イリヤさんの魔法少女戦記   作:イリヤスフィール親衛隊

5 / 9
とりあえず無印プリヤまでは書いてツヴァイとドライは反響を見てから考えようかな。他にも書き進めたい作品があるし……。


凛「なんであんたが遠坂家の家訓知ってんのよ……」

 

 

 

∇∇∇本編∇∇∇

 

 

 

【イリヤ】が鏡面界内でキャスターに加えてセイバーのサーヴァントの存在を確認し、やむなく撤退を余儀なくされた翌日。

 

無敵であると信じてやまなかったカレイドライナーが敗退してしまうという結果に、凛は状況を打開する戦略を練るために遠坂邸の自室にて物思いに耽っていた。

 

「え?なに?魔法少女って飛ぶものでしょ?」

 

「人は……飛べません」

 

空中から攻撃を仕掛けてくるキャスターへの対策としてあげられた高度な飛行の技術については、ひどく対称的な考え方をしていたイリヤと美遊の二人。言の通り、すぐに飛行のイメージを固めることが出来たイリヤであるが。一方の美遊も言の通り、非論理的であると苦言を呈しながらも、ルヴィアによる特訓で四苦八苦していた。

 

「神代の魔術か……」

 

ルビーが何気なく評したキャスターの魔術についてである。神代とは、未だ人が神と共に在った時代のこと。現代に伝わる神話の世界こそが繰り広げられていた時代である。

 

神秘が充ち満ちていた神代の世界の魔術師。魔術回路の質も、魔力量も、魔術師としての技術も、すべてが現代の魔術師では到底敵わない領域にあるのであろう。

 

こちらにはルビーとサファイアという魔法使いが手掛けた反則的なまでに高性能の魔術礼装が在る。それを考慮すればスペックだけはなんとか神代の魔術師にも及ぶだろう。

 

だが、逆に言えばそれだけしかないのだ。ルビーとサファイアしか対抗できるだけの手段がない。更に言えば、それを扱うのは凛よりも幼い、この前まで魔術の魔の字も知らなかったような少女たちである。

 

「経験の少なさがやっぱり仇になるか……。いや、でも、今更それを嘆いたところで…………せめてサーヴァントに対する手札がもう少しこっちにあれば……。戦力か……」

 

凛は頭を振って脳内にちらついた考えを振り払う。一瞬だけ頭に浮かんだのはライダーを圧倒した小さな紫の背中。本来なら居るはずのない三人目のカレイドライナー。

 

敵か味方か未だに判断しかねるような存在に頼ろうなどという考えは捨ててしまえ。そもそも、戦略に不安定で不確定な要素を組み込むべきではない。

 

「ダメだ。ちょっと休憩……」

 

凛は紅茶を入れようとキッチンへと向かう。しかし、そこには。

 

「あんたは……ッ」

 

「ごきげんよう。昨日は清々しいくらいの負けっぷりだったわね、リン?」

 

招かれざる来客の姿が。件の三人目の魔法少女が寛いでいた。

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

仮面をずらし、口元だけを露にした黒紫の魔法少女は凛に淹れてもらった紅茶を一口すすった。

 

「……イマイチね」

 

「そりゃあ悪かったわね……」

 

米神に井形を作り頬をひくつかせながら凛も紅茶に口をつけた。そして、おそらくは認識阻害でもかけているのだろう。声も輪郭もはっきりと認識できない目の前の人物を睨む。

 

「それで、何のご用かしら?あの戦いを見てたんならわかるでしょうけど、私たちはキャスターとの再戦に向けて色々と忙しいの。暢気にお茶会してる暇はないのよ」

 

「ええ、知っているわ。あの魔法少女たちが特訓と称してスカイダイブやアニメ鑑賞に興じているところを確認してるもの」

 

ホント、忙しそうで何よりだわ。という【イリヤ】の皮肉に、凛は思わず口に含んでいた紅茶を噴き出しそうになる。スカイダイブについてはルヴィアがヘリを要請していた時点で察していたが、アニメ鑑賞については完全に初耳だ。

 

人が散々悩んでいる時に一体何をしているのかと、凛はイリヤを問い詰めたくなった。イメージを固めるためであろうがなんであろうが、所詮娯楽は娯楽であろう。

 

「……で、早いとこ本題に入ってくれる?」

 

