緋眼の裔   作:雪宮春夏

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ページ数では既に二十越えましたが、こちらはまだ十九話です。雪宮春夏です。
さて、本編はお待たせ致しました。

今回から題名の通り、彼の大盤振る舞いです。
それではどうぞご覧下さい。



第ⅩⅨ話 兄弟子 跳ね馬

もうすぐ家が見えるかという程度の距離から、黒服の男達が疎らに視界の隅をちらつき始めた時点で俺の警報はシグナルを発していた。そして現在家の前に黒服の人集りが出来ているのを視認した俺はすぐさま踵を返そうとして……捕まってしまった。

「何自宅から遠ざかろうとしてやがる。アホツナ」

黒ずくめの第一人者。俺の中では危険度第一位のリボーンに。

二足歩行で流暢に話す赤ん坊という、一も二も無く特徴あり過ぎる相手で、しかも家の前に屯しているのは全員一致で黒服の軍団という事もあり、自然とその存在は目立っていた。

(いや、そもそもそれだけじゃなくて……)

家から帰った途端に直面した光景にショックを受けていた俺だが、リボーンという見慣れた相手に出くわしたおかげが、冷静さが戻ってくる。……その結果知りたくもないことに気づきはしたが。

黒服軍団はその目つきといい、雰囲気といい、明らかに普通の職種の人ではなくて……何より目の前にいるこの赤ん坊が動じるでもなく平然としている姿に、俺は一つの仮説を立てざるをえない。

(この人達……もしかして全員マフィア関係者!?)

リボーンが絡んでいるならば、他に思い浮かばない。そしてそこを踏まえるのなら目立つか否かの前に彼等とリボーンが知り合いである確率は非常に高く……。

「リボーンさんが肩に……!」

「まさかあの方が……!!」

必然的にリボーンの相手をしている俺にもその注目は集まっている。

「あぁ。こいつがボンゴレ十代目候補。沢田綱吉だぞ」

ざわつく彼らに余裕の笑みを浮かべて暴露したリボーンに、俺は目の前が真っ黒になるような感覚を覚えた。

(なんだよその紹介!お前はもうとっくに、俺に継ぐ資格が無いこと知ってんだろうが!!)

どんな楽観的に考えても、俺が本当の「沢田綱吉」とは別人である妖怪であることは知られていないだろうと思うことは出来ない。直に聞くことはその後が色々恐ろしいことになりそうなのでするつもりは無いが、今までの出来事を整理すれば、知られていることは確実だろう。

鴉天狗まで出てきているのならば、あちらの組織にも、その動向は注視されていると考えるべきだ。なのに。

(また、ビアンキやランボみたいに、無自覚な妖怪だったら、どうすれば良いんだよ!俺はっ!?)

明らかにリボーンが呼んだマフィア関係者と対面しなければいけない流れに、俺は頭を抱えていた。

リボーンに妖怪か否かの判別が出来るのかは分からない。リボーンの場合は、妖怪であっても喜々としてこの町に呼び寄せそうな分恐ろしいが。

大体始めにリボーンが俺をマフィアのボスにするために来た理由自体が、「沢田綱吉」の先祖がその組織を作った人だったからの筈だ。つまり件のマフィアは現在の奴良組と同じように、特定の血筋によって収められてきた組織。そうみることが自然である。……つまり。

(元から彼らと血のつながりの無い俺には、そもそも始めから、継ぐことは出来ないはずなのに……!そこまで理解しているくせにこの白々しさ……!)

