イリヤさんの魔法少女戦記   作:イリヤスフィール親衛隊

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どうも、本編が行き詰まり放置気味のイリヤスフィール親衛隊です。最近ちょっと忙しいんですよね。やっぱり、Wマスターとポケモントレーナーとプロデューサーの四足の草鞋は流石にキツいです。あ、いや、バイトとか勉強もちゃんとしてますよ?学生ですから、一応。閑話休題。本当なら今年中に本編を終わらせたかったのですが、現状でそれは無理そうなので、大変申し訳ありませんが、もしかすると本編再開は来年に入ってからとなるかもしれません。ご了承ください。それでは皆様メリークリスマス。そして、少し早いですが良いお年を。


番外編
― 冬木のホワイトクリスマス ― 【イリヤ】「だ、大丈夫……これは、カップラーメンじゃないから」


 

 

 

元の世界にて、時計塔より一時帰還した【士郎】と【セイバー】、ついでに【凜】を伴いクリスマスに年末年始とゆるりと過ごした【イリヤ】。勿論、【桜】や【大河】も、【セラ】に【リズ】も忘れてはいない。大所帯で過ごした時間はとても温かいものだった。そんな【イリヤ】は現在……

 

「やっぱり慣れないわね。この視点の高さ……」

 

『ヴィヴィッドでストライクな大人モード~!本編に大分先駆けての登場(フライング)ですがどうせ番外編なんですから気にせずやっちゃいましょう~!』

 

「ゴメン、【ルビー】。後半ちょっとナニ言ってるか分からないわ」

 

相変わらず壊れたブレーキでトップギアを入れる平常運転な【ルビー】の危ない(メタ)発言を適当に受け流し、イルミネーションが咲き乱れる街中を歩く【イリヤ】。世界線のズレによる微妙な時間の差異のために二度目のクリスマスである。

 

しかし、【イリヤ】の背丈は何時もより高く、顔立ちや体つきも普段より大人らしい、年齢相応の容姿であった。

 

何故に、十代前半程で成長が止まっていた合法ロリの【イリヤ】がこのような姿をしているのかといえば、勿論、それは現在、【イリヤ】の羽織る黒紫のダッフルコートの内側、胸元でブローチに擬態している【ルビー】のソレな力でアレやコレやなわけであって……。

 

『細かい事はいいんですよ~!ささっ、折角なので楽しみましょうー!』

 

「ハァ……本当に、【ルビー】と居るとタイクツしないわ」

 

通常より一割程テンションがアゲアゲしている【ルビー】に皮肉を吐きながら、【イリヤ】の頬も自然と緩んでしまっている。不思議なことに “ 楽しい ” は伝染する。両方ともクリスマスの雰囲気にすっかり当てられてしまっていた。

 

「ねぇ、【ルビー】、服でも見に行きましょうか?この姿なら普段は着れないような服も着れるだろうし」

 

『いいですね~!じゃあ、そのあとは何か美味しいものでも食べに行きましょうー!』

 

「いいけど、アナタは食べられないでしょ?」

 

『食べられるようになる方法もあるにはありますが、【ルビー】ちゃんは今回は雰囲気を楽しむことにします!』

 

そういうことらしい。【ルビー】がそれでいいならばいいかと【イリヤ】はショッピングモールへと足を向ける。途中、ミニスカヘソ出しサンタコスでティッシュ配りをしている封印指定執行者が居た気がしなくもないが見なかったことにした。

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

「アイリさん……?」

 

ブティックを物色し、ウィンドウショッピングを謳歌しながら適当なレストランを探していた【イリヤ】は、後ろからかけられたどこかで聞き覚えのある声に考える間もなく振り向く。

 

そこには赤銅色の髪に琥珀色の瞳をした少年が驚いたような表情で立ち尽くしていた。【イリヤ】の知るところよりも体格も顔立ちも纏う雰囲気もかなり幼いが、見間違えるはずがない。

 

「あれ?イリヤ……でもない…………?」

 

あれ?人違いか……?と戸惑うように視線を右往左往させる少年の名は衛宮士郎。向こうでは【イリヤ】の義弟であり、こちらではイリヤの義兄である人物。

 

【イリヤ】も少しばかり驚いたように目を見開いたものの、すぐに微笑を浮かべて士郎へと話しかける。

 

