ゴーレム創成の参考にと、ガンプラを買いに行ったはずのコロナがみつけた、バ●ダイの新商品とは……!?
とある9月の頭。
夏休みが終わってすぐの出来事だ。
わたしがSt.ヒルデ魔法学院に登校して、教室に入ると、自分の席に座ったコロナが、机の上をジッと凝視していた。
置いてあるのは、何やらプラモデルの箱。
「おはよう、コロナ。
ガンプラじゃないなんて珍しいね」
「あー、うん……。
昨日新しいガンプラを買いに行ったら、こんな新商品が売っていて……」
箱のサイズは、一般的なHGガンプラの箱を、一回り小さくしたくらい……えっと、ティッシュ1BOXくらいと例えた方がわかりやすいだろうか。
片手で持てるサイズである。
色は、全体的にアインハルトさんより濃いグリーンで、黒字で『ねこぶそう てんこ盛り』と書いてある。
「ねこぶそう?」
「うん。8月31日に発売した、バンダイの新商品のプラモだよ」
なるほど。
言われてよく見ると、ガンプラと一緒でパッケージの右下に、おなじみの赤地に白文字の『BANDAI』マークが表記されていた。
「ガンプラの新商品コーナーに、一緒に並んで置かれてたの」
「あー、それは嫌でも目に入るよねー。
でも、ガンプラじゃないし、誰がこんなの買うの……って、コロナが買ってるか」
「うん。わたしもよく知らなかったから検索してみたら、どうもエイプリルフールのジョーク企画だったのを、実現しちゃったみたい」
パッケージ裏を見ると、こんなうたい文句が書いてある。
ねこぶそうとは
地上のヒエラルキー最上位である、ねこたちのために開発されたメカの総称。
彼らの生活をより快適にすべく人類が作り出した愛の結晶「ねこぶそう」だが、人類の熱い想いとは裏腹に、いまやねこたちの遊び道具……。
それでもかわいいので結果オーライな人類なのでした。
「最近ベアッガイとか、可愛い系のガンプラが売れてたしねぇ……空前(?)の猫ブームとも言われてるし『これも行ける!』とか思って、ゴーサイン出しちゃったんじゃないかな――」
などと話していたら、視界でリオのアホ毛がぴょこんと揺れる。
「ヴィヴィオ、コロナ、おはよー。
朝からガンプラ作ってないでさ、新しく始まったジオウの話でもしようよー。
仮面ライダージオウ」
「んー、歴代平成仮面ライダーが出るっていうからディケイドか、未来で魔王になるってことから漫画版ブラックみたいな感じかな、と思って見てたら、電王の1話みたいだった。
あと、2話で味方デレるの早いな――っていう、ジオウ?」
「……うん、まあ、そうなんだけどね。
魔王ってとこが、ヴィヴィオも他人事じゃないでしょ?」
「でも、うち、大魔王バーンの系列だからなぁ~。
天地魔闘の構えとか……」
「魔王に系列とかあるのっ!?
……って、あれ? これガンプラじゃない!?」
「今ごろ気づいたんだ……」
「どーしたのコロナ、熱でもあるの?」
「もう、リオ。私ガンプラ以外も作ってるでしょ」
巨神ゴーグとか、マニアックなやつだけど。
「ほら、リオ。よく見てみなよ、ねこぶそうだって。猫を主役にしたプラモだよ?」
「あー、コロナってアインハルトさんちのティオとか大好きだもんねぇ~」
「ティオは一応豹だからー」
どう見ても猫ですけど~。
ちなみに、この〝ねこぶそう〟というシリーズ。
(税込)540円の並盛りが、4種類。
さらに、一箱で全ての武装がそろう(ただし、猫は1匹しか入っていない)お得な(税込)1499円のてんこ盛り――の、合計5種類が発売したらしい。
コロナは、その〝てんこ盛り〟を買ったわけだ。
「『デカ盛り 閃乱カグラ』的な?」
「うん、それ〝盛り〟しかあってないから。
普通に全部乗せとか、魔神英雄伝ワタルの合体魔神ゴーストンのプラモで例えないと。色違いの魔神が14体セットだったやつ」
「それ、余計にわからないからねっ!?」
「じゃ、開けてみるよ――」
開けたくてウズウズしていたのだろう。
コロナが、ねこぶそうの箱を側面から開く。
「ガンプラと違い、上下が離れるタイプの箱じゃないんだね」
「あれってさ、意外に便利だよねー。裏返したフタの上で切ると、切ったパーツがどっか飛んで行かないし」
ねこぶそう――という、普段プラモデルを作らない人をターゲットにした――と考えると、優しくない箱ともいえる。
4種類の並盛りの武装ごとなのか、小分けでパーツが入っていた。
「猫のフィギュアが、わたしが思ってたよりデカイ……」
「う~ん。色数が……。これ、昔の単色だったころのガンプラみたい……」
「組み立てたら、MS(モビルスーツ)ができそうだね……」
「ちょっと説明書が小さすぎない? 写真を白黒にしてるから、細かい組み立て部分が見づらいし」
「詳しい組み立て方は、QRコードで読み取るんだって」
「それでか~。スマホやデバイス持ってない子はどうするの?」
「……自力で頑張る」
「あー」
「でもさー。ガンプラと比べたら、パーツ数すっごい少ないよね。説明書なんてなくても、これなら簡単に組み立てられるんじゃない?」
「言われてみると、確かに……」
「あああああああああ~~っ!?」
「ちょ、どうしたのコロナ!?」
「説明書に――ガンプラで言うところの、イラストつき〝パーツリスト〟がない!
