緋眼の裔   作:雪宮春夏

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こんばんは、雪宮春夏です。
前回同様、遅くてすいません。(;・д・)
しかし、何とか今日中に書き上げられました。

それではどうぞ、ご覧下さい。

最後の「昏倒」を、「昏倒後、寝込む」に状態を変更しました。
混乱させてしまい申し訳ありません。(2016/10/24)



第Ⅳ話 動き出す 歯車

球技大会。あの日のバレーの試合は、結果だけを見るならば負けだった。十五対一。俺達のチームがとれたのは、たった一点。相手チームのキャプテンの放った殺人サーブをリボーンが、撃った死ぬ気弾……正確には太股に被弾したために、ジャンプ弾らしいが。その効果で急激に跳躍力が上がった俺が、殺人サーブをブロックしたのだ。……顔面で。

その結果の、一点。すぐに相手に取り替えされ、そこで試合は終わったが、栗原達A組バレー部や他の中学生からの初心者達への扱いはあれから少し、見直されているらしい。

俺は顔面からダラダラと血が流れ、保健室まで運ばれる騒ぎになったらしいが、死ぬ気弾を撃たれた影響か、よく覚えていない。

あと後日談としてもう一つ。

実はあの監督になってくれた生徒は、疲労骨折をしたバレー部員では無かったらしい。

これは、退院してきたバレー部員本人から聞いた話だ。

何でも彼は、病院で出会った外国人の劇団員の少年に、制服を貸し、自分の抜けた、チームの激励を頼んだのだそうだ。

その少年はその日の夕方ごろ、ひどく興奮した様子で、制服を返しに来たついでに、仲間の勇姿を彼に話してくれたのだという。

まさか俺自身に変装して乗り込むなんて思わなかったなぁ。近頃の特殊メイクって凄ーんだな!

……これが本人の言である。

まぁ、彼に対しては俺も、違和感はあったが、嫌な感じはなかったので、さして気にすることでもないだろう。

もう会うことも、無いだろうし。

 

さて、そんなことをつらつらと俺が思い出していたのには理由がある。

その一つは既に馴染みになってしまった現実逃避。

もう一つは。

「貴様ら、退学だぁー!!」

今までの思い出を振り返っていた、というべきだろう。

勿論、走馬灯のような意味で。

 

 

『学校が何じゃい。そんなもん行かなかったからといって、死にゃせんわい。下らん』

 昔、何かのテレビを見ながら、俺の養い親の父親……つまり、俺にとっての義理の祖父が呆れたような口調でそう言っていたことがある。

それに対して俺の養い親は、こう言い返していた。

『確かに、学び舎に行かなかったからといって、死にゃしねぇけどよ。……人の世で生きようと思うなら、行っといて損はねぇんだよ。あそこは子供が最初に通る、人の世で暮らす基礎みたいなもんだからな』

あの時の俺は人の世にはほとんど関わっていなくて、どうもよく分からなかったけれど、今ならよく分かる。

確かに学校は基礎だ。基本的な知識や常識、人との関わり方など、様々なものを教えてくれる。

なによりそれ以上に、無事に卒業したか否かによって、世間体と言うものがまるで違うのだ。

「あぁ~退学したくないよぅ……!」

己だけなら別に良い。今更俺の評価がどう悪くなろうが、俺はさして気にもならない。

ただこれが原因で「母さん」……沢田奈々に辛い思いをさせるような事はしたくなかった。

後ろ指を指されることなど言語道断である。

(あの人は何も悪くないんだから………いや、今回は俺も別に悪くないような気がするけど)

ふと今回の騒動の発端となった出来事を思い出して、俺は目頭を抑えた。

理科の時間にあった小テストの返却。

その教科担任である根津と言う教師は、自分が東大出身である事を鼻にかけ、生徒をネチネチと蔑む事を生き甲斐としている。

当然俺のような劣等生はカモと言って良く、今日も今日とてネチネチと嫌みを言われていた……所に。

「てめぇ……十代目、沢田さんへの侮辱は俺が許さねぇ!!」

チンピラも震えるほどのメンチをきったのは、銀髪に翡翠の瞳。本来ならば年齢的に御法度な筈の代物を口にくわえたイタリア人の少年。

遅れて授業中に登校してきただけでも悪目立ちしていた一目で不良と分かる少年を、いつものように蔑みの標的にした彼を一体誰が責められようか。入って早々俺を十代目と敬い出して俺まで標的に追加登録したのも間違いなく少年の責任だ。断じて彼が一方的に悪いわけではない。そんな自分の数々の失態をを棚にあげて、本来ならば敬うべき相手の人間を少年が締め上げ、あろうことかそれまで只管縮こまり、我関せずを貫いていた俺に。