「ごきげんよう。何かご用かしら?」

 

「ああ、いや、すいません。人違いでした。知っている人に似ていたものですから」

 

「ふぅん、そんなに似てるのかしら?」

 

「はい。あっ、いや、雰囲気は全然違うんですけど……。あの人はもっとアレっぽいというか…………」

 

アレっぽい……アレっぽい…………。義理の息子にアレっぽいと言われる母親って……。誰と間違えられたのか何となしに察していた【イリヤ】は士郎の返答に何とも言えない気分になる。

 

「……そう。ねぇ、アナタのお名前は?」

 

「衛宮士郎です」

 

「そっかぁ、シロウかぁ……」

 

凜とか桜とかセイバーとか、周囲に女の子ばかりの環境が続いたためか、【士郎】は妙に女馴れしてしまい、今では最初の頃のような初な反応が少なくなってしまった。だからというか、だからこそというか、【イリヤ】から見てこちらのとてもあたふたと受け答えをする士郎は……

 

「カワイイかも……」

 

【イリヤ】は誰にも聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。いじめ甲斐もとい、とてもからかい甲斐があるではないか。

 

雪の妖精改め白き小悪魔はその端整な顔立ちに妖艶な笑みを浮かべ、士郎の腕に自分の腕を絡めるように抱き着いた。大人モードであるがために、しっかり成長した当たるところはしっかりと当たっている。如何せん「当ててんのよ」状態である。

 

「なっ!?」

 

顔を真っ赤にして慌てふためく士郎の耳元で【イリヤ】は囁く。

 

「ねぇ、シロウ……」

 

―――お姉ちゃんとデートしない?

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

「えーっと、こういうので良かったんですか?」

 

「うん?」

 

【イリヤ】と士郎は正面合わせでテーブルに着き、ラーメンを食べていた。デートのお誘いとは大袈裟で、実質【イリヤ】は士郎をランチに誘っただけである。

 

本心を言えば遊園地でも映画でも行きたかったところではあるのだが、士郎の様子から明らかにクリスマスの準備で買い物に来ているようだし、あまり長時間拘束するのは憚られたのだ。

 

しかし、それにしてもほとんど見ず知らずの相手の誘いを無下に断らないとはこれ如何に。【イリヤ】としては良かったと言えるのだが、普通に考えたらアウトな気がする。どうやらこちらの士郎も大分お人好しのようだ。いや、お人好しで済ませていいレベルかどうかはわからないが。

 

そんなわけで、士郎に美味しいお店を紹介してくれないかと頼んだところ、一人だったらまず間違いなく入るのを躊躇ってしまいそうなほど年季の入った佇まいのラーメン屋を紹介された。

 

紹介しといてなんなのだが、といった風に不安気にこちらを伺う士郎に苦笑を浮かべる。【イリヤ】も最初は正直どうなのだと思ったレベルだ。間違っても女の子に紹介していいお店ではない。

 

だが、それはそれとして【イリヤ】が向こうでのクリスマスに三ヶ日と【士郎】や【桜】、【セラ】、【凜】が腕を奮った和洋中と豪勢な料理が続いていたため、手の込んだものはしばらく遠慮願いたかったのも事実だ。

 

「こういったものは普段はあまり食べないから、とても新鮮よ?」

 

外食しても洋食が中心で、【セラ】はラーメンを作ってくれない上、カップラーメンなどのインスタントの類いも体に悪いからと食べさせてもらえない。

 

以前、隠れてカップラーメンを口にしていた【リズ】が吊し上げられ、食事抜きを言い渡されるという悲惨な結末を目にしてからはカップラーメンを見ると手が震えるようになった。

 

「だ、大丈夫……これは、カップラーメンじゃないから」

 

心なしかレンゲを持つ【イリヤ】の手が震えている気がしなくもない。

 

「……?新鮮、ですか?もしかしなくてもいいとこのお嬢様だったりします?」

 

「さぁ、どうかしら?少なくともお家が一般的じゃないのは確かよ」

 

錬金術の名門、アインツベルンを一般的であると捉えることはまず無理であろう。だが、士郎は魔術師でも魔術使いでもないようだし、そこを語る必要はない。よって、悪いが【ルビー】にもしばし黙ってもらっているのだ。