いっそこの場所でリボーンの首を絞め、大声でその事を暴露してやりたい衝動に襲われそうになるが、誰が見聞きしているかも分からない公道の中。しかもリボーンの手引きで入ったであろうどこのものかも分からない黒服軍団の面前でそんな危険な賭には出られない。

「早く入れ。お前に客だ」

そこまで俺の心中を見抜いているだろうリボーンは、にやにやと面白そうに笑いながら、俺を渦中に招き入れるのだった。

 

「ディーノさん!遠慮は要りません!!どうかこの人を責任を持って連れ帰ってください!!」

ディーノが彼の前にリボーンの教育を受けていたと話した途端に彼がとったその行動に、リボーンはヒクリと眉を顰め……豪奢な椅子の上にいた彼の兄弟子、ディーノは目を丸くした。

「おめぇも懲りねえな。言っていることがビアンキが来たときとほとんど変わらねぇぞ。しかもまた物みてぇに持ち上げやがって。少しは俺を敬いやがれ……!」

心なしか僅かに殺気を零すリボーン。

ディーノの経験上、戦闘になれていない子どもでは、そんな殺気を浴びれば、すぐさま意識を失ってしまうだろう。もう手遅れだとは思うものの、慌てて止めようとしたディーノだったが、戦闘に不慣れなはずのボンゴレ十代目候補は、そんな殺気を物ともせずに、リボーンとの応酬を続けている。

「敬うってどうやって、今の所リボーンって、俺の好感度を下げることしかやってないよね?!」

 

 

言葉にすると否応なしに、もう数週間前にもなる、竹寿司での一件を思い出した。

あの日、何者かの攻撃……目を覚ましてから、店に来た雲雀さんにトンファーを投げつけられたのだと、山本は話してくれたが……によって、昏倒した俺が目を覚ましたのは、もう日が暮れた頃だった。

リボーンとランボ、ビアンキの三人はとうの昔に帰っており、傍らには山本がいたのだが……何故かその顔色が非常に悪い。

彼曰く、腹の調子がどうも悪いのだという。

嫌な予感を感じて布団に入っている筈の剛さんの元へ行けば、布団の中で彼も、顔を青ざめ、腹部を庇っており……。

全力疾走で、閉まる寸前の並盛病院の医師に往診を頼めば、その診断結果は「食中毒」。

それを聞いた瞬間、俺の顔から血の気は消えた。

あの場で倒れる事が無かったのは、偏にあの場所には、二人も看護の必要な重病人がいたからだ。

電話にて母さんに事情を話し、結局その日は、俺は朝まで彼らの看病に明け暮れた。

因みに、その原因となったものを大量に持っていったであろう奴良組には、何の一報も入れていない。

まともに考えれば、入れた方が良いのかもしれないが、発覚が既に日没の頃であったこと。

そして何より一番の理由は……奴良組本家の電話番号を俺は知らないということだ。

あの頃は、外出は必ず他の者と一緒に行っていたし、そもそも俺自身に、電話を使う習慣が無かったのである。

竹寿司にも、直に人が取りに来るというのもあり、電話番号の明記は無かった。

無論、それならば雲雀さんや誰かに渡りをつけ、知らせて貰うというてもあったのだが……。

(どう解釈されるか分からないのが、一番怖い……!)

最後は剛さんのぎっくり腰という不可抗力があったとは言え、最初にリボーンやビアンキを竹寿司へ繋ぎ止めてしまったのは、俺自身である。

食い逃げ如きは笑って許し、そのまま竹寿司に近付かせないようにすれば、食中毒被害は抑えられる筈だった。

(……いや、多分そう言うのも全部言い訳なんだろうけど)

ここまでのことを思い起こして、俺は自嘲の笑みを浮かべてしまう。奴良組に一報を入れなかった理由。

勿論前述のそれらも、理由の一端には含まれるのであろうが、本筋はおそらくそれではない。

(俺はただ……もう関わりたくないんだろうな)

リボーンと、鴉天狗がどのような経緯を経て関わっているのかは分からない。

もしかしたら他にも奴良組の関係者と、俺が知らない所で関わっているのかもしれない。それ自体も問題とは思うが、まだ良いのだ。俺の精神的な部分では。

しかし、俺自身にも関われというのなら、それは嫌だと断言できる。

体育祭があったはずのあの日、あの夢のような七年前のあの日の記憶を偽りだと、単なる夢だと言うには、あまりにも現実味があり過ぎた。

何よりもその出来事自体を否定することは、変化を解いた俺の姿に新しく現れた体のある部分が……一部だけとはいえ、解放された妖怪としての本能が強い拒絶感を示すのだ。

逃げるなと。

……現実だと。

(あれがもし本当だったら……関わってまた、誰かを傷つけるくらいなら……)

