「わたしは最初、スバルさんに格闘の基礎だけ教わったんです。それから独学で頑張ってたらノーヴェが声をかけてくれて」
2人の出会いは偶然だったのか、それとも?
日頃の考察を活かし、『鮮烈な物語』の前夜を描く――
1
その日、ノーヴェが珍しく――フーカさんと同じマンションで暮らすようになってからは特に――ナカジマ家に帰ると、チンクが深夜アニメを見ていた。
ちなみに、ウェンディとディエチは、コンビニに出かけている。
「ふむ……。なあノーヴェ」
「どうしたチンク姉?」
「眼帯つながりで『うちのメイドがウザすぎる!』というアニメを見ていたのだが……」
「あー、うん」
どちらかといえば、眼帯をつけたメイドさんのムキムキな体格(身長が高い!)に、憧れて見ていたのではないか――と思ったけれど、ノーヴェは気づかない振りをする。
「この主人公――ロシア人の血を引くという小学2年生の金髪少女を見ていると、昔のヴィヴィオを思い出さないか?」
「あー、性格は全然違うけど、外見は似てるかも……」
ただ、それを言うならチンク姉も似ているよなあ――と思ったけれど、ノーヴェはそっと涙を拭きつつ口には出さない。
「――そこでだ。当時のノーヴェは、様々な資格を取り、バイトや救助隊の研修で忙しくしていただろ? それなのに、なぜ、1回や2回ではなく、本格的に、ヴィヴィオにストライクアーツを教えようと決意したのかと思ってな」
「今更どうして?」
「ああ、直接聞いたことがなかったからな。単なる興味だよ」
「……そうだなあ」
それは、わたし――高町ヴィヴィオとノーヴェの出会いの物語。
2
更生プログラムを終えたあたし――ノーヴェとチンク姉、ディエチ、ウェンディの4人は、姉貴――スバルのナカジマ家に引き取られた。
姉妹の順序に関しては、家族会議という名の一悶着あったんだが、それはまた別の物語なので、今回は割愛させてもらう。
それから、しばらく経ったある日のこと。
「すまないな、ノーヴェ、明日の護衛、頼まれてくれるか?」
「ああ、王様のだろ? いいよ、そういう日もあるって」
夕食後、眼帯を外したチンク姉が、申し訳なさそうに頭を下げた。
「王様、か……」
あたしたちナンバーズの王になるはずだった少女――高町ヴィヴィオ。彼女の護衛。
「ゆりかごが落ちたとはいえ、陛下の価値が失われたわけではないからな」
貴重な聖王のクローン。唯一の成功例。
「ゆりかご以外にも、王様にしか動かせないロストロギアとかあんだろ?」
「ああ。それに、古代ベルカ、特に聖王家の再興を目指す輩にとっては格好の旗印。担ぎ上げようとする者も多いだろうな」
「ったく、ベルカなんて国、とっくの昔に終わってるっつーの」
「過去の栄光を忘れられない者たちもいる、ということさ」
だからこそ、王様を陰になり日向になり守る者が必要になる。
「学校なんて通わなければいいのに。そーすりゃ、全員安心だ」
「そう言うな、ノーヴェ。私たちですら、自由に生きる権利が与えられようとしているのに、小さな陛下には与えられない――なんておかしいだろ?」
「それは……そうなんだけどさ」
聖王教会系列の学校ということもあり、今は教会組の3人が護衛につくことが多い。
ところが、
「明日から、大がかりな聖地巡礼ツアーがあるのでな、どうしても時間が取れないそうだ。オットーやディードをなだめるのが大変だった」
「あー、あいつら変に真面目だからなあ……。そのうち『陛下に死んでお詫びを~』とか言い出しそうだ」
「ああ、まったく。こういうときは、セインくらい融通がきいてくれた方がいいんだが」
「いや、セインはダメだろ」
「そうか? あいつは隠れての警護には最適なんだがな」
地面や壁に潜るディープダイバーという能力をもつからだ。
「オットーやディードだって、あの性格だから、護衛にはピッタリだろ?」
「まあ、そうなんだが。陰から見守りすぎて、学院から苦情が来たことがあってな」
「あー、確かに、傍から見たら不審者か……」
ストーカーである。
「この前のディエチの一件もな……」
