ニッパーもいらず、〝素手〟で作れてしまう、初心者向けキットなのだけど……。
果たして、爆発したり、粉々に砕け散ったりと、お約束は起きるのか!?
物語は10月に遡る。
『聖誕祭』よりも前の出来事だ。
わたしがSt.ヒルデ魔法学院に登校して、教室に入ると、自分の席に座ったコロナが、机の上をジッと凝視していた。
置いてあるのは、何やらプラモデルの箱。
「おはよう、コロナ――って、この入り方、前に見たような気がするぅぅ!?」
「あ、ヴィヴィオ、おはよう」
「おはよ、コロナ。――で、そのプラモなに? まさかまた『ねこぶそう』?」
「ううん。今日はハロプラの『ボールハロ』だよ」
「『ボールハロ』?」
「うん。パッケージを見てもらえればわかると思うんだけど」
「……ああ! 初代ガンダムに登場した、丸っこい1つ眼で、頭にキャノン砲がついてる機体――ボールだね!」
「そう。そのハロバージョン。他のハロやプチッガイとも、飾り台で連結できるんだよ」
「へ~」
パッケージ横の『集めて楽しい!』と書かれた写真を眺める。ピンクやグリーンのハロと並んで映っている。
「どうせなら、『ガンダムビルドダイバーズ』に登場したピンクのモモハロにしとけばよかったのに。モモちゃんが使ってたやつ。猫耳とかついてて可愛いし――」
すると、コロナがムッと眉間にシワを寄せた。
「あんな軟弱なハロと、ボールハロを一緒にされたら困るよ!」
「軟弱って……。セイラさんじゃあるまいし……。
じゃなくて、ハロもボールも似たようなものじゃ……」
「ヴィヴィオ……アニメだけ見たり、ネットの情報を鵜呑みにして、ボールを雑魚キャラのように思っているかもしれないけど、そんなことないんだよ?」
その後、普段はおとなしいコロナが延々と語りだす。
「――初期ギレンの野望だと序盤MSのない連邦はザク相手にしょぼい戦闘機オンリーで戦わないとダメなんだけど、あ、戦艦もいるけど落とされると痛いしあんまり弾が当たらないし数も少ないから後方から攻撃ね。そこに現れるのが救世主ボール。資金も資源も格安のくせに遠距離攻撃ができるから、さらに格安の戦闘機の後ろからスタックして撃ちまくれば――なんということでしょう、あのザクですら軽々と破壊することが可能なんだよ! MSなんていらんかったんやー」
「う、うん……」
「ちなみに、MSなかったから戦闘機にユウ・カジマ――射撃能力が高かったから――を乗せて戦わせてたら、やたら攻撃を避けるザクがいて、他のザクが全部落ちても1機だけの残ってて『何だコイツ?』と思って索敵してみたら、なんとパイロットがララァだったという。普通あんな時期のルナツー宙域にララァが乗ったザクが攻めてくるなんて思わないよね? まあ、そんなララァですら戦闘機とボールのコンビの前には沈んでいったわけですが……」
「あー、うん、わかった。コロナのボール愛はわかったから……。
というか、コロナって、ゴライアスといい(そういえば、頭がボールみたいに丸いっけ)意外とチョイスが渋いよね」
「そ、そうかな……?」
「うん。ポーズはあざといのに」
「それ、関係ないよねぇぇ!?」
「でもコロナ――」
と、わたしはボールハロのパッケージを眺める。
「表紙に『道具不要』『接着剤不要』『EASY ASSEMBLY!』と書いてあるくらい初心者向けキットなのに、わざわざ学校まで持ってきて作る必要あるの?」
「あ、私じゃなくて、アインハルトさんに組み立ててもらおうかなと思って」
「アインハルトさんにぃぃ!?」
…………。
「……マズかった?」
「う~ん、アインハルトさんなら、グリーンのハロの方がよかったんじゃ」
色的に。
「あ~、そこは、ほら……私の趣味?」
というわけで、放課後。
『精神を集中して指先を動かすことで、繊細な魔力コントロールの訓練になる!』
とか、
『授業で行うゴーレム創生に必要な、イメージトレーニングに役立つ!』
とかなんとか、だまくらかして、あのアインハルトさんに、プラモデル制作にチャレンジさせることに成功した。
椅子に座ったアインハルトさんが、強敵に挑むように、机上に置かれたボールハロと向き合っている。
「――なるほど、道具を使わなくていい、というのは素晴らしいですね。
以前、ペンチをハンドグリップ(握力を鍛える器具)のように握ったら、バキッっと壊れてしまって……」
「「「おう……」」」
「素手でいいなら、そういった道具を壊すこともありませんしね」
「これ、絶対ボールハロ破壊オチだよね?」
わたし&コロナと共に、リオがドキドキしながら見守っている。
すると……、
「あの、ヴィヴィオさん?」
「はい?」
「どうして使用しないパーツが、こんなにいっぱいついているのでしょうか? 特にこの黒いパイプみたいなパーツ、4つもあるのに全て使わないって、おかしくないですか?」
「そ、そう言われてみると……コロナ?」
「確かに、まったく使わないってことは、予備パーツでもないだろうし……」
「『ねこぶそう』にでもくっつけといたら?」
「うん、そうしとく」
ちなみに、あとで調べてみたところ、ボールハロを通常のハロにするための手足用パーツでした。
バンダイさん、せめて、取扱説明書に記載しておきましょうよ……。
他のハロを購入していない人や、普段ガンプラを作らない人だと、ただの余剰パーツだと思って、捨てちゃうかもしれませんよ?