優雅に紅茶を嗜んでいる【イリヤ】を、リンは半眼で睨みつけて話を促す。

 

「もう、リンはせっかちね……」

 

もう少し余裕を持って生きましょう、と【イリヤ】は呆れたように嘆息し、ティーカップを置いた。

 

「ちょっと交渉がしたいの」

 

「交渉?」

 

交渉という言葉に凛は眉をひそめる。

 

「今回の鏡面界に限っては、協同戦線を張らないかしら?」

 

「はっ、冗談。キャスターは私たちが倒すわ」

 

それは任務遂行者故の責任感か、はたまた魔術師としての意地か。敗けっぱなしでは終われないと凛の勝ち気な瞳は語っている。世界は違えど、こういうところはやはり遠坂凛である。【イリヤ】は薄く微笑んだ。

 

「ええ、それでいいわ。わたしがその間にもう一体を相手してあげる」

 

凛は【イリヤ】の言葉の意味がすぐには呑み込めず一瞬だけ呆け、遅れて理解に至るとその眼を大きく見開いた。

 

「もう、一体……?」

 

やはりというか凛たちは知らなかったようだ。まあ、無理もないだろう。凛たちがあの鏡面界に侵入していた時間は、手酷くやられて撤退するまでのわずか数分ばかり。鏡面界内の状況を確認できるような余裕はなかったはずだ。

 

「そう。あの鏡面界には二体のサーヴァントが存在しているわ。一体はリンたちも戦ったキャスター。もう一体は聖剣を携えた黒い騎士甲冑のセイバー」

 

「ウソ……」

 

ひとつの鏡面界に二体のサーヴァント。事実だとすればこれまでにないケースだ。クラスカード回収任務の前任者である魔術協会の封印指定執行者からだってそのような報告はなされていない。それ故に凛は【イリヤ】の言葉を簡単に鵜呑みにすることが出来ないでいた。そんな凛の態度に【イリヤ】は思わず少しムッとしてしまう。

 

「訊くけど、わたしにウソを吐く理由があると思うの?」

 

情報に対して疑ってかかるのは定石中の定石だ。魔術師であるのならば尚更。だが、仕方がないとわかってはいても、【イリヤ】としては疑われて、ない腹を探られるのはあまりいい気分ではない。

 

「それは……」

 

その問いに凛は言葉に詰まる。敵か味方かは不明。しかし、手にしたライダーのカードを容易く手放したことからクラスカードに執着があるわけではないようだ。だとすれば凛たちを出し抜くために嘘を吐くような理由はないように思われる。

 

だが、如何せん目的が見えてこない。それはもう不気味なほどに、この魔法少女の意図するところが不明瞭なのだ。凛の懸念はすべてそこにこそあった。しばらく頭を抱えて唸った凛は、意を決したように顔を上げた。

 

「……あんたの目的を教えなさい。あんたは一体何がしたくて魔法少女やってるわけ?それが聞ければ共闘案を考えてもいいわ」

 

「フーン、リンはわたしの正体じゃなくて、目的が知りたいんだ?」

 

「現状であんたの正体なんて気にしたってしょうがないじゃない?今は好奇心よりも利益の有無よ。平行世界の魔法少女との共闘が、私たちにとって吉と出るか凶と出るか、それを見極めるのが最優先。だから、あんたの目的次第ではこの話もすべて白紙に戻すわ」

 

「フフッ、リンのそういう割り切ったところ、わたしは好きよ?」

 

【イリヤ】は仮面の内で楽しげに微笑んだ。

 

「それにしても、平行世界から来たことはバレてたか。まあ、【ルビー】をあからさまに見せびらかして戦っていた以上は、そっちのカレイドステッキに感づかれる可能性は考えていたけれどね……」

 

「【ルビー】ね……。そのあんたのカレイドステッキはここに居ないのかしら?」

 

【ルビー】と聞いて苦い顔をしてその姿の有無を確かめるように周囲を見渡す凛。カレイドステッキ・マジカルルビーとは、ある意味で凛の天敵である。それが二本とか。もしも二本が同じ場に揃ったら、などと考えただけで頭痛がしてしまう。

 

「今は魔法少女二人を監視してもらってるわ。視覚共有してるからあっちの動きも見れるのよ?」

 