「十代目!こいつおとしますか?」

爽やかな笑顔で言い放った途端、俺はただ机に顔を埋めて、懸命に己の中の理性と戦わなければならなかった。

俺の理性の糸をここまで傷つけたのは、リボーンに次いで二人目である。

たとえ頭に犬耳がパタパタ揺れているような、犬の尻尾がブンブン振られているような幻覚が見えたとしても、俺には関係がなかった。

……そんな彼が、この騒動の主犯にして、黒幕。

ボンゴレファミリー所属……要するに、俺をマフィアにしようと画策する人たちの仲間、「スモーキング・ボム」と言う別名を持つ、獄寺隼人だった。

(……っていうか、“煙吐き爆弾“って何?)

その日本語に訳すと余りにもな二つ名に……まぁ見た目通りな分ピッタリだとは思うが、考えた人間にはもう少しマシなネーミングセンスは無かったのかと聞きたいくらいだ。

はぁと、本日最大の溜息を吐き出した俺の耳が、聞き慣れた声を拾った。

「退学になりたくなきゃ、タイムカプセルを掘りゃあ良いじゃねぇか。負け犬になんのか?ツナ」

見ると、今しがた通リすぎた廊下の壁には見慣れた火災報知器。先日の出来事から、それが何なのか推測するのは実に容易だった。

「そこもアジト?……リボーン」

自然と、いつもよりも低い声がでたのは仕方ないだろう。

不機嫌を隠す気は既に無い。

「……?」

返答のない様子に不審に思い、近付くと、まるで見計らったかのように報知器のランプがぱかりと開いた。

「チャオっす」

そこにいたのは、確かにリボーンだった。

しかし、ランプの中から出たその姿はいつもよりも明らかに小さい。ミニマムと言って良いサイズである。

(あ……あれ?)

余りに予想外な姿に俺は演技も忘れて、目を丸くした。

「まさか……それが本当の姿!?」

「んな訳ねぇだろ!」

鋭いツッコミとともにミニマムリボーンの舌が伸びた。それは的確に俺の目にあたり、思わず俺は目を抑える。

「な、何すんだよ!?」

床に尻餅をついて、片目だけでミニマムリボーンを睨むと、それはぐにゃりと音を立てるように形が歪んだ。

「そいつは形状記憶カメレオンのレオン」

パカッと、開いたのは先日と同じ下の収納スペース。

そこにいたいつものリボーンは面白いものを見たと言うかのようにニヤニヤと笑っている。

「軽くからかうつもりだったんだが、気付いてなかったとはな。ずっと俺の頭の上に、こいつは乗ってたんだぞ?」

クイと、指で帽子を向きを傾けると、それを合図にしているのかミニマムリボーンからカメレオンに戻ったレオンは、スルスルとリボーンの帽子の上に乗る。

「それより、何してんだよ!そんな所で」

勝ち気な表情で揉み上げを弄るリボーンに、馬鹿にされているように感じて声を上げると、予想外の人物の声が戻ってきた。

「……俺です」

声を聞いた途端無意識に、体が身構える。

昨日の出会いから、今日の一件にかけてこの男と出会うと碌な目に遭っていないことはいくら俺でも覚えてしまった。

(一体どこに……)

声ばかりで姿の見えない彼に警戒も露わに見渡すも、その姿はない。首を捻りかけたとき、その気配を感じて再び溜息をこぼしていた。

「ここです」

どうやって入るスペースを確保していたのかは謎だが、彼は、リボーン特製のアジトから出てきたのだ。

「リボーンさんから、殺しのイロハについて、ご教授頂いていたんです」

そう話す男からはこの騒動を引き起こした事に対する責任については何も感じ取れない。

どうやら、リボーン同様散々こちらを引っかき回して放置を決め込むタイプらしい。

(……っていうか、殺しのイロハって、なに?)

明らかにティータイムだったのだろう、居心地良さそうに仕上がっているその空間に言葉を返す気にもならない。これからの事を考えながら、ひとまず教室へ戻ろうと進みかけた俺に、いきなり男は土下座した。

「申し訳ございませんでした!」

いきなりの謝罪に、しかも本来は授業中の時間とはいえ、廊下という状況に、いみじくも先日の事を思い出して、一瞬反応に困る。

しかしそこに気付くことも無く、男は続けた。

「十代目のお気持ち、それほど退学したくないとは露知らず、このような結果になってしまって」

「……獄寺、君」

真剣に反省している彼の姿に、少しだけ彼らへの態度を改める。

ちゃんと話し合えば伝わるのだと、そう言われたような気さえした。

しかし、次の言葉に脆くもその安堵は崩れ去った。

「これ、十代目の分です。これで十五年前のタイムカプセル、見つけ出しましょう!」

満面の笑みで渡されたのはダイナマイトだった。

 