本当ならば、この家からも出ていった方が良いのだ。

またあのような暴走を起こしたら、次はもっと酷いことが起こるかもしれないのだから。

しかし、迷い無い覚悟でそれを決断するには、俺には後ろめたい部分が多すぎた。後ろ髪を引かれる思いが、あまりにも多かった。

 

「くくっ……なぁるほどな」

気付けば押し黙ってしまっていた俺は、ディーノさんの声で我に返った。

彼は零れる涙を拭いながら笑いのせいか肩を震わせている。

「リボーン。お前の言った意味がよく分かったぜ。確かに……ツナは昔の俺に似てんな」

そう言ったディーノさんの目はどこか悲しげな色を秘めていた。

「ツナ。お前が何を見聞きしてきたのかは俺には分からねぇ。ただ俺にも似たような経験があるから分かることもある」

強い瞳で俺に言い聞かせるディーノさんの口調には、さっきのようなからかうような感じは無く、言うならば俺に何かを言い聞かせようとしているかのようで。

「お前は確かに、なりたくねぇって思ってんのかもしれねぇ。だが、それ以上に、なっちゃいけねぇって、思っている部分もあるんじゃねぇのか?」

「え……?」

的を射ていたディーノさんの言葉に、俺は二の句が継げなかった。

なっちゃいけない。いや、それ以上に血を継いでいない俺はなれないはずなのだ。しかしそれを知る由も無いディーノさんは俺の目を見ながら、続ける。

「ツナ。抱え込むなとは、俺には言えねぇ。悩むなって言うのもお門違いだ。だからさ、悩んで良い。迷ってもいいけど……」

その次に続けられた言葉に、俺は言葉を返せなかった。ディーノさんはそんな俺を気にする風も無く、階段を降りていった。 

「逃げんなよ。自分を思ってくれている奴らからな」

ディーノさんの言葉に、獄寺と山本の顔を思い浮かべた。

思い浮かべてしまった。

 

「今んところ、獄寺と山本。後はヒバリに笹川だな」

ディーノさんも含めた夕飯の席で、さり気なくディーノさんが尋ねてきたのは、ボンゴレファミリーを継げる筈がない俺自身のファミリー候補という奴で。

「何勝手に言ってんだよ!単なる友達!!後は学校の先輩だろう!?」

ボスと祭り上げようとする割には俺の意見など聞きもしないリボーンの言葉に、俺の目は無意識に殺気を帯びていた。

「かっかしすぎだぞ。バカツナ。それにヒバリはファミリーに必要な人材だ。おめぇが一番よく分かっているはずだぞ」

しかしそれと対峙するリボーンは、いつもの様子を変えることなく、最もすぎる正論まで吐く始末。ぐうの音も出なくなった俺は、その傍らで驚愕に目を見開きながら、こちらを凝視するディーノさんに、最後まで気づかなかった。

 

「……リボーン。ツナのあの威圧感、一体何なんだ?」

そうディーノがリボーンに尋ねてきたのは、並盛町の中でも一番大きな大浴場。その脱衣所に設けられた座敷の一角である。

何故彼らが大浴場へ来ているかというと、夕食前にディーノのファミリーが全員、これ以上ご近所の迷惑になることを防ぐ為に、近くに取ってあるホテルへと帰っていったのだが、その事で、ディーノの悪癖が発動してしまったからだ。

彼の悪癖。それは部下がいなければへなちょこになると言うものである。

その発動のきっかけは、沢田家の女主人、沢田奈々の悲鳴からだった。

彼のペット、エンツィオは見た目は小さな亀だが、単なる亀ではない。

水を吸ったら巨大化する上、凶暴化するという厄介な性質を持つ、スポンジスッポンという種類の亀だ。

無論、本日あったばかりの綱吉達が知る由も無く、そんな彼らが奈々の悲鳴に慌てて駆けつけた時、風呂場に溜まっていた水を吸収したエンツィオは、浴槽に収まるか否かの大きさで、バクバクと浴槽を食べ進めている所だった。