「あれだろ? 校舎の屋上からずっとスコープでのぞいてたってやつ」
「ああ。陛下を叱った教師を狙撃した」
「まあ、爆笑だったけど。そーいや、ウェンディはどうなんだ?」
「あれは隠れないからな。陛下と一緒に登校して、陛下と一緒に下校したそうだ。ライディングボード片手に……」
「あー、ウェンディらしいというか……。そういえば、前にチンク姉が生徒と間違われたこともあったよ……あ」
「言うな、ノーヴェ」
あれよあれよという間に、初等科の制服を着させられたという。
――ちょっと、見てみたかったよなあ……。
こんなだから、姉妹に「ノーヴェはチンク姉好きだからなあ」とからかわれるのだろう。
「まあ、そのかいあってか、陛下の最も近くで護衛できたのだがな!」
敬愛する姉が、誇らしそうに小さな胸を張った。
「あ~、はは……」
チンク姉が満足なら、あたしは何も言うまい。
ただ……。
「どうした、ノーヴェ?」
「そういった意味では、あたしが一番護衛に向いてないなあ、って」
大人ならともかく、子供の警護には。
「お前もスバルも、ジッとしているのは得意じゃないからな」
「うん」
常に落ち着いて見える姉――ギンガは、そういった任務もそつなくこなすのだろう。
だったら、あたしのオリジナル。スバルたちが母さんと呼ぶ、クイント・ナカジマはどうだったんだろう?
「まあ、管理局や教会も動いている。私たちはそっと陛下を見守るだけでいいさ。深くは考えず、たまには休暇と思ってのんびりしてくるといい」
「わかったよ、チンク姉――」
3
姉妹たちに聞いた話によると、王様の下校ルートはだいたい2つに絞られる。
1つ目は、高町家へ直接帰宅するルート。
2つ目は、無限書庫へ向かうルート。
1つ目は、先に、高町なのはやフェイト・テスタロッサ・ハラオウンが帰宅していることが多い。
2つ目は、無限書庫の司書長の元に身を寄せ、教導帰りの高町なのはと一緒に帰るという。
そして、本日はといえば、
「やれやれ、無事に高町家にたどり着いたか。これであたしの役目も終わりだな――って」
家から、ピンクのジャージに着替えた王様が飛び出してきた。
「おいおい、こーいうときって、どーすんだよ!? 誰か一緒じゃないのか? 1人かよ! あー、もう!」
仕方ない。
とりあえずあとを追う。王様が子供らしく駆け出す。小柄だからか。意外と足が速い。目的地は、
「近所の公園か?」
王様に気づかれぬよう背後に回りこむと、木陰に潜んで様子をうかがった。
すると、
「おいおい、今度はなに始めてんだよ……?」
柔軟体操に続いて、パンチ、蹴り。
たった1人で、ストライクアーツの真似事を行っていた。
「チビのくせに、それなりに様にはなってるけど……」
――そういや、スバルのやつが格闘の基礎を教えたとか言ってたっけ。
きっと、昔よく一緒にいたという、あの青い眉毛犬。人狼の旦那も教えたことがあったのだろう。
ただ、スバルは救助隊で忙しいし、旦那は……確かミッドの南部で暮らしている。
だから、最近では教わることもなく、独学で練習している――といったところか。
「筋は悪くないんだけどな……」
基礎とはいえ、スバルは近代ベルカ式。ザフィーラに至っては古代ベルカ式。そこから一歩踏み出そうとした場合、近代格闘技であるストライクアーツとは勝手が違う。
古代ベルカ式は言わずもがな、ミッドチルダのシステムでエミュレートする近代ベルカ式を、自己流で再現するのは難しい。
というか、肉体に変な負荷がかかる。
「そもそも、あのちっちゃな王様の体格なら、汎用的で扱いやすい、ミッド式のストライクアーツの方が向いているんだよな……」
――あー、もう!
見ているとイライラしてくる。
「違う、そーじゃないって……」
もっと下半身を使って踏みこまないと。
いくら子供とはいえ、腰を痛めてしまう。
「だー、仮にもあたしらの王様になろうとしてたんだろ!?」
やるなら、もっと上手くやって欲しい。
だいたい、背丈やシルエットがチンク姉に似ているのもよくない。
心配だ。
このままじゃ、ケガするかも……。
「アァァァ――」
もどかしい。
どうする?
