているのかもしれませんね」
「つまり、よく覚えていないと?」
「はい」
「一騎打ちの最中に矢を射かけられて、首をスパーンとかでもなく?」
「ええ」
「そうですか……。実は、ですね、先日アインハルトさんが飛べるかどうか――みたいな話をしたじゃないですか」
「ええ、しましたね」
「そのときに調べていて気づいたんですが……。
ベルカ平定間近の覇王イングヴァルトを討ち取ったのは、ひょっとしたら、ヴォルケンリッターだったんじゃないかって……」
「……え、ええええええええええええええええええええええええええっっ!?
ど、どうしてそんな結論にぃぃっ!?」
「当時、諸王時代とも言われていたわけで、たくさんの王様がいたわけです。
その一人ひとりが、戦場では万騎を相手にできるような怪物クラスの力を持っていたわけです。
そんな時代に勝ち続けたクラウス陛下って、実際のところ、ゆりかごに乗りっぱなしのオリヴィエより強くなってただろうし、それこそ、魂砕き(ソウルクラッシュ)を手にしたベルド陛下みたいだったんじゃないかって」
「……ベルド……確か『ロードス●戦記』だったでしょうか?」
「はい。グラ●クレストは残念ながらロー●ス島ほどパッとしなかったので、ロードス●戦記でたとえさせてもらいますね。ちなみに、その場合わたしがファーンということで」
「……ええ、異論はありません」
「強さの基準がよくわからないという方は、とにかくすっごく強かった。
魔神王(なのはママ)を倒せるくらいに強かったと思っていただければ大丈夫です。
古代ベルカで、そんな覇王イングヴァルトの進軍を止めるには、それこそカシュー陛下みたいに罠を仕掛けるか――。
あー、もちろんカシュー陛下も最強に近いんですが、そのカシュー陛下をもってしても、必ず勝つためには準備しなくてはならない。
あるいは、『A's』のナハトヴァール戦みたいに、一騎当千のエースたちで取り囲むしかない――と思うんですよね」
「ええ、まあ、何となくわかります」
「ですが……ベルカ平定間近という時期。聖王連合に敵対する国もあとわずかだったでしょう。
そこまで追いこまれたということは、そもそも聖王連合に対抗できるだけの魔導師も、ほとんど残っていなかったはずです。
『History of Belka』にも、
『「古代ベルカ式魔法」の伝承者やその武装も、この時期にほぼ絶滅している』
と書いてありました。ああ、〝この時期〟というのは『聖王統一戦争』のことです。
そんな中で、覇王イングヴァルトほどの大物を討ち取るには――」
「やはり、罠を張ったのでは?」
「……それを言ったら元も子もないので、シグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生、ザフィーラ、そして、初代リインフォースさん――この5人の力を合わせたなら、わずか一年で諸王時代を終わらせるほど、化け物みたいに強くなった覇王イングヴァルトを、戦場で打ち破ることも可能だったんじゃないかなと」
「ええ、まあ、可能だったかもしれませんが、それって、ただのヴィヴィオさんの想像ですよね?
『ViVid』本編に、そんな描写1つもありませんし……」
「ふっふっふ……本当にそうお思いですか、アインハルトさん?」
「え、えええええええええええええええええええええええええええええ、ま、まさか、あったんですかっ!? そんなシーンが!?」
「いえ、ないです」
「……えー」
「でも、疑わしいシーンと申しましょうか、状況証拠ならあります」
「え、つまり、完全には特定できないけれど、ヴォルケンリッターがクラウスを倒したかもしれないと思わせるシーンがあったと?」
「はい」
「いやいやいや、そんなシーン見たことありませんよぉぉ!?」
「ええ、そうですね。
とりあえず、まずはそもそもの疑念の発端となる3巻を見てみましょうか?
