多分次話辺りで完結するはず……!
一話一話が短くなっていますが、区切りが良くなる方を優先してますので、どうぞご理解下さい。
その姿を見た瞬間、迷いも無く駆け出していた。
変化の術でも使っているのか、見た目は違うものの、滲み出る気配は昔と変わらなかったからすぐに分かった。
「てめぇ!今までどこに……」
ソファーに横たわっている事も気にせずに、速攻問いただそうとしたが、気を高ぶらせたのが原因か、喉元へと一気に圧迫感が広がる。
ごほぉっ……!!
鴉天狗や牛鬼組の戦闘訓練に多く出入りしていたきょうやからすれは既になじみの景色なせいか、完全に無視。
それに俺も気にすることなく、呼吸を整えるように咳き込んでいた。
「……おい、大丈夫かよ?」
しかし、俺にとってのいつもじゃ無い状況は……ここから。
心配そうな顔を隠しもせず、俺を見下ろす二人の少年がそこにいた。
「こいつが十代目の主治医だと?」
そう確かめるように呟く獄寺の顔は、気にくわないと言うように顰められていた。
「寧ろこいつ本人が重病人じゃねぇか……」
小さく呟かれた言葉に、山本も力なく笑いながら、内心同意している。
明るい黄緑色の短髪に、赤目の青年は、山本達よりも年上に見えるものの、あまりにも年若い。
妖怪……人外を豪語するのだから年などあってないようなものなのかもしれないが、それでも見た目のせいでいまいちかしこまった態度と言うものが、山本にはうまくとれなかった。
「ア~……なんか、手伝うことあるのか?兄さん?」
その言葉に、思わず目を見開く青年の姿に気づくのは、もうすぐのこと。
「話は分かったが……俄には信じられんな」
雲雀から大まかな話を聞いた鴉天狗が、改めてそこにいる面々を見渡した。
普通の人間にしては流暢に言葉を話す赤ん坊。
牛鬼組との交流を持ち、初代の時代に奴良組の百鬼の一員であったきょうやの後継。
その二人を見定めるように眺めながらも、鴉天狗は思案した。
七年前のあの日、鴉天狗達が見たものは、あまりにも少ない。
彼らがいつものように行方を眩ませた二代目、奴良鯉伴を見つけ出した時は、全てが終わった後だった。
獣に食い散らかされたような、体のほとんどがかけた遺体は、見慣れた着物の切れ端が無ければ、肉塊の塊にしか見えなかっただろう。
明治以降、このような遺体を見る機会はとんと減っていた為、居合わせた者達の中にはあまりの気分の悪さに嘔吐したものもいた。
鯉伴の代から入った首無や黒田坊に至っては、顔面蒼白の体と言っても良かっただろう。あまりの惨さに、幼かった雪女や、妻である若菜が対面したのは、棺に入れられた後である。
その状況で当時二代目と共にいた筈の三代目、奴良リクオを連れ帰ってきたのは、血まみれの体となった虎狼狸……ツキだった。
彼は夕餉の支度が始まる前の一時間あまりの空き時間に、二代目の奥方である若菜様となにやら話し込んでいたのを最後に行方が分からなくなっていた為、事情が分からなかったあの時は、リクオ様と共に彼の無事を皆が喜んだ。
しかしリクオ様の意識が戻られ、その時の詳しい話を語られるにつれ、状況は一変したのである。
(最高幹部の中には、処刑にすべしと言う意見も有ったが、総大将は最後まで、それに反対しておられた)
容疑が浮上し、隔離の意味もあって本家の地下牢に入れられてから数日後、遂には暴走するものも出始めた。
彼を襲おうとしたのは、古くから本家に住まう小妖怪の一人だった。無論地下牢に辿り着く前に、見張りの者達に知られ、大事には至らなかったが、総大将が決断するには十分な事態でもあった。
虎狼狸(コロウリ)が最後に表舞台に上がったのは今から千年以上昔の話。当然奴良組にいるものは誰一人、その畏れの詳細は知らない。
しかし、その当時共にいたリクオの証言と、獣としての本性を持つことは疑いようも無いであろう彼の存在。
このまま本家にいても、その容疑を晴らせる可能性は既に零に近いと言うのが、総大将の決断だった。