どうする?
このまま、木の陰から見守っているだけでいいのか?
――いやいやいや。
「別にあたしが教えなくても……」
『たあぁぁ――うわ!?』
裂帛の気合いをこめて蹴り上げた王様が、バランスを崩す。
――あ~、もうォォ!
ダメだ!
見てらんねぇ!
とにかく1度教える。
それで直れば、それでいい。あたしに護衛任務が回ってくることなんて、もうないだろうし。
――1回だけ、1回だけ……。
そう思ったら、自然に体が動いていた。
あたしは木の陰から飛び出し、王様のそばに立っていた。
「おい、王様!」
「え?」
「ダメだ、ダメだ! 全然ダメだ。なんだ、その動きは。そんなんじゃ体壊すぞ」
「…………」
王様は驚いた表情で、あたしを見上げている。
「あー、ノーヴェだ、ノーヴェ。わかんだろ、この顔で。スバルの――妹だ。お前にとっては、ナンバーズと名乗った方が、わかりやすいかもしんねーけど」
「……うん」
「そう警戒すんなって。あたしは……その、なんだ……ストライクアーツの段位を持ってんだよ。だから、その下手っぴな練習を見てると、どうにも落ち着かなくて……」
「……うう」
王様がしょんぼりと肩を落とす。
「だぁぁ! 誰だって最初は下手くそなんだよ! だからあたしが教えてやる」
「……?」
「だから、教えてやるって言ってんだよ。ストライクアーツをな」
「ホント?」
「ああ。お前も本当はスバルから教わる方がいいんだろうが……あいつはその、忙しいからな。代わりにあたしが教えてやるよ……って、あー、それでもいいか?」
「うん!」
ありがとう――という王様の無邪気な笑顔に、思わずあたしも顔を赤くしてしまう。
ダメだ。
こーいうのは慣れねぇ……。
「あー、なんだ。ただし、あたしも忙しいからな、今日だけだ。今日だけで教えたこと、全部マスターしろよな?」
4
その日の晩。
あたしは風呂に入りながら独りごちた。
「少し意地悪な教え方しちまったかな……」
たった1日の指導でマスターできる量ではない。
「でも、ま、それでいっか……」
あとは独学でゆっくり学べばいい。
「これで、体を壊すこともないだろ……」
姉妹たちも安心して見守れる。
それに、
「もう、あたしが護衛することも、そうそうないだろうしな……」
などと思っていたら、
「すまない、ノーヴェ! 姉も試験があってな」
わずか3日後に、王様と再会することになった。
「あたしも忙しい――とか言っておきながら3日後って……」
「ノーヴェさん! 教えてもらったこと全部マスターしたよ!」
「……はあ? 全部って、ウソだろッ!?」
ところが、完全とは言えないまでも、確かにあたしが教えたことを自分のモノにしていた。
「マジかよ……」
ドクターは「ゆりかごの鍵に過ぎない」と言っていたけど、流石はあたしらの王様といったところか……。
面白い……。
だったら、
「いいぜ、もっと難しい技を教えてやるよ!」
そんなことを2度、3度と繰り返したある日のことだった。
ミット打ちをしていると、王様が尋ねてきた。
「ねぇ、ノーヴェさん。次はいつ教えてくれるの?」
「あー」
護衛任務がある日――とは言えねぇよなあ……。
それに、
「あたしも準備があんだよ。実は……もうじき大きなストライクアーツの大会があってさ」
「本当っ!?」
「ああ。あたしの登録年齢16歳だからな。余裕で出れんだよ」
ちなみに、チンク姉は19歳。
家族全員(チンク姉以外)で「う~ん」と首を捻ったものだが、思えば、あれが家族の意見が一致した初めての時だった気がする。
「じゃ、応援行くね!」
「おう、特別に許してやる。あんま大事にしたくねぇから、チンク姉たちにしか話してないんだけどな。あとセインとウェンディもなし。あいつらうっせーから」
「あ~」
王様も、最近では姉妹たちの性格の違いについてわかってきたのか苦笑している。
「ディエチにでも伝えておくから、試合会場まで連れてってもらえよ」
「うん、わかった。試合がんばってね!」
「ああ、必ず、優勝してくるぜ!」
けれど、あたしは試合当日――リングに立つことができなかった。
5
青空の下、区民公園の水辺で手すりを背にしたあたしは、深く溜め息を吐いた。
「あー、やっぱダメだったかー。レギュレーション違反だってよ。そりゃそうだよな。戦闘機人の体は反則だよなあー。パワードスーツでも着こんで試合に出るようなもんだし……」
