緋眼の裔   作:雪宮春夏

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あまりにも本編が書けないが為に昔に書いたものを投下します。雪宮春夏です。

……これ、規約とかに引っかからないよなぁと、少し心配にはなっていますが。

苦情、誹謗中傷はご遠慮下さい。





特別企画短編 告白

「今年の()()テレビのテーマは「告白」らしいぞ」

勉強机に向かう俺の背後、ベットの上にいたリボーンが突然言い出した話題に、俺は耳半分で相槌を打っていた。

リボーン曰くの()()テレビ。夏休み中にあるテレビ局がおよそ24時間ぶっ続けで行うそれは、国民の間ではかなりの認知度があるだろう。

毎年著名人が行うマラソンや、数ある企画で忘れがちだが、主目的としてはチャリティー……の筈である。

「……って、訳でツナ。お前も告白しやがれ☆」

「何が……って、訳!?」

思わず机から反転。ベットの上に視線を投げた俺に、リボーンが浮かべるのはすっかり見慣れてしまった喰えない笑みで。

「ダッテダッテ、季節ネタって、面白そうダモン♪」

「ダモン♪じゃない!しかも何だよ!?その変な片言!!?」

「まぁ、真面目な話だ。ツナ。お前はそろそろ告白するベきだと思わねぇのか?」

まるでスイッチを切り替えるかのように、あっさりといつものように戻ったリボーンは、いつの間にいれたのかエスプレッソ片手に寛ぎ始めている。

(……もう突っ込むの疲れた……)

傍目から見れば漫才にも見えてしまうだろうやりとりを自覚し、ガクリと肩を落とした俺は投げやりな口調で言う。

「だいたい告白って誰にだよ?俺は別に好きな人とかいないんだけど」 

「そんなん知ってるぞ?お前はまだ色恋沙汰に現を抜かす余裕がねぇ事ぐらいはな………好かれる方はかなりのもんがあるが」

「……何?」

後半の呟きが聞き取れずに尋ね返した俺に、何故か溜息をつきつつ、リボーンは誤魔化してくれた。

「それより、こっちが求めている告白は別に「愛」何ていう甘ったるい告白じゃねぇ。……そろそろ白黒付けやがれって話だ」

「白黒って……」

こちらへ視線を投げたリボーンから伝わるピリピリとした空気に、俺はこくりと息を吞んだ。

こちらの緊張は伝わったのだろう。ふぅと吐息をリボーンが溢した事で空気が緩むのが嫌でも分かる。コトンと音をたてて、リボーンは持っていたエスプレッソを傍らに来ていた彼の相棒、レオンの頭の上に置いた。

良く見れば彼の頭がいつもよりも平べったい。

形状記憶カメレオンと言ったか、どうやら今の彼の頭はお盆になっているらしい。

「ママンに……奴良組に……お前はいつまで嘘をつき続けるつもりかと聞いているんだ」

 

その変化ははっきりと分かった。鋭く息を詰めた綱吉の顔色は白い。

触れられたくない話題なのは百も承知で、リボーンは言葉を続ける。

「お前は人間じゃねぇ。今は変化で誤魔化せてるが、いつまでもその手が通用するとは思ってはいないんじゃねぇのか?お前の本来の姿は人で言えば二十歳になるか否か、それ以上年上の姿になることは、テメェの変化ではできるのか?」

答は無い。ただ、不安げに揺れる瞳はどんな言葉よりも雄弁に事実を語っている。

「奴良組にしたってそうだ……現状の奴良組の不安定さはもう分かってんだろう?お前はそんな奴らの言いなりになって、最後はどうするつもりなんだ?……もしこの町に敵対勢力の妖怪が攻めて来たとして、奴らが何も言わなきゃ、そのまま黙って殺されるつもりか?」

「なっ……!?皆はそんなことしない!敵対勢力には一丸になって立ち向かう強さはあるんだ!!いくら並盛が端にあったって……それに牛鬼様の膝元なんだろう!?牛頭丸だって……きっと……!」

「頭が満足にいねぇ、その状態でそんな願望が、本当に宛になんのか?ツナ」

 

リボーンの的確な言葉に、俺は言い返せなかった。

現に直轄地にいたはずの小妖怪は、俺と雲雀さんがもう少しでも遅れていたら、人間に連れ去られていたかも知れないという前例がある。

同じ事が二度三度……それ以上の事とて、起こらないと言う保証はどこにも無い。

何も言い返せず……結果黙り込んだ俺に、答えられないと分かったのだろう、リボーンは聞こえよがしに溜息をついた。

「……直ぐに答が出せるとは思ってねぇ。但し、物事は常に最悪を考える必要ってのもあるんだ……だからこそ、俺からもこの二つに関する打開策は考えてやったぞ」

「打開策……?」

ほとんどオウム返しで呟いた俺は、しかしこの時、リボーンを直視してはいなかった。

その為か、次の言葉は反応が遅れた。

「あぁ……おめぇが奴良組を継いじまえば良いんだ」

「……は?」

 