嘗ての総大将の言葉を今でも彼は覚えている。
『このまま本家におったとしても今のままでは死を待つだけじゃ。たとえあやつの畏れが暴走し、結果として鯉伴が死んだのが真実なのだとしても、鯉伴はきっと、そんなことを望みはせんじゃろう』
重苦しい沈黙。それからしばらくして、ぬらりひょんは、捩眼山への文を牛鬼に託した。
そこから当面の滞在先として、並盛町を選んだのは牛鬼である。
並盛町は、牛鬼組の縄張りでは有るが、その支配下はあくまで雲雀のもの。
牛鬼組の協力者であるものの、一定の不可侵を要求する雲雀の領土ならば、たとえ最高幹部であったとしても、おいそれと立ち入る事はできない。
そして、牛鬼もそれを理由に最高幹部からの幾度とないツキへの処刑要求をはねのけてきたのである。
巻き込まれた雲雀がどこまで牛鬼から聞いていたのかは定かではない。しかし、総大将や牛鬼が思っていた以上に、雲雀はその責を果たしてくれた。
そして今、七年の時を経てカラスが聞かされたこの話は、衝撃的であるが、確かに有力な手がかりである。
(ケガレ堕ちの儀、術式というのなら、もしそれが暴走の根本的要員となっていたのなら、その儀を行い、二代目をツキに弑させた第三者がいたということ)
あの当時のリクオの話では、自分達の横には、若い少女の姿があったという。
(その少女こそが、企ての本人か、或いは……)
……その少女すらも、利用された何かか。
どちらにしろと、鴉天狗は思考を続ける。二代目を弑させることが目的だったのなら、関わった勢力が何者かもおいそれと見当はつく。
(羽衣狐率いる京妖怪……ここ数年、動きは活発化している。そして)
ケガレ堕ちの儀というのは聞き覚えのない術だが、術式を使う存在は、鴉天狗の知る限り一つの存在しか無い。
(陰陽師……!)
組織的な企てか、個人の企てかは判断ができない。今より五百年ほど前、総大将ぬらりひょんの時分に羽衣狐を倒すために協力態勢は取ったものの、その時の面子はとうに墓の中なのは間違いないだろう。
(もし組織的な企てならば、年を経るに連れて、方針が変わったと言うことになるが……)
どちらにしろ早計な決めつけは禁物である。事が無事に終わった後に本家へ報告し、指示を仰ぐのが最も重要なことだと思い直し、鴉天狗は現状のツキの暴走を打開するため、改めて向き直った。
この時の鴉天狗の思考は、半分当たりで、半分外れであった。鴉天狗達奴良組が知るのは京都を拠点とする花開院家。
鴉天狗は「ケガレ堕ちの儀」もまた、彼らが使う術の一つと位置づけて居たのである。
この時の事実と異なる認識が、この先どう影響するか、それが明らかになるのは、まだまだ先の話であった。
何かに呼ばれた気がして、俺は目を開いた。聞こえた声が、知っているような気がして、俺はキョロキョロと辺りを見渡す。
しかしそこには、誰も見あたらない。ポツンと、小さな明かりが見えるだけで、その周りが薄暗いのを除いて、後はまるで墨で塗り潰されているように真っ黒だった。
俺は引き寄せられるように、明かりへ向けて進んでいく。己の姿しか見えない闇の中を抜けると、ぼんやりと見えたのは赤い鳥居だった。
(あれ?この鳥居……)
ドクンと、鼓動がなった。
途轍もなく、いやな予感がした。
しかしなぜか俺の足は止まることなく、鳥居を抜け、奥へ奥へと進んでいき……それを見つけた。
それは……辺り一面に広がる、山吹の花。道に沿って植えられているのか、群生しているそれは綺麗に整えられていた。
そこに見える、黒い影。ずっと一緒にいてくれた、大切な人が口を開いた。
「七重八重 華は咲けども 山吹の 実の一つだに 無きぞかなしき」
その言葉を聞いた俺は、サッと血の気が引くのを自覚する。
山吹の花。口ずさむ和歌。何で気づかなかったのだろう。
(これは……七年前の記憶だ。あの人が死んだ、あの日……!)