「ノーヴェさん……」
隣にいる王様が不安そうな顔つきで見上げる。
「いや、わかってはいたんだ……わかってはいたんだけどさ……」
クイントが……あたしのオリジナルも学生時代に参加してたっていうから……。
「クソっ! せめて事前に言ってくれてたらなあ……」
最初から出場しなかったのに。
最初から諦めることができたのに。
「優勝するぜ――とか言っておきながら、これじゃーな、カッコ悪いよなあ……」
「そんなことない! それに、出てたらノーヴェさん優勝してたもん」
「あー、それはどーだろうなあ……」
自信はある。自信はあるが……もし、王様の母親――高町なのはみたいなのが出てきたら、正直勝てる気がしない。
ディエチなんていまだにゾッとするらしい。
「だったら、わたしが証明してあげるよ!」
「は? どうやってだよ」
「わたしがノーヴェさんの代わりに大会に出て優勝する!」
はあ……。
「ば~か、優勝なんて軽々しく言うもんじゃねーよ。大変なんだぞ?」
「軽くなんてないよ! だって、わたしストライクアーツ好きだもん!」
「好きっつってもなあ……」
強くなるための、大事な要素の1つだとは思うが……。
「ノーヴェさんだって、ストライクアーツ好きでしょ?」
「あたしか? あたしは……ん~、どうなんだろうな?」
そういや、深く考えたことがなかった。
「ほら、あたしの場合、クイントのクローン培養だからさ。この気持ちが、どこまであたしのもんなのか、オリジナルのもんなのか、わかんねーんだよ」
「でも、好きなんでしょ?」
「何だよ、それ……?」
「だって、わたしも一緒だもん」
「…………あ」
そうだった。
「お前も王様の……」
聖王オリヴィエのクローン培養。
それも、プロジェクトFで造られた記憶転写型のクローンだ。
しかも、最後の聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトといえば、武技において最強を誇ったという。
それだけの人物の記憶や人格をコピーしたのだから、好き嫌い以前に、本能に染みついている部分もあるのだろう。
そりゃ格闘技にこだわるわけだ……。
「そうだったな……。なあ、この気持ちって、どこまでがあたしらのもんなんだろうな?」
「……わかんない。でもね、オリヴィエとか関係なく、わたしは強くなりたいから」
「何でだ?」
古代ベルカの戦争はとっくの昔に終わっている。
敵はいない。
いたとしても、代わりに戦ってくれる魔導師がいくらでもいる。
あたしだって戦うだろう。
「えっと……笑わないで聞いてね。いつか、なのはママと戦って勝ってみたいから」
「おいおい、マジかよ……」
流石にそれは無茶だ。
「聖王の証であるレリックとか、そういうのはなしで」
どんな無理ゲーだよ……。
「これって、オリヴィエじゃなくて、わたしだけの気持ちでしょ?」
「まあ、そうだな……」
「ノーヴェさんはどう?」
「あたしだけの気持ち……か……。
そんなの……いや、たぶん、わかるよ……。
あたしはさ、たぶん、そいつを探してるんだよ……。
お前が、オリヴィエじゃない高町ヴィヴィオ――自分を見つけたように。
片っ端から資格を取ってんのも、たぶん、あたしだけの何かを探してる……。
あー、だからって、別に救助隊や警備隊が悪いって言ってんじゃないぞ?」
「うん」
「何かを壊すんじゃなくて、誰かを救うってのは、やりがいがある仕事だって思う……。
でもさ、何か違うんだよな。
オリジナルとは違う、スバルやギンガとも違う、あたしは、あたしだけの何かをやってみたい。
そうして初めて、あたしは、ただのノーヴェじゃない、ナンバーズとも違う、ノーヴェ・ナカジマとして生きられるんじゃないかって……」
「それが、ノーヴェさんにとってのストライクアーツ?」
「そうだな。
ただ戦うってんなら、あたしの能力も、デバイスも、スバルたちと同じシューティングアーツの方が向いてんだろ?」
「うん」
「でも、それじゃ嫌だったんだよ。
救助隊でシューティングアーツじゃ、スバルと変わらねぇ。
警備隊でシューティングアーツじゃ、オリジナルやギンガと変わらねぇ。
あたしだけの何かが欲しかった。
そして、やっと見つけたと思ったんだけどなあ……」
あたしは空を見上げ、苦笑する。
「結局、ダメだった」
「……ダメじゃない。まだダメじゃないよ!
