Fate/Grand Order 〜some like it hot〜 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
誠には後輩がいる、だが居ると言っても本当の後輩とかそういう後輩では無い。
何故か一方的に先輩と呼ばれていた。
「先輩、今日はレイシフトですけど体調はどうですか?」
「絶好調だよ、ありがとねマシュ」
マシュ・キリエライト、眼鏡に白衣を掛けた少女なのだがマスター適正検査の成績は誠に次いで二番目に成績が良い。
レイシフトは優秀なマスター候補を中心に組んだAチームとBチームに別れて行う。
先行するAチームのレイシフトが数時間後に迫っていて最後の自由時間を過ごしていた。
本来なら沖田と訓練をしたいところなのだが沖田は前日の激戦の影響か吐血してしまい今回のレイシフトに間に合いそうに無い。
そこで新たにサーヴァントを召喚しなければいけないのだがそれを聞いた沖田は「病弱スキルが憎い、おのれ薩長」とうめき声を挙げていた。
心残りではあるが空腹であった為食堂に向かっていた最中にマシュと遭遇したのだ。
「フォウ、フォーウ!!」
「フォウさんも心配しています、ので今後は無茶なトレーニングをしないでください」
頬を膨らませ怒っていますアピールをするマシュが可愛く思えた誠は悪戯心をくすぐられた。
普段から先輩と慕ってくれている後輩に誠は事あるごとに気に掛け悪戯をしてきた。
「マシュは俺の事心配じゃ無かったの?」
「あ、いえ、あの………私は………」
顔を覗き込むように聞くとマシュは顔を真っ赤に染め視線を逸らす。
その反応を面白く思い更に覗き込む、しかしマシュはしどろもどろになりながら距離を取ろうとする。
壁際に追い込んだ誠は壁に手を付きマシュの逃げ場を無くす、そして指先で顎を上向かせ目線が合うようにする………俗に言う壁ドンと顎クイだ。
イケメンのみが扱える女性特攻対人宝具、その効果は使用者のイケメン具合によって変動する、誠は10人が見れば6人が好みのタイプ、2人が格好良いけどタイプじゃない、残りの2人が残念そうだからなんか嫌かなというレベルのイケメンである。
イケメンかどうかで言えば普通にイケメンなのだがそう断言しきれないレベルなのだ。
だがいかに中途半端なイケメンと言えどカルデア職員位しか男性を知らないマシュにとってはランA+相当にはなる。
「答えてくれないと………先輩は悲し「何やってんの!!」ヘブライ!?」
誠の後頭部に強い衝撃が走る。
背後にはハリセンを持って仁王立ちするオルガマリーの姿があった。
「あんたは!!何時も何時もそうやって………馬鹿じゃないの!?」
「痛い、痛い!!そのハリセン絶対メイドインダヴィンチちゃんだろ!?なんか凄い痛い!!」
「良い加減にしなさい!!数時間後にはレイシフトするのよ、マシュのメンタルを崩すような事をしないでちょうだい。
マシュ、貴女は先に行って準備でもなんでもしてなさい!!
そんなに暇ならざ………ザゼン?でもしてなさい!!」
こうしてオルガマリーの説教はレイシフト直前まで終わらなかった。
そして場所は変わって中央管制室前の廊下、レフは1人でいた。
普段の温和な笑顔とは違って悪魔染みた笑顔を浮かべている。
「クッククク、ここまで事が上手く進むと笑いがこみ上げてくるな。
あとは永倉誠の始末だけか、奴はマスターだが焦る必要は無いな。
サーヴァントも寝込んでいる事だしな。
うん、コフィンも纏めて爆破すれば問題は無いか…………危ないじゃないか」
レフの頬を伝う一筋の赤い血………背後には抜刀した沖田が立っていた。
レフを捉えるその視線は何処までも冷たく強い殺意の込められたもの。
生前に斬って捨てた敵に向けた視線と同じだった。
沖田自身英霊となってまで生前と同じように人斬りの目に戻るとは思わなかった。
しかし、目の前の男の言動はとてもよう人出来るものではない。
「レフ・ライノールでしたっけ?マスターが仰っていた技術師とやらをされている。
そんな人が何故マスターを殺すなどとの宣うのでしょうか?聞き逃すには大き過ぎる独り言ですしおすし」
「まがい物のサムライとはいえ流石はセイバークラスのサーヴァントだな、私の事に気づいていたか」
「貴方の下卑た視線には気付いていましたが貴方が斬るに与う存在である事は既にマスターが見抜いていましたよ。
私の事を知っているなら分かりますよね?新撰組は裏切り者を決して許さない、それが如何に組織の幹部と言えど。
と言うわけで貴方はここで粛清します、覚悟なさいレフ・ライノール」
新撰組はその組織としての有り様に敵も多かった。
そんな敵を斬り伏せてきた、組織を守る為ならば如何に新撰組に貢献した人物であろうと容赦無く斬り伏せた。
そんな新撰組にいた沖田だからこそレフの行動は許せなかった。
弓を引くようにして刀を構える、2人の間合いは完全に沖田が支配している。
レフが指先を動かそうものなら即座に斬り落とす事が出来る、それを理解しているのかレフは動こうとしない。
「永倉誠め…………人間の分際で笑わしてくれる。
まぁいいが、良いのか?私にそんな近付いても」
何事かと問いただそうとした時には既に時遅し、身体を蝕む何かに気がついた沖田。
「レフ!!貴方いった………ゴフッ!!」
吐血、それは普段吐いてる血の量とは比べものになら無い量だ。
吐いた本人が自覚していた、これは普段のそれとは訳が違う明らかに何かをされたのだと。
申し訳程度とはいえ対魔力のスキルを持っている自分が気が付か無いのはおかしい、たかだか人間の魔術に反応すら出来無い訳がない。
「貴方…………人では無いのですね、私に何をしたのですか?」
「お前如きが知ることじゃ無いさ、君に何をしたか?分かり易く言えば毒を盛ったのさ。
さてと、知ってしまっているお前が起きているのは何かと都合が悪い。
だからお前には眠っていて貰おう」
その言葉を最後に沖田の視界は黒く染まった。
レフは通信機の電源をつけると多少の変更はあったものの用意しておいた台本通りに台詞を吐く。
「ロマ二、あと少しでレイシフト開始なところ悪いが誠君のサーヴァントが血を吐いて倒れているんだ。
急いで回収して貰えないか?その後でいいからマスター達のバイタルチェックをしておいてくれ」
そして悪魔はもう一度嗤った。