 

やっぱり、ラーメンは不味かったかなぁ、と明らかに表情に出しながら美味しいラーメンを食べる士郎を見て【イリヤ】はクスリと笑う。

 

「シロウは高校生なのよね?」

 

「はい。あれ?俺言いましたっけ?」

 

「ううん。見た目からそれくらいかなぁって。じゃあ、不躾な質問で悪いんだけど、将来のユメってあるのかしら?」

 

「将来の……夢…………」

 

「こうして出会ったのも何かの縁。折角だからお姉ちゃんとオハナシをしましょう?」

 

【イリヤ】は少しばかりの罪悪感を感じながらも軽い思考誘導の暗示をかける。

 

魔術に関わった【士郎】は切嗣の意思を継いで正義の味方を志した。しかし、切嗣が未だ存命で、魔術も認知しておらず、聖杯戦争という名の生死を賭けた殺し合いを経験する必要のない士郎は、何を思い、何を考え、一体どうなるのだろう、どうなって行くのだろう、とても興味があった。

 

【イリヤ】のルビーの瞳と士郎の琥珀の瞳が交差し、沈黙が降りる。しばらく考え込むように俯いた士郎はぼそぼそと口を開いた。

 

「……笑いませんか?」

 

笑わない。いや、笑えない。【イリヤ】は他人の夢を笑えるほど高尚な人間ではない。

 

「明確ではなくて、ひどく漠然としているんですが……」

 

【イリヤ】はその先の言葉を聞かずとも理解できた気がした。

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

「何かすみません。俺の分まで払っていただいて……」

 

「わたしは大人でアナタは子供。大人が払うのは当然のことよ」

 

「でも、デートだったんなら、男が払うのがマナーじゃないですか?」

 

「あら、そう?じゃあ、次回は払ってもらおうかしら」

 

「へ?次回?」

 

「フフッ、次があればもう少し立派なエスコートをお願いするわ」

 

「あ、はい。善処します」

 

【イリヤ】は頬を掻きながら申し訳なさそうにする士郎を微笑ましげに見つめ、そっと、その赤銅色の髪に手を置き、優しく撫でた。未だ暗示の効力が残っているのか、恥ずかしそうにしながらも士郎はそれを受け入れる。

 

「心配しなくていいわ、シロウ。アナタのユメはきっと叶うから」

 

その言葉は士郎へと向けたものでもあり、【士郎】へと向けたものでもある。【イリヤ】は世界が変わっても変わらないものはたしかに在ることを知った。それはとても綺麗でいて、とても傲慢な夢だ。そして、 “ 衛宮士郎 ” に夢を届けるにはサンタクロースでは些か役不足だろう。

 

雪が降り始めた。どうやらこちらの世界もホワイトクリスマスになりそうだ。

 

 

 

∇∇∇解説∇∇∇

 

 

 

・本編を進めずに唐突なクリスマス物

 

実は士郎くんとのクリスマスデート案の他に、美遊さんに押し倒されて、そこにイリヤも突入してくる性なる夜とかいう案もあった(大嘘。久しぶり過ぎて全体的にぐだぐたしている上に、個人的には中途半端な気がする出来具合。

 

 

・ヴィヴィドでストライクな大人モード

 

設定のフライング。致命的なネタバレな気がしなくもないが、まあ、いいか。別にこの作品が魔法少女を謳った百合スポコン物(偏見)になる予定はない。

 

 

・サンタコスでティッシュ配りをしている封印指定執行者。

 

Q:何してるんすかダメットさん……。

 

A:アルバイトです。

 

 

・カップラーメンのくだり

 

【リズ】が目の前で見せしめのように断罪されたことが【イリヤ】のトラウマになっている模様。それにしても、自分で書いておいてなんだが、当作品の【セラ】さんはカップラーメンに何か怨みでもあるのだろうか……?(自問)

 

 

・士郎くんの夢

 

ボカしてるけど大体お察し。何となく分かってはいたのに暗示まで行使した【イリヤ】さん。カーニバルなファンタズムでは一緒にお昼寝するために士郎に暗示をかけたくらいだから普通にやりそうではある。

 

 

 




ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ「一足お先に、メリーですね?トナカイさん?さあ、プレゼントを選んで下さい。どれも笑顔になれますよ?」

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