ノーヴェさんに教わったわたしがストライクアーツの大会で優勝すれば、ノーヴェさんも優勝できるくらい強いってことになるでしょ。
ノーヴェさんのストライクアーツの技術は、間違いなく世界に通用するってこと、わたしが証明してあげる!」
「おいおい、本気かよ、王様……」
「王様なら、家臣のお願いを叶えてあげないとねー。
それに、優勝くらいできなきゃ、わたしの目標としている相手は、もっと手強いんだから」
「そりゃそうだけど……」
「だから、ノーヴェさんはこれからも自分だけの何かを探し続けなよ。
見つけるまでの間、わたしにストライクアーツを教えてくれればいいから」
あー、
「ったく、上から目線かよ、この生意気なガキめ」
「ガキじゃないですよー」
「わーってるよ、王様だろ」
「王様じゃなくてヴィヴィオ。これからはちゃんとわたしにコーチしてくれるんでしょ? 護衛とかじゃなくて」
「なっ!?」
……くそっ、気づかれてたのかよ。
「わーったよ。その、なんだ……時間が取れたときだけな」
「うん。じゃ、これからはわたしのこともちゃんとヴィヴィオって名前で呼んでね」
「何でだよ」
「だってノーヴェさん。学校の〝先生〟は〝王様〟なんて呼ばないよ?」
「先生じゃねー。
でも、ま、お前があたしの代わりに戦うってんなら、あたしらはこれから対等な同士だ。名前で呼んでやるよ。
その代わり、あたしのこともノーヴェでいい。〝さん〟はいらねぇ」
「同士?」
「あー、なんだ、その……友達って意味だよ」
「うん!」
王様――ヴィヴィオの虹彩異色が、眩しく虹色に輝いた。
あたしに預言者の技能なんてねーけど、不思議と長いつき合いになるんじゃないか、という予感があった。
「これからよろしくね、ノーヴェ!」
「おう、よろしくな、ヴィヴィオ!」
あたしとヴィヴィオは拳を突き合わせた。
6
「――なるほど、なるほど」
「――ってウェンディ、いつコンビニから帰ってたんだよ!?」
「ノーヴェが、ノリノリで話してる最中っスよ」
深夜のナカジマ家のソファの上を、ウェンディがノーヴェに向かって匍匐前進するように、にじり寄っていく。
まるで這い寄る混沌だ……。
そーいうのは、ユーリやシャンテの中の人にお願いしよーよ。
すると、ノーヴェの反対側からも、落ち着いた声がする。
「はい、ノーヴェ。肉まん、食べるでしょ? チンク姉はプリンまんでよかったよね」
「ああ、いただこう」
プリンまんかあ……。
「はあ、ディエチまで……」
首の後ろで髪をひとくくりにした姉が、苦笑しながら続ける。
「聞いてて思ったんだけど、最近ノーヴェって料理も得意でしょ?」
「アスリートの栄養管理のために、必要だと思ったからだよ」
「チンク姉が見てるこのアニメのメイドさんも、料理が得意だし、色々できるし、資格の多いノーヴェとよく似てるよね」
「はあ!? どこがッ!?」
流石に、この変態メイドとは似てないと思うのだけど……。
「あー、それ、ちょっとわかるっス」
「おい、勝手なこと言うんじゃねー」
ノーヴェがウェンディの首に腕を回し、ヘッドロックをかける。
「うぐぐ、きっと、ノーヴェも亡くなったチンク姉の形見の眼帯をつけて――」
「勝手に姉を殺すなよ……」
「どこか、チンク姉の面影を残す、金髪美少女陛下のハウスメイドをやるっスよ」
「そういえば、高町家にもいたっけ」
ハウスキーパーだったアイナさんだ。
「そうそう、その代わりっス」
「まあ、ノーヴェは面倒見がいいからな、可能だろうな」
「そんなことは……」
「でなければ、フーカという出会ったばかりの子を自分のマンションに住まわせよう――なんて思わないさ」
「ううっ……」
流石のノーヴェも、チンクの言うことは強く否定できない。
「――で、あたしらの代表として、毎日ヴィヴィオの送り迎えをしたり、ハンググライダーで学校の屋上から侵入したり、オンラインゲームで友達になったり、旅行先で仲居やったり……」