 

並盛中学には昔から卒業生がタイムカプセルを埋めることが行事として習慣化しているのだそうだ。

しかし、十五年前に埋めたタイムカプセルが何故か未だに見つからず、近いうちに業者に依頼することが予定されていたらしい。

根津教師はそれを俺達に探させようと提案したのだ。

「見つかるわけないよ!十五年も前なんて!!」

校庭を爆破すると言って、ダイナマイトを片手に先へ行ってしまった彼を追うために、廊下を速歩で進んでいた俺がそこで聞いたのは笑い声だった。

耳を澄ませると、根津ともう一人、知らない教師が笑いながら隠された顛末を語っていた。

十五年前には、例外的にタイムカプセルは埋められなかった。これで彼らの退学は確定だと。

そうして彼らは笑ったのだ。

(何だよ……それ!)

驚きと共に見開いた目の前が、ジワリと滲んだような気がした。

確かに俺は劣等生で、獄寺君も問題児だ。

それでも、退学を言い渡して喜ばれるほどの悪事をやったという記憶は無い。

ここで正義感の強い人間なら、「ふざけるな!」と、彼らの元に怒鳴り込んだだろう。

しかし、俺にはそれはできなかった。さっきまでとは裏腹に、のろのろと鈍い足取りで廊下を進みながら、俺は唇をかみしめる。

彼らは教師で俺は生徒だ。

その間には、絶対的な力の差が……立場の差がある。

その差を持つ者と持たない者との間には、どんなに努力をしても適わない時がある。それを俺は七年前に実体験として知っていた。

(あの時だって、聞く耳すら持って貰えなかったじゃないか……今も同じだ。何をやったって………)

 

「諦めんのか?」

 

俯いていた俺の耳に空を裂くように、入った声。

この数日で聞きなれた、破天荒と傍若無人を同居させた性格の赤ん坊がそこにいた。

「諦める……って」

「タイムカプセルはねぇ。その事実だけを受け入れて、退学になるしかないって諦めるのかって……聞いてんだぞ」

整然と現状を述べたリボーンに、ずっと見ていたのかと問いただしたい気持ちもあったが、それ以上に、今の救いのない状況に笑いがこみ上げる。

(諦める?)

突然笑い出した俺に、流石に驚いたのか目を丸くするリボーン。その様子に構うことなく、俺は感情に任せるまま、言葉を吐き出していた。

「諦める、しか……ないじゃないか……!」

冷静であれば考え無しにも程があるだろう。「沢田綱吉」でいるためには、俺の本音なんて、ない方が良いに決まっていた。なのに。

「無理だよ。何も……変わったりしない。奇跡なんて起こらない……!期待なんか………させんなよ………!!」

感情に流されるままに、俺は泣いた。理由は分からない。「母さん」か、過去の俺か、それとも他の何かか。

泣いてそれでも俺は幼い子供のように、それに縋りたかったのかもしれない。

「そうだな。奇跡なんてもんは起こらねぇ」 

だからこそ、その言葉に反応が返せなかった。

何の偽りのないまっすぐな瞳。

何の疑いもなく、リボーンは笑った。

 

「期待もしてねぇ、あるのは確信だからな。……おめぇは退学になんかならねぇよ」

くいっと、あげられた帽子の下、そこで、いつもと変わらぬ笑みを浮かべたリボーンは、黒光するそれを俺に向けていた。

「少なくとも、獄寺はそうするつもりだぞ」

一発の銃声。毎度のように感じる、どこかへ落ちるような……夢現に引き込まれる、その一瞬。

遠ざかる意識の中で俺は、そこがどこなのか、僅かに掴めたような気がした。

しかし、それはすぐに霧のように霧散する。

「いっぺん、死んでこい」

最後の言葉は、もう俺には聞こえなかった。

 

「復活(リ・ボーン)!!」

死ぬ気状態になった綱吉は、迷うことなく校庭に出た。

「死ぬ気で退学の決定を変えさせる!!!!」

凛々しく言い放つのは良いが、結局はどうするつもりなのか、それを観察するためにリボーンは人目につかないように窓から外へ出て、校庭へ向かう。そこでは既に、綱吉と獄寺が合流していた。

「十代目!」

呼びかける獄寺に見向きもせず、何故か綱吉は四つん這いの姿勢でじっと、地面を見つめている。

(あいつ……何してんだ?)