そんなエンツィオを止めようと鞭を取り出したディーノだったが、そこで例の悪癖が発動。共にその場にいた綱吉、ランボ、新たに居候に加わったランボと同い年の殺し屋の少女、イーピンと、次々とその鞭を誤射させ、撃沈させてしまった。

ここまで来ると、なまじ強い事が厄介である。

悪化する状況を見かねたリボーンが、綱吉に引っ付けたレオンをディーノの側近であるロマーリオに変身させた事で、ディーノの本来の力を引き出して、事態は収束したのだが、破壊された浴槽が直ぐに直ることは無く……結果として現状に至っている。因みに綱吉本人はまだランボと入浴中であり、女性勢である奈々、ビアンキ、イーピンは女湯なので別行動中である。

よって今この場にいるのは、早めに入浴を切り上げたリボーンと、ディーノだけだった。

「気づいたか。へなちょこにしちゃあ上出来だな」

ニッと笑うリボーンに、しかしディーノは笑みを見せること無く、茶化すなよと淡々と言葉を紡ぐ。

「あの殺気は一般人に出せる物じゃねぇ。だが、家光の息子は一般人として育てられたって聞いてるぜ……」

ディーノの目がリボーンを探るように眇められる。出された沢田綱吉の実父であり、リボーンにとっても親友といって良い男の名前に、しかしリボーンはピクリとも反応を見せなかった。

「あいつは一般人だぞ。……ボンゴレの情報網を、あんなガキが欺けると思うのか?ディーノ」

「確かに、俄には信じられねぇよ」

上目遣いでこちらを見る大恩ある家庭教師に、しかしディーノも守るべきファミリーを持つボスであるが故に、はぐらかされる事は出来なかった。

「だが……あんな殺気出されて、納得しろってのは無理があるだろう……!」

睨みつけるディーノの目には、僅かに疑念の色がある。

しかし、それを上回る程にその瞳に宿っていたのは悲しみだった。

「リボーン……。俺を頼ってくれたんじゃ無かったのか。俺は……信用できねぇのかよ……!」

次いで吐き出されたその言葉にも、頼られていない、一線を引かれている事実に対する強い悲しみが、多く含まれている。

マフィアのボスには似つかわしく無いほどに平気で他者に感情を見せて来るディーノに、リボーンは呆れたように溜息を零していた。

「……その下手な芝居は止めろへなちょこ。そんなんで重要機密を教えてやるほど俺はあまくねぇぞ」

 

(あいつの情の厚さを見込んで呼び出したのは確かだが、ここまでツナに肩入れするとな)

発した言葉とは裏腹にリボーンは、ディーノの手段を選ばずにでも現状を把握しようとする姿勢に、彼らを引き合わせた事は正解だったと確信を深めた。

家で出会った当初に言った言葉と良い、もしかしたらディーノは過去の己と、今の綱吉を重ねている所があるのかもしれない。

しかし、それでもリボーンは容易に口を開けない理由があった。

(俺達が沢田綱吉と認識しているあいつは、家光と奈々の実子の沢田綱吉じゃねぇ)

それを明らかにするか否か、九代目の返答無しにリボーンの一存で決めて良いものではないからである。

書面や電話で問い合わせれば一番良いのだが、ファミリーの今後を左右する重大機密なだけに、下手な方法を使って伝える事は出来ない。敵対勢力に漏れることを考えれば尚更だ。あまりにもリスクが高すぎる。

(延長上にある妖怪だのも婆娑羅だのも喋れねぇな。……しかしここまでやるディーノに何も情報をやらねぇとすると、次にあいつが攻めるのはどう考えても本人だ。流石にあいつが隠し通せるとは思えねぇ。こっちがまずい……となると逆に言えるのは)