「ヴィヴィオのために、ピチピチの初等科の制服を着たり、体操服やきぐるみを着ちゃったり、雪だるまになったり、洗濯したパンツをポケットに忍ばせたりしてね――」
「誰がするかぁぁ――っ!?」
チンクがクスクス笑う。
「いや、この次元世界のどこかには、案外そんな並行世界もあるのかもしれないぞ?」
うわ……。
もし、そんなことになったら、きっとわたし――高町ヴィヴィオはこう叫ぶのだろう。
「うちのノーヴェがウザすぎる!」
と。
『ViVid』でノーヴェが、〝ヴィヴィオの師匠!〟というポジションに大抜擢された理由は、忙しいスバルに代わって格闘技ができて、なおかつ、ある程度時間を自由にできる人物だったということ。
そして何より、アニメを見るとわかりやすいのですが、『StrikerS』で自分たちの王となる聖王を一番気にかけていたから――というのが一番の理由かと思います。
「ノーヴェ、お前は昔から陛下のことを気にかけていたからな」
「いやいや、そんなことないから!」
と、食事の席でチンクに突っこまれてもおかしくないほど。
あと、ちっちゃい子(チンク)好きだからってのも、少なからずあるとは思うのですが……(笑)。
さて、最後まで読んでくれた方は気づかれたと思いますが、今回の物語の中に、新暦○○年という表記はありません。
本当はやりたかったのですが……コレがまた、ハッキリしなくて……。
漫画『ViVid』2巻やアニメの、ヴィヴィオとノーヴェ初めての出会いのシーンを見ると、ヴィヴィオの外見は『ViVid』本編とほとんど変わっていません。
つまり、出会いは1年……いや、あの年頃の成長を考えれば、せいぜい半年以内だと推測できます。
ノーヴェたちナカジマ組の4人が海上保護施設を出れたのが、新暦78年の9月以降なので、それから出会ったとすれば、時期としてもちょうどいいです。
ところが……。
『ViVid Strike!』の7話。リンネとの決戦前夜、ノーヴェと2人で練習しているシーンでもちょこっと出会いが語られるシーンがあります。
特に、場面を変えて、コロナが昔の写真を見せるシーン。
このときのヴィヴィオ、どう考えても、4年生じゃない。もっとちっちゃい。
3年……いや、ひょっとすると2年生くらいの可能性もあります……。
流石にこれは説明がつきません。
『ViVid Strike!』を並行世界にすれば可能ですが……。
そんなわけで、新暦○○年という正確な時期を特定するのは控えました。
ちなみに『ノーヴェ → ヴィヴィオ』に対する気持ちは、王様や友達、教え子というだけでなく、もっと別の感情があると思われるのですが……。
それはまあ、またいつか、別の機会にでも。
というわけで、次回はいよいよアニバーサリー。100話記念です!
99話はノーヴェだったので、100話は『アインハルトさんはちっちゃくないよ!』というタイトルに相応しく、アインハルトを主人公にしたストーリーをお送りします。
原作『ViVid』では、もう1人の主人公にして、メインヒロイン(?)でもあったのに、その素性に関しては、ご先祖様の覇王イングヴァルトよりも謎に包まれています。
そんなアインハルトの、ヴィヴィオと出会う以前の姿を、考察から導き出された物語として描き出します。
12/21『新暦75年のアインハルトさん!』
12/22『新暦76~77年のアインハルトさん!』
12/23『新暦78年のアインハルトさん!』
12/24『新暦79年~現在のアインハルトさん!』
12/25『新暦75年~現在のアインハルトさん解説!』
クリスマスに合わせて一気に公開!
『どうしてこうなった!?』
の考察を交えた解説は、最終日にやるので、感想はそれを読んでからでもいいかもですねー。