「奴良組の総大将になれば、名実共にお前は本家へ行くことになる。いくら何でも本家がある浮世絵町はここからは遠すぎるからな。ママンにも怪しまれる事無く距離を置ける。……まぁそこから先はしばらく様子見になるがボンゴレの技術と合わせれば手が無いわけじゃねぇ。これでママンの方は一先ず解決だぞ?」

「……おい」

微かな声量であったが、俺の声は聞こえたはずだ。しかしそれを気にする様子も無く、リボーンは言葉を続ける。

「奴良組に関しても問題はねぇ。名実共に総大将になれば奴良組の奴らのことは何も気にすることなく動く事ができる。先代の総大将に関してのことだけはまぁ、痼りを産みそうだが、イタリアンマフィアじゃあ先代を殺して立つことは強硬派じゃあ有り得ねぇ事じゃねぇからな……そう言う意味じゃあ、嘗められる心配が無くなるともいえる」

「ちょっと待てよっ!!」

これ以上聞き続ける事が出来ずに、俺は感情のまま叫んだ。

立ち上がりリボーンを睨みつけるが、リボーンはそこに何一つ恐怖の色を浮かべない。

ただジッと俺を見つめている。

「俺は……マフィアに何かにならないし……奴良組だって継がない!!奴良組を継ぐのは……リクオだ!!」

衝動のままに叫んで息を切らす俺に対して、リボーンはどこまでも冷静で、淡々としていた。

「たとえお前がそう言い続けても……お前を担ごうとする奴は必ず現れるぞ?」

その言葉に脳裏に浮かんだのは、帰ってきてくれと懇願してきた小妖怪達。

「鯉伴の時代を知る奴らの中には、お前を奴の象徴としている奴らもいる。それがどういう意味を持つのか、お前はちゃんと自覚しなきゃいけねぇんだ」

それはあまりにも重い言葉。俺はただ無言を貫く事しか出来なかった。

 

「それに……必ず血筋で継承するって明確な理屈は聞いてねぇしな。一度ぐらいなってみれば良いじゃねぇか」

「それ。お前が贔屓にしている巨大イタリアンマフィアに向かってそのまま返すぞ?」

「一緒にすんじゃねぇぞ?こっちは世界中に睨みをきかせているんだ。裏世界の支配者でも有るんだからな」

「そっちこそ一緒にするなよ?こっちは五百年近く続いている歴史の深い極道なんだよ?そっちなんて聞いた限りじゃ百年限りじゃ無いか」

「こっちはお前で十代続いてんだぞ。そっちはたかだか三代だろうが」

「こっちはその分一代の重みが違うんだよ!一代十年足らずのそっちと一緒にするな!!」

はぁはぁと、息を切らす俺はどう考えても冷静では無い。それ位の自覚は俺とてある。

それでもきっと、この話題を冷静に話すことは今の俺には出来ない。

「全く……あれも嫌、これも嫌じゃあ……話になんねぇな」

「……ほっとけ」

ついに顔を逸らすことしか出来なくなった俺は、そのまま少し前まで向かっていた机に向き直った。

しかし先刻までの続きに手をつけようとは思えなかった。

「まぁ……今はそれでもまだ良いぞ」

僅かな間を置いてかけられた言葉はどうにも俺に甘い気がする。

考えてみればリボーンはいつも、強制することはない気がした。

九代目の依頼と言いマフィア教育を施しても、奈々の命を盾に脅すような事は一度もない。

俺の妖怪の部分を……婆娑羅の顔を知っても、それを悪用することは無いのだ。

「俺としては、ボンゴレを継いで奴良組を傘下に加えようが、奴良組の総大将になった後でボンゴレに吸収させようが、どっちでも良いからな」

「おい!?」

しかし俺の密かな感傷を裏切るかのように、ニンマリと笑みを浮かべるリボーンの言動はいつもの通りで。

咄嗟に口を挟んだ俺に、リボーンはつけ加えた。

「それか……同盟を結ぶか、だ」

『貴重な同盟候補だぞ』

ふと随分昔にリボーンがビアンキに言った言葉を思いだした。昔と言ってもまだあれから一年はたっていないのだ。しかしそれからの時間が濃厚すぎて、もう随分昔のようにも感じる。

「……そうでなきゃ、敵対するだけだ。ここまで関係を持っちまったんなら、尚更な」

そのままリボーンは部屋から出て行った。

これが、俺が二年の夏休み。その最中のある一日である。

 




「季節ネタ」?
夏に季節ネタと言うんなら、もう少し違う物があるんじゃあ……( ̄。 ̄;)

そう思いつつ、そのテーマにピーンときてしまった当時の春夏はどこか変な状態だったのだと思います。

時系列で言えばまだまだ先になりますが、そこまで本編が追いつけるように頑張ります。

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