ホントに万能というか便利というか。そんな【イリヤ】の呟きに思わず頷きそうになる。性格はあれだが、その性能面に関しては凛も信を置いているのだ。

 

「まあ、【ルビー】が居ないからと言って、わたしが戦えないわけじゃないんだけどね。魔法少女に為れない今がチャンスだと思って捕縛しようとしたところで、リンごときじゃわたしに勝つのはムリだと思うけど?」

 

「へー、なに?紅茶のことといい、さっきからあんた私に喧嘩売ってるの?仕舞いにはガンドいくわよ?」

 

「落ち着きなさい。余裕を持って優雅たれはどうしたのかしら?」

 

「なんであんたが遠坂家の家訓知ってんのよ……」

 

「さあ、どうしてかしらね?うーん、それで、話は大分逸れちゃったけど、わたしの目的だったかしら?そうね……強いて言えば魔法少女をやること自体が目的というか……。そもそもの目的はとうに果たされていて、魔法少女として戦っているのはその対価というか……。まあ、意外と楽しんでるんだけどね」

 

「釈然としないわね……なにが言いたいわけ?」

 

「リンはゲームとかする?」

 

「なによいきなり。ゲームなんてほとんどしないけど?」

 

「まあ、リンは機械オンチだしね」

 

「……ねぇ、さっきから気になってたんだけど。どうも私のことを知っている風に話すわよね?もしかしてあんた、元の世界では私と知り合い?」

 

「黙秘するわ。ゲームするときって何を目的としてプレイすると思う?」

 

「黙秘する時点で肯定してるようなものじゃない……。ゲームの目的?クリアすることじゃないの?」

 

「そう、その通りよ。シナリオが好きだとか世界観に浸りたいとか、ゲームをプレイする目的は多々あるけど、基本的にはクリアすることが最大の目的だと思うの。つまり、今のわたしはそんな心境なの」

 

「クリアすることが目的……。この状況をゲームに例えているってわけ?」

 

「流石にそこまで不謹慎ではないわ。あくまで似たような心境というだけよ。簡潔明瞭に表すなら、事態の終息こそがわたしの望みというわけ」

 

「だったら遠回りしないで率直にそう言いなさいよ」

 

「率直に言ったところで、はたしてリンは信じてくれたのかしらね?」

 

「どういう意味?」

 

「自分とは関係ない世界で起こっている事態を、見返りも求めず、ただ終息させたいから戦っていると言われて、リンはその裏を疑わないのかしら?」

 

「っ……」

 

凛が再び言葉に詰まる時点で答えはわかりきっていた。

 

「まあ、そういうことよ。それで?協同戦線については承諾してくれるのかしら?」

 

「…………ええ、ええ。承諾するわよ。今回に限ってはね。流石にあの子たちだけでサーヴァントを二体同時に相手取るのは無理だわ」

 

【イリヤ】はその返事を待ってましたとばかりに笑みを深め、協力者とのより良い信頼関係を築くために次の手札を切った。

 

「キャスターとセイバー、その真名と能力を開示しておくわ。せいぜい有効に活用しなさい?」

 

 

 

∇∇∇解説∇∇∇

 

 

 

*「……イマイチね」

 

姑感。義妹候補には少し意地悪な【イリヤ】さん。プリヤ世界の凛さんには関係ないことなのに、彼女は飛び火で被害を受けた模様。

 

 

*「リンごときじゃわたしに勝つのはムリだと思うけど?」

 

Wikiでも魔術師としては未熟であるされている【イリヤ】さん。それでも素のスペックだけで凛の才能とか研鑽とか容易く捻り潰せるのはアニメUBWを見ればわかること。

 

 

*【イリヤ】とサブカルチャー

 

サブカルチャー大好き【イリヤ】さん。アハト翁さんが素敵で愉快な日本の偏見を教え込んだという設定がおそらく絡んでいる。

 

 

*意外と動かしやすい凛さん

 

現状でイリヤや美遊よりも出番の多い凛さん。キャラとしては好きな部類であるし、とても動かしやすい。説明役とか、その他にも【イリヤ】さんと他二人の関係を繋ぐ橋渡し役になりそう。ルヴィアさんは今のところ空気。

 

 

 




ルビー『そんなの、私に逆らうものが悪に決まってるじゃないですかー!』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。