そこまで考えてリボーンはある一つの事実をディーノに知らせることにした。

殺気の理由としては弱いが、その疑問をディーノの中で有耶無耶にさせるにはちょうど良い重要事実である。

それにこれに関しては、明日雲雀に先日の貸しとして押しつけられたある案件を解決する内に、どうしてもバレる代物だろうとも思ったから問題は無い。

「仕方ねぇな。じゃあ一個だけだ。……実はツナには人を殺した経験がある」

嘘ではない。厳密に言えば、彼らの話によると、半分人で、半分が妖怪らしいが、人の部分がある以上、人と言っても申し分ないだろう。

「……なに?」

それに対してのディーノの反応は眉を潜める。ただそれだけだった。

忌避感というものはディーノには無い。ディーノだってマフィアのボスだ。結果として殺してしまったケースも始めから殺すしか無いと、思い始めた抗争も既にいくつも経験している。

しかしやはり一般人として育ってきていた綱吉が、既に殺人経験があるという事実には、少なからず衝撃は受けているのかもしれない。

無言になること暫し気持ちの整理は付けたのか、ディーノは言葉を続ける。

「原因は何だ?敵対勢力に狙われたのか?」

命を狙われたが故の正当防衛。真っ先に考えられるのはそれだろう。

「いや敵対勢力じゃねえ。イタリアンマフィアでも無いしな」

しかしリボーンの返答は、そんなディーノのなけなしな頭で考えた予想を大きく上回る物だっただろう。

「相手はここら一帯をシマに持つジャパニーズマフィア……極道だ」

「……そりゃあ、向こうがあいつをボンゴレ直系と知って狙ったって事か?」

僅かな間。その間で答の可能性となる物を導き出したディーノは、信じられないと言うように言葉に詰まる。

ここでリボーンが肯定すれば、何故隠そうとしたとディーノは責めるだろう。

「ちげーぞ。こっちには何もしていなかったであろうそのマフィアの大将を、七年前のツナが殺したんだ」

嘘ではない。リボーンの言葉には何一つ嘘は含まれていなかった。……当年七歳の沢田綱吉では無いと言う一文が無いだけで。

「な……!じゃあ、ツナは非の無い相手を殺したってのか……?なんで……!」

フルフルと、ディーノが震えるのは恐怖か、怒りか。

しかしそれに頓着すること無く、リボーンは、さーなと言葉を投げる。

「お…お前!」

「ただ、当時のことは今でも上手く思い出せねぇらしい。気が付けば目の前には血まみれの男が倒れていて、自分は血だらけの獲物を握っていたんだそうだ」

「……つ!」

その情景をモロに想像してしまったのか、ディーノの顔が青白く染まっている。

それを横目に見ながら、リボーンは更に嘘の混じった真実を言い積もらせていく。

「それとシャマルの見立てだと、何らかの術が使われたらしい」

そこでディーノは更に目を見開き……しかし「術」と言う言葉で、逆に冷静さは取り戻したようだった。 

「幻術、だと?」

イタリアンマフィアでは「術」と言えばそれは幻術を指す。だからディーノも、リボーンが話した単語をそう意訳した。念を押すがリボーンは偽りは述べていない。

幻術を使える術士は、イタリアのマフィア界でも一握りしかおらず、そのほとんどは名のあるファミリーの一員であることが多い。

しかしそれは、全ての幻術師の所在が割れているわけではないのだ。

「はぐれの奴の仕業か?それとも組織的なもんなのか?」

「さぁな。そこはまだ調査中だぞ」

僅かに肩を竦めてみせるリボーンの笑みにも、僅かな苦みのようなものがある。

その理由をディーノも察していた。

「ツナは……その時の事は朧気だって言ってたな。どう思ってんだ?」

「……今日一日一緒にいて、分かんなかったのか」

逆にそう返され、ディーノは言葉に詰まった。

分からなかったかどうか。おそらく言うまでもないだろう。

初対面での印象は、平凡などこにでもいる子どもだった。しかしこの半日接していて、居心地の良いはずの家の中でもどこか気を張っている様な子どもに違和感を覚えていた。

母親との距離感よりも、他人であるはずのリボーンやランボ達との距離感の方がよっぽど近い。

「ママンはどこまで知ってんだ?」

傍らで耳元に囁くように尋ねるディーノに、リボーンは、さして周りを気にする素振りも見せずに続ける。

「知らねぇぞ。何もな。家光(あのバカ)も多分何も気づいちゃいねぇだろう」

ついた溜息が思いの外大きくなってしまったのは仕方がない。リボーンも本人に尋ねた時はまさかあんな返答が返ってくるとは思わなかったのだから。

「何せツナの中では、あいつはとうの昔に死んじまったことになっているからな。……全く、イタリアに戻るとき、あいつ一体なんて言って家を出たのか、逆に聞きたいくらいだぞ?」

