私――高町なのはが訪れたのは本局の海上警備部。
目的は、幼なじみの1人――八神はやてに会うためだった。
建物に入ると、受付の女性に声をかける。
「航空戦技教導隊の高町一尉です。八神司令と面会の約束をしていたんですが……」
「はい、うかがっております。八神司令は地下の留置場でお待ちしているそうですよ」
「留置場……?」
はやてちゃんはどうしてそんなところで?
私はわずかな不安を感じながら、エレベーターで地下へ向かった。
1人、留置場の奥へと進む。
そこで私が見たモノとは――
薄暗い部屋に、会議室から運んできたような長机とパイプ椅子。
椅子には、鼻がちっとも長くないけど、ゲンドウポーズのように両手を口元で組んだ、ショートヘアの女性が座っていた。
「ようこそ、私のベルベットルームへ……」
よく見ると、入口の左右にも眼帯をつけた銀髪と赤髪の少女がいた。
「現実のなのはさんは、今は睡眠中(ウソ)なのです」
「主はやての御前だ、姿勢を正せ!」
――パタン。
私は見なかったことにして留置場の扉をそっと閉め直した。
「待って、待って、なのはちゃん!」
私は再び扉を開いた。
「いや~、だからはやてちゃん、ペルソナ5ごっこはやめようって……」
「今アニメやってるしなー。一応やっとかんとあかんかなーと」
「それでリインとアギトにまで眼帯つけさせて……看守のカロリーヌとジュスティーヌだっけ?」
「そうそう」
「はやてちゃんがどうしてもというので……」
「眼帯はチンクから借りてきたんだ」
「あ~」
納得。
そこでリインがハッと顔を上げた。
「すみません、はやてちゃん、なのはさん。私たちそろそろ仕事に戻らないと……」
「じゃーな、ヴィヴィオによろしく!」
融合騎の2人は足早に留置場を去っていった。
残されたのは、私とはやてちゃんの2人。
「はあ……はやてちゃん、あんまりやりすぎるとフェイトちゃんが色っぽい格好した怪盗になって乗りこんでくるよ~?」
「あはは、それはそれで見てみたい気もするなー」
とはいえフェイトちゃん、はやてちゃんに会うことを話したら忙しそうにしてたので、今日はもう来ないだろう。
執務官さんは大変なのだ。
そんなわけで、本日はN&H――後ろから砲撃コンビでお送りしたいと思います。
●
「――というわけではやてちゃん、連絡しといた件なんだけど?」
「あー、ヴィヴィオが言ってた、うちの子たち――ヴォルケンリッターが〝覇王イングヴァルト殺害の犯人〟だっていう話しやろ?」
「うん」
「まあ、ヴィータたちはあんま昔の話とか自分からはしてくれへんからなぁ」
「だね~。『闇の書事件』のころからそんな感じだったし」
「そやねー。ただ、ヴィヴィオの説も状況証拠ばっかで、決定打には欠けとる。あれではちょっと納得できへんやろ?」
「あ、やっぱり?」
「うん。まあ、可能性の1つとしては面白いけどな。私としてはうちの子たちより、もっと別に犯人がおるんやないかなーと」
「ほう~。例えば……意外なところで〝雷帝〟とか?」
「いやー、それはないやろ。もし雷帝が覇王に勝利しとったら、
『旧ベルカの最強覇者は聖王でも覇王でもなく雷帝ダールグリュン』
なんて、わざわざヴィクターが改めて言うはずないしなー。
というか、犯人候補の1人とは、なのはちゃんも会ったことあるんやで?」
「え、嘘!? 私の知り合いなの?」
「そーや」
「ん、ん~、例えば、意気揚々とゆりかごに乗りこんだクラウス陛下だったけど、オリヴィエに返り討ちにあったとかで――つまり、真犯人はヴィヴィオだったとか!?」
「それなんつーバッドエンドや!?