合宿中に、アインハルトさん、デバイスの件でルールー……」
「どうかなさいましたか?」
「すみません。なんでもないです。
アインハルトさん、ルーテシアと一緒に八神家のみなさんと通信で話していたじゃないですか」
「はい、確かにありましたね、そんなシーンが」
「このとき、通信に出たのは、はやてさん、リインさん、アギトの3人。
ところが、ページをめくっていけばわかるんですが、あのとき――同じ部屋なのか、隣の部屋なのかまでは判然としませんが――シグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生もそばにいたんですよ。
ちなみにザフィーラは、砂浜でミウラさんを指導中でした」
「えっと、それが何か問題でも?」
「元々〝デバイスの件〟で連絡することは伝えてあったようです。
当時の古代ベルカを生き抜いた騎士として、覇王イングヴァルト直系の子孫と会話するチャンスですよ? 気にならないはずがないんです」
「それは、あくまでデバイスの件ということで、みなさん遠慮なさっていただけでは……? それだけで疑うのはちょっと無理があると思うのですが」
「いえいえ、シグナムさんやヴィータさんはしょうがないにせよ、ほら、シャマル先生って近所のおばちゃんや親戚のおばさんみたいな感じなんで、絶対顔を出しに――」
「あの、ヴィヴィオさん。胸から手が突き出しているんですが……」
「ひぃぃ~、シャ、シャマル先生はいつまでも若くてお綺麗で、みんなのお姉さんって感じですよねっ! わたしの憧れです!」
「OK。もう大丈夫。手は消えました」
「ふう、危ない、危ない……。
流石は北斗や南斗、元斗のない修羅の国ベルカにおいて最強と名高い〝孟古流妖禽掌(もうこりゅうようきんしょう)〟の使い手ですね。群将クラスです」
「ええ、『Reflection』を見たときも、シャマル先生にだけは勝てないと思いました……。
あ、でも確かに、この技を使えば、いくら全盛期のクラウスでも抗えないかもしれませんね」
「あはは、まあどうやって勝利したのかはおいといて――。
アインハルトさん、次に4巻を見てもらえますか?」
「あ、はい」
「ティオ――アインハルトさんのデバイス、アスティオンを受け取りに、八神家を訪れたシーンなんですが……」
「えっと、何かおかしなところがあったでしょうか? みなさんにこやかに接してくれたと思うのですが……」
「いやいや、だっておかしいじゃないですか!
合宿を終えてから2週間後。
あの日、八神家にいたのは、はやてさん、リインさん、アギトの3人だけだったんですよ!?」
「いえ、それはデバイス制作の依頼を受けたのがお三方だったわけで……」
「古代ベルカで、クラウス陛下と戦った可能性のあるヴォルケンリッターの4人だけが、あの場に姿を見せなかったんですよ?」
「それは、たまたまみなさんお仕事だったとか」
「主であるはやてさんのお休みに、誰一人として合わせなかったと?」
「たまには、そういう日もありますよ」
「……そうですね。みなさんお忙しい方たちだから偶然そういう日があったとしてもおかしくはありませんよね。
でもですね、アインハルトさん、聞いてください。
シグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生はまだわかるんです。
でも、ザフィーラまでいないのはおかしいんですよっ!
ザフィーラは管理局内で役職を持っていないんです。機動六課時代にも、部隊守護、要人警護を主な任務にしていたぐらいですから。
つまり、平時の『ViVid』時代のザフィーは、管理局へは行かず、基本、八神家道場で子供たちの安全を守りながら、ストライクアーツを教えるのがお仕事だったんですよ!」
「では、3巻のときのように、砂浜でミウラさんを指導なさっていたとか……?」
「いえいえ、アインハルトさん、あの日、ミウラさんが1人で練習していたのを見てましたよね?」
「そ、そういえば、チンクさんがドーナツ屋がどーとかおっしゃっていたので忘れていましたが、確かに砂浜で練習中のミウラさんをお見かけしたんでした!」
「ザフィーラはいましたか?」
「いえ、お一人でした……」
「そうなんです。
理由はさっぱりわかりませんが、ヴォルケンリッターの4人は、どういうわけか、アインハルトさんに会うことを、極力避けているんですよぉぉ!」
「きゃ、キャラが多くなりすぎるからとか……藤真先生が描くの大変ですし……」
「そういうメタ発言禁止ぃぃ!」
「えぇぇ!? あ、そう、そうですよ、ヴィヴィオさん! いくら古代ベルカ出身といえど、ヴォルケンリッターのみなさんだって常に起動していたわけじゃないんですよね?
だったら、クラウスの存在もよく知らないので、私に対しても、まったく興味がないとかで……」
「それが、ですね……少なくとも覇王イングヴァルトについて知っていることは確かなんです」
「え?」
「同じく4巻の、インターミドル選考会のとき、ザフィーラがアインハルトさんを見て『覇王の子は落ち着いてるじゃないか』と口にしてるんです」
「私聞いてないんですけどぉぉ!?」
「それだけじゃありません。あの会場には、シグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生、みんないたんですが……」
「そ、そういえば、私、誰とも口を聞いてないような……」
「はい。あの覇王イングヴァルトの記憶継承者がいるのに完全スルー。そして、ちょっと飛んじゃうんですが9巻です」
「えぇぇ、まだあるんですかっ!?」
「長かったインターミドル編が終わり、無限書庫編が始まる前、はやてさんがホテルの最上階に、みんなを集めたときです。
『かつて戦乱の時代を一緒に生きたベルカの末裔が、今この時代にまた集まってる』
『同じ、真正古代ベルカ継承者同士――行きたい場所や探したい資料があるなら、私も全力で協力するよ』
この台詞を聞いて、アインハルトさんは〝アレ?〟と思いませんでしたか?」
「……あ、あのときはエレミアの件で頭がいっぱいだったので気づきませんでしたが、言われてみればヴォルケンリッターのみなさんだけいません!」
「はい、そうなんです。もし、この集まりを行うなら、実際に当時の古代ベルカを生き抜いたヴォルケンリッターの、誰か1人でいいから、代表として参加するべきなんですよ! だって、彼らの生の記憶が役立つことだってあるはずだからです!」
「あわわ……」
「つまり、ヴォルケンリッターの4人が、こうまでしてアインハルトさんとの接触を避けていた――ということは、古代ベルカの覇王に対して、何か思う所があったのではないか?