そこは別に秘密でも何でもないので、戯けたような口調で話すが、ディーノからすれば、先ほどの重要事実と同じくらいには衝撃的な出来事だったのである。

「待て。七年間ずっとか?……あいつなんで……」

思わず責めるようなきつい口調になるディーノをリボーンは、止めるつもりは無い。

この一点に関してはリボーンも同感だからだ。

「七年前っていやぁ、ボンゴレで()()が起きた年だろ?その当時後始末とかのゴタゴタで帰ることが出来なくなっていたって言っても二、三年で落ち着いてた筈たぜ?……息子がこんな厄介ごとに関わっているって言うのに……」

ディーノは己自身が父親を慕っていた幼少期であったが故に、余計に家光の行動が理解できないようで、まだブツブツと言葉を零している。

(まぁ、確かにあの当時のボンゴレは次々と問題が出て来るは、いろんな奴らが寝首を掻こうとするはで、あいつらの組織も右往左往してたからな……二、三年は戻れなかった、ってのも仕方ない話か……。……っ!? いや、まさか……!)

一方リボーンは、ディーノの言葉から、全く別の可能性に辿り着いていた。ディーノには、まだ与えていない情報。本来の家光と奈々の実子が死んだのもちょうど七年前だと言うこと。

それと照らし合わせたからこそ出てきた考えだが。

(……まさかあいつ、既に気づいているんじゃねぇだろうな)

考えすぎとは、一概には言えない。

沢田綱吉の実父である彼も、初代の直系子孫には変わりないからだ。

たとえ公式には、超直感を受け継いでいないという事になっていても。

そして、もしリボーンの予想が正しければ、次いで家光に湧き上がるこの感情は……。

「……あのっ……!へたれ野郎が……っ!!」

呆れ、怒り。そして、それ以上に強い苛つきに支配されたリボーンはこの一日で一番深い溜息を零していた。

 

「リボーン!見っけ!!……死に曝せーっ!!」

悪いことは重なる物で。

タイミング悪く話し込んでいたディーノとリボーンの姿を認めた、脱衣所に移動してきたばかりのランボが、また乾ききっていないもじゃもじゃの髪の毛の中から手榴弾を取り出す。

勿論、さっきまで風呂に浸かり、髪の毛まで丹念に洗っていたランボのそれは、当然濡れている訳で、危険でも何でもない、ガラクタと同様だった。いつものリボーンならば見向きもしないだろう。しかし、この時は違った。

ランボに続けて上がった俺には知る由も無かったが、この時の、苛つきをもてあましていたリボーンからしてみれば、単に八つ当たりが出来る相手であれば誰でも良かったのだ。

()れる口実さえあれば。

「そういう意味ではおめぇ、途轍もなくグットなタイミングだぞ♪」

語尾に音符でも付けそうなウキウキ声で語るリボーンの行為は、その言葉とは全く噛み合わない残虐的な物で……それを間近で見てしまった俺は後から思えばあまりの恐怖から顔面蒼白になっていたかもしれない。

それでも変化だけは解かなかったのは、ここまで来れば既に気力の問題かもしれない。

「一体……何やってんだ!お前らぁ!!」

最後に俺が上げた怒声に、慌てて警備員が駆けつけるのはこれから後数分後のお話だった。

 

 




チラリと触れました、家光さん。
さて、あの当時のボンゴレで何が起きたのか。
答はどうぞ原作にて。……いや、まぁ時期が来たらちゃんと書きますけどね。多分。

取りあえずそれを理由にしても許せる範囲では無いと思いますけどねぇ……(ジト目)
取りあえず春夏としては、リボーンと同意見です。

それではよろしければ次もよろしくお願いします。

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