いやいやいや、なのはちゃんとヴィヴィオ、ついでにアインハルトも忘れとるよーやけど、ほら、王様んとこのユーリ。
あの子とオリヴィエ、クラウスの3人は会うたことあるんやで?」
「……え?」
「やっぱ忘れとったか。まー私らにしたら10年以上前の話やしな~。
劇場アニメ版第3弾『魔法少女リリカルなのは Reflection』の元ネタ。
PSP専用ゲーム『魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE GEARS OF DESTINY-』(以下『GOD』)。
のファイナルシークエンス。
ヴィヴィオVSユーリ 戦闘開始前の会話。
ユーリ 『ゆりかごの聖王――? いや、違う……君は一体?』
ヴィヴィオ『オリヴィエを知ってるの? オリヴィエは、わたしのご先祖様なんだ』
ユーリ 『……先祖……? オリヴィエは、子を残さなかったはず……』
アインハルトVSユーリ 戦闘開始前の会話
ユーリ 『あなたとは――どこかで会いましたか? ずっと昔に……あなたに良く似た人と、会った気がします』
アインハルト『ベルカ戦乱時代の事でしたら――きっと私の先祖です。私は、覇王イングヴァルトの末裔ですから』
ユーリ 『そうなのでしょうか――違うかもしれません。昔の記憶なんて、曖昧ですから』
――どや!」
「むむむ、100万パーセントってわけじゃないけど、3人は出会ってるかもしれないんだ~」
「そんなヒーローアカデミアみたいに言われても困るんやけど、まー、オリヴィエに関しては直接ではないにしろ、ヴィヴィオを見ただけで〝ゆりかごの聖王〟と断定してるしな。ほぼ同時代に存在していたとみて間違いないやろ」
「ということは、ユーリちゃんと3人の愉快な仲間たちが覇王イングヴァルト殺害の真犯人ってこと??」
「いやいやいや、愉快な仲間たち……は、だいたいおうとるけど、王様、シュテル、レヴィの3人に関してはようわからんで?」
「というと?」
「①ゲーム中に王様たちと、ヴィヴィオ&アインハルトの会話がないこと。
②そもそも、ゲームにしろ、映画にしろ、ユーリとマテリアルズは長いこと〝夜天の書に封じられていた〟わけや。ナハトヴァールの力でな。
さらに、闇の書の意志にして管制人格であるリインフォース・アインスや、ヴォルケンリッターが存在を知らなかった以上、王様たちは一度も表に出たことがない――と考える方が自然や」
「つまり、マテリアルズが聖王や覇王に会えるはずがないってこと?」
「そーや」
「だったらユーリちゃんが会ったってのは?」
「人間時代のシステムU―D。
つまり、闇の書に囚われる前――ユーリ・エーベルヴァインという1人の人間だったころのユーリが、オリヴィエやクラウスと会っていた――と考えれば説明はつく。
記憶が曖昧なのも含めてなー」
「あー、そういうこと。ユーリちゃん、昔は人間だったって話だもんね……」
「そや。そもそも、ディアーチェのこともみんなして王様、王様、言うとるけど、ゆりかごでフルボッコにされた――とか言ったら怒られそうやけど――オリヴィエやクラウスと同じベルカ諸王時代の王様の1人だったー、とか考えれば自然やろ?」
「確かに、諸王時代っていうくらいだしね、王様いっぱいいたし、記録に残っていない王国や王族がいてもおかしくないかあ……」
「まー、その辺りに関してはハッキリしないことも多いけど、『GOD』と映画のユーリ、並行世界といえども背景や事情がまったく異なるってことはないだろうから、2018年公開予定の劇場版第4弾――『魔法少女リリカルなのは Detonation』を観れば、もっと詳しくわかるんやないかなーと」
「HUG(はぐ)っと宣伝いれてきたね~」
「まあ一応……って、なのはちゃんもなー」
「あはは……。
最近ね、ヴィヴィオがルーテシアを〝ルールー〟って呼ぶ度に『ゔああああ』とか、よくわからない奇声を発しながら頭を抱えてるし。ぬるぬる発注しちゃうよー」
「なのはちゃんもついにプ●キュアの仲間入りかー、私の中の人はいつごろかなー……ふう、ま、そろそろ話を戻そか」
「だね。ユーリちゃんのことなんだけど、人間時代に会っていたと考えると、覇王イングヴァルトを殺せるとは思えないんだけど。
犯人捜しが振り出しに戻っちゃうよ?」
「そやね。まー、ドラマチックな物語としては、かつての闇の書の主と守護騎士たち、もしくはユーリとマテリアルズが、古代ベルカの空で覇王イングヴァルトと激突!