例えば、ベルカ平定間近だった覇王イングヴァルトの命を奪ったのは、ヴォルケンリッターだった――とか」
「そんなことは……」
「ほら、アインハルトさんって、ジークさんと戦ったときや、クロに触れたときとか、何かキッカケがあると、普段忘れているクラウス陛下の記憶を思い出すことがあったじゃないですか」
「ええ……」
「ヴォルケンリッターの4人は、それを懸念して、なるべく接触を避けてた可能性もあるんじゃないかなって……」
「いや、ですけど……」
「高町ヴィヴィオはここに宣言します。
ベルカ平定間近だった覇王イングヴァルトの命を奪ったのは、一国を御することさえ可能と言われていた、旧ベルカにおいても遺失技術扱いの自立可動プログラム――ヴォルケンリッターの4騎と、闇の書の意志とその主。
ただし、その後間もなくベルカが統一されたことから、当時の闇の書のマスターと覇王イングヴァルトは相打ち、もしくはこの戦いにおいて完全に魔力を集めたことで闇の書は暴走、周囲を破壊したのち次の主を求めて転移した」
「いやいやいや」
「よし、これからいっちょ八神家にカチコミかけますかっ!」
「かけませんよっ!?」
「じゃ……」
わたしはアインハルトさんの手をつかむと、ナカジマジムへ足早に向かう。
早速試合をセッティング。
オレンジ髪の蹴り技少女が目を点にしている。
「え、どうしてボクとアインハルトさんが戦わなくちゃいけないんですかぁぁ!?」
「ミウラさんって、もはや八神家の一員といっても過言ではないですよね?」
「え? え、ええ、まあ……ちょっと気恥ずかしいですけど……」
「つまり、一番年若い、新規のヴォルケンリッターの一員といっても過言ではないですよね?」
「えへへ、そ、そこまで言われるのは光栄なんですが……」
「さあ、アインハルトさん。クラウス陛下の敵討ちですよ!」
「なんでですかぁぁ!?」
「……そうですね。ミウラさん、あなたに恨みはありませんが、この勝負、受けていただきます!」
「ええええええええええええええええっ!?
ああぁぁ、もう、わかりました!
ええ、八神家の代表としてミウラ・リナルディ、この勝負受けて立ちますよ!」
――カーン!
こうして2人の時代を越えたバトルが始まったわけなのだけど……。
「アインハルトさんがんばれゴエモン! ミウラさんもガンバ!」
リオコロがわたしのそばにやってくる。
「ヴィヴィオ~、またアインハルトさんをあおって~」
「もう、いくら何でも信じてくれるからって、あんまりアインハルトさんで遊んじゃダメだよ?」
「あはは、ごめんなさい。
でもね、リオ、コロナ、知ってる?
『ViVid』の5巻。
Memory;ex「鉄槌の騎士、想う」で、ヴィータさんの回想シーンがあるんだけど、ヴィータさんこんなことを言ってるんだ。
『ところで近頃、たまに昔の事を夢に見る事がある。いろんな昔の夢だ。戦乱の時代、夜天の書がまだ闇の書なんて呼ばれていた時代。人々も兵士たちも、天を覆う空も人の心も、暗い雲に覆われていた時代――』
そのシーンで、ヴィータさんの見ている思い出の景色は、クラウス陛下だったり、オリヴィエだったり、わたしたちが見たことのない『サウンドステージX』ですら登場しなかった、1000年前、冥王だったころのイクスの姿だったりするんだよ」
「?」
「えっと、ヴィヴィオどうしたの?」
「うん、だからね。
わたしには真実なんてわからないけど、本当のことを思い出したとき、もうアインハルトさんが心を乱さないようにすることも、わたしの役目かなって――そう思うんだよ」
と、ここまでは表向き。
真実はもっと裏に隠されている……。
クラウス殺害の真犯人とは!?
次回『魔王と狸のベルベットルーム』
で、リリカルマジカルがんばります!