流石のリボーンも訳が分からず首をひねると、ガパッと身を起こした綱吉が大声でそう宣言した。

「見つけたぁ! 地脈!! 発見!!!!」

「………は?」

「さ、流石だ……!」

その発言に向ける感想は両者で全くの正反対だったが。

「まさか……目視で地脈を探したのか?」

数瞬か、数分か、僅かな時間を経て、ようやくそう認識したリボーンは同時に、それがいかに信じられない物かを自覚する。

目が良いなどという次元ではおそらく無いだろう。

あるとしたら、自分と同じ虹(アルコバレーノ)と呼ばれる者達のように、滊の流れに通じているか、なんらかの特殊能力で外部からさぐったか。可能性としてはそれくらいだが。

リボーンが思案している間にも、獄寺と綱吉は動き始めていた。

綱吉は一心不乱で土を掘り続け、獄寺はいくつものダイナマイトをその箇所にぶつけ、砂埃をたたせている。 

出遅れたことに少しだけ不満に思いながら、リボーンは再び死ぬ気弾を充填する。

みるものがいないが故に他者が知るよりもないが、この時のリボーンは、大層わくわくした顔をしていた。

「まどろっこしいな。手伝ってやるぞ」

恩着せがましい言葉を口にしながらも、リボーンは計四発、綱吉の中に新たに命中させた。

「肩、肘、腕の三カ所を連射したことで、“メガトンパンチ弾“。脊髄直撃で“耐熱皮膚弾“だ」

それがどのようなことを引き起こすのか、分かることもせず。

 

 

銃弾が撃たれた。

そう認識した直後、俺はそれに気付く。

撃たれた箇所から、まるで水の入ったコップに穴が開いたかのように、微弱なそれが流れていること。

一つ一つは小さなそれが、まるで連鎖するかのように大きな熱になりつつある事。

まるで、血が熱くなるような、感覚。それにぞくっと、体を震わせ……俺はオソレタ。

(まずい…!)

焦っても、もうその流れを止める術はなかった。俺自身の恐怖を糧とするように、熱は体の一カ所……右腕にどんどん広がっていく。

(このままじゃ……一部分とはいえ“変化“が解ける!?)

悟ったそれは同時に、とんでもない爆弾となって俺の混乱を煽った。

現状を何とか打開したくとも、俺の意思で体を動かす事が酷く難しい。

夢現の今は体全体が重くて、動きも悪い。

何とかそこから醒めようとしても、醒めるためにはどうすれば良いのか皆目見当もつかない。

もう駄目だと諦めかけたその時、校庭の入口の一つから鋭い何かが飛んできた。

肉体的な、痛みはない。ただ、体中がゾワリと震える感覚。それが己の持つ物と同じ「もの」だと理解したとき、俺は夢現から戻ってきていた。

「…………え?」

戻ってきて一瞬、呆けたその瞬間。

「十代目!俺も行きます!!」

俺の変化に気付くこと無く、獄寺のダイナマイトが爆発した。………沢田綱吉との超至近距離で。 

「わっ、わあああああ!!」

心の準備も無しに身近で聞こえた爆音に、俺は混乱状態に陥った。驚きの、恐怖の声を上げ、気づけば俺は今し方まで“変化“の解けかけていた、今は死ぬ気弾を部分的に受けた影響か肥大化しているだけの右腕を振り下ろした。

 

 

 

あの後、見事に校庭は大破。地脈を割ってしまったために地震や地割れの類を起こし、学校の方にも傾きが出来てしまったらしい。

その断層の中から四十年前に埋めたタイムカプセルが出てきて……そこに根津教師の名前が書かれたテストが出てきたのだそうだ。しかも、俺とどっこいどっこいの点数で。

結果、退学を強く主張した根津教師本人が、学歴詐称の罪で学校を追い出されたため、俺達の退学そのものも、白紙に戻ったのだという。……それを俺は、自宅のベットで聞いていた。

あの時、一部とはいえ変化が解けかけた影響か、正気に戻すためとはいえ強い力を何の守りも無しにもろに受けた影響か、それ以外の何かかの要因か、それは全く分からないけれど、俺はその場で昏倒してしまい、……三日近く寝込んだのだ。

当然話された顛末も、これっぽっちも覚えていなかった。

 

 

思えばこのときから、少しずつ歯車は回り始めていたのだ。

俺の知らないところで。

知らないうちに、ゆっくりと。

 

 

 




ゆっくりと、ゆっくりと、物語は核心に近づいていきます。
出来るならば、楽しみにして頂ければ嬉しいです。

あとがきに書く内容が余りにも薄っぺらい……。
少し考えてみることにします。

何も出来なかったら、ごめんなさい。(´pωq`)
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