みたいな方が面白いんやろうけどなあ……今ある情報だけでは、本当の犯人の特定なんてコ●ン君でも呼んでこない限り無理やろ」
「バーロー! そんなことで諦めてどうすんだ八神ぃぃ!」
「そやかて高町! ……って、いやいやいや」
「あはは。それで、実際のところ、はやてちゃんとしてはどう思ってるの?
最初に言ってたよね。
犯人は別にいる。ユーリちゃんは犯人候補の1人だって。
つまり、はやてちゃんの中では、もっと別に本命の犯人候補がいるんじゃないかなって?」
「あー、流石はなのはちゃん、覚えとったかー。これなあ、〝リリカルなのは〟っぽくないから黙っとこうと思っとったんやけど……」
「〝リリカルなのは〟っぽくない?」
「そや。リインやアギトには聞かせたくないなーって」
「あー、それでわざわざベルベットルーム?」
「それについては内緒ということで。
じゃ、今から私の推理を話すよ?
何の証拠もない。あくまで私の想像、推察による覇王イングヴァルトの死の真相や――。
『聖王統一戦争』で一騎当千の活躍を続けるクラウス。
彼の〝覇王〟としての名声は日増しに高まっていく。
最初は戦場を共に駆け抜ける兵士たちの間で。
ついで民衆の間で。
クラウスの元へは、聖王連合に所属する友好国から婚約の話が次々に舞いこんでいた。
そして、英雄としてのクラウスの名声が、聖王に比肩するほど高まったとき、聖王連合の盟主である聖王家に1つの不安が生まれた。
仮に、ベルカを平定したとする。
しかし、そのころにはすでに、国民から熱狂的な支持を得ている聖王女オリヴィエは亡くなっているだろう。
そして、民衆はオリヴィエとクラウスの関係をよく知っている。
〝悲恋〟というものは、いつの時代も人々を惹きつけるからだ。
民衆は次代の王に誰を選ぶだろうか?
聖王家から?
いや、オリヴィエと共にベルカに平和をもたらした、若き〝覇王〟を、彼女の伴侶となったかもしれないクラウスを、新しい〝ベルカの統一王〟として望むかもしれない。
ゆりかご内部で生まれた中枢王家の子らを差し置いて。
もちろん、国王を選ぶのは民衆ではない。聖王連合だ。
しかし、民意というものは侮りがたく、また、クラウスをベルカの王とすることで、聖王家を権力の座から引きずり落とそうと目論む輩がいるかもしれない。
さらに、聖王家がゆりかごの聖王として、オリヴィエを使い捨てにしたことが知られれば、怒りの矛先は聖王家に向けられ、民衆は全てクラウス側につくだろう。
――なのはちゃん、ここまででもうわかったやろ?」
「うん……」
「今回の結論。
ベルカの歴史に名を残した武勇の人にして初代覇王――クラウス・G・S・イングヴァルトは、ベルカ平定間近の時期に戦場で命を落としたとされている。
しかし、古代ベルカ式魔法の使い手や武装が、この戦争でほとんど失われたことが事実であれば、すでに戦場で覇王を討ち取るんは不可能に近い。
聖王連合と敵対国の戦力差が大きすぎるからや。
例え奇襲をかけたとしても、覇王は一騎で、万騎を相手にできる。
しばらく持ちこたえれば、いくらでも強力な援軍が駆けつける。
勝ち目はない。
よって、私――八神はやて海上司令が推察するんは、次のような結末や。
『覇王クラウス・G・S・イングヴァルトは、類まれなる武勇をいかし、ベルカ平定間近まで活躍を続けた。しかし、彼の名声を恐れた聖王家の手によって、正当とは言い難い方法で始末された』
戦争の勝者であるはずの聖王家が、統一戦争後すぐに滅びたことからも、ベルカをまとめるべき聖王連合のトップはすでに腐りきっとったんやろな。
民衆の一斉蜂起が起きたのか、各国の反乱が起きたのか、どちらにせよ、ゆりかごを動かせない、覇王もいない聖王家では、もはや止めることはできへんかった。
結果的に、オリヴィエやクラウスの奮戦もむなしく、もう二度とベルカが統一されることはなく、ただ、最後の聖王として戦乱を集結に導いたオリヴィエを祀る聖王教会だけが今日まで残っている。
――っちゅーわけや」
「それはまた……」
「実は、証拠もあってな。
『ViVid』の2巻で、
ルーテシア『クラウスとオリヴィエの関係は歴史研究でも諸説あるんだよね』
コロナ 『そもそも、生きた時代が違うって説が主だよね』
〝生きた時代が違うって説が主流〟――なんて、どこをどうやったらそんな話に変わるんやろな。
600年くらい前の話やから、日本の歴史で例えれば戦国時代に浅井長政とお市の方が、実は生きた時代が違いました――言うてるようなもんやで?」
「聖王家が情報統制したってこと?」
「たぶんな。自分ら聖王家を守るため、オリヴィエとクラウスに関する情報を、意図的に操作、改ざんした可能性が高い。酷い話や」
「それであんなに有名で記録も残ってるのに、諸説ありなんてことになってるんだ……」
「胡散臭い話やろ?