だから、パーツが全部そろっているかどうか、よくわからない!」
「それ、結構致命的かも。ただでさえ、新商品でよくわからないプラモデルなのに……。
再販や、11月の第2弾は、取説のサイズを2倍にして、ちゃんと載せた方がいいよね」
ひょっとしたら足りないパーツがあるかもしれないけど――わからないので――とりあえず、個々のビニール包装をハサミで開け、3人で手分けして組み立て始める。
「むぅ~。可愛い見た目に反して、基本の黒いジョイントパーツがきつい! 固いのに、小さくて力が入れづらい! ハマらない!」
「最近の出来が良い、作りやすいガンプラに慣れてると手強いね……」
「パーツ数は少ないけど、コレはコレで厄介かも……」
「ねぇ、コロナ。ニッパーが必要なのは当たり前として、組み立てるのが固くて、押さえるにペンチを使わないとダメってのは、どうなの?」
「うわ、コロナ。ニッパーの刃が入らないパーツがあるんだけど、これ、どうやって切るの~?」
「そこまで丁寧に作るつもりはないから、手でねじ切っていいよ」
「あたし向きかも!」
一応、切ったあとヤスリをかける。
「う~ん、このミサイルポッドが上手くハマらない……。リオ、お願いしていい?」
「任せて! ……って、何だこれ、キツい……。うぅ~、アインハルトさんでも呼んだ方が……」
「う~ん、アインハルトさんのパワーだと、破壊しそうだしなあ……」
学院祭でも、アームレスリングで競技台を破壊してたし……。
するとコロナが、
「大丈夫、コレを貸してあげるから――」
「「って、マイストアームっ!?」」
「いやいやいや、これをどうしろと?」
「パーツが砕け散りそうなんだけど」
「冗談、冗談。はい、どーぞ」
「……なに、この木製の金槌みたいなの?」
「こんなこともあろうかと、木槌を用意しておきました」
「どんな状況を想定してたの!?
真田さんでも想定しないよ!?
ていうか、朝から教室で、プラモデルを木槌でトントン叩いて組み立てるって、ダクネスしか喜ばないような羞恥プレイなんですけどぉぉ――っ!?」
「よくパンツみせてるヴィヴィオならできる!」
「2人とも、わたしをどーいう目で見てたのぉぉ!?
はぁ~、こんな可愛いニャンコなのに……。
これ、本当に初心者の子供や女の子に組み立てられるの~?」
「ヴィヴィオ……箱の側面をよく見て」
「えっと……ねこぶそう……プラモデル……。
対象年齢15才以上ぉぉ!?」
ちなみに、ガンプラは基本、8才以上である。
「なんてこったい。15才以上って……」
そういえば、昔、藤真先生が『R-15』って小説のイラスト描いてましたがー。
「罠だ。孔明の罠すぎる……」
そりゃ、組み立てるの大変なわけだ……。
「ねぇ、結局木槌でも、完全にハマりきらないんだけど……」
「……ふぅ。そっか~。やっぱり最初に削ってから組み立てればよかったね」
コロナが、ハマらないパーツをヤスリなどで軽く削ると、今度はあっさりハマるようになった。
「さっきまでの苦労は一体……。
面倒くさがらないで最初からやろうよ!?