歌を紡がれた時、山吹の華を愛でていた少女が音も無く動く。
その手には、錆び付いた刀が握られていた。
「……っ!」
この先の光景を知りながらも、俺は何も出来なかった。単なる夢と断じるには悪すぎるそれは、目をそらせない俺を置き去りにして進んでいく。
「待ってよ!ツキッ!」
遠くから聞こえた義弟……リクオの声。
それに呼ばれ、しかし立ち止まること無く、養父と少女の間に割り込んだのは、年若い少年の姿の俺だった。
グッと唇を噛みしめたまま、俺は見つめ続けた。
何でこんな夢を……そもそもこれが本当に夢なのか、何者かの畏れの作用なのかも分からないが、この時の記憶ははっきりと覚えている。
この後、俺は痛みのあまり気を失い、目が醒めたときには全てが終わっていたのだ。
死んだと聞かされた鯉伴の遺体を見ることも、リクオに会うことも出来ないまま、俺は本家から追放され、並盛に流れ着いた。
今こそは雲雀という関係者がいたことからも、のたれ死ぬことは無かったのだろうとは思うが、あの当時はまるで捨てられたような悲しみが身を浸していたことを覚えている。
「ツキッ!?」
驚愕に彩られた養父さんの声。遠目からでも錆び付いた刀が俺を貫いているのが分かる。
だがそこから起きたのは、俺が全く知らない真実だった。
「あ……あはは!……あははははっ……!!」
俺の口から零れたのは、笑い声。だんだん甲高くなるそれに合わさるかのように、首筋に緑色の光が輝く。
眼を痛めるかと思うほど強い光に、養父さんの顔は驚愕に彩られた。
「鯉……伴……様?」
俺の体を錆び付いた刀で貫いている少女が切れ切れに養父さんの名前を紡ぐ。……それが合図だった。
ビシッと、俺の体がまるで壊れ物であるかのような亀裂が走る。
ぼんやりと、死ぬ気になるときに似ているなと思った。だが脱皮するようなあれよりもひび割れが広がるこの光景の方が何倍も恐ろしい。
首筋の光が光線のように光を灯している。
その模様は、縦線四本と横線五本の、何とも不揃いな格子模様で……後に、ドーマンと言うのだと教えられたが、それだけがギラギラと薄暗い光景の中で不気味に輝いている。
亀裂が顔面にまで及んだが、貫かれている俺の意識は無いのか、目は虚空に向けられたまま、虚ろの表情を浮かべている。それなのに、口から止むこと無く零れ続けていく笑い声が、ただただ不気味さに拍車をかけていた。
どこも怪我をしていないはずなのに、何故か養父も動く様子がない。
「え……?」
そう。この時まで俺は養父は無傷だと思っていた。
しかしゴホッと咳き込む音と共に、養父の口から血があふれる。
(怪我?!一体誰が……!)
これが既に過ぎ去った過去のものだと言うことも忘れて、走り寄った俺は、見えた光景に声をなくした。
養父の……奴良鯉伴の腹部が、貫かれていたのだ。
それはほっそりとした、小柄な手。褐色の肌ではあったが……そこは。
「ツキ?……何で、ツキの腕がお父さんの背中から出てるの?」
目の前の光景を、理解することが出来ないのだろう。ただキョトンと尋ねるリクオの声に、害意は無い。それが、今の俺にはあまりにも残酷だった。
あのスピードで割りこんだ俺に気づかれずに、俺と養父の間に誰かが入り込むことは不可能だろう。ならば正解は一つしか無い。ズルリと、貫かれた体から力が抜けたのか、養父の体が傾く。そこには更に眼を疑う光景があった。
「……なん、だよ……!これ……っ!?」
ひび割れた俺の体が、まるで卵の殻のように、一部が壊れ、そこから褐色の肌が動く。黒い靄に包まれた褐色の腕がズルリと養父から引き抜かれ、その存在はまるでおいしい食べ物を口にするように、血にまみれた手を含んだ。靄が無くなっていくのと、その存在が鮮明に視認できるようになったのはほぼ同時で。
見開かれた目は、代赭(あか)。しかし、本来なら白いはずの瞳孔は黒く、その眼はうっとりと愉悦を感じているようにも見える。
(まともじゃない……!!)