台座の裏に収納スペースがあるなんて、気づかないよぉぉ!?
「それでは、取扱説明書の順番通りに作り始めますね」
アインハルトさんが、緑色した最も大きいパーツを、ぐりぐり素手で取り外そうとする。
「あの、ヴィヴィオさん?」
「はい?」
「パーツは取れないんですが、先に回りの枠がもげてしまいました……」
「えええ――っ!?」
「早速破壊オチぃぃ!?」
慌ててコロナが見る。
「あ、普段ニッパーで、簡単に切るから気づかなかったけど、枠の色と色が変わる部分、強く力を入れると外れやすくなってるんだ……」
いまさら知った新(?)事実。
「あの、ヴィヴィオさん?」
「今度はなに!?」
「小さいパーツはすぐに取れるのですが、大きいパーツが……」
――バキィィッ!
「「「やっちゃった!?」」」
「いえ、取れました」
「スゴい音が鳴るくらいの勢いでもぎとったのに、意外とキレイに取れるもんだねー」
ラッキーだったのか、ガンプラが凄いのか。
「むぅ……」
「どうしましたか、アインハルトさん?」
「いえ、時々固いパーツが混じっていて……おっと外れました」
そのまま、危なげなく組み立てが進んで行くと思われたのだけど、
「これは……ちょっとはめ込みがキツイですね……」
マジンパワーじゃないけど、アインハルトさんが覇王の力をこめる。
すると、
「ちょっと待ったああああああああああ!?
アインハルトさん、ちょっと待ってください! ほら、その赤いパーツ、折れそう、折れそう、根本が白くなってきてますよぉぉ!?」
「え?」
慌てて引き抜くと……セーフ!
圧力がかかって白く変色しているものの、赤いパーツは無事だった。
コロナが解説してくれる。
「一見すると同じ色、同じパーツに見えますが、よく見てください。リオの変身前と変身後くらいサイズに違いがあります」
「それ、ほとんど変わらないってことじゃ……」
「だいぶ変わるよねぇぇ!?」
はめこむ場所を替え、エンジンノズルみたいな赤いパーツさえつけ終われば、あとはもう簡単。
キャノン砲がちょっと取りつけにくい点を除けば、初心者のアインハルトさんでも迷うことはない。
「ハロプラってスゴいよね」
「アインハルトさんでも作れるから?」
「いやいや、そうじゃなくて。だってニッパー使わなくても、ほら、ゲート処理がいらない。紙ヤスリを使わなくても、パーツ同士がピッタリはまるんだもん……」
「ゆっくり組み立てても、10分もあれば完成するしね。時間がないけど、久しぶりにガンプラ作ってみたい――って人にはちょうどいいかも」
とかなんとか言っていたら、
「完成しました!」
アインハルトさんが、完成したボールハロを、ゼルダの伝説のアイテムゲットみたいな感じで、頭上に掲げた。
「「「おおお~、おめでとうございますっ!」」」
「これで私のゴーレムもレベルアップしたということですね!」
そんなアインハルトさんとボールハロを眺めながら、リオがわたしにささやいた。
「ねぇ、どうするの? ふつーに完成しちゃったけど??」
「はわわ、
『ViVid』も、映画みたいに『Detonation』(爆発)しちゃいました~!
みたいなオチを考えてたのにぃぃ~~っ!?」
「まあまあ、アインハルトさんも喜んでいるみたいだし――」
とか言っているコロナが、実は一番喜んでいるので――アインハルトさんも一緒にガンプラバトルできるから――今日のところは、これでいいかな?
これ、作品自体は結構前に完成していたのですが、中々アップする機会がなくてこんな時期に(笑)。
正直な話、ボールハロ、ストレスなく組み立てることができ、完成後の満足度も高かったので、地味ながらオススメの一品です。
値段も、実売価格は500円くらいなので、悪くない。
ガンプラのパーツの多さに「う~ん」と悩んでいた方にはいいかもしれません。
早い人なら5分で作れるそうです。
あとは、お好みのハロを選んでいただければ……って、リリカルなのはとまったく関係ない! 今更ですけど(笑)。