木槌なんていらなかったよねぇぇ!?」
こうして、朝の時間だけでは足りず、昼休みを使い、ようやく完成したのだけど……。
「う~ん、あのゲルググの足というか、ディジェの放熱板みたいなパーツがこんなことになるとは……」
「並盛りの武装が全部合体することで、どう考えても余りそうなパーツまで、ムダに全部使っちゃったねー」
「意味ないところにハメるの多かったけど……」
「ねぇ、コロナ。このねこぶそうって、ひょっとして、自分で好きに色んなパーツをくっつけられるってこと?」
「そうだよ。ブロックみたいな感じかな。
他メーカーの商品とも、互換性があったりするから、自分なりのねこぶそうを作って遊べるんだよ。
ネコが操縦するロボットにしてみたりね」
「じゃ、今完成したこれは、説明書通りの基本形ってことになるんだ――」
色は全体的に密林っぽいグリーン。
キャタピラに、腕のアーム。砲身。
イメージとしては、ザクタンクとマゼラアタックを悪魔合体させて、中央(胴体)に猫がはまっている――といったところか。
陸戦用なのは間違いない。
「確かに〝てんこ盛り〟って感じだけど、これに1500円分の価値があるかというと……」
「ガンプラ買った方がよかったよね。
サラちゃんピンチだし、ダブルオースカイの方が……」
「アニメはイマイチだけど、ゾイドの方が……。
少し高いけど、ワイルドライガーとか、かなり出来が良いって話だよ?」
「もう! ガンプラともゾイドとも違うの!
いい? ヴィヴィオ、リオ。
半分ネタから始まったとはいえ、新しいシリーズなんだから、最初はこんなものなの!
それに、私のネコの目は当たりだったんだから、ほら、可愛いでしょ?」
ネコの目に当たりってナニ!?
ハズレとかあったの!?
「う~ん、まあ、コロナが満足してるなら別にいいんだけど……。
で、このねこぶそうどうするの? 飾っとくだけ?」
「一応、自分なりにパーツをつけ加えて、改造してみようとは思うけど……」
「だったらさ、せっかくだし、ガンプラバトルでもやる?
普段は負けるけど、ねこぶそうが相手なら、わたしでもコロナに勝てるかもだし」
「というか、これでコロナに負けたらヴィヴィオって……」
「リオだって、ちびリオ使ったとき以外は全敗のくせにぃぃ!」
「……うん、わかった。
色々と改造してみるから、明日勝負ね!」
●
放課後。
コロナがアインハルトさんを連れて、先に帰ってしまったので、リオと2人で、明日の勝負に使うガンプラを探しにショップへ向かう。
「ヴィヴィオは何にするの?」
「う~ん、相手はコロナとはいえ、ねこぶそう。
キャタピラで空は飛ばない。
あんまりガチなガンプラだと引かれるというか、それで勝っても~、って感じだしね」
「ベアッガイさんとか?」
「ん~、かといって手加減はしたくないし、BB戦士の騎士ガンダムなら、飛び道具がないし、面白い勝負ができるんじゃないかな~と」
「ノーマル?」
「ううん、三種の神器のやつ。フルアーマー騎士ガンダム」
「それ、十分強いよねぇぇ!? HP10000だよ?」
「でも、あんまり長くその姿でいたことがないというか、炎の剣がないだけで、HP800だし、バーサル騎士ガンダムの方が強いイメージがあるというか……。
そういうリオこそどうするの?」
「ヴィヴィオが騎士ガンダムなら……あたしはスペリオルドラゴンで」
「それこそ、ガチなやつだよねぇぇ!?」
「たまには、ちびリオ以外のキャラで、カッコよく勝ってみたいんだよぉぉ――っ!」
気持ちはお察しします。
こうして、完成したガンプラを2人で眺める。
コロナには悪いけど、
「「オーバーキルすぎる!!」」
「たまにはいいんじゃない? コロナ悔しがるけど」
「だね~」
そして、ガンプラバトル当日。
「おまたせ、ヴィヴィオ、リオ――」
――ズゴゴゴゴ……。
わたしとリオの操るガンプラの前に現れたのは、巨大な空飛ぶねこぶそう……というか、
「「それ、もうデンドロビウムだよねっ!?
中央のガンダムの代わりに、猫(ティオ)がはまってるだけでぇぇ――っ!!?」」
ゴライアスですらない。
「マイクロミサイル全弾発射ぁぁ!!」
「「あ~」」
――ちゅど~ん!
コロナって――アインハルトさんとの試合からもわかるように――結構、負けず嫌いなの、忘れてました……。
リリカルなのはである必要性が、まったく感じられない(笑)。
って、よく考えたら、前はいつもこんなノリだったような気も……。
というわけで、もうじき映画公開だというのに空気も読まず、
次回『ハーディス氏はスカさんクローン!?』
で、リリカルマジカルがんばります!