明らかに常軌を逸する姿に、俺は体を震わせる。その体に、ひんやりとした掌が触れたのは、その時だった。
「まともじゃ無い?」
ゾクリと悪寒を覚える声は、俺のものと寸分たがわない。しかし、俺の声とはどこか異なる気がした。
「それはそうだ。俺達が、まともなわけが無いだろう?」
笑う気配。首筋を撫でる手がただただ恐ろしく感じた。
「助けなど来ない。ここは……俺達の精神世界だ。分かっているんだろう?「おれ」」
首筋を撫でていた手が、俺の頬を撫でる。その手のひらがそっと、俺の視線を上向けされ……そこに、声の主はいた。
「おれ、だと?」
そこにいたのは、褐色の肌、黒い瞳孔に、代赭の瞳。俺と同じように、首筋に緑色の光を灯した不気味な模様を身につけた……奴良鯉伴を殺した相手がそこにいた。
「そうだ。俺はお前で、お前は俺だ。最も、お前は妖怪で、俺はケガレ……その上位種、バサラだがな」
「バサ……ラ?」
相手の言葉を理解できないまま、俺はただ相手の言葉を繰り返した。
その思考能力の低下は相手にも分かっていたのだろう。まるで幼子を相手にするように、俺に語りかける。しかしその眼はまるで極上のえさを手に入れた獣のように光り輝き、その吐息は俺の頬にかかるほど近い。
「あぁ。まぁ、お前には理解できまい。お前はまだあいつの術の支配下に、自らを置いている。それ故に己が何者であるかさえ、知らないのだからな」
サラリと、髪をかき上げられた。その色は、いつの間にか薄金色に戻っている。
(変化……何で解けてるんだろう?)
クスクスと、笑い声が耳に届いた。
「言っただろう。ここは精神世界だと。姿などお前の思考次第でいくらでも変わる。最も、今は俺の力の影響が強いがな」
そう教える声は、しかし他者を導こうとする優しさや、明るさは皆無だ。
まるで捕らえた獲物をいたぶろうとするようにしか、感じられない。
(お前は一体、誰だ?)
バサラと言った相手。精神世界は本来、己しかくることは出来ない筈だ。しかし、彼は平然とそこにいる。
声に出してはいないはずの問いに、声は笑みを湛えて答えた。
「お前こそ、誰だ?」
(俺……は)
ふと、答えようとした俺は、何も答えられなかった。
沢田綱吉?
緋眼?
ツキ?
どれが、己だろうか。
緋眼と言うのは己個人の名では無い。
沢田綱吉は、七年前に死んだ少年の名前だったはずだ。
しかし己を呼ぶ声は皆、そのどちらかになってしまった。
あの日……奴良鯉伴が死んだときから。
この声が……俺の中から出てきた存在が、殺したときから。
まるでとどめをさすように、その存在は俺の視界の真ん中で、薄らと笑みを浮かべた。
「ああ。でも……一つだけお前には感謝しているんだよ。あの日、あの場所で、お前だったから、あの男は警戒心を抱いていなかった。……おかげで」
……奴を喰らうのは、とても簡単だった。
耳元で囁かれるそれに、俺は本能的な恐怖を抱いた。
「あ……ああっ……!」
咽をついて、あふれ出て来たのは、悲鳴だった。
「ああああああああっ……………!!!」
鳴き声にも似たそれは、ただ静かな空間に反響していく。俺たち以外誰もいない場所に、俺の声だけが響き渡った。
「さぁ、仕舞いだ……「妖怪」のおれ」
笑いを含んだ声が、耳元で囁かれる。
「俺にお前の体を渡せ。七年もあいて、流石に腹が減ったんだ……」
そこから先は……分からない。
前兆はあった。しかし、誰もそれに気づかなかったのだ。結果として、怒りのままに怒鳴り散らす薬師一派の長、
「てめぇら!いい加減にしろっ!!手伝う気ねぇなら部屋から出てけぇ!!」
吐血こそはしなかったものの、咳き込み始める鴆を横目に、シャマルは苦い表情で言い放つ。
「俺だって出ていきてぇよ。そこのおっかねぇ赤ん坊が許可してくれるって言うんなら、今すぐ出ていってやる」