一体どんな風にしてクラウスをハメたんやろな」
「ねえ、ひょっとしてクラウス陛下以外も?」
「たぶんな。
ほら、さっきも話したけど『History of Belka』の、
『「古代ベルカ式魔法」の伝承者やその武装も、この時期にほぼ絶滅している』
ってあるやろ?」
「うん」
「戦争で〝敵対〟した伝承者や武装が失われたんはわかる。
でも、〝味方〟した伝承者や武装まで失われたんはおかしい。
生き残ってるはずや」
「そっか、クラウス陛下のように、ベルカ平定に尽力した古代ベルカ式魔法の伝承者がことごとく始末されたとすれば、辻褄が合うんだ……」
「そや。聖王家にとって危険な相手はことごとく始末された。あるいは、反乱の最中に亡くなった。聖王家もろともな」
「全滅エンド……何だかハムレットみたいだねえ……」
「ヴィヴィオなら『富野監督みたい!』って言うんやろうけど」
「あ~、言いそう」
「でも、こんな血なまぐさい話、ヴィヴィオやアインハルトだけじゃない、ミウラを含めた子供たちには聞かせたくない。
みんな明るくていい子ばかりやから、AにはAに向いた話、BにはBに相応しい話があるからな」
「そうだね、オーベルシュタインちゃん」
「あー、実際、銀英伝のオーベルシュタインみたいに、クラウス陛下の参謀役として、影の部分を任せられる人物がいれば、歴史は変わったかもしれへんなーと」
「ベルカの歴史がまた1ページ、だね……」
●
話を終え、私とはやてちゃんが長机とパイプ椅子を片づけようとしていると、カンカンカン――と留置場を駆けるヒール音が聞こえてきた。
「はぁ、はぁ……なのは! はやて! お待たせっ!」
「フェイトちゃん来たんだ! ……って、何で猫の仮面にツインテール?」
「ピッタリした赤いボディスーツまで着て……」
「ほら、ペルソナ5って聞いて! パンサー、パンサー、高巻杏」
「「あー」」
とりあえず激写する。
――パシャ、パシャ!
「え、ちょっと、やめて!?」
――エクセレント!
「よし、さっそくヴィヴィオとユーノ君、あとはエリオとキャロ……そうだ! アルフとクロノ君にも送らなきゃね」
「そんなら私はすずかちゃんとアリサちゃんに送っとくわ。おっと一応シグナムにも送信っと」
「いや~」
こうして、フェイトちゃんの黒歴史もまた1ページ。
「ついでに、めちょっく! とか言ってくれないかな~」
「いやー、流石にそれは無理やろ」
「私、堪忍袋の緒が切れました!」
最後のオチの意味に気づく人はどれだけいるんだろう……?
というわけで、
公式で語られているわけではありませんが、なんとなく、クラウス陛下の結末はこっちが正解な気がします。
あんまりうれしくないですけど、せっかくオリヴィエやクラウスが統一したベルカが、結局滅んだということは、きっと、そんなことばかりやってたんだろうなと。
リッド(ジークのご先祖様)が軟禁され、10年以上国外に出れなかったことからも、当時の聖王家はもう末期だったんだろうなと思います。
それはそれとして、シグナムやヴィータたちとクラウス陛下が一戦交えるシーンも見てみたいですね。ユーリの台詞から、当時『闇の書』が存在したのはまず間違いないので、戦っていてもおかしくないと思うのですが……。
ところで、今期のアニメ、なのはさんの中の人の出番が多くてうれしいです。
よかった、よかった……。
ていうか重要な役、多すぎでは(笑)。