※独自設定やジャンプ本誌のネタバレを含むので、閲覧の際は注意して下さい。
餓鬼の部屋に行くと、餓鬼は机に突っ伏していた。俺は餓鬼に近付いて餓鬼の顔を覗き込む。餓鬼は両目を閉じていて、眠っているようだった。すうすうとした寝息が聞こえ、餓鬼を起こさないようにして、餓鬼から少し距離を取り、餓鬼の顔を見つめる。餓鬼の寝顔はあどけなく、やっぱり此奴は只の餓鬼なんだなと思っていると、不意に餓鬼の眉が寄せられ、餓鬼の顔が歪んだ。
「先生……」
餓鬼の口から発せられた言葉に、餓鬼の瞼から溢れ落ちたものに、はっとする。
「先生……先生……」
餓鬼は何度もその言葉を口にする。餓鬼の瞼からぼろぼろと透明の雫が溢れ落ちた。
「……ッ、」
俺は餓鬼との距離を詰め、餓鬼の肩を掴んで揺すった。
「おい、起きろ小僧」
餓鬼はゆっくりと顔を上げて、潤んだ目で俺を見る。
「柩さん……?」
餓鬼が目を覚ましたことに内心で安堵して、「魘されていたぞ」と言うと、餓鬼は瞼から溢れ落ちているものに気付いたのか目を見開いた。
「俺……泣いていたんですか?」
「……ああ」
餓鬼は右手で涙を拭って俯く。
「…………」
俺と餓鬼の間に沈黙が流れる。
そうしてどれ程押し黙っていただろうか、餓鬼が俯いたまま口を開いた。
「……柩さん、一つお願いしてもいいですか……?」
「構わねぇ。何だ?」
「……俺を……俺を抱き締めてくれませんか」
思わぬ要求に目を見開くと、餓鬼は「すみません、こんなこと……」と溢して机に手をついた。立ち上がろうとした餓鬼の腕を掴み、俺はその腕を引いて餓鬼の体を引き寄せる。
「……馬鹿野郎」
餓鬼の背中に腕を回すと、餓鬼はびくりと体を揺らした。
「餓鬼は餓鬼らしく甘えろ」
その言葉に安堵したのか、餓鬼は体を預けてくる。餓鬼の小さな体を傷付けないように、力を緩めて餓鬼を抱きしめると、餓鬼が微かに笑う気配がした。
「……柩さんの体、暖かいですね」
「……そうか。お前の体もあったけぇな」
餓鬼の体はじんわりと暖かい。これを子供体温と言うのだろうか。
(まさか俺が子供を抱き締める日が来るとは思わなかったな)
恐面故に子供が近付かない自分のことを思い、傍にある体温に目を細める。
「……柩さんの腕の中……安心します」
そう告げて、暫くしてすうすうとした寝息が聞こえたため、嗚呼、眠ったのかと思い、餓鬼の頭に手を移動させて、ゆっくりとその頭を撫ぜた。
「今度はいい夢を見られるといいな」
呟いて、俺に弟が出来たらこんな感じなのかもしれねぇな、とらしくもないことを思う。
腕の中の小さな命を抱き締めながら、俺はあったけぇなともう一度呟いた。