おっかねぇ赤ん坊……そう称されたリボーンは泰然とした様子でその要求を叩き蹴った。
「そりゃ無理だな。ドクロ病を治すには、お前の協力がいる。ケガレ堕ちとやらの知識を持つのもおめぇしかいねぇ。ここでおめぇに帰られたら絶望的だぞ」
肩を竦める動作をしながら余裕の表情を崩さないリボーンも、内心では焦り始めていた。
雲雀が綱吉を応接室に運んでからかれこれ三十分以上は経とうとしている。
ドクロ病は人間では発病からおよそ一時間で死に至る病。
一刻も早い治療が必要になるのは分かっている筈なのに、シャマルには治療をしようという意志が無かった。
「てめぇ!いい加減にしろスケコマシっ!!十代目を殺すつもりか!?」
「あぁ、そのつもりだよ!ケガレ堕ちなんざ、死んだ方が世のためだ!!」
ダイナマイトを片手に構える獄寺に対して、平然と手ぶらで言い返すシャマルだが、その構えには隙が無い。
シャマルの武器であるトライデント・モスキートには、タメからの動作はほとんど必要としない、それだけの機動性がある。
その威力は幼少期に彼を師と仰いだ獄寺が、一番分かっているのだろう。
だからこそ、下手に手を出せないのだ。
二人の言い合いに静観をとらざるを得ない山本と、鴆は何とも歯がゆい気持を味わっていた。
鴆の腕前ならば、畏れの暴走や無意識の放出を止めることはできるが、ドクロ病そのものを無力化することはできない。
彼がケガレとなっているのなら、その対策に対しては言うまでもないだろう。
「シャマル」
膠着状態となった現状を動かすために口を開いたのは沢田綱吉の家庭教師を務めるリボーンだった。
「ツナはボンゴレの血を引く最後の継承者だ。そのツナに弓引くって事はボンゴレに敵対するってことだぞ。その意味を分かってんのか?シャマル」
円らな瞳だが、その内側の感情は読めない。
昔から衰えていないポーカーフェイスを目の当たりにしながら、シャマルは動じること無く吐き捨てた。
「究極な選択だな。リボーン……だが、ボンゴレにやられる前に、助ければ俺はこの場でお前らの十代目に殺される。断言してやるよ。ケガレに理性は無い。ただ力を得る為に人を喰らう化け物だ」
強い口調で言い切るシャマルに、譲る気が無いとわかるのか、八方塞がりとなったリボーンも、唇をかむ。
「ねぇ……だったら何故、この子は今ケガレになるの?」
再び膠着が起こるかと思っていた彼らの空気を、随分と長い間黙り込んでいた雲雀が破る。
「何故って……」
答えようとして、思わずばつの悪さから、リボーンが黙る。
「……小僧が撃ったって言う、弾が原因じゃね?」
のほほんと、周りの空気も考えること無く、山本が言い放つ。
それは、火を見るより明らかな事実だった。
雲雀とて、そんな自明の理を今更確認するまでも無い。
「言い方が拙かったか。……僕が言いたいのは、何で死ぬ気弾を撃たれるまで、あの子はケガレになっていなかったのか、と言うことだよ」
「……なに?」
瞠目するシャマルに目を向け、雲雀の追求は続く。
「貴方言ったよね。ケガレ堕ちの儀を受けたら、ケガレになるしかない。だけど現実として、これは死ぬ気弾に撃たれるまで、ケガレになることはなかった……一体何故だい?」
ギロリと向けられた雲雀の鋭い眼差しに屈したのか、目をそらしたシャマルだが、雲雀は追求の手を緩めることは無かった。
「あの妖怪達や、駄犬共が来て、はぐらかされたけど、赤ん坊が聞いたよね?「ケガレ堕ちの儀」の発動条件」
タラリと、シャマルの頬を冷や汗が伝う。それを見ながら、雲雀は続けた。
「答えなよ……!」
その瞬間、ピクリと、僅かに沢田綱吉の体が震えたのだが、気づくものはいなかった。
出来れば次回も早めに上げたいと